ぷにぷに
頬に何かが当たった刺激で意識が覚醒する。
誰だよ人がせっかく寝てるのに……。
ぷにぷに
「あー、ハイハイ。分かったから後5分寝かせて……。」
ぷにぷに……ぷるん
なかなか起きない俺にしびれを切らしたのか、頬を触っていた物体は俺の顔に貼り付いた。当然そうなると呼吸が出来なくなる訳で……。
「し、死ぬわー!」
叫びながら顔に貼り付いた物体を引き剥がし、地面に投げ捨てる。人の睡眠の邪魔をして、一体誰だ?と怒りの視線を向けると。地面に投げ捨てられた物体は、ぷるるんと震えると楕円形の姿になった。
「何だ、スライムか……。ってスライム!?」
突然の大声に目の前のスライムは、ビクッとなるが無視して自分の置かれた状況を把握しようと記憶を辿る。
「……ああ、何かよく分かんねぇチート貰って転移したんだった。しかし、本当に異世界なんだなぁ。」
周りの景色を見ながら、最後に目の前のスライムを見て呟く。周りには草原が広がり、改めて地球にはさよならバイバイしたんだと実感する。
「せめて説明書かなんか渡されても良かったと思うんだがなぁ。幸い目の前のスライムは襲って来ないけど、スキルも分からない、武器もない状態で放置は無いだろ。」
恨みがましく言うと、急に空からショルダーバッグの様な鞄が降ってきた。
「ムトが送ってきたのか?……じっとしてても始まらないし開けてみるか。」
そう言って鞄を開くと、中は真っ暗で何も見えなかった。そう、真っ暗で鞄の底さえも見えなかった。
これってもしかして、よく異世界ものにある魔法の鞄か?
「うおっ……。」
真っ暗な鞄の中に手を入れると、頭の中に一覧の文字と絵と名前がセットになったアイテムが表示された。
【一覧】
《ムトの手紙》、《ショートソード》、《魔法の水筒》、《野営セット》、《お金(金貨1枚)》、《食料(3日分)》
「色々と気になるものがあるが、今はこれを先に見るべきか?」
俺はその中から、ムトの手紙を取り出そうと念じたら、手に何かが触れる感触がしたのでソレをそのまま鞄から取り出す。
取り出された手紙は3枚あった。それぞれ一番上に『元の世界について』、『この世界について』、『スキルについて』と書かれていた。
それぞれ確認し元の世界についての手紙から読むことにした。
『タイトルに書いた通り、この手紙には君が元の世界ではどうなったのかの報告を簡単に書こうと思う。
まず最初に、君がこの世界に来る前に見た景色は、幻だったんだ。人避けの魔法で目撃者を近づかないようにして、それから幻覚を魔法で見せて転移させてもらったんだ。だから大事件とかにはなってないから安心してね。』
あの地獄みたいな惨状は幻だったのか……。
『次に君のことについてだけど、これは元から存在しなかったように記憶から消されたよ。つまり誰も君の事を覚えてないし知らない。そんな感じかな。以上元の世界についてでした。』
別に元々そんな親しい人や友人も居なかったからいいけど、なんだかなぁ。
まだ1枚目の手紙を読んだだけなのに、何故か疲れる……。正直もう読みたくないが、おそらくこの2枚の方が今後の事を考えると重要だろう。渋々と残りの手紙にも目を通す。