残念。書くつもりはあったんだなこれが。
……とか言いながら違和感。
やっぱり書きかけを放置するもんじゃ無いな……。
しかも若干スタイル変わってるし……。
これはちょこちょこ改稿かな?
マジで待っていた方にはホント済まんかったと此処にお詫びを述べまする。
イギリスの見所は? と聞かれて真っ先に思いつく場所が幾つかある。
一つは
一つは湖水地方。あの『ピーターラビット』の作者、ビアトリクス・ポターが愛し、住んでいた街にしてイングランド屈指の保養地。
そしてやはり、というべきか。英国の観光地として外せないのが世界最大の博物館として800万点に及ぶ古今東西の芸術、美術品を収蔵する博物館──。
「大英博物館。実は『賢人議会』の連中が秘したマジものの神具を地下に秘め、興味を理由に幾度となくアレク先輩に侵入強盗を喰らい、現在は並の呪術者では侵入した瞬間、蒸発しかねない超セキュリティを誇る観光名称の一つにございます」
「……あの衛さん。その紹介の仕方はどうかと」
「だって事実だぜ? 実際、俺含む神殺しでも真っ正面からかかれば壊滅させるのに数十分を要する大結界だ。このレベルのセキュリティは俺が知る限り、他にはバチカンぐらいしか知らんぜマジで」
「それは……確かに凄まじいですね」
高位の魔術師や神獣さえ時として一瞬のうちに足蹴りする神殺したちを数十分に及び足止めする……彼らの力の程を考えれば、恐らく人類の英知を結集した大偉業と言えるだろう。『まつろわぬ神』の力に寄らず人の手による結界なのだから。
「ま、別に今回は襲撃しに来たわけでもなし。普通の来場者として楽しませて貰うさ。最も一日じゃあ周り切れないんだけどな」
「はい。まさか本当に一日かかっても見終われないとは……私はてっきり誇張かと思っていましたが」
「実際、一般公開しているのは数百万の収蔵品のうち15万点。数だけ見りゃあ少ないとなるが十万点以上を飾っているって時点で一日じゃ回れないさ。朝から今まで約半日、それでも見たのは半分以下だからな」
言って衛は肩を竦めた。
──まつろわぬバトラズの一件より数日経過したその日。衛と桜花は英国観光に乗り出していた。
衛としては日本に帰って夏の祭典に参加したかったところだが、思いの外バトラズ戦のダメージを引きずってしまったのと、桜花とのデートの約束を守るのとで予定より英国滞在は超過している。
……まあ、取り立てて不安があるわけでもなし、こうして桜花自身楽しんでくれているようなのでこういった想定外も悪くはないだろう。
「──でも驚きました。大英博物館にこんなオシャレなカフェがあるなんて」
と、桜花が目の前に並ぶ乳白色の茶器と食器、その上に彩られる食事系のスナックやお菓子を見て言葉を漏らす。
時刻は現在正午。午前中の間に気になる美術品を一通り見終えた二人は大英博物館内にあるカフェ、グレート・コート・レストランにいた。
館内にある優雅な雰囲気のカフェ&レストランは休憩するにしても昼食を取るにしても十分以上の品揃えと
「此処でゆるりと紅茶飲みながら終わりってのも良いけどどうする? 一応、紅茶に関しては飲み放題だぜ、此処」
「ん、それも良いですけど。やっぱりせっかくですから館内をもう暫く巡ってみたいですね。お茶は日本でも出来ますけど美術品の見学は此処だけですから」
「了解。湖水地方でピクニックは無理だった分、ここらで挽回させて貰うさ」
「あはは……ものの見事に吹き飛ばしてしまいましたからね。湖水地方の景観を」
「アレク先輩に言われるのはムカつくが……それはそれとしてやっちまったからなァ。一応、アルマティア……俺の権能で大地を活性化させておいたから再建にかかるのは一年ほどで済むと見るが──」
「逆に言うと一年は台無しのままって事ですからね……推定数十数億でしたっけ? 経済的なダメージは」
「はっはっは、その辺は知らん」
そう、現在二人が場所を大英博物館にして、過ごしている理由はそれに尽きた。多大な落雷、場所の気温にすら影響する高温、木々すらなぎ倒す嵐……これらに晒された湖水地方はそれはそれは見るも無惨と言った様になっていた。
英国のテレビ放送は愚か新聞、インターネットと『湖水地方に大災害が!』として大々的に報道しているし、国民は憤りと悲しみに明け暮れているとか。
いざ被害と声を目の当たりにすると身内以外には無関心な衛をして多少、良心が痛むところもあるが、そこはそれ、魔王のお約束と言うことで内心詫び入れるだけで済ませていた。
