宇宙戦艦ヤマト 2221 ~悪魔との再戦~   作:柱島低督

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ヤシマ作戦 -6-

「正面、ニードルスレイブ襲来!」

 

西条の悲鳴にも似た叫び声が上がる。動きが鈍ったヤマトに襲い掛かる楔の群れ。その群れは、もはや蛇か龍と称する以外無いほどに連続的に高密度で襲来する。

 

「主砲、連射モード撃ち方始め!」

 

出力の余裕がメインエンジンに劣る第二波動エンジンから回せる余剰のエネルギーは少なく、波動防壁の起動にも瞬間的に大出力が要求されるため、主砲の連射速度が鈍る。

 

片っ端から主砲が撃ち抜き、副砲が取りこぼしを虱潰しに叩く。更にパルスレーザーが至近に接近した物を平らげていく。

 

それでも僅かな連射の隙間を縫って迫る群れは、じりじりとヤマトとの距離を詰めてくる。

 

「多数が迎撃不可能域に侵入!」

 

「波動防壁再起動間に合わない!」

 

「接触まで2秒!」

 

「衝撃に備え!」

 

ヤマトの船体をへし折るように、前部甲板を上から下へ突き抜けていく。波動防壁の展開が遅れていた瞬間に重なったその接触で、甲板に大穴が開く。

 

「第一波、抜けました」

 

「波動防壁起動!」

「出力は12MPaで安定」

 

「増速、突入しろ!」

 

「両舷前進一杯!増速、黒20!」

 

メインノズルの光が瞬くや否や、鉄の巨体が咆哮を上げたように震え、全てのしがらみから解き放たれたように加速する。

 

「艦載機隊、発艦準備!」

 

「真田さん、俺も出ます。船の指揮はお願いします」

 

「分かった」

 

「桜井、小林と代わって操舵に入れ」

 

「了解!」

 

「ありがてぇ!小林、出撃します!」

 

「艦長!俺も出ます!」

 

上条が声を上げる。古代と一瞬目を見交わす。

 

「いいだろう。真田さん、戦闘指揮もお願いします」

 

古代の言葉に、無言で頷く真田さん。

 

「航空隊、全機発進!」

 


 

ヤマト上甲板後部第一格納庫

コスモゼロ21が格納されている場所であり、古代しか使わない現状では、事実上の古代専用の格納庫だった。

 

非常時に備え、いつでも出撃可能なように待機させていたから、乗り込んでそのまま発艦態勢に入る。

 

「Alpha1古代、発艦する」

 

エレベータでカタパルトに接続され、前へ転回する。スロットルレバーと操縦桿の位置を再び確認して集中する。

 

「Alpha1,cleared for take off.」

 

嘗て使い込んだコールサインを噛み締めながら、カタパルトの加速に身を委ねる。

 

《Bravo1上条、Bravo隊全機発艦!》

《Charlie1小林、全機発艦!》

《Delta1佐々木、Delta隊発艦態勢》

 

「レルテの門を突破して大帝玉座の間に達するには、ヤマトの巨体では不可能だ。とはいえ生身で突入する必要はない。Bravo隊は門の破壊、Charlie隊は俺に続いて突入、Delta隊はバックアップを担当」

 

《了解!》

 

【警告、正面に敵機多数】

 

機首のレーダーが捉えた影を戦闘AIが即座に解析し、SID(シド)が音声でアナウンスする。

 

《こちらDelta隊、進路上の敵の掃討に移る》

 

「頼みます」

 

 


 

 

航空隊の全ての通信はヤマトに中継されている。

 

「桜井、レルテの門を突破する。郷田、主砲発射用意、門はヤマトが破壊して航空隊を援護する」

 

「了解、主砲戊弾装填、副砲三式弾、用意」

 

真田さんの言葉に反応した郷田が、戦術長の席から指示を出す。

 

「主砲一斉射の後に副砲で破孔を拡げる。主砲、テェッ!」

 

「照準よし、発射」

 

閃光が主砲口で瞬き、目にも止まらぬ弾速でレルテの門を突き破る。

機上の古代を始めとする一部のパイロットは、空戦で鍛えられた動体視力でその砲弾から剥がれる薄板に気が付いた。

 

APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)

驚異の貫徹力を持ち、20世紀終盤以降長らく戦車の主兵装として活躍した実体弾は、ヤマトにも実体弾の1オプション、対要塞用高貫徹徹甲弾『戊弾』として搭載された。

その特徴としては、特別細い弾体で発射用炸薬の爆発を受け止めるための装弾筒、つまり発射時のみの覆いがついていることで、古代らが肉眼視した薄板こそが、その装弾筒だった。

 

戊弾が弾着するや否や、間髪入れずに次の指示を下す真田さん。

 

「続けて副砲、テェッ!」

 

「発射!」

 

「桜井!破孔に突入!」

 

「了解、回廊の中心軸に艦の軸線を合わせる」

 

左手を操縦桿から離し、機械の補助を借りながら軸線に乗る。

 

「古代、大帝玉座の間に辿り着き次第、ホバリングでゴレムを銃撃、起動させたのち、全速で離脱しろ」

 

