ひびみくの後ろの席の百合豚モブ   作:東山恭一

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星奈の目覚め

それからと言うもの私はあの二人のことについてずっと考えていた。公衆の面前でもあの節操のなさ、何故なのか。考えれば考えるほど分からなくなる、それでも私は何かに突き動かされるように考えていた。

 

「星奈ー?」

「ん…?ああ、空。どうしたの?」

「また暁さんと月読さんの事考えてるの?」

「うん…分からなさすぎてどうにも…それにあんなに節操ないのなんなんだろって…」

「ふーん…」

 

授業が始まってもそれは変わらなかった、立花さんと小日向さんのやりとりすら入らない程度には深く考え込んでいた。そして昼休み、空がふと話しかけて来た。

 

「ねぇ星奈」

「…ん?」

「放課後さ、ちょっと僕に付き合ってくれるかな」

「え?…ああ、うん。分かった」

「ありがとね」

 

そう言って空は笑った後また弁当を食べ始め、私はまた唸り始めた。急にあんな事を言い始めた空がよく分からなかったがそんな事はすぐにあの二人の事で掻き消えた。そして放課後、私は空に話しかけた。

 

「空、昼の話だけどどこ行くのさ」

「ちょっと付いて来てよ」

「…?うん、分かった」

 

空の言われるままについて行くと人気のない校舎裏に来た、少し不審に思って空に話しかけようとしたがそれより先に空が話し始めた。

 

「ねぇ星奈」

「ん?」

「星奈はさ、百合の事が嫌いになっちゃったの?」

「へっ!?何を藪から棒に、そんな事無いって。私が百合を嫌うだなんてそんな事天地がひっくり返っても…」

「でも星奈…」

 

空はそこまで言うと俯いてしまったがまた消え入りそうな声で話し始めた。

 

「最近ずっとウンウン唸ってて…全然楽しそうじゃないんだもん」

「それはあの二人が…」

「それでも、それでも前の星奈は楽しそうだったよ?」

「え…?」

 

空は私の肩を掴んで泣きそうな声で言った。

 

「最初に立花さんと小日向さんを見た時に星奈は「何も分かんない、けどあの二人は大当たりだ」ってすっごく嬉しそうに言ってた。でも暁さんと月読さんを見てからはずっと何も言わずに唸ってて…」

「…」

 

私はその時を思い浮かべ殴られたような気分になった。確かにそうだ、何も分からなかった。一体アレはなんなんだと少し怖くもなった、けど今はここまでエモい百合だと思うまで頑張ってあの二人のことをわかろうとしてきた。そこまで考えると空が落ち着いたのか声は泣きそうだが笑って話しかけて来た。

 

「ねぇ星奈」

「…うん」

「僕ね、星奈が楽しそうに立花さんと小日向さんのこと話してるのすっごく好きなの。星奈の楽しそうに話してるの見るだけで僕も楽しくなるの」

「えっ?」

「ホントだよ、僕に百合は分からない。それでも楽しいの…でも今は星奈は全然楽しそうじゃないから僕まで悲しくなっちゃうな」

「そうか…そうなのか…」

 

まさかそうだったとは思わなかった、空は確かに私の話すことを嫌な顔一つせずに聞いてくれた。でもまさか楽しいだなんて、そう考えるとすごく申し訳なくなる。

 

「ごめんね…空…」

「謝って欲しくない、僕はただ前みたいに楽しく話す星奈に戻って欲しい。ダメかな?」

「…ダメじゃない、ありがとう。目が覚めたよ」

 

私は私の肩を掴んでいる空の手を握って言った。

 

「私油断してた、立花さんと小日向さんのことがわかるなら大抵の百合は分かるだろうって。でもそんな事ないんだ、百合なんて無限にある、あの二人だけが全てじゃない。なんでこんな事分かんなかったんだろ、ありがとね」

 

私がそう言うと空は嬉しそうな顔をした後笑って言った。

 

「うん!」

「迷惑かけたね…で、そろそろ帰る?」

「うん、そうしよっ!」

 

帰る途中、手を繋ぎ開いた方の手でクレープを持った暁さんと月読さんをを見かけた。そこまで遠くなかったので会話が鮮明に聞こえて来た。

 

「調調、調のクレープどんな味がするデス?」

「美味しいよ、一口食べる?」

「ホントデスか!?じゃあ私のも一口あげるデス!」

 

そう言うと二人は互いのクレープを差し出しあって同時にパクリと口にした。

 

「う〜ん、調のクレープ美味しいデス!」

「切ちゃんのクレープも美味しい…」

「それは良かったデス!」

 

そんなやりとりをして私達とは違う道を歩いて行った。私は思わず顔を手で塞いで上を向いた。

 

「星奈…?」

 

空の心配そうな声が聞こえるが私はその体勢のまま喋った。

 

「いや…二度目だけど本当になんなのあの二人…ガチで節操なさすぎる…けどさぁ…」

「ん?」

 

私は笑って空の方を向いて言った。

 

「やっぱリディアン間違いなく最高の百合の園だわ。見てて飽きない!」

 

空はそんな私を見て笑って答えた。

 

「うん、やっぱりいつもの星奈だ。楽しい!」

「アハハ、どーも。んじゃまた明日!」

「バイバーイ!」

 

私は家に帰り着くといつものように枕をかぶった。

 

「何なんだよあの二人…クレープのアーンのし合いとか…それも公衆の面前で…あのバカップルがぁ…もっとやれぇ…へへへ…あー…」

 

私はそう言うと飛び起きて夕暮れの空を見た。

 

「なんなんだ空は…私の事楽しいって…そっか…フッ…」

 

そこまで言ってまた寝転んで枕を被った後呟いた。

 

「やっぱ空は最高の友達だ、私の胸の内を全部受け止めてくれる。名は体を表すってマジやん…」

 

そう言って私は最高の友達の事を噛み締めていた。




ほぼ星奈と空の話になってしまいました。あと1話だけこの二人がいちゃつきますがご容赦ください
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