「それよりどうだった? 初の英国博物館は。中々、見所有るだろ?」
「はい! 博物館と言いますから日本のそれをもっと広くした感じと思っていたんですけど石像とか彫像とか見上げるほどの展示物もいっぱいあってビックリしましたよ! 特に私的にはモアイ像が置いてあったのが驚きです!」
「だろだろ? いやあ日本の博物館と言えば俺も上野の美術、博物館とかそこそこ見て回っているつもりだったけど初めて来た時は規模の違いに驚いた。やっぱりこの手のものに力入れてるのは西洋ならではというべきか」
「後は日本の展示室ですね。先ほどパンフレットを見させて貰いましたけど話に聞く葛飾北斎の富嶽三十六景はともかく、まさか日本の和室まで再現されているなんて」
「西洋から見たら結構面白い文化だろうからな。午後はそっちを回ってみるか?」
「是非に。外から見た日本の有様というものを見るのも面白そうですし」
盛り上がる二人。桜花はともかく普段はゲームだオタクだ言っている衛も珍しくテンションが高いようだった。
大英博物館に関する知識や幾らか展示物に関する解説を桜花に披露するという辺り、此処に訪れるのは一度や二度じゃないのだろう。伊達にロマンを口にしてはいないということか。
周囲へ配慮しながら煩くならない程度に団欒しながら、ふと、衛が紅茶で口元を濡らしながら思い出したように問うた。
「でもいいのか? 確かに此処は俺的にはぜんぜん楽しいが、ただ観覧するだけで? せっかくだから買い物して回ったり、他に良いところのレストランで食事しても構わなかったんだが……」
確かに大英博物館は魅力的だ。衛をして恐らく一日見て回っても全然飽きないし、何だったら何度か訪れても構わない。というか、実際に訪れている。
しかし、せっかくのデートだというのだから女子的にはショッピングやらもっと格の高いレストランやらの方が良いのでは無いかと思う。
衛としてはそれでも一向に構わないし、金銭的にも全く問題ない。ならば半分自分の趣味のような大英博物館巡りのみというのもどうかと聞く。
だが、そんな衛の考えに桜花は少し心外そうな顔をして。
「衛さんは楽しくないんですか?」
「いや、俺は十分以上に楽しいが……」
「なら全然問題は無いですね。確かに衛さんの言うようにショッピングや高級レストランにも興味はありますが、それは日本でも出来ることですし、恥ずかしながら私はオシャレや食事等、他の女性方々程、詳しくありません。……この服も馨さんに選んで貰ったものですしね」
軽く爪先まで見下ろすようにして自分の身なりを確認しながら苦笑する桜花。修験者として衛とともに在ることを選ぶまでは九州の山奥で同性代とは遙か異なる生活を送ってきた桜花にとって一般論は難しかった。
「だから正直な話、ショッピングやらは余り魅力的とは思えません。こうして現地での観光名所を巡る方が断然楽しいですよ」
「そうか……」
そういって微笑みかける桜花の顔に嘘は無かった。
自分の心ばかりは杞憂だったかと再び紅茶に口をつける。
「それに……デートですから。衛さんと一緒なら何処であろうと楽しいですよ?」
「……コフッ!」
だが、続けて飛んできた言葉に思わずむせた。
「ゲホッ、ゴホッ……お前、お前なあ、不意打ち気味にそういうこと言わんで良い……」
「? 何がですか?」
「……ああ、無自覚ですか。全く性質が悪い……」
「えっと……」
「お前は美人で可愛い彼女だって事だよ畜生め」
「あ、あのっ! なんで頭を撫で……嫌じゃ、ないですけど……」
テーブル席から乗り出して何故か悔しげな表情で桜花の頭を撫でる衛に、顔を真っ赤にしながら成されるがままになる桜花。テーブルマナーとしてどうかと思うが、若い女性店員はニマニマと見守るのみで周囲の客も我関せずとクールな知らんぷり。
一部……重い男性諸君から殺気が飛んだ気もするが気のせいだろう。英国人は紳士なのだから。
「ともあれ、楽しんで貰っているなら何より。英国には何かと縁があるしオズやアレク先輩、アリス嬢の国だからな。好意を持ってくれて良かった」
「そうですね……外国旅行は初めてですけど楽しいです」
一口サイズのケーキを口に含んで紅茶の相方として程よい甘さに桜花は満足するように頷く。そしてそれを飲み込みながら衛に訪ねた。
