私は今日は欲しい本があるため少し足を伸ばして隣町のショッピングモールに来ている。空は部活と重なり来れないようなので単独行動だが別にイヤなわけじゃない。目的の本を買いほくほく気分で店を出ようとするとふと見知った顔が目に飛び込んで来た。
「お…?」
それは立花さんだった、一人でいるようだがどこか焦っている。そのまま通り過ぎても何か悪い気がしたので話しかける事にした。
「立花さん?どうかしたの?」
「あっ、星奈ちゃん!」
立花さんが私を確認すると駆け寄って来て焦り切った様子で話しかけて来た。
「ねぇ!どこかで未来を見なかった!?」
「えっ?小日向さん?」
「うん!はぐれちゃったみたいで…」
「見てないけど…」
「そっかぁ…ありがと!」
そう言って駆け出そうとする響さんに無意識で声をかけてしまった。
「ねぇ!一緒に探さない!?」
「えっ?良いの?」
「えっ、あ、うん。良いよ」
「ありがとー!それじゃ行こっ!」
そう言って立花さんは私の手を掴んで引きずるように歩き始めた。ちょっと待ってこれ地雷シチュだわ、やっちまった。小日向さんに殺される。下手に呼び止めなければよかった。とりあえず私はその点を突っ込む事にした。
「あの…立花さん…手…」
「あっ、ごめんね。痛かった?」
「そうじゃないんだけど、わざわざ繋がなくても大丈夫だよ」
「そう?じゃあ離すね」
そう言って手を離してくれたが一体何なんだろうかこの人は、前々からイケメンムーブかますなとは思ってたがまさかここまでとは思わなかった。こりゃ覚悟がいるなと思っていた矢先、立花さんが話しかけて来た。
「星奈ちゃんは今日一人なの?」
「うん、本買いに来ただけだから」
「そうなんだ?どんな本?」
「え?うん、ただの漫画だよ」
それ以上踏み込まないで、百合漫画だから。変なこと吹き込んでこの二人に影響があったら私生きていけなくなるからやめて。なんとか立花さんの無自覚な追求を振り切り話題を変えた。
「立花さんはここに何しに?」
「未来と一緒にカップを買いに来たんだ。使ってたのが割れちゃってね」
二人で買い物と聞いて少し興味が湧いて踏み込んだ質問をしてみた。
「へぇ、何買ったの?」
「ほらこれ、黄色のが私で紫のが未来のだよ」
立花さんが取り出したのは色づきグラスのカップだった。それもお揃いの、マジかよ。少し意地悪のつもりだったのに見事にカウンター喰らっちゃったよ。思わず叫びそうになるがぐっと堪えた。やめよう、殺される。この二人に殺される。そう思い直すとふと考えが浮かんだ。
「立花さん?携帯ないの?」
「携帯…?そうだ!携帯だ!」
こうしてたまに抜けてるのも立花さんらしいなとは思う。小日向さん大変なんだろうなぁ…まあそこらへんも含めてこの二人はとてもよろしいのですが。そんな事を思っていると立花さんが嬉しそうに話しかけて来た。
「連絡来てた!ちょっと遠いけど待ち合わせ場所決まったよ!行こう!」
「立花さん!走ったら危ないって!」
私は走る立花さんを追いかけてそのまま集合場所まで来てしまった。そこには小日向さんが心配した様子で待っていたが立花さんを見つけると明るい表情にすぐに変わった。
「響!」
「未来!良かったぁ、どうしようかと思ってたよ!」
「もう、携帯鳴らしたのに…」
「アハハ、ごめんごめん」
私を置いてカップルし始めたぞオイ、最高かよ。このまま去ってやろうか、それが良いと去ろうとすると立花さんに呼び止められた。
「星奈ちゃん!ありがとね!」
「あっ、うん。どういたしまして。バイバイ」
「バイバーイ!」
それだけ言って去ろうとすると背後から二人の会話が聞こえて来た。
「やっぱり未来の近くが1番安心するなぁ、やっぱり私の陽だまりだ」
「ふふ、ありがとう。響」
…え?今なんてったの立花さん?陽だまりとか言った?小日向さんの事陽だまりとか言った?知らなかったァ…マジかぁ…。ニヤケそうになる顔をなんとか抑えながら帰路につき家に帰り着いた。いつもなら1番に封を切る漫画を置いて私はベッドに転がった。
「陽だまり…陽だまりって…うぁ…表現がエモい…ウッソでしょねぇ…あー…やはりあの二人ナメてかかると殺される…今漫画読んだら多分死ぬ…しばらく悶えてよ…くぅぅ…最高かよ…」
そんな風にいつも通りに私の時間は過ぎていった。