勇者達の心は平行世界と繋がったようです   作:ルシエド

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伊予島杏の場合

 伊予島杏は体が弱い。

 子供の頃は入院、入院、また入院。

 勇者になったことで体が丈夫になってようやく、まっとうに運動をしていける人間になれたというくらいには病弱な人間だ。

 季節の変わり目にはよく体調を崩していた、とは本人の談である。

 

 その影響で、頭は悪くないはずなのに、留年して一つ下の学年で学校に通うことを余儀なくされた病弱の薄幸の美少女。

 読書が趣味で、部屋にこもって本を読んでいることが多く、入院生活が長かったことも考えれば深窓の令嬢の一種とも言えるかもしれない。

 

 と、なれば。

 平行世界の中に、無いわけがない。

 

 『伊予島杏が病死した世界線』が、ないわけがないのである。

 

『……ま、まさか』

 

 平行世界の壁を超える、伊予島杏と伊予島杏のマインドシャッフル。

 

 その結果、勇者・伊予島杏の精神は平行世界に存在する伊予島杏の一人と入れ替わり―――気付けば、墓場から離れられない地縛霊となっていた。

 

『生きてる間に、地縛霊になる体験をすることになるなんて……』

 

 なんと、バーテックスと戦っている世界の生きている勇者の杏と、バーテックスが現れなかった世界で病死した杏の幽霊の精神が入れ替わるというとんでもないことが起きていた。

 亡霊の霊体に生者の精神。

 ちぐはぐな存在になっていることは、杏自身が一番よく分かっていた。

 

『勇者の強化の恩恵は大きかったんだなぁ……私、こっちだと病死してるんだ』

 

 杏からすれば、病の恐ろしさが肌に染み込んでくるようなその感覚は、懐かしさすら覚えるような気持ちだった。

 

 子供の頃は、杏は自分の病弱さがもたらす全てに怯えていた。

 病の苦しみ。

 死という終わり。

 通院生活が続くことによる、学校での疎外化。

 親を始めとする周りの人達皆が、"かわいそうなもの"を見る目で杏を見るという最悪の、段階的進行。

 杏はそれら全てを恐れ、それら全てに絶望していた。

 

 杏の心から病を恐れる気持ちが消えたのは、病弱な自分の体を嫌う気持ちが薄れていったのは、いつからだっただろうか。

 

(やっぱり、勇者になった時かな)

 

 勇者になることで、杏の肉体は強化され、病弱さは消えてなくなった。

 こうして別世界の病死した自分を知ると、杏は改めてその幸運を噛みしめる。

 

 勇者になった杏は病弱ゆえに死ぬことはなく。

 勇者になれなかった杏は病弱故に、病死の可能性が付き纏う。

 伊予島杏に勇気をくれたのが戦友・土居球子ならば、杏が生まれつき抱えている絶望を軽減してくれたのは、勇者の肉体だったと言えるだろう。

 

『幽霊って本当に足無いんだ……』

 

 杏は自分の体を見下ろしてみる。

 伊予島杏は発育がよく、同年代よりも一足先に"大人の体"になっているタイプである。

 少なくとも、勇者の杏はそうだった。

 

 だが今幽霊としてふよふよ浮いている杏の体は、病死者らしくかなり痩せていて、幽霊らしく足がない。

 健康体の勇者の体に慣れた杏からすれば、戸惑うばかりだ。

 苦しんで痩せ細って死んでいったことが、幽霊になった体を見ただけでひと目で分かる。

 

『?』

 

 この世界での自分に思いを馳せながら、杏が墓場にふよふよと浮いていると、杏の墓の前に少年がやってきた。

 ここは神社とセットの墓地。

 何故か高台にあるせいで、地獄のような階段を登らないと来られない。

 そのせいか、神社自体に人がいることがほとんどなく、墓場に立てられた墓石も少なく、人が訪れることも滅多になかった。

 

 ましてや、杏の墓に来てくれた、杏と同年代にも見える少年である。

 杏の興味は一気にその少年へと向いた。

 少年が墓前に供えたストックの華の清純で、清楚で、清廉な色合いもまた、杏の興味を引く。

 

「よ、また来たよ」

 

 少年は杏の墓の前に立つ。

 花を添えて、墓を掃除して、一分、二分。

 三分が過ぎても動かず、四分が過ぎた頃に瞳を閉じた。

 音のない静寂。

 何も言わず、何もせず、微塵も動かなかった少年が、手で顔を覆う。

 

「……ふぅ」

 

 無言のまま泣いているのだと杏が気付いたのは、手の隙間から透明な雫が流れ落ちるのを見てからであった。

 

 この少年は、この杏ではない、この世界で病死した杏のため、涙を流していた。

 

『わ、わっ、ど、どうしたら……声をかけて……って死人に口なし!』

 

「ごめんな、墓参りに来て、勝手に泣いて」

 

『私の声、聞こえてないよね……? 泣き虫さーん?』

 

「でも生前泣き虫だったお前よりはマシだって思いたい」

 

『聞こえてないみたいだけどこの人なんだかさらっとひどい』

 

 私の友達だったのかな、と、杏は他人事のように思った。

 

「また来るよ」

 

