そして石塚さんの後任、楠見 尚己さんに決まったそうで。大事もなく、嬉しい限りです。
艦体の修理が進むヤマトを見上げた時感じたのは、どっしりとした安定感と威圧感だった。全幅が大幅に拡張され、より重厚感もあった。嘗ての幅が狭い船体は、軽やかな印象があったのだが、と思い返す古代。
ドックの観察窓を介して、今目の前には、1隻の戦艦が身を横たえていた。平面で構成された葉巻型の船体に、艦首部は潰れた六角形の、2つに分かれた大穴が空いている。砲口周辺は、外側が黄色く塗装され、上に張り出した部分は他の艦体色と同じ灰色。赤い窪みがあるその上には、薄い板が2枚、そそり立っている。
艦体には三連装主砲塔が3基、備え付けられ、船体の各所に U.N.C.F. D-0001-2202 DREADNAUT と表記されている。
そう、そこにあったのは嘗て地球防衛軍の主力を務めていたドレッドノート級前衛航宙艦だった。しかも1番艦のドレッドノートがその身を晒していた。幾多の海戦を潜り抜け、現存している唯一の初期型(先行量産型)である。隣には、やはりというべきか、真田さんが立っている。
「残ってたんですね……初期の先行量産型……」
「ああ、しかも1番艦だよ。そしてこれを見て欲しい」
そう言って古代を反対側の窓へ誘導する。真田さんが手元のキーボードを操作すると、調光フィルムが白濁して見えなかったアクリル板が、調光フィルムに電圧をかけられ透明になって反対側まではっきり見えるようになる。
「これは……?」
その目に映った
「旧ドレッドノート級を改設計、発展・拡大改良したエルナト級戦艦だ。主砲は38.1cm三連装砲に換装、他の武装も強力な新型に変更され、全体の設計では、無理のある設計がなされていた箇所を改善してある。順当な、ドレッドノート級の後継だ」
船体には、側面に一際大きく U.N.C.F. E-0001-2221 ELNATH と書き込まれ、主砲も意匠はほぼ変わらないが、砲径が増大しているのは明らかだ。旧ドレッドノートは、艦後部に搭載された主砲が艦尾ノズルギリギリまでせり出していたが、此方のその部分はやや余裕がある。
全体的に禍々しいイメージだった旧ドレッドノートから、ゆったりとした、優雅な印象に纏め上げられている。
少し向こうを見やれば、2番艦以降が続々と完成が近づいているらしく、一部艤装に不足がある艦や、あと主砲を載せるだけの艦もある。
普通、完成した艦は、進宙式で艦名を公表、そして宇宙へ出発する。嘗て各国海軍で行われた進水式に倣ったものだが、それとは決定的に異なる点がある。宇宙は真空である為、完全に完成した状態で引き渡されるのである。
嘗ての進水式とは、船体が完成した時点で行われる。艤装込みではドックの船台が重量に耐えられないこともあるため、船体が出来上がった時点で海の上に浮かべ、その後浮き桟橋を使って艤装工事を行うことになるのだ。
しかし、進宙式では、そのまま処女航海へ出発し、乗員の訓練も同時に行われる。技術的問題が解決されたためだ。
また、アンドロメダ級で行われたような式典的な、セレモニーじみた進宙式ではなく、ドックで行われる簡素な物が基本となっている。盛大に行うには就役艦が多すぎるためだ。
「進宙式は明日、行われる。2番艦以降も同時に就役させる」
◆◇◆◇◆◇◆
進宙式では、エルナトの艦名が発表され、2番艦は
その中の1隻、エリスに古代は乗り込んでいた。ヤマトの修理が完了するまで、艦隊の訓練長官・外部顧問的な存在としてである。艦橋から流れる景色を見ているが、先行する1番艦エルナトには、元第二遊撃部隊司令の安 縁利が乗り組んでいる。
ヤマトの救難時に、上層部の指示に逆らった結果、新鋭エルナト級で構成された内惑星守備 第三艦隊の司令、教練隊という形で
《こちらエルナト、各艦は火星軌道上で訓練を行う。目標地点へ向け、紡錘陣形を構築し第一宇宙速度で航行》
地球では既にエルナト級の増産体制が築かれていたな、と思い返し、先を行くエルナトへ焦点を合わせる。他の艦は前方へ展開し、エリスは殿として後方に位置取っている。
艦隊は速度を上げ目標地点へ向かう。これから先、地獄のような、多くを失う戦いが待ち構えているとは、誰も予想しないままに。
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