皆様は楽しいクリスマスをどうお過ごしでしたでしょうか。
私は遂に任天堂Switchとポケモン両タイトルを購入いたしました。
遅ばせながら私もトレーナーとして新作ポケモンを堪能することに致します。
時に皆様。クリスマスとは聖なる日であると言うことをご存じでしょうか。
外国ではイエス・キリストの誕生日として家で祝いの
間違っても『恋人の日』だとか『性なる夜』とか、開祖と教徒たちに不敬極まりない日本のケーキ会社の陰謀によって確立されたクソ巫山戯たイベント、ないし騒ぎを行う日で無いことを、私の拙作であるカンピオーネ!SS……神話・宗教に携わる作品を読んでくださっている皆様ならば重々ご承知の上と信じた上で此処に書かせて戴きます。
………怒りの日、終末の時! リア充共は灰塵とッ!!!(ry
成田空港より二時間と少し、九州は熊本空港こと阿蘇くまもと空港に衛と桜花が到着したのは正午過ぎの事であった。
衛は同じ体勢で固まった身体を解すように伸びをしつつ口を開く。
「ん……っと、着いた着いた」
「……なんというかまだ一年ぐらいなのに懐かしい気分ですね」
「あぁ、今年は色々と濃かったからなァ……俺も神殺しになってからは忙しい生活ばっかりだが、年始めには日本二人目の神殺し誕生、そこから女神との対決、クソジジィ来訪、英国旅行、後輩君とのゴタゴタが続いてたからな。神殺しになる前はこんなにしょっちゅ動き回って……回って……回っていたな、うん」
「あ、はは……」
そもそも神殺しになる以前から諸外国に多くの知人を有し、本人もゲーム大会や友人との集まりと称してアジア圏、ヨーロッパ圏、果ては中東と放浪しまくっていたのだ。実の所、今年のように各地動き回るのはそう珍しい事ではない。
馴れすぎて本人は忘れていたが、今更ながらにそれを自覚する。
「でも、そうですね。衛さんが今までどういう風な生活を送ってきたのかが何となく分かったので楽しかったですよ? 外国旅行も初めてでしたが、日本国内にいるだけでは分からない現地の雰囲気が分かって良い体験でした」
「そりゃあ良かった。でもまだ一年は終わってないから気を抜かない方が良いぜ、俺も立場が立場だからな。また新たな騒乱に巻き込まれてもおかしくない」
「確かに、神殺しというものが如何にトラブルメーカーであることか。この一年でよく分かりましたから」
「……そこで俺を見るのはおかしいぞ、おい。少なくとも俺は他の連中ほど進んで騒ぎを起こすようなマネはしてないだろうが」
「でも他の人の騒ぎに関わるようなマネはしますよね? ガスコインさんの件しかり先月の恵那さんの件しかり」
「アレは向こうから勝手に飛んできたんだ。ノーカンだ、ノーカン」
そう言って口を尖らせて言う衛。
一年──桜花は過ごしきて分かったのだが、衛という神殺しは確かに自らが火種となって大騒ぎを起こすことは殆ど無い。少なくとも、他の神殺し達と比べれば、遙かに平和な平時を過ごしていると言って良いだろう。
しかし同時に彼はその交友の広さから様々な騒ぎの解決を要求される立場にある。先の英国旅行、賢人議会からの直接依頼などは最たるものだろう。
火種となることは少なくとも火種に飛び込まざるを得ないという機会は結構な頻度で起こりうるのだ。
なまじ他の神殺しと比べれば比較的まともという評価が逆に庇護者として周囲の頼りを買いすぎるのだ。
よってトラブルメーカーではないものの、トラブルを引き寄せる体質は他の神殺しと変わらなかった。
「別に批難しているわけじゃないですよ。困っている人を助けるのは人として当たり前の善意です。それを実践できる衛さんの良心を私は好ましいと思ってますし」
「さよけ。ま、過分な評価ありがとう、と言っておく」
微笑みかける桜花に言葉少なめに応じる衛。
……そこで視線を切ってそっぽを向く辺り、彼は分かりやすく純朴だった。
飾り気の無い好意や賞賛を受けることに衛は余り馴れていないのだ。
「さて、桜花の実家……高千穂町まではバスで二時間ぐらいか? こういう時、車が使えると便利なんだが、来年は免許取りに行くか……」
「そうですね、でも衛さん、免許取っても車が無いとあんまり使わないんじゃ?」
「あぁ、一族にカーマニアがいるからな。実家から適当に持ってくれば良いさ」
「……そういうのって、勝手に貰ってきて良いんですか?」
「いい。実家の蔵に保管されてる奴ならどうせ後生取っとくだけで殆ど使う機会もないだろうしな。叔父上殿に話しさえ通して置けば後はご自由にってね」
閉塚一族は財を貯める癖して使うことは殆ど無い。
そのため、京都にある実家……閉塚一族の本邸がある『蔵』には江戸時代初期から貯め込まれた財産が数多く死蔵されているのだ。
それら使わない財ならば一族の総財産として一族に名を並べる者ならば自由に使って良いものとされている。車も一般的な国産の私用自動車から外国のクラシックカー、スポーツカーと十台近く死蔵されていたはずだ。
「他にもヘリとか北海道方でプライベートジェットとかも管理してたっけ?」
「…………何というか、本当にお金持ちなんですね。衛さんの家は」
「稼ぐこと、貯めることが半ば生きがいで本能だからな。因みに俺の両親は芸術家と写真家だ。両方ともフランスやらアメリカではそこそこ名が通ってるらしいぜ?」
「らしいって……」
「小っさい頃から余り顔を合わせる機会がなかったからな、祖父母に至っては何をしているのか、そもそも生きているかどうかさえ知らんよ」
改めて聞くと凄まじい一族だと桜花は思った。
桜花自身、母方の血脈は古神道から転じた修験道一派と一般的な家とは画した一族の娘であるが、衛の家の希少性と異質さはそれを越えている。
家事情はどうあれ、家族には、血縁にはあって然るべき家族の情が完全に欠けているのだ。莫大な財産を保有していると、境遇こそ一見恵まれているものの、内情を見れば一概に羨ましいと言えるほど果たして幸せなのかどうか……。
「と、俺の家はともかく今は桜花の実家だ。……ふむ、こういうのって、一応スーツとか着た方が良いのか? 持ってきては居るんだが」
「すいません、私には何とも……でも身分はまだ学生ですし、そこまで畏まった衣装で無くとも大丈夫だと思います。少なくとも私の両親はそういうのを気にする性格じゃありませんしね」
「いやいや、娘に向ける顔とその彼氏に向ける顔じゃ全く別物だろう? こう言うのって。小さな立ち振る舞いやら服装やら口調やらマナーやらで親ってのは相手の格を測るもんじゃ無いのか? 不敬であるって殺されたりしない?」
「あの、衛さんは私の両親をどういう目で見てるんですか……」
「いや、正直想像も付かん。ラブコメとかギャルゲーとかだとあんまりその後って描かれないし、ネットの情報もあんまし当てにならんからなァ。檀の御老公や宗像の親父なら面識があるからイメージは出来るんだが」
衛の家系が特殊すぎる弊害が此処にあった。
家族の関係というものにイマイチ覚えがない衛はそもそも家族というものがどういったものであるかを伝聞でしか知らないのである。
ましてこれが挨拶ともなれば脳裏に過るのは『お前なんぞに娘はくれてやるか!』という物語的イメージしかない。一応、失礼にならないようにマナー的なものは一般常識として学んできてはいるものの、それ以上のアドリブは予想できない。
「難儀だな。神を殺すより難しいかも知れない」
「そんな大袈裟な……」
「大袈裟にもなる。俺自身が嫌われるのは全く持って問題ないが少なくとも交際だけは認めて貰えるぐらいにはならんと。宣言した手前格好付かないし、何より大切な相棒だからな桜花は。離れるつもりは毛頭無い」
「……そ、そうですか……離れるつもりは無い……ですか」
うーむ、と唸る衛の横で衛の無自覚な発言にやられる桜花。
秋の涼しい季節なのにパタパタと熱くなった頬を扇ぐ。
「──とりま当たって砕けてみるか。桜花、たかちほ号ってアッチだっけ?」
「え、あ、はい! こっちで合ってます」
結局、結論は出ないと結論づけた衛は問題を未来に丸投げし、桜花の実家へ向かうことを優先した。
手続きを済ませた後、二人は成田空港と比べれば遙かに小さいと熊本空港を歩く。高千穂町へと通じるバス停は二番だ。
雑談を交わしつつ、そこに向かって歩を進めていると。
「ん、何だ……?」
ふと、周囲の様子がおかしいことに衛は気づいた。
空港を出れば迎えの車やバスが止まる長い道路。
休日の土日だからか、長期休みでも無いのにそこそこ賑わっている。
だが、賑わいはともかく、心なしか周囲がザワついているのだ。
周囲を観察すれば迎えらしき車から降りている運転手や衛らと同じく到着したてらしい人々が大荷物片手に好奇の視線を送っている。
彼らの視線の先、そこには何者かの来訪者を待つだろう黒いリムジンが熊本空港出入口に数台、綺麗に並んで停車している……。
「……有名人でも来てるのか?」
「さあ……? でも何か物々しいですね」
リムジンの周辺に立ち並ぶ黒服たちを見て桜花もまた衛と同じく怪訝そうに眉を顰める。普段、詳しくニュースを視聴しているわけではないので断言は出来ないが、少なくとも最近、熊本を外国の貴人が訪れる……などという話は聞いていない。
それに黒服も恐らく護衛なのには違いないが、警察や警備と比べて明らかに毛色が違う。
どちらかと言えば堅気じゃ無い職種、マフィアとかヤクザとかのそれに近いような……。
「って、おい。雪に、吼える龍の紋様だと……?」
衛は思わず声をあげる。
黒服の胸元、そこに縫われた紋様には見覚えがあった。
胸ポケットに縫われるのは白い生地に合わせた雪の結晶の数々。縫った人間の仕事が良いのか、結晶のデザインは一つ一つは小さいのにくっきりと分かる。さらにはその雪景色をイメージだろう意匠の中に吼える龍の姿。
西洋の翼ある龍では無く、アジア圏のイメージを採用しているらしく、鹿の角や蛇の身体と東洋的だった。
その紋様、衛の記憶が正しければ『ある組織』が掲げる旗印のはず。
ということはつまり。
「──お久しぶりですね、堕落の君。最後に会った新年の集まり以来ですか」
「何で日本に居るんですか、雪さん」
『
中華系マフィアを取り纏める女当主にして武の達人。
サークル『女神の腕』に列席する幹部の一人が何故かそこに居た。
☆
熊本県道28号こと熊本高森線を進む六台のリムジン。
前後を挟む車の運転手はギョッと瞠目し、偶々居合わせた覆面パトカーは明らかに異常な一行を前に、警察本部へ連絡を取りながら追跡をする。
そんな注目に注目を集める当のリムジン群の一つに衛と桜花は乗車していた。
「……あのさ雪さん。これ、すっげぇ目立ってるんですけど」
「その様ですね。はて……? 表だって私の出立がバレぬよう、極力隠密を心がけるようにしていたのですが、やはり外国人の集団は珍しいと言うことでしょうか? 空港でも意図せずかなりの衆目を集めてしまいましたし」
「いや、まず原因がそこじゃないことに気づこうぜ……」
見当違いな点に注目する目前の妙齢女性に、衛は頭が痛いとばかりに虚空を仰ぐ。
少しばかり天然が入っているのは知っているが、日本でもこの調子とは。
「ていうか風さんは? 何で側近のあの人が居ないんですか……」
「風は置いてきました。仮にもこの私が不在しているとなると不届きな輩が現れかねませんからね。私たちの本拠地で今も色々と工作中ですよ」
「あぁ、なるほど。あの人が居ないからブレーキが効かないのね」
「はい?」
「いや、コッチのこと」
彼女に口出しできる常識人枠の不在。
どうやらそれが彼女が此処まで常識を無視している理由だったらしい。
会話に参加する事無く黙々と運転を続ける黒服に視線を送ると視線を送った先の黒服が諦めたように首を左右に振る。
……流石に当主相手に下が意見の具申は出来ないらしい。
特に武闘派である彼らの組織においては尚のこと。
「衛さん、衛さん」
「ん?」
「この方々は一体? 話は後でと言って取りあえず、リムジンに乗せられてしまいましたが、そろそろご説明をお願いします。話を聞くに知己の方であるそうですが」
我慢できなくなったのか桜花は衛の袖をちょいちょいと引いて問うた。
目前には一人の女性──その容姿は美人の一言に尽きた。
女性としてはスレンダーながらも女性らしい肢体を雪をイメージした白と水色のチャイナドレスで包んでいる。
ドレスと同色の雪のように真っ白な長髪を後頭部で纏め上げ、透徹とした深い輝きが印象的な青い瞳は、見る者に夜の静けさにも似た鉱物的な美しさを与える──。
月下美人という言葉が脳裏を過るほどに美しい妙齢の女性であった。
どこか浮世離れしたこの人物、数多の黒服に囲まれていた妙齢の女性と衛との関係性が桜花は全く思いつかないのだ。
「あー、この人はな……」
桜花が思うだろう当然の疑問に衛は頭を掻きながら困ったように口を開くが、すっと先方の女性が手を翳し、自らが説明すると合図を送る。
「堕落の君、ここは私が」
「ん、分かった」
「では……こうして会うのは初めてですね桜花さん。僭越ながらも『堕落王』旗下、『女神の腕』に列席する幹部が一人、張雪鈴と申します。王が伴侶である女王の君にあられましては今後ともどうか、よしなに」
広げた手に拳を打ちながら礼を取る雪鈴。
武人か、貴人のように礼を払った挨拶は英国で出会ったアリスとも違った緊張を桜花に与え、自ずと背筋が伸びてしまう。
「こちらこそ……その、姫凪桜花です。よろしくお願いします」
戸惑うように応じる桜花。
それに対して何処か臣下の礼じみた調子で頭を下げる雪鈴。
傍から見ても明らかに堅い二人に衛は呆れたように声を掛ける。
「雪さん、そんなに畏まっちゃあ桜花も逆に緊張するだろ。それに別に俺は知っての通りだし桜花も礼節を重んじるわけじゃ無いからな、いつも通りで良いと思うぜ?」
「そうなのですか?」
不思議そうな顔をする雪鈴。
……恐らくだが、『女神の腕』の定期報告会で桜花が剣術の達人と言うことからガッチガチの武家をイメージしていたのだろう。向こう流とはいえ、礼節を重んじる辺り特に。
「てか、そうだ蓮。何で雪さんが来るってのに何の連絡も無かったんだ?」
「ふむ? 蓮には予め王に伝えておくよう言っておいたはずですが……」
「なに……?」
雪鈴と衛は揃って首を傾げる。
蓮はアレでホウレンソウはキッチリした性格をしている。
故に事前に連絡があれば間違いなく衛に伝えるはずだ。
「いや、待て……携帯。そういえば飛行機では電源落としてたな」
もしかして、と衛は携帯端末を取り出し電源を入れる。
──十時三十四分、メールあり……。
「ああ、すまない雪さん。見逃してたのは俺みたいだ」
「そうでしたか、いえ、私ももう少し早くご連絡を入れておけば良かったですね」
どうやら飛行機に搭乗した後に連絡があったらしい。
互いに不手際を謝りながら衛と雪鈴は早速、本題へと移った。
「で──雪さん、何で貴女が九州に居るんだ? 中国から貴女が態々、外に出てくること自体珍しいのに、まさか日本まで来るなんて」
雪鈴は『雪華会』……中華系マフィアの首魁であり、中国に根差すヤクザの人間である。
曰く、二十世紀に猛威を振るった『青幇』の三頭領が一人、張嘯林の末裔とまことしやかに囁かれる血脈で彼の後を引き継ぐようにして日本、中国間の裏ルートを独占する一大組織として今日に至ったという。
血脈うんぬんは噂程度でしか無いが、実際に彼女の組織が持つ力は強く、構成員の多くはバリバリの武闘派。
雪鈴自身もまた武術の達人として八極拳を修めており、その腕では中華でも一、二を争う。
香港系の堅気じゃ無い家柄に生まれた新参気鋭の武術家を一方的に叩きのめしたこともあるとか。
そんな彼女だが、普段は暗闘絶えない中華の地から動くことは無い。
彼女の組織に勝てないと見込んだ他のマフィア達が政治的な力を用いてあの手この手で噛みついてくるからであり、それ故、彼女は早々に自らの巣穴を不在にするわけにはいかないのである。
だからこそ、彼女がこうして日本に居ること事態、異常事態であった。
相当な事態でも無い限り彼女が巣を空けるわけが無いがゆえに。
「先日の事です。陸家に当てていた監視員からの報告がありました。陸鷹化に動きあり、と」
「陸鷹化?」
猛禽を思わせる鋭い目つきで警戒を促す雪鈴。
だが、当の衛は聞き覚えの無いその名に小首を傾げるのみ。
陸家──話からして恐らくは雪鈴の同業社であるのだろうが……。
と、イマイチ反応が悪い衛とは対照的に意外な人物がその名に反応する。
「陸鷹化というと……まさか、羅濠教主の直弟子、陸鷹化ですか!?」
「羅濠だと……?」
驚愕を口にする桜花。
衛の方も今度は聞き覚えのある名にスッと目を細める。
羅濠教主。その名が思うとおりの者ならば、中華の地に根差す衛と同じ神殺しであり、かのヴォバン侯爵に並び恐れられる三桁の時代を魔王として君臨する古参の王である。
「ええ、掌底絶大などと称されるあの口の悪い小僧です。あの小僧自体は生意気なだけの取るに足らない男ですが、その師……羅濠教主は話が別だ。特に今回は小僧が山から下り、態々、家の力を使っていますからね。十中八九、教主の方に動きがあったのでしょう」
「クソジジィと同じ世代の魔王が動くか……全く良い予感がしないな」
「ですね……それで雪鈴さん? その陸鷹化は一体どちらに? 貴女が此処に居ると言うことはまさか……」
「雪で結構ですよ桜花さん。皆、私をそう呼びますから、そして問いには貴女の想像の通りに、と。念のため、日本の監視網を強めていれば補足できました。関東に、陸鷹化の姿ありと」
「ということは噂の羅濠教主の用事は
「そちらは何とも。普段は廬山に坐しているとの事からそちらの監視の目を強めたのですが、強めた先から連絡が途絶えたため何とも。そうで無くとも羅濠教主といえば、武林の間では神殺しの名を置いても高名な方あり、武術、呪術両面においても卓越した御仁ですから。補足するだけでも困難かと」
「そうか……」
衛たちの世代──いわゆる近年において神殺しとなった世代は『新世代』と呼ばれるが、今より百年前以上に神殺しを成した者は『旧世代』と呼ばれる。
そして件の羅濠教主は、旧世代の神殺しであり、あのヴォバン侯爵とも幾度か矛を交えたという。
彼女のことは見聞でしか衛は知らないが、毛嫌いしているとはいえ、ヴォバン侯爵が神殺しとして卓越した存在であることは十二分に心得ている。
奴と矛を交えながら未だ現存し、君臨しているその強さ。
どのような状況であれ、勝機を見いだすのが神殺しであり、強さに格を付けることに意味は無いと承知しているが、神殺しの中でも羅濠の強さはヴォバン侯爵に並び群を抜いていると言えるのでは無いだろうか。
「そんな女が一体日本に何の様なんだか……」
「さて、それは流石に分かりかねます。何分、私の目は呪術方面では疎いですからね。もしかしたら私よりも正史編纂委員会や賢人議会の方が何か知っているかもしれません。蓮も洗ってみると仰っていましたし」
「成る程ね……」
雪鈴は確かに仕事柄、その筋の話題にはかなり見知が広いが、魔術的な組織ではないが故、魔術方面でのアプローチを苦手としている。寧ろ、苦手としているところでキッチリ神殺しの動向について、把握できている辺り、やはり彼女の手腕は並では無い。
「雪さんが日本にいる理由はよく分かったよ。でも、それなら貴女の部下に適当に伝令を使わせれば良いだけなのでは? 確か雪さん所は横浜に支部があったはずだろう?」
「ええまあ……ただ問題がもう一つありまして。そちらを鑑みるに王の下に『手』が多くあった方が良いと判断してこうして参じた次第です」
「もう一つの問題? あー、雪さん、既に嫌な予感がしているんだが……」
雪鈴の言動と事ここに至って気づいた、彼女が手勢を連れているという事実。
そう、隠密と称しているにも関わらず少なくない部下と共に日本入りしているということは、彼女自身、少なくない部下が必要と判断したからに他ならない。
武闘派で名を通す彼女たち一行の手が、である。
「我々の界隈……『幇』で動きがありました。日本の華僑が騒がしくなっていることと、それからイタリアに君臨する神殺し、『
「なっ!」
「……うーわぁ」
続く凶報に桜花は驚愕の一声を、衛は壮絶嫌そうに頭を抱える。
『旧世代』の神殺しと『新世代』の神殺し、両名に動きあり。
それも等しく日本に向けて動いたとあってはもう良からぬ予感しかしない。
どうやら今回の九州訪問、挨拶を済ませるだけではすまないようだ。
動乱の気配はすぐそこに。
少なくとも現時点で四人の神殺しが一つの国で相対することになる。
《神祖》暗躍、神々の王の謀略。
そして重なり合う神殺したちの狂奔。
極東を舞台に乱痴気騒ぎの幕が開ける────。
中国語は適当なので用語や名前は普通に日本読みでも可。
さて、名前は少しだけ出ていた『女神の腕』幹部の一人、登場です。
雪さんこと張雪鈴。
実は過去に修行中の頃とは言え陸鷹化をボコったり、そのせいで陸鷹化は教主のご機嫌を損ねてボコられたり……陸鷹化の女嫌いを加速させた御仁です。
ヤーさんの女当主でもあります。そして若干、天然。
てか、我がことながらこの方もオリ設定極まってんな……。
そろそろネタバレ込みで活動報告に幹部の設定メモっとくか。