《了解です。Charlie隊は突入後の反転に備えよ》

 

《了解!》

 


 

最後の扉を眼前に捉える。次第に細くなっていく回廊はヤマトの侵入を拒み、尚も縮み続けるその隙間に、無理やり滑り込むように侵攻を続けている。

 

《あれが最後の扉ですかね……》

 

「そのはずだ」

 

先頭を行く上条が緊張した声を上げる。扉を1枚ずつ突破してきて、上条の()()がCharlie隊最後の波動掘削弾になる。波動掘削弾を撃ち尽くしたコスモパルサーはコスモゼロの後ろに下がっているので、古代の前は上条機が唯一の機体になる。

 

《波動掘削弾投下》

 

着弾と同時に青い光が溢れ、その光が古代と上条を包み込む。寧ろ、光の中へ飛び込んだという表現の方が適切だった。

 

その刹那、警報が鳴り響く。正面の障害物をレーザー走査計が探知した音だった。

 

「SID、姿勢制御、減速、速度0に」

 

【姿勢制御、空中静止】

 

機体に搭載されたコンピュータが減速に必要な力の力積をはじき出し、スラスターの仕事率から噴射時間を逆算し、その秒数ピッタリに信号を出力する。

 

完全に機体が静止したため衝突の危険が去り、衝突警報が自動で解除されたころには、青い光も晴れて正面の物体が完全に目視できた。

 

高い、筒状の物体。幾何学模様が艶めかしく発光し、その上には豪華な椅子と1人の男が立っている。

その物体は間違いなくゴレムであり、その男はズォーダーだった。

 

【READY GUN】

 

右手で握るスティックにあるボタンで、安全装置を解除し発射態勢に入る。日本人特有の単語ごとに読む、所詮『棒読み英語』でSIDが告げる。

 

右手の人差し指を掛けているトリガーを意識して、右人差し指を握るように絞る。

 

人差し指の沈み込みに一瞬反発したトリガーの部品が、引っ掛けていた部分の最大静止摩擦量を超えた力で押し込まれ、内部のスイッチまで一気に到達する。

 

0.1ミリ秒にも満たない間にそれは電気信号へと変換され、機首の機銃へ発射信号が伝えられる。

信号が途中経由した攻撃管制コンピュータでは、センサー情報で認識して捕捉しているゴレムへ弾が向かうよう、照準が補正される。

 

機銃のアクチュエータが動作して微妙に銃身の向きを調整し、粒子ビームとレーザーの複合であるその弾丸を放つ。

 

古代の反射で放たれた銃撃がゴレムを貫き、ゴレムが起動する。

 

【警告!警告!未知のエネルギー放射を探知!】

 

宇宙全体へ響き渡る()()()()()()にSIDが警報を上げるものの、古代ら人類には全く感知できない次元で事態は進む。

 

「真田さん、ゴレムの破壊に成功、これより離脱します」

 

《こちらヤマト、了解。航空隊は離脱を急げ》

 

 


 

余りに呆気なくゴレムの破壊に成功し、引き上げる。

 

「補助エンジン始動、出力90%!」

 

「重力アンカー解除、反転180°!」

 

機関長の徳川が声を上げ、操縦席についている桜井が舵を取る。

 

「航空隊、帰還しました。未帰還、8」

 

西条が項垂れたような声を出す。

 

狭い回廊内でのニードルスレイブとの空戦で、Delta隊は未帰還4、バックアップに回ったAlpha隊も2、突入したCharlie隊は、引き返す際に衝撃に襲われ、壁に接触した2機が未帰還となった。

 

その衝撃こそが、紛れもなく『滅びの方舟』の起動の咆哮だった。

 

「桜井!代わる!」

 

「お願いします!」

 

艦橋へ舞い戻ってきた小林が再び操縦桿を握って、ヤマトの船体は離脱を始める。

 

「戻りました」

 

「古代、発射まで10分を切ったぞ」

 

真田さんの言葉に無言で頷く古代。

 

「残り10分すか、ヤバいっすね!」

 

小林が声を上げ、ヤマトは増速する。もうガトランティスからの攻撃の恐れは無いので波動防壁の出力は最小限、メインエンジンは機関へ全力を回す。

 

《白色彗星内の各艦は、Y砲の加害半径からの離脱を急げ》

 

地球艦隊司令部からの通信がヤマトに入り、重力炉破壊時の磁気嵐が収まったことを知らせる。

 

《航空隊は波動掘削弾投下により重力炉の破壊作業を完了。空母部隊は航空隊収容後速やかに離脱、戦艦部隊は直ちに離脱せよ》

 

「小林、重力干渉が弱まった地点まで前進してワープで加害半径を抜ける。桜井、全周観測。一番近くの重力低干渉地帯を探せ」

 

「了解!」

 

「上条、只今戻りました!」

 

「……おかしい……半径2,000宇宙キロ圏内に低干渉地帯がありません!」

 

「何!?」

 

古代が叫ぶ。桜井後ろに真田さんも立ち、腕組みをして画面を見つめる。

 

「古代、どうする?」

 

残り8分45秒。古代の脳内には真田さんの声が反響する。




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