今日は特別授業らしく1年生と同じ教室で授業をする事になった、いつもより広い教室に移動し決められた一個で四人座れる長机の左から二番目に座る。どうやら席がランダムらしく空と離れてしまった。まあ少し寂しくはあるがほんの1時間だし大したことは無いだろうと思っていると目の前の光景に絶句した。
「未来、ここであってる?」
「うん、大丈夫だよ」
「あっ星奈ちゃん!前後だねー」
「…そうだね」
「ん?具合悪いの?」
「いや全くそんなことはないよ」
「そう?なら良いけど」
そう言って二人は隣同士に腰掛ける。捨てる神あれば拾う神ありとはこの事か、にしてもラッキーだったぜ。まさかこの二人の後ろを取れるとは僥倖僥倖、退屈しないで済みそうだなどと呑気に思っていると前の机の残りの二人がやってきたのだがその二人に私は絶望した。
「ややっ!?奇遇デース!まさか響さん未来さんと隣になれるとは!」
「ラッキーだったね、切ちゃん」
「わぁ、偶然だね!ほら座って座って!」
そう言って暁さんと月読さんも腰掛ける。嘘でしょ?空いないと私死んじゃうよこれ?この四人とか百合豚だけを殺す機械になり得るよ?私はせめて何か救いをと見回すと少し遠目に空が居た、目配せを送るとこっちを向き何かを察したように胸の前で両手で握りこぶしを作り「ファイト!」と言わんばかりにグッと握る、私はOKサインを作り机に突っ伏し誰にも聞こえないような声で呟いた。
「今日が私の命日か…百合で死ねるなら本望かな…」
そう弱気に言ったあとチャイム前を向くともはや禁断を通り越して自衛隊あたりが出動したほうがいいんじゃないかレベルの百合の園が小声で展開されていた。
「それでデスねそれでデスね、調の料理がすごく美味しかったんデス!」
「それを言うなら未来の料理だって負けてないよッ!」
「ちょ、ちょっと切ちゃん。恥ずかしいよ…」
「響も声が大きいよ」
月読さんと小日向さんが窘め二人は苦笑いしながら一応の収束を見えた。いきなり嫁自慢を見せつけられ表情が緩みそうになるが隣に二人もいるのでなんとか持ちこたえる。クソッ、隣が空ならいくらでもニヤけられたのに。だがこんなものでこの四人が止まる訳はなく更なる尊みが私を待ち構えていた。立って少し歌うという段に入り私達は一度起立し歌い始める。
「〜♩」
歌唱は何事もなく終えた、これで軽く小指繋ぐとかあったら声が裏返ってた。そこら辺は幾ら何でも自重したと言うとこかな。そして座ると暁さんと月読さんが小さくハイタッチをしていた。
「イェーイ」
「やったね、切ちゃん」
まあもはやこの程度で私がアクションを起こすと思ったら大間違いよ、慣れたわ。そして時間が経ち授業ももはやクライマックスと言ったところ。私は勝ったなと余裕綽々でいた。なんなら立花さんも暁さんもうつうつとしている。いつも通りだな、うんうん。
「んー…」
「むにゃ…」
二人が傾きそのまま暁さんと立花さんがそれぞれに寄りかかるような形になろうと言った感じだった。なるほど、そう言うのも悪くない。そう思った矢先、そんなものは一瞬で飛び越す感情がやってきた。
「…」
小日向さんと月読さんが黙ったまま立花さんと暁さんを抱き寄せた。私は一瞬変な声が出たが咳き込んでなんとか誤魔化すことに成功した。マジかよこの二人強かすぎんか、この二人を見誤ってた。ああいかん、頬が緩む。口元を隠し授業を受けなんとか終了のチャイムが鳴る。例をした後四人はまたいつものように話しながら教室を去っていったが…
「…ヤバ…マジかよ…」
「星奈?星奈?大丈夫?」
「あ…空…」
机に突っ伏していたところに空がやってきた。なんとか無事だと伝えそのまま帰りのホームルームまで過ごしフラフラと自宅のベッドに転がった。
「…やべぇなあの2組のスケ…強すぎるじゃん…勝てんわ…うん…」
そして私はいつもの一言を口にして締めた。
「今日もいいもん見させてもらいました…」