僕と優子と短編集   作:鱸のポワレ

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前後編に分かれています。前編は即興小説チャレンジみたいなので書きました。お題は、私の腕時計……。難しかったですね。


川とお家と吉井君 前編

アタシ、木下優子はその場に立ち尽くし、絶望するしかなかった。なぜこうなってしまったのか、遡ること10分前だ。

アタシは、BL本の新刊を買いに町の図書館へと向かっている途中に、橋を眺めている吉井君を見かけた。アタシの気になる相手というか好きな人だった。アタシは、橋の方へ駆け出して行った。

 

「おーい、吉井君ー」

「木下さん!?」

 

吉井君が驚いた顔をしてこっちを向いた。正直、休日に吉井君と会えるなんて、凄くテンションが上がる。

 

「橋の上で何してたの?」

「ああ、ちょっと川に食材がないか探してたんだ」

「え?」

 

確かにこの橋の下に川は流れているが、食材とは意味がわからない。

 

「どういうこと?」

「ほら、川に魚がいたら取って食べれるでしょ」

「スーパーで買えばいいじゃない」

 

アタシの言葉に対して吉井君は真顔で答える。

 

「ほら、スーパーってお金とるじゃん」

「え!?つまり、お金がないから川で取ろうとしてたの?」

「そういうこと」

 

吉井君は、親指をグッと立てる。

つまりこれは、自然な流れで家でご飯を食べるお誘いが出来るということでは?

吉井君とご飯……想像するだけで興奮してしまう。って、何妄想してるのよアタシ。

変な妄想をかき消すために、両腕を大きく振り出す。うーむ、我ながらヤバイ行動だ。

しかし、ヤバイ行動だけで済んだなら良かったのかもしれない。

ポチャン。

腕を振った拍子に付けていた腕時計が宙をまってしまった。

アタシの時計は、見事に川へダイビングした。

 

「そんな……」

「待って木下さん。諦めるのはまだ早いよ」

「え?」

「ほら、よく見てよ」

 

吉井君が指した方向を見ると、時計は小さな岩に引っかかっていて、まだ流されてはいなかった。

 

「ちょっと待っててね」

「ちょっと吉井君!?」

 

吉井君は橋を渡り、川の方に降りて行ってしまった。

 

「何してるの?」

「もちろん時計を取るのさ」

 

吉井君は形振りかまわず川の中に飛び込んで行った。

 

「時計なんてもういいから。それより吉井君が風邪ひいちゃうでしょ」

「ほら、バカは風邪ひかないって言うでしょ」

「そういう問題じゃないわ」

「でも、もう少しで……」

 

吉井君が腕を伸ばすが、あと少しのところで川に流されそうになってしまう。

 

「うわあぁ!」

「吉井君!!」

 

アタシも形振り構わず川に飛び込む。アタシのせいで吉井君に何かあったらアタシは……。

 

「捕まって吉井君」

「うん、ありがとう」

 

吉井君を引っ張り川から引き上げる。よくよく考えたら、吉井君と手を繋いでしまった。恥ずかしい……。

 

「もう、無茶しちゃダメでしょ」

「ごめんなさい」

「でも、ありがと」

「え!?」

 

よっぽど驚いたのか、キョトンとした顔をしていた。

 

「服濡れちゃったわね。お礼もしたいし、アタシの家にこない?」

「そんなの悪いよ」

「ご飯作ってあげるわよ。どうする?」

「行かせていただきます」

「よろしい。じゃあ行きましょ」

 

アタシ達は、家に向かって行った。




七日後に後編出します。後編もよろしくお願いします。
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