「ハァ……災難だった。」
アハハと苦笑いをこちらに返したネーヴェは荷物の整理を再開する。相変わらず使わない物ばかり広げていて終わる気配がない。
「さすがに大丈夫だと思うが、食事までには終わらせるんだぞ。」
「へーきへーき!僕をなんだと思ってるんだ」
「ポンコツ」
変な声をあげる少年。口ばかり動かしていて手が動いていない。
「自分が書籍とかやっておく、君は衣服を何とかするんだ」
「はーい」
基本的な物は自分と同じであるため、同じ配列で並べていく。もっとも、彼の性格のためにこの状態はすぐ崩壊してしまうだろうが。
「こっちは終わるぞ。そっちは手伝う必要はあるかい?」
パッと見て服の量が減っていない。いったい何をしていたんだか……
仕方なく彼の服を畳み、収納しているとドアからノックが聞こえた。服の持ち主は自分の仕事を放り投げそこへと向かう。
「はーい!今いきまーす!」
彼がドアを開くとそこには誰もいない。自分はその手法で誰の仕業か分かってしまった。そして次にその人間が現れる場所は……
「「後ろだ」」
少年は不意を突かれて飛び上がるが、犯人は少し残念そうに頭を掻いてその場にどっかりと胡座をかく。
「んだよ、ノリわりィな~」
「手口が分かり易すぎ。あとここ男子部屋なんだけど何か用でも?」
「暇潰し」
「だろうね」
ネーヴェは未だに腰を抜かしていて戻ってくる気配がない。なんで自分が全部やってるんだ。
「ところでなんでお前は未だに荷物が広がってんだ?」
「そこで伸びてるネーヴェを見れば一目瞭然だろ?」
「ほーん。こいつネーヴェって言うのか」
「あ、そういや名前言ってなかった。アイツがネーヴェ、自分がエリマ。君は?」
「オレはルーシィ。よろしくな、異界人」
握手している奥でようやっと少年は立ち上がる。
「あー……何て呼べば良い?」
「普通に名前でいいよ。よろしく、ルーシィさん」
「おうよ」
慎ましさとは無縁の振る舞いをする彼女だが、礼儀や他人との距離感はしっかりと心得ているようでネーヴェの友人としては頼もしい存在だ。……自分への異界人呼びはどうにかして欲しいけど。
「結局全部やったのは自分か……」
「あはは、ごめん」
「まぁいいさ、早く済ませられたし」
「……甘やかし過ぎてないか?それ」
それもそうだな。ネーヴェの成長のためにも厳しくしていかないと、自立へと繋がりそうにない。ここはルーシィの言うとおりに……
「とっ、とりあえずご飯食べに行こ!」
旗色が悪くなったところで、少年は退路を開いていった。