IF物語 ティナ・トピアの弟   作:抹茶スフレ

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ここからはオリ主視点をメインにしていきます。

文章をちょこっとだけ追加と変更しました。(9月17日)


愛してる。

 目が覚める。

 あの日、天界から追放されて、もう二度と開く事はないと覚悟していた目蓋を開く。

 

 

「ごめんなさい」

 

 

 目を覚ますといつも視界に写る天井に書かれている一言。

 もう何年もその声を聞いていない、こんな僕を愛してくれる、愛し続けてくれる大切な両親の謝罪の言葉。

 

 

 これを書く時両親は泣いていたんだろう、何も知らない人が見れば読み解くのにそれなりの時間がかかってしまうほどに、歪な文字で書かれている。

 これを読む度にいつも、両親の泣き顔を思い出す。

 あの日、僕が初めて見た両親の泣き顔を。

 

 

 僕を生かすために、生かし続けるために、僕をその手で縛り付けたあの瞬間を。

 

 

 頬に流れた両親の涙を。

 

 

 

 

 **********

 

 

 産まれた時から、いや、生まれる前から僕は呪いにかかっている。

 医者はどうやら病気、と判断したらしいがその時僕はこの呪いと同じ特性を持つ病が存在したことに驚いた。

 この呪いは、腐っても神が、神々が創り出した呪いだ。

 そんな呪いと同じものが下界で発症した事実が存在するどころか、後世にまで知られるほどの情報が存在したということだ。これだけならば、それがどうした、と思うかもしれないが本題はここからだ。

 

 

 何故、それ程の人類に対しての危険因子が天界に知らされなかった?

 

 

 もしその病が感染しようとしまいと関係なく、人類に対しては危険極まりない病なのだ、故に天界に報告どころか当時の噂にもなってはいない。

 

 

 ならば下界の人間たちにしか知り得ない情報なのかとも思ったが、医者の報告を受けた両親の表情には不治の病に対する驚愕と、零落という病名への困惑が浮かんでいた。

 

 

 両親は知らなかったのだ。零落という不治の病を。

 だがそれはおかしかったのだ。僕はこの下界に産まれる前から両親のことを知っていた。天界にまでその名を轟かせる程の存在。世界を旅していた両親が知らない事など殆ど無いだろう。

 

 

 そう考えると、僕を診断した医者に不審感を感じたと同時に理解した。

 

 

 その医者からは神の気配がしていた。

 

 

 過去天界にて僕に死刑を執行しようとした1人と同じ気配がその医者の奥底から感じられた。

 恐らく操られている。

 

 

 けれど気づいた頃にはもう遅く、その医者は既に島から出ていってしまっていた。

 

 

 奴らがいったい何を思ってこのような行動をとったのかは知らないが、その時からは特に奴らの気配を感じることはなかった。

 

 

 **********

 

 

 不治の病、基呪いを受けている僕の生活を一言で表すなら『不動』、このたった二文字でこと足りるだろう。

 

 

 僕は生まれてこの12年間ずっとベッドの上で生活を続けている。

 僕が生きていられる理由のいくつかのうちの一つでもある『人をダメにするベッド』というこのベッドはとてつもない代物だ。

 1つ、自動清潔維持機能付き(使用者にも適用)

 1つ、使用者の体内に存在する老廃物などの除去。(つまりはトイレ要らず)

 1つ、空気中の魔力を吸収し一部を栄養に変え使用者に与える。半永久的に稼働する。

 

 

 このたった3つだけで人は生きていけてしまう。

 

 

 けれど僕の場合はそこに粘着の状態異常を付与する<粘着のルーン>を取り付けることで、僕はこれまで生き続けて来れた。

 

 

 それが例え、他人から飼い殺しだと言われようとも僕のこの考えは変わらない。

 

 

 そして、もう1つ、僕が生き続けて来れた理由。

 

 

 それは、姉の存在だった。

 

 

