それはいつも通りの帰り道の出来事だった。いや、正確にはいつも通りでは無く帰り道でもないのだが。
中間テスト
今日から3日間学校では中間テストが行われ、名目上は残りの科目の勉強と言う事で午前で学校が終わり帰宅となる。
だが、平日の午前で学校が終わり、残りは自由時間となれば、普段は学校に拘束されている学生達も大体の者達が寄り道をするであろう。
斯く言う俺自身も真面目に帰宅する訳なく、寄り道にと学校の近くにある本屋に向かっていた。
今思うとその時に異変に気付くべきだった。いや、気付かない方が良かったのだろうか?
その時の俺は周りの異変よりも、本屋に最新のラノベたちを買いに行くことで頭がいっぱいだった。
ある程度本屋に向かって自転車を漕いでいると違和感に気が付く。学校を出てから、他の人や物音が一切聞こえなかった。幾ら平日の午後でも、何人か見かけたり人の物音が聞こえたりはするだろう。それが一切無かった事に、妙な不安感を覚えながらも目的の本屋へと向かう途中。
曲がり角で自転車に乗ったまま、曲がった先で見た景色は
地獄だった。
道端には、上半身と下半身が別れた人々が。車は前のガラスから電柱が貫いている。周りには血が飛び散り、血溜まりどころか血の海が出来ていた。
パッと見ただけでも、訳が分からなく、吐き出しそうな景色を前にするも、それ以上のモノに視線が動かせない。そんな地獄の中にソレは存在した。
まるでSFの映画や小説などに出てきそうな存在。動物みたいな大きな角に、獣の顔。赤い瞳に、二足歩行で片手には人の頭を持っている。悪魔や魔王を現実に存在させたら、こうなるだろうと思わせる姿をしていた。
それはこっちに振り向くと、俺を見つけニタリと笑った。瞬間、恐怖で足が動かなくなり、震えて立つことが出来なくなりその場に崩れ落ちる。
その化物は一瞬で目の前に移動し、俺の体は焼かれた。
目が覚めると辺りは真っ暗だった。
あっ、死んだんだ。真っ先に思ったのはその一言だった。それから、ここは何処なのか?これからどうなるのか?等の疑問が浮かんでくる。
『普通は逆じゃない?』
そんな笑いながらの声が聞こえ、驚き辺りを見渡すも人の姿は見えない。するとその声の主はそれに答えるように、またも話し掛けてくる。
『あ、僕の姿は見えないし、今は君の脳に直接話しかけてるって感じかな?君が思ってる通り心も読めるよ。』
何と、俺がよく読むラノベでありそうな展開だな。もしかして俺も異世界チートの仲間入りか?
『流石、飲み込みが早いねぇ。まぁ僕はもう神じゃないけど。』
よっしゃ異世界チート来たー!と思いつつも、気になった言葉を無意識に口にしていた。
「神じゃない?」
『うん。まぁ強いて言えば元神かな?』
元神って言うと今は一体なんなんだ?ってか誰なんだ?またも心を読んだのか口に出していない筈なのに答えが返ってくる。
『じゃあ軽く自己紹介でもしようか。初めまして僕は遊戯の元神のムトって言うんだ。ヨロシクね。今は魔神って呼ばれてるかな?』
遊戯の神で魔神って何となく想像が出来るんだが……。
『うん、君のその想像通りだよ。昔、暇つぶしに世界を滅ぼして遊んだら、他の神達に怒られて一部の力を封印されたんだ。今の僕に出来るのは世界を見ることだけ。』
やっぱりか。遊戯の神で見てるだけってのは色々と辛いだろうな〜。
『いや、そうでも無いよ?普段は別の世界に干渉しちゃうと駄目なんだけど、地球の神が謹慎中だけ少し見るぐらいなら許可してくれたから、せっかくの機会だし色々地球を見てたんだけど、いや〜アニメ文化って良いよね!』
おっと、まさか?
『うん、そうだよ。アニメ文化にハマって、そこからラノベやネット小説に派生したんだけど。読んでるとついやってみたくなってね。地球の神と相談して許可を得てやってみたんだ。』
ちょっと待てぃ。すると俺はアレか?地球の神から要らないって渡されたのか?
『そこはちゃんと異世界に憧れる人物を選んだよ。後は適性があるか?とかそんな感じ。せっかくやるんだから拘らないと。』
マジか、そんな軽いノリで俺は異世界転移に選ばれたのか……。あれ?でもさっき力を封印されたとか言ってなかったか?
『だから地球の神にも力を貸してもらったんだ。感謝しときなよ?って訳でもう少し話していたいけど、あんまり力を使えないからそろそろ限界かな?ちゃんとスキルは渡したから後はそっちで確認して頑張ってね。じゃ。』
え?なんの説明もねぇのかよ。おい、待てー。
ムトが言い終わると体を謎の浮遊感が包み込み、意識が遠のいていく。こうして俺の異世界生活が始まった。