目的地まで急いで移動している最中にハインリッヒ少佐は皆に言う。
「よいか、我が部下たちよ。今日、この付近は激しい吹雪に見舞われることになる。その前にここを抜けるぞ。」
「了解!」
全員が返事をすると、さらに速度をあげて移動を続ける。未来視によってたてた計画であるため、自然現象については確実に把握が可能である。しかし、この能力はハインリッヒ少佐曰く、一度に一つの世界線しか見ることができないため、行動の有無などによる未来の改変が起きた結果について見る事はできないという。一種の予防策でしかないため、もしも未来改変が起きてしまった際にはその対処は随時行なわなければならない弱点もあるという。
「このまま何事も起きなければよいが...。」
「こら、縁起悪いこと言うな。もし起きたらアンタの夕食抜きよ!」
「そんな、それは無いってソーニャちゃん!」
すると、クロフォード少尉が
「様子がおかしい...、気流、気温と...急激に変わるものなのかな...?いや、ありえない。少佐、吹雪が激しくなる時刻は?」
「ん?まだあと2時間弱あるからこの速度なら抜けられるはずだが?もしかして不安なのかい?困ったなぁ、我の力を信用しきれてないというのか。」
「そりゃ、アンタみたいな胡散臭い振る舞いされればね...。」
「そうじゃない...、気圧や気流、気温が急激に変化しすぎてる...。もしかして502が言っていた気候制御型のネウロイの可能性があるかもしれない...!」
その瞬間、全員が武器を構えて警戒を始める。
「どうしてわかったんですか?ジルさん。」
「え〜っとね、説明すると長くなるんだけど。気圧やら気流っていうのは急激には変われないんだよ。もしそんなことなっちゃったら世の中気候が変わりすぎて住むの大変だし...ってそうじゃなくて、気候を変動させるなんて自然だと長い時間をかけてゆっくり変動してくのが普通でしょ?でもこれはあまりに急すぎる、何かによって動かされるって言った方がいいかもしれない。」
「だからネウロイの仕業だってことですか?」
「まあ予測だけどね、だって少佐の未来視は自然のことなら一切変わらないでしょ?だって自然は人の手では制御するなんて無理な話だし。」
「総員、警戒態勢をとりつつ迅速にこの領域を抜ける!気候を変化させられた中で戦うのは危険すぎる。後で隊長達に報告し、応援とともに来てもらう。」
「了解!」
更に速度をあげて目的地まで進む、しかしジル少尉の言っていたとおり気候が急変する。
「我の未来視では現れなかったはずだ...だが何故...!」
「おそらく、ネウロイが私たちに反応して接近したんじゃないかしら。」
「すまない、視界が悪い分警戒を強めてくれ!」
視界は白く覆われ、全員がまとまって見失わぬよう移動を続ける。そんな最中にネウロイからの攻撃が開始される。
「っ!こんな時に!」
「ここは私は引き受ける!」
「仙石少佐!?しかし...!」
「ここで全員がかかったとしても視界が悪い分、同士討ちなども考慮できる。それに、弾薬を無駄にすることも避けた方が良い。ならば刀を用いる私が対処するのが最適解だ。」
「そんな、それでは少佐は...!」
「いいや、任せよう。ならば我も残ろう。」
「いいや!私が残ります。」
「松山曹長、しかし...。」
「そんじゃ、私も残りますかね。」
「クロフォード少尉!」
「私だって火器だけが武器じゃない。物質操作で多少なりサポートはできますよっと。」
「...わかった、すぐに応援を呼ぶ。なるべく応援が来るまでに倒せ、総員進むぞ。」
「了解...!」
3人以外は全員先にすすみ、私達はこの吹雪の中残ることとなった。だけれどこの状況でどう対処すればいいか...