「そういえば衛さんは世界中にご友人がいるんですよね? 日本の連さんらとそれから此処、英国のオズワルドさん……他にどういった方々がいるんですか?」
「ああ──そういえば桜花はうちの面子と余り面識無かったっけ?」
「はい、一応、私は『正史編纂委員会』に身を置いていますからね。それに言ったようにこれが初めての海外旅行ですから、流石に衛さんの国外の交友は知らないんです……電話越しなら幾人かとも話したことがあるのですが……」
「リリーと雪か。雪はともかくリリーはぶっちゃけ、友人とはちょっと呼びたくねぇな」
脳裏に特殊性癖持ちのフランス人を思い浮かべて苦虫を噛みつぶしたような顔をする衛。オタクとして、変わり者の一人として、別に付き合うのは全くもって問題ないが共感するのは別問題だ。奴のデバガメ振りと性格的に素直に友人やら知り合いと口にするのは憚れる。
「そうだな……一応、俺とよく連む面子は、お前とも面識ある連と雪とオズ……後はエジプトの魔術師であるサルマンとシャルル。他には……親友のテオの奴か」
「親友……ですか?」
その言葉に思わず桜花は目を見開いた。
『親友』などと取り分け親しげな単語を選ぶ相手が居ることと、親身には余り人を近づけない衛の性格とを思い出して、意外であると桜花は知らず瞠目する。
「ああ、我ながら似合わない言葉だろ? でもうちのサークル結成の一因であり、そもそも俺が神殺しになったきっかけだからなアイツは……ほらどっかで言わなかったか奴の出身地について」
「そういえば──確かオズワルドさんのお店で……」
記憶の片隅に引っかかるものを思い出して桜花は口に指を当てて思索する。
……そうだ、店で『女神の腕』の話題が出た時に。
「──クレタ島」
「そうだ。アイツはギリシャのクレタ島の出身でな。そもそも俺があそこに行ったのはテオ……テオドールの奴に会いに行くためだった。そしたら丁度、ゼウスの……あの糞野郎と『彼女』とのゴタゴタに巻き込まれたんだよ」
──そして
と何処か哀しげに言い切った衛に桜花は……。
「衛さん……?」
「ま、それについては機会があったらな。……ああ、そういえば思い出したぞ。お前に伝えなきゃいけないことがあった」
何か訪ねようとした桜花の先を取るように衛は不自然な話題変換を取る。
それについて指摘することも出来たが。
「……えっとなんでしょう?」
敢えて桜花は乗った。
何となく、この話は衛の口から聞くべきものだと思ったから。
無理な追求は選べなかったのだ。
或いはその心配りを察したのか衛は苦々しく感謝するように頷いた後、顔を真剣して別の話題に取りかかる。
「お前の、いや俺の第四権能についての話だ」
「続けてください」
衛が保有する権能、第四番目《
「アレク先輩に聞いてる。お前、あの戦いの後、倒れたんだってな」
「ええ……恐らくは……」
「俺の権能の反動、だろ? 知ってるし、アレク先輩と話して考察もした。そのうえで話すべきだと思ったからお前にも教えておく」
そういって真剣な表情のまま桜花と向き合う衛。
その態度に桜花もまた背筋を伸ばして衛の言葉に聞き入った。
「端的に言うと──あれは《従属神》、まつろわぬ神の同盟神として時に召喚される存在。俺の権能とお前との関係はそれに近いものであると結論した」
「《従属神》との関係性に、ですか」
《従属神》。それは縁のある別の神に従う神格のことだ。
『まつろわぬ神』の特性としての一つに『自我の強さによって強さが比例する』という仮説がある。
これは『まつろわぬ神』が知名度による強弱の変化を持たないことに起因する推測だ。そしてその『まつろわぬ神』が時として召喚し、自らに力を貸す同盟神として現れるのが《従属神》、『まつろわぬ神』に縁を持つ神格にして彼らを支援する存在だ。
先ほど挙げた『自我の強さによって強さが比例する』論から言って、《従属神》は『まつろわぬ神』ほどの力を持たない。
自ら、或いは世界との縁で召喚され、覚醒する『まつろわぬ神』と異なり、『まつろわぬ神』によって召喚される彼らは『まつろわぬ神』ほどの自我を持たず、必然としてその強さも『まつろわぬ神』には及ばない。
しかしだからといって弱いわけではない。仮にも神格、無論のこと人間や神獣など相手にはならないし、『まつろわぬ神』に従属する故にその力も脅威も全くもって侮れない──衛の第四権能はこの『まつろわぬ神』と《従属神》の関係に類似していると衛は口にした。
