神星物語-Burning Ice-   作:陽下 ノクト

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第4話

 この世界に転移してから幾週。いよいよ魔導学校なるものへと行く日が来た。ここでの常識などはフィラウス氏から教えてもらい、衣服や身の回りのことも工面してもらった。特に不自由のないよう取り繕ってくれたことには感謝極まりない。貞操は……うん。考えないようにしよう。

「忘れ物は無いわね?きちんとお互い確認しておくのよ。」

「はい。ところで、ここからどうやって魔導学校へ…?」

「すぐ判るわ。そろそろ時間だもの。」

 思わずネーヴェと首を傾げるが、その疑問はすぐに解消された。大きな風の音をたてて巨大な影が接近してくる。しかしあの時とは形も挙動も異なるそれは、自分たちの頭上で止まり、ゆっくりと高度を下げてくる。近くに来てみると、それは最近知ったこの世界の生き物の姿だった。

「フィラウスさん、このグリフォンは……?」

「学校側の出迎えよ。さ、迷惑かけないようにさっさと乗っちゃいなさい。」

 グリフォンの上には遣いの人が一人。大きな図体の獣を屈ませて地に降り、こちらに来る。

「エリマ・ライズさんとネーヴェ・フーゼリアさんですね。荷物を預からせて頂きます。」

 大きな荷物を手渡すと獣の両脇にある鞄にしまう。そして先ほどまで自分が乗っていた場所の後ろに乗るよう手を差し出して促してくる。鞍に跨がると安全のための魔法をかけられ、席を立てなくなった。

「では、出発しますのでしっかりとお捕まりください。」

 グリフォンがのっそりと立ち上がり、羽ばたき始める。フィラウス氏は風に煽られないよう後退りしながら自分に「ネーヴェを頼んだわよ。」と言いながら手を振る。自分も、お任せくださいと手を振り返す。もっとも、護衛対象は自分の前で足元が離れていくことに震えていたが。

 

 空の旅は思ったより静かで、変化していく回りの景色を楽しめるほど快適だった。自分の前の少年も次第に慣れ、見たことのない景色を話のタネに会話を弾ませたりした。

 

 しばらく経ち、遣いの人があれが学校と指差した。それは空に拐われたときに見たリンガートの全体と同程度の大きさの建物で、そこまでの道のりには自分達と同じようにグリフォンに乗った人たちが何十組も。……数えていたらキリが無さそうだ。大衆に違わず、自分達もその近辺に降り立つ。

「長旅お疲れ様でした。今、お荷物をお返ししますね。」

 魔法も解かれ自由になると、ネーヴェは始めの恐怖が嘘のようにピョンと飛び降りた。自分も追って飛び降りる。……少し足がジーンとした。よく平気だな、この子は。

 荷物を受け取り、学徒の流れに加わる。自分に似た姿の人もいれば、耳の尖ったエルフと呼ばれる種族のものもいて、多様性を窺い知ることができる。

「案外、いろんな人がいるんだな。」

「そうだね。この髪色だと浮くと思ってたけど、意外と目立たなそうだ。」

 ……本当は違うことを気にしていそうなネーヴェ。この場では秘密を知っているのは自分と彼自身のみだが、いつバレるとも分からない。細心の注意を払っておこう。彼の名誉のために。

「そう言えば、さっきグリフォンから降りたあとに遣いの人から貰ったんだけど……何だろう、これ?」

 手紙であることは確かだが、添付されているものの正体は……

「……鍵?」

「手紙にはね……『寮の鍵』って書いてあるよ。一回荷物を置いてからだいこーどーってとこに集まるんだってさ。」

 大講堂な。と突っ込みを入れつつ地図を見ながら歩いていく。寮に近づいてくると、次第に人が減っていきすいすいと進めるようになってきて、何故だか少し心配になってきた。

「なぁ、ネーヴェ……本当に先にこっちに来るのであってるよな……?」

「安心して。混雑防止のために来る時間は別けられてるってちゃんと書いてあるよ。」

 あぁ、と胸を撫で下ろす。こういうときの小心具合が自分でもあきれる。ネーヴェを守るためにも、精神をもっと強くしなきゃ。

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