 ティナ・トピア、それが姉の名前だ。

 呪いの影響で身体が弱すぎる僕とは違い、姉は最強の両親の血を確かに引き継いでいる。

 身体の頑丈さ、力の強さ、父が直接封印したほどの潜在能力、そして、それ故の内に眠る破壊衝動も。

 

 

 

 

 そんな物思いに耽っている時だった。

 

 

「うぅ〜ん」

 

 

 同じベッドで寝ていた姉が目を擦りながら起き上がる。

 

 

 僕は「おはよう。」と心の中で呼びかける。

 

 

 すると姉はいつものように「おはよう。ルナ。」と言って僕の額にキスをする。

 

 

 当たり前だが、こちらの声は聞こえていない。

 僕は話してはいけないから。

 

 

 今更だが、僕が住んでいる島には僕と姉以外の人間はいない。そして僕が居るのは日光の遮断されたとても暗い部屋だ。僕の肌は日光でさえ傷つけられる程に弱いのだ。

 

 

 とにかくこの部屋は暗い、それに姉は目が覚めてから意識が覚醒するまではちょっとだけポンコツになる。

 姉は顔を洗うために一旦部屋を出ていこうとするが、この部屋は暗い、だからこそいつもドアを探して壁に何度もぶつかる。

 何度も壁に額をぶつけながらもドアを見つけて廊下に出て浴室に向かい、顔を洗って戻って来て一日中おしゃべり(僕は喋れないので姉が語るだけ)をして過ごす。

 これが姉のいつもの日課。

 

 

 けれど最近姉が一瞬だけ豹変することがある。

 

 

『つまらない...』

『退屈だ...』

『狭い狭い狭い』

 

 

 もう限界なんだろう。

 表には見せないが、恐らくかなりストレスが溜まっているはずだ、僕のせいで両親とは碌に会えず、年に数回ほどの僅かな時間しか触れ合えない。何を幾ら話そうとも反応しない僕という人形と一日中同じ空間にいる。

 

 

 改めて思う。これは拷問だ。

 

 

 こんな生活を続けられる姉は強い。誰がなんと言おうと姉は強い。

 けれどその強さにも限界があった。

 故のあの豹変なのだろう。

 

 

 今も尚、笑顔で語りかけて来る姉を眺めながら僕は思う。

 

 

 この生活の終わりは近い、と。

 

 

 

 

 **********

 

 

 そしてそれから数日後、ついにその日は訪れた。

 

 

 夜になり、いつものように姉が僕のベッドに潜り込む。

 いつもならばそのまま寝てしまうのだが今日は手を握ってきた。

 僕に刺激を与えないようにしているのだろう。

 

 

 抱きしめられた。

 まるで壊れ物を扱うかのように。

 

 

 ナイフを取り出した。

 台所のものだろう、と思った。

 

 

 ナイフを首にそっと当てられる。

 少しばかり呼吸が荒くなった。

 

 

 ナイフを持つ手に力が込められたことを感じた。

 遂に来たか、と覚悟を決める。

 

 

 頬を何かがつたう。

 

 

 泣いていた姉の涙だった。

 

 

 姉に手を伸ばす。

 頬に触れ、涙を拭う。

 声を出す。

 姉が望んだ言葉を口にする。

 

 

「泣かないで」

「お前のせいだ」

 

「僕を殺して」

「言われなくても」

 

「もう十分生きたから、たくさん負担かけたから」

「邪魔だったんだ!ずっとずっとずっと!!」

 

 

 姉の本心がさらけ出る。

 

 

 ゆっくりとナイフを振り上げる。

 

 

 暗闇になれた目で見た姉の顔はこんな暗闇には眩しすぎるくらいの笑顔で泣いていた。

 

 

 ナイフが振り下ろされる瞬間、ずっと伝えたかった想いを口にする。

 

 

 大好きだよ姉さん。この世で一番、誰よりも。

 

 

 

 

 

 

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