「まあこっち風に当てはめるなら半神殺し化とでもいえば良いのか……第四権能発動中のお前には神を殺して退けた『獣』性質。それが貸し出されている状態になっている。まだ仮説の段階だが的外れとも思っていない。詰まるところ、第四権能は……」
「『自身と同質の存在、片割れとして相方を昇華する』」
「──そう見て間違いないだろうよ。俺がお前の剣術を模倣できたように」
相方のダメージによってもう一方を強化する……どころの話ではない。そうだとするならば衛の第四権能とは即ち『もう一人の神殺しを召喚する』に等しい、過去類を見ない性質と越権を持っている。
ならばこそ考慮しなくてはならないのが
「お前が気を失ったのは多分それに起因する。何せ、人の身から一時的にとはいえ神殺しの位階まで強化するんだ……それも俺自身に同調させて格を上げているだろうから、接触のたびお前は俺に親しく等しい魂として昇華する……何か心当たりは無いか?」
「……あ」
衛の言葉に桜花は思い当たる縁があった。そう、もはや疑うべくもない、恐らく気を失った時に垣間見た『彼』と『彼女』の夢。輝ける黄金のような誰かの思い出の持ち主とは……。
「……桜花にも思い当たる点があるようだな」
「あ、いえ、それは……」
「いや、いい。重要なのはこのことだ──桜花、正直に言う。俺はお前を今後戦いに連れて行きたくない」
「────……」
衛の包み隠さない言葉に、桜花は無言だった。
しかし、先を促すように、その真剣な視線が訴えている。
だから衛は続けた。
「神殺しとして俺も『まつろわぬ神』との戦いは紙一重だ。必ずしも勝てるって訳じゃないしいつ死んでも可笑しくない。だからそもそも殺し合いの舞台にお前を連れて行きたくないというのも勿論あるが……まあ相棒だからな。その一点に関してはお前の決意を聞いているし、とやかく言うつもりは無かった」
実際、桜花に助けられた場面は幾らでもあった。彼女自身、その技量は並から逸脱しているし、自分の隣を歩んでくれる相棒として心の底から信頼している。
だが、今回に関しては全く別の問題だ。
「でも第四権能の話は別だ。アレは使うたびにお前を人間から遠ざける。限りなく、俺と同じ性質……神殺しの獣へと近づけていく。無論、お前は一から神を殺したわけではないから、神殺しに匹敵する存在が精々で、『神殺し』になるわけじゃない。だが、それでもお前の存在が、魂が、高位の魔術師や神獣以上……まかり間違って神を殺しかねない存在として逸脱するのは間違いない」
それは魂の変革。このまま第四権能を使い続ければ、十中八九彼女は平和とは、普通の人間とは遙か逸脱した人生を送ることになる。殺し殺される、獣の性。神殺しと『まつろわぬ神』による命尽きるまでの闘争の人生を。
共に戦うなどと生易しい決意では足らない。それこそ人生を
衛にとって桜花は相棒であり恋人だ。だからこそ対等の存在として共に征く覚悟ならばあった、しかし……。
「俺は神殺しだ。必要に迫られれば第四権能だって平気で使う。それこそデメリットなんて考慮せずに勝つための手段としてな。であれば必然、桜花はそのたびに人で無くなっていく。俺に近くなっていく」
そうして、そのたびに桜花は逸脱していくだろう。
剣術は人類最高クラスに、能力は権能に、そして勝利への貪欲さは獣へと。
人では無く神殺しの尖兵として。愛おしくも恐ろしく、変革する。
「お前には人並みに優しい人生を送る権利がある。何も俺と共に戦うことだけが共に征くことじゃないだろう」
人を逸脱する。その全能感と恐ろしさを衛は誰よりも知っている。
弱き者の盾として、弱者と共に歩く……。
それこそが極東に聳える城壁の質であるが故に。
己と同じになるという代償の重さを弁えている。
「でもこれは俺の思いで、俺の考えだ。実行するのは俺だが……力を得て手を貸すのは桜花だ。そしてお前は俺の相棒であり、恋人だ。だから……決定権はお前に託す。
“俺と共に
お前には選ぶ権利があると衛は言った。
どちらを選んでも構わないと。
運命の分岐点──桜花はそれを実感した。
衛のいう通り、このまま戦場に同伴すればまず間違いなく自分は人間では無くなるだろう。衛と同じ神殺しに、それに等しい存在として昇華する。
それは間違いなく彼の力になれる存在としての祝福であるが、同時に地獄へ落ちる片道切符だ。人としての今までの人生、それを投げ捨てる行為だ。