 何かが起こったわけでもない一日が終わって、意識が元の世界に戻る。

 そしてまた、杏の意識が交換される。

 勇者の杏が、自分の体を死んだ方の杏がどう使っているか気になって調べてみたが、何もしていなかった。

 本を読んでいたくらいで、本当に何もしていなかった。

 

(まるで、生きてしたいことが何も無いみたい)

 

 また精神が入れ替わり、入れ替わっている間に、また墓にかの少年が来た。

 また精神が戻り、入れ替わって、生者の杏が幽霊として墓場を漂っていると、同じ少年がまた杏の墓参りにやってくる。

 今の時期はお盆でもない。

 なのに、家族でもなさそうな少年が定期的にやって来る。

 墓石に向けて話しかけて、何の返答も得られないまま、帰っていく。

 

 習慣のように墓参りし、墓に語りかけ、悲しげな雰囲気で帰路につく。

 その少年の方が、杏よりもずっとずっと幽霊のようだった。

 

 

 

 

 

 何度も同じ世界と心の交換が繰り返される。

 杏からすればこの世界を幽霊として眺めるのは、現実性が伴う夢のようなもの。

 夢を眺めるように世界を眺め、少年の墓への語りかけ――独り言――を聞いている内に、この世界の人間でない杏にも、細かな事情が飲み込めてきた。

 

 神社の管理者の妙齢の女性が、長い長い階段を上がって今日も墓参りにきた少年を迎える。

 

「あらりっくん、今日も来たのね」

 

「お邪魔します」

 

 小難しい事情があったわけではなかった。

 中学校で杏の一つ上の先輩だった少年と杏は、図書室で少し話すようになった。

 時が経ち、友達になった。

 図書室でしか会わない友達、図書室でしか話さない間柄。

 次第に病弱だった杏は悪化し、学校に来なくなり、図書室での友情は露と消えた。

 

 病室で伊予島杏とこの少年が語り合ったのも、そう長くはなかったという。

 

『友達、か……そういえば、私が入院してた時は、友達なんて全然来なかったな』

 

 どうにもならなかった。

 生きたかったこの世界の杏は生きられず。

 生きてほしかった少年の想いはどこにも届かず。

 少年の胸の内に、"何もできなかった"という後悔だけが残った。

 

 怪物は来なかった。

 杏は勇者にならなかった。

 神が体が弱い少女を救いたもうことはなかった。

 

 人は病には勝てない。

 英雄さえも病には勝てない。

 生まれつき体が弱い人間は、その運命に勝てなければ若くして死ぬ。

 世界の摂理に沿って、至極当然のように、この世界の杏は病死した。

 

「よう伊予島、また来たぞ」

 

 少年が優しく笑って、今日も墓前に来た。

 "生きていない"ことを幽霊と言うのなら、この少年はまさに幽霊だ。

 死んでいないのに、生きていない。

 逆に、今ここに幽霊として浮かんでいる杏は全く幽霊ではない。

 彼女はまだ生きていて、自分の世界で一日一日を懸命に生きている少女である。

 

(この人は、私の死を悲しんでる。

 悲しんでるから……悲しむ以外に、何もしてない)

 

 死んだ杏という繋がりをもって、幽霊なのに生きている勇者の杏と、生者であるのに生きていない少年が、言葉も交わせぬままに、墓石を挟んで相対している。

 それは、とても奇妙な構図だった。

 

「うん、やっぱ墓周りのゴミ拾いはしたほうがいいな……それじゃ、また来るよ」

 

 眉を顰めて、杏は去っていく少年の背中を見つめる。

 

 感謝よりも先に、虚しさを感じた。

 律儀さよりも先に、執着を感じた。

 誠実さより大きく、悲しみを感じた。

 悲しみに突き動かされ、執着から抜け出せず、虚しい墓参りを続ける少年。

 それが、今ここにいる杏が、死した杏を想う少年に感じたものだった。

 

 少年が墓に来るたびに、杏は「また来てほしい」ではなく、「もう来ないでほしい」という思考をしてしまう。

 来てくれたという感謝よりも、ここに通わせてしまっているという申し訳無さや、心を切り替えて次に進んでほしいという願いの方が、ずっと大きいからである。

 

 違う世界の、勇者になった杏だから"自分のことを忘れてほしい"と思っているのか。

 それとも、この世界の病死した杏もまた"自分のことを忘れてほしい"と思っているのか。

 『この杏』には分からない。

 

(でも私なら……死後にもずっと思われてることに、嬉しさを感じててもおかしくないな)

 

 自分のことだから分かりそうなものなのに、平行世界の自分のことだから分からない。

 

 何気なく、杏はふと思う。

 

(私が死んで、泣いてくれる人は、何人いるんだろう……?)

 

 球子に、友奈に、ひなたに……と、仲間が泣いてくれるかどうかに、思いを馳せる。

 誰かが泣いてくれたなら。

 それだけで、自分の人生に意味はあると思えるかもしれないと、杏は誰にも聞こえない幽霊の声で独り言ちた。

 

 

 

 

 

 繰り返しは、愛着を湧かせる。

 何度も来てくれる少年に、杏は次第に愛着を抱き始めていた。

 例を挙げるなら、忠犬に対し人間が抱く感情が近いだろうか?

 

 少年が墓前でするのは、生前の楽しかった話、最近出た小説の話、伊予島杏の家族の近況、そして生前気恥ずかしくて謝れなかったことの謝罪が多かