雪の少年は眠りについた。顔に嬉々たる感情を表しながら。
一方で自分は悶々とした感情を持ちながら少年の母(?)との会話を始める。
「とりあえず……なんとお呼びすればいいでしょうか。」
「そうね、そういえば名前すら言ってなかったわ。私はフィラウス・フーゼリア。彼……ネーヴェ・フーゼリアの産みの親ではあるわ。」
やはり引っ掛かる言い方をされる。
「その……彼はどういう存在なんですか?先程から曖昧にされていられますが……」
黙りこむフィラウス氏。ひょっとしたら自分はグレーゾーンに足を踏み入れたのかもしれない。しかし、存命のための条件を呑むにはこれくらいの内情は知っておかないと万が一の場合がある。
「彼は……私が産み出したホムンクルス……分かるかしら?」
ホムンクルス、たしかばばさまに借りた本に書いてあった気がする。そうか。それならば独り身でも子どもを得られる。完成度が高いのは魔法の普遍性に依るものなのだろう。
「……えぇ、少なくとも僕の世界のそれは造るのはほぼ不可能でした。」
「あら、そう。こっちの世界では、ある程度技術があれば誰でも造れるわ。ただ、ひとつ問題があるの。」
「……と言いますと?」
「ホムンクルスは……人としての権利を持つことができない。造られた存在である以上、モノとしか扱われないの。大体はストレスや性欲の捌け口。良くて奴隷ってところね。造ってしまえばもう自由。金も要らない。壊れたら取り換えることができる便利な人型のモノ…………大衆の認識はそうなってるわ。」
ホムンクルスは圧倒的な弱者で、下僕であることを余儀なくされる種族。フィラウス氏は何を思い、彼を造ったのか。
「……あの子を造ったのは私のエゴ。あの子を産み出したのは……私の孤独を紛らわせるため。」
「では、貴方は大衆側の人間と言うことですか?」
「……違うと言いたいけど、出来ないわね。私のせいで低い地位として生まれ、生活しなくてはならない。不幸せに生きる運命を背負わせてしまっているんだもの。」
不幸せ、か。フィラウス氏は彼に負い目を感じている。だが、その対象はどう思っているだろうか。
「……ネーヴェ君は、あなたに生んでもらえたことを感謝していると思います。この世界の生活水準がどれほどかは知りませんが、彼は人並み以上の幸せをあなたからもらっていると僕は思います。少なくともあなたは彼をしっかり人として扱っているという事は、お話からも伺えましたからね。」
「…そうなのかしら。」
「ええ。貴方はずっと‘あの子’とか‘彼’と呼んでいる。それに彼が僕をここまで運ぶとき、自慢げにあなたを紹介してたんです。それだけで僕は彼が十分に貴方を誇りに思っているとわかりました。」
恐らく覆らないであろう結論。少年には肉体的虐待の跡は見られないし、精神的なものもないように見える。もししていたら、自分にここまで内部を見せないだろう。
「夫になれというのも偽装のためですよね。夫婦関係を構築しておくことで息子という存在をより確実なものにする。ただ……僕では少し無理がありませんかね……?」
「あー、それは……なんというか、そう。それもあるんだけど、実はあなたがいないと解消できない問題があって……ほら、この辺って見てわかる通り人口が少ないの。で、その、私も年頃だし、あの子は精神が幼いしで……」
なんか……良くない予感が。具体的に言えば大人の世界への扉が近くなっている予感がする。
「夫なら、倫理的にも問題なくデキる。から……ね?」
…………もう、どうにでもなれ。さらば、自分の貞操。
最後は自分でも良くわからないです