「どうやら標的以外にもネウロイは複数存在するな、小型機であるが状況も状況だ。松山曹長とクロフォード少尉はそいつらを始末しろ。私は奴を斬る!」
「待って、そしたらおそらく奴は少佐に集中攻撃する。通常の攻撃ならともかく...吹雪なんて向けられたら...!」
「っ...ならどうすれば。」
「少佐、銃が凍って...使えません!」
「ここまで過酷だとは...すまない、お前達はもう行け!」
「それって少佐が囮になるってことですか。」
「そうだ、私なら上手く奴らをまいて後で合流する。」
そんなこと、できるはずがない。見捨てるなんて、もう、出来る訳が無い。
「それはできません!」
「上官命令だ!」
「それでも...それでも仲間を見捨てるなんて絶対できません!もう、目の前の仲間を助けられないなんてしたくありません。」
「...わかった、ならば命令だ。この戦いを絶対に三人全員が生還する。」
「決まったみたいだね、それじゃあ...小型機だけでも倒すよ。」
「了解です!」
私達三人は小型ネウロイに対して攻撃を仕掛け,それらを各自着々と撃墜していく。撃墜し終えてホっとして気が抜けてしまったその直後だ。
「あとは奴だけか...。!?松山!下だ!」
「えっ...?」
その刹那、私が下を向くとそこには赤い閃光があった。反射的に私はシールドを使用するが、咄嗟の出来事であったため安定せず、墜落しそうになる。
「っ!陸上型もいたか...!」
「ヒロミ!掴まって!」
意識が朦朧とするなか、ジルさんの手をとると私は意識を失った。
目を覚ましたのは夜のことであり、辺りを見渡すとどうやら小屋の中らしい。
「目が覚めたか松山。」
「はい...それで、ここは?」
「あの後、陸上型をまいて逃げた先に小屋があってな。そこを使っている。照明は蝋燭ひとつではあるが我慢してくれ。」
「はい、それでここからどうしましょう。」
「一応隊長、戦闘隊長に連絡はしておいたよー...眠いから寝るよ。」
ジルさんはそう言うと寝床に就いた。私は眠っていたのもあって眠くならなかった。
「すまないな...私のせいでこうなってしまって。」
「そんな、そんなことないです。私だってしたくてしただけで、選んだのは自分ですから。」
「また、部下に迷惑をかけてしまったな...。」
「昔に何かあったんですか?」
「...まあ、いいか。お前になら話しても、昨日突然怒鳴ってしまったのもあるからな。」
すると、少佐は昔の事について語り始めた。
「私は扶桑陸軍で部隊の隊長をしていたことがあってな、扶桑海事変でその時にエースへと駆け上がり一時期は中佐だった。だが、苦戦を強いられる中戦い続け、たとえ軍の補給がまま成らなくても戦い続けたそんなある日だ。とうとう弾薬や物資が底を尽き始めた時、ネウロイの大群が襲撃してきた。私たちは怯む事なく戦い続けた、だが正直全員満身創痍であった...もっと部下を思いやってやるべきだったのかもしれない。余裕が無いから、なんてものは理由にならないのかもな。弾薬が尽き、その隙にネウロイに殺された者、ストライカーや銃に不備が生じて事故死した者...結局部隊で残ったのは私一人であった。」
「そんな...。」
「そして、全ての責任は私に押し付けられた。上層部は保身のために護衛のウィッチのために資材をちょろまかし、前線には一部のみ、または全く送らなかったなんてこともしていたそうだ。発覚したのは後々なのだがな。そして現場指揮に不備があったとされ、階級は大幅に下げられ、家からも破門され...そして今に至るという訳だ。」
「そんな...あんまりです。少佐は何も悪くないです!」
「そう言ってもらえるとありがたいのだがな...だが、この部隊はそういうぞんざいな扱いを受けた被害者が多い。いわば、捨て駒というところか...。」
「じゃあ、絶対全員で生き残って見返してやりましょうよ!」
「ふっ...面白い奴だな。わかった、もう寝て明日に備えろ。作戦はそこで立て直す。」