神々との戦の日々。それは決して生易しいものではない。
大けがで済めば上々。時として激突の果て神殺しでさえ、衛でさえ、死ぬかも知れないのだ。……少し前、ヴォバンと激突の果て、一時は敗走した衛の姿を覚えている。あの時、彼が死んだかも知れないという絶望を覚えている。
……これから先、そういう戦いが死ぬその日まで待っている。苦戦苦難など序の口も序の口、本当に怖いのはそれが死ぬ瞬間まで続くことだ。
また、人から逸脱すれば人並みの人生ですら危うい。早く死ぬリスクに加えて、神殺しならではの長寿もまた桜花に少なからず影響してくるだろう。
百年、二百年──かのヴォバンや中国の羅翠蓮のような魔人に匹敵する寿命と力は、人としての友に、家族に置いて逝かれる定めを持つ。
それは幸せと言うには余りにも過酷な人生。情け容赦ない戦いの道中。
ならばこそ、立ち戻るチャンスはもう此処しかあるまい。
別段、人を止めなければ衛に随伴できないわけでもなし。
人界の盾としてある王冠は、役目を果たすべく背に背負った弱者らを伴ってその王道を歩み続けるだろう。いつか砕け敗れるその日まで。
──ふと、いつか見た背中を思い出す。
絶望に立ち向かう、黄雷の背中。
お前たちの好きにはさせないと名も知らぬ誰かを助けんとする背中。
神さえも撃滅する守護者の誓い。
私が焦がれたのは希望と呼ぶべきその背中で。
私が焦がれたのは希望という名の在り方で。
私は……たった一人、傷つく貴方を支えたくて……。
──嗚呼、何だ。答えなんて、とうの昔に決まっていたんだ。
誰かを護るため無言のままに傷つく貴方を支えたい。
ならば原初の誓いに揺るぎなく、決意に微塵の躊躇いもない。
背中に随伴するでも、ともに歩むでもない。
私は貴方と
「愚問です、我が王よ。この身は常に御身と共にあると決めましたから。貴方がいつか斃れるその瞬間まで、何処までも何処までも、お付き合いいたします。私は貴方が大好きですから、衛さん」
言葉にすれば簡単な結論だ。
愛する人と一緒に在りたい、なんてこと無い有り触れた結論。
それが余りにも見惚れるほどに儚く美しかったから衛は呆然として……。
「はは、ははは………く、あはははは──全く、ああ、ホント俺の負けだわ。くくく……だったら尚のこと気合い入れて事に当たらなきゃならねえな」
嗚呼全く、惚れたは弱みとはよく言ったもの!
事前にしていた置いていく覚悟すらこの通り粉みじんだ。
どうやら自分はとうの昔に墓場行きまっしぐらだったらしい!
「オーケー、オーケー。もう逃げないし揺らがない。こうなった責任はいつか、くたばるその日まで取らせていただきますとも。改めて──これからも宜しくな桜花」
「はい──衛さん」
気恥ずかしくも共に正面から顔を合わせて笑い合う。
全く、本当にいい女だな俺の彼女はと嗚呼、どうやら自分の大概毒されてきた等々。
『いつか貴方にも、歩幅を合わせて、愛し愛される人が出来ることを願っています。誰かが自分の隣にいる。それは当たり前に幸せなことですから』
「母は強しか──貴方の言葉、ようやく分かってきましたよ。ああ、俺もようやく腹を括れた。貴方の力に相応しい何者かであれと……そう在りたいと素直に思える」
母なる城塞。守護の盾。
軽やかなる豊穣の化身にして、神々の育て親よ。
ゼウスをも育てた偉大なる母神よ。
この数奇なる第二の人生を歩ませるきっかけとして感謝を。
いざ────護って見せようとも大切な全てを。
黄雷の輝きを以て、あらゆる絶望を凌駕すると。
猛り狂う決意を胸に仕舞いながら、今は平穏な日常に愛しい相方の手を取った。
「さてと、休憩もそろそろに博物館見学後半編といこうか」
「はい……では何から見ましょうか?」
「桜花が見たいっていう日本様式はこの階の奥だから……そこに向かうがてら見学して回ろう。特にこの階での見所はウルの時代のゲーム盤が────」
この先にもずっと待ち受ける激闘。
つかの間それを忘れるように二人は恋人同士の逢瀬を楽しむのであった。
これが今の私の精一杯だ(恋愛描写)。
アレですね。書いててダメージが入りますね作者に。
こうなんだろう、その場のテンションに任せて書き切った感ががが。
これはもうハッピーエンドしかあり得ないな(鋼の決意)。
そしてこれを気に更新していけたら良いなぁ(願望)
エタ作者を信頼してはならないのだ(戒め)