IF物語 ティナ・トピアの弟   作:抹茶スフレ

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m(_ _)m


ルナが机に直接手紙(机だから手机?)を書いていたというのと後ろの方にちょこっとだけ文字を追加しました。


第1章 それぞれの道
お別れ。


 

 

 

 

 

 

姉さんが振り下ろしたナイフは的確に僕の心臓に突き刺さる.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ことはなく、今僕の右手にそっと握られている。

 

 姉さんが自ら手放した訳ではない。姉さんは葛藤していた、自分の中に眠る霊神の欠片と......

 

 

 ナイフを振り下ろす瞬間とほぼ同時に、姉さんは気絶していた。

 

 

 今僕の左腕に寄りかかる姉さんはひどくうなされている。

 

 

 今も尚、己の中にある霊神の欠片と戦っているのだろうか?

 あの時、僕が姉さんの欲した言葉を紡いだ僕への返答、あれは姉さんの本心だった。

 

 

 

 わかってはいたんだ。こうなることも予測していて覚悟もあった。

 

 

 けど...やっぱり、キツイ......かなり

 

 流す気のなかった涙が、頬を流れる。

 姉さんが僕のことを愛してくれていたのは知っていた。そして同時に苦しめていることも。だからこそ覚悟を決めた筈だったのに

 

 

「ううぅぅ、っ!ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい」

 

 

 ごめんなさい、姉さん。

 

僕はまた、家族を失う。

 いつだって悪いのは僕だった。

 僕がもっとちゃんとしてれば、家族を失うことも、あの日、この手で消滅させることもなかった。

 

 ナイフを手放し、両腕をめいいっぱい使って姉さんをぎゅっと抱き締める。今までの時間を取り戻そうと必死に足掻く。

 とめどなく溢れる涙を拭うことも、口から溢れ出る喘ぎ声を抑えることも、姉さんを抱き締める力を弱めることもなく、ただただ姉さんの温もりを感じられるこの瞬間に溺れていく。

 

 

 動いたことで感じる、寿命が削られていく恐怖から逃れるように。

 

 

 **********

 

 

 

 

 それから少しして僕は姉さんの身体を離れる。

 

 

 もう十分だろう。

 いや、十分すぎるくらいの温もりはもらった。一方的に。

 なによりこれ以上は決意が揺らいでしまう。

 それにこの状況で目を覚まされたらお互いどうなるかわからない。

 

 

 だから、さようならだ、姉さんさん。

 

 

 抱えていた姉さんを横に寝かせ、僕はベッドから立ち上がる。

 ひんやりとした床の冷たさを足の裏で感じる。

 かれこれ何年も碌に自分の足で立ち上がったことなんてないのに、不思議と身体は何事もなく動かせた。

 そのことに内心驚きつつ、クローゼットに向かう。そこにある宝物を取りに。

 

 どこにでもある木製のクローゼット。

 中には1着の白いロングコートだけがポツンとハンガーに掛けられている。

 

 これが、僕の宝物。

 

 毎年、誕生日には一時間だけ外に出てもいいことになっている。3年前、僕のために姉さんがわざわざ島を出てまで僕に買ってきてくれた。以来、毎年特別な日は僕はこれを必ず着るようになった。家族の誕生日、クリスマスにお正月、バレンタイン?はよくわからなかったけど姉さんに着せられてチョコをもらった。

 

今ではそれを自分一人で羽織ることが出来る。その現実に喜びを覚えつつも、やはりどこか寂しさを感じる。コートに付いているフードファーが少しくすぐったい。

 

 

 着替えてから、姉さんを抱きしめる際に手放した拍子に床に転がったナイフを手に取り指をナイフの刃に滑らせる。

 

 僕の指が赤く染まっていく......

 

 

 ......ことはなく、刃の潰れたナイフが出来上がる。

 昔、1度だけ見たことのあるお父さんの魔法。初めてにしては上手くできたと思う。

 

 

 ナイフを懐に収め、僕のベッドで眠り続ける姉さんに近づき、布団を掛ける。

 

 そして机に向かう。

 

「ごふっ...」

 

どれだけ身体が自由に動いたとしても、身体にかかる負担は、思っている以上に莫大らしい。

 

びちゃびちゃと床に垂れる自分の血を無心で見つめながら悲しい気持ちになる。

 

時間がおしいな...

 

旅立つ前に手紙でも、とは思ったものの、読み書きが必要ないこの空間に、もちろん紙とペン、インクもない。

 

その3つがないと、手紙を残せない...

最悪1つはなくてもいいけど...

 

どうしよう。

 

紙は、机でも床でも代用できる。

ペンは、あったら嬉しい。

インクは、

 

 

 

 

 

 

 

 

ピチョン......ピチョン......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.......これで書ける。

 

 

 

 

 

 

「............。行ってきます。」

 

 

 少しばかり刺激的な手紙を残して、最後にさようならを告げようとしたが、何故だか怒る姉さんの姿が頭をよぎってしまい、変えざるをえなかった。

 

 

 最後に姉さんの髪にキスをする。

 

 

 もう、会うことはないかもしれない。

 再びすがりつきたくなる欲求を必死に抑えながら、姉さんから離れ窓へと向かう。

 

 本当なら入口のドアを開けて、家中を見てから出ていきたいのだが、ベッドを抜け出したことに気づいた両親がいつ帰ってくるかわからないため、少しでも早くこの島を出なければいけない。

 

両親が帰ってくればまたあの生活に逆戻りだ。それでは意味がない。姉さんがちゃんとした自由な人生を送るためには僕という枷は邪魔でしかない。両親には僕がこうしてベッドから離れて動いていることはとっくに知られている筈だ、あと少しすればこの島を破壊しそうなほどの着地とともに帰ってくる。超怖い。

 

 

 僕は窓枠に片足を乗せ外光を妨げていた厚めの扉を開く。

 

 

 久しぶりの外。あいにくと、夜空に散らばる星は無く、僕の心の内を映し出す鏡のように弱々しく、けれどどこか泣いているかのような雨が降っている。

 

 

 (神界にいた頃)にちょっとした事故で習得した技術で極限まで自分の存在を薄める。

 

 夢にも思わないよね。寝たきりの弟が、こんなことできるってこと。

 

 窓枠に乗せていた足に力を込め、飛び出す。

 

 

 着地した地面は雨のせいでぬかるみ、危うくコートが汚れかけ、寂しさや名残惜しさがドッと押し寄せる。

 

 それを誤魔化すように跳ぶ。

 

 

 枝に飛び乗り、ほかの枝に飛び移る。立ち止まれば、もう進めない。約束さえ、果たせなくなる。

 

 

 

『もしもね、ルナがお外で遊べるようになったらね、やりたいこと好きなだけしよ!約束!』

 

 

 最愛の姉さんとの初めての約束。

 

 たとえ寿命が削れようと、破る理由には成りえない。

 

 

 **********

 

 

 今僕は初めての海を、海の上を駆けながら眺めている。

 

 

 僕の心を映し出した(海面)は雨にうたれて波紋を作り、揺れ動き、新月の闇に呑ませまいと、半分欠けた月が、光を強める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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