ひびみくの後ろの席の百合豚モブ   作:東山恭一

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モブ子の一日

私は私立リディアン音楽院高等科の生徒、もちろん音楽の道を志して居るのだがもう一つ趣味故の「下心」があってここに入学した。それは…

 

「あ、おはよー!」

「おはよう」

「あ、おはよう。立花さん、小日向さん」

 

栗色の髪の元気な少女の立花響さんと黒いショートヘアに白いリボンが特徴的な小日向未来さん。毎日一緒に登校してくるのは一つ屋根の下で暮らして居るかららしい。そして二人して私の前の席に座る。

 

「ねえ未来、今日はさー」

 

そう、これなのだ。私は俗に言う「百合豚」なのだ。リディアンに行けば百合の一つ二つくらいあるかと思って入学したが期せずして大当たりを引き当ててしまった。それと言うのも…

 

「今日の晩御飯何ー?」

「響ったら、さっき朝ご飯食べたばっかりでしょ?」

「えへへー、でも未来のご飯美味しくってー」

「調子良いんだから」

 

朝っぱらからこれかという思いが湧き上がる、イギリスあたりならとっくの昔に婚姻届出してるであろうこの二人、朝っぱらから全開である。ニヤけたいがぐっと我慢する。朝のHRが終わり授業が始まる、だが授業如きではこの二人は全く止まらない。小声の会話が聞こえてくる。

 

「未来、ここってさー…」

「そこは昨日やったばっかりでしょ、ここをこうしてー…」

「あー、ありがとう!」

「どうしたいまして」

 

そう言って顔を合わせて笑い合う。叫びそうになるがここも耐える。殺す気マンマンなやりとりをシラフでやるんだからもー!となるが我慢我慢…と、そんな事をしてるうちに授業が終わる。午前の授業が全て終わり昼休みになる、私は学食に行ってカレーを頼み適当な席に座る。ここの学食は安くて美味いと言うのがとても学生想いで身に染みる。

 

「美味い…ッ」

 

カレーを噛み締めていたら私の視界内の席に立花さんと小日向さんが友達3人を連れて座った。今日は運が良いなと思いつつ引き続きカレーを食べていると会話が聞こえてきた。

 

「ねぇビッキー、今日おばちゃんのお好み焼き食べてこーよ!」

「うん、良いよー!」

 

買い食いを快諾する立花さん、それは良いのだがそれをやると小日向さんの晩御飯が食べられなくなるのでは?と思っていたら小日向さんが同様の事を立花さんに言った。

 

「響、お好み焼き食べて晩御飯も食べられるの?」

「大丈夫だよぉ。未来のご飯は別腹だよ!」

「そんなものなの?」

「そんなものだよ!美味しいご飯ならいくらでも食べられちゃうからね!」

 

前言撤回、カレーと立花さんと小日向さんの絡みのダブルパンチで胸焼けしては幸運ではあるがその後がきつい、必死に水を飲み干しフゥと息をつく。いつもより数倍量が多く感じたカレーをなんとか平らげ午後の授業に向かう。午後の展開は大体読めている。それは…

 

「zzz…」

「響、起きて。響ったら」

「むにゃ…もう食べられないよお…」

「もう…」

 

こんななのだ、こんななのだ。とにかくこんななのだ、この二人の前では語彙力など紙屑のように吹き飛んでしまう。顔を覆って震えていると大声が聞こえてきた。

 

「立花さん!!!」

「はいぃッ!」

 

またか、と呆れ気味に立花さんが先生に怒られている風景を見ていた。この時ばかりは小日向さんも呆れたように溜息をついていた。立花さんが怒られ終わって座ると申し訳なさそうに頭を掻きながら話し始めた。

 

「いやはや、お恥ずかしいところを…」

「もう、昨日もでしょ」

「どーもお昼ごはん食べると眠くなっちゃって」

「もう寝ないでよね」

「大丈夫大丈夫」

 

はいワンセット終わった。とてもよろしい、見慣れてる百合は癒しを与えてくれる。午前とは打って変わってほんわかしつつ学校が終わった。さて、と荷物を持って帰宅しようと中庭に出るとまた、いや幸運にも再び立花さんと小日向さんが前が歩いているのが見えた。

 

「お好み焼きお好み焼きー♪」

「お好み焼き楽しみだね」

「うん!」

 

ルンルンで歩いている立花さんと小日向さん。これだけでも大分よろしいのだがこれだけでは終わらなかった。

 

「あっ…!」

「未来!」

 

つまづいて転びそうになった小日向さんを立花さんがとっさに支えた。鍛えてるとあって流石と思っていると二人が話し始めた。

 

「大丈夫?」

「うん、ありがとう。響」

「未来はおっちょこちょいだなぁ」

「それ響が言う?」

「あー、それどう言う意味ー?」

「そのままの意味ですー」

「むぅ、まあ良いや。未来」

 

傾いていた状態の小日向さんを元に戻して立花さんは言った。

 

「大丈夫、未来に何があっても私が守るってみせるから。ねっ!」

「…うん、ありがとう。響」

「うん、おまかせあれっ!」

 

刹那、夏の暑さなど知ったことかと言わんばかりに私は走り出していた。ただ夢中で、弾かれたように。息を荒げながら「ただいま」と言って自宅の階段を駆け上がって制服のまま布団に寝転がって枕を顔に被せた。

 

「ハァァァァァァァァァァァ…」

 

私の溜息とも叫びとも取れる声が部屋にこだまする。そこから畳み掛けるように独り言を開始した。

 

「本当に何なのあの二人…何も中庭でイチャつかなくても良いじゃん…あ…あ…やばい…語彙力が…無理…助けて…タスケテ…まあとにかくアレだ…」

 

私はこれが日課だがいつもこう締めるようにしている。

 

「今日も良いもん見させてもらいました…」




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