授業も始まって幾月、自分は素朴な疑問をルーシィに抱いていた。
「ルーシィ、君はいつもこの部屋に来てるけど、自室でなにかしたりはしないのかい?」
「何かって、例えば?」
「ほら、同室の人と話したりとか」
あー、と彼女は露骨にテンションを下げる。
「なんつーかなぁ……面白くねぇ」
曰く、相手の気ばかり窺わなきゃいけないために話を合わせるのが面倒臭いらしい。
「口を開けば"あの男がかっこいい"だ、"あいつはキモチワルイ"だ、興味ねーっつーの」
「あー言われてみればわかるかも」
「ちなみにお前らもキモチワルイって言われてたぞ。特にネーヴェ」
「……まぁそうだろうな」
いつもヘラヘラしてる事が原因なのは目に見えてるし、改善もしないからそう思われているのは妥当だろう。
「ま、干渉してこないならいいんじゃないか?」
「だな……」
会話が一区切りされたころ、そのキモチワルがられている少年が小包みを持って部屋に入ってくる。
「ただいま~」
よいしょ、とベッドの上に置いたところを見るにそこそこの重量はあるようで、少年はつかれたーと肩を回している。
「これは何?」
「んーわかんない。お母さんから送られてきたのは分かるけど…」
「とりあえず開けてみようぜ!」
包みの紐をさっさとほどき、少女はバッと内容物を晒す。
「これは……本か?」
「手紙も入ってるよ~」
……自由すぎか。と脳内でツッコミつつ、自分も荷物に寄る。
「これ、エリくん宛だって」
そう言って渡されたのは一通の便箋。外見からは特に変わった点は見受けられず、宛名のところには自分の名前と『ネーヴェは開けるな』という文字が書いてあった。彼への信用の無さことを笑おうとしたとき、ルーシィが口を開いた。
「なんか果物みてぇな匂いしねぇか?」
「あー、それならさっきエリくんに渡した手紙からしてたよ」
手元のものを確かめると、確かに匂いがする。
「匂い付けなんて洒落てんなぁ」
「えへへ」
「なんで君が照れてるんだ……」
ぼやきつつ手紙を机の引出しにしまう。後で一人のときにでも確認しよう。
「で、そっちはなんだった?」
「なんか、デケェ本。」
「こっちに入ってた手紙には『新しい日記帳にしなさい』だって」
「新しいって……そもそも持ってたっけ?」
そういえばと呟いて彼は本棚を漁り始めるが、見つかるまでに時間はかからなかった。
「あった!」
「……その様子だと一回も使ってなさそうだな。」
口をつぐんだところを見るとどうやら図星のようだ。
「どうせこのページ数じゃ使いきる前に新しいの来るだろうな……」
少年を蚊帳の外にして二人で悩む。
「せっかくだし、オレらで使わないか?」
「そうしようか」
ネーヴェも快諾してくれたので、自分たちは交換日記としてこの本を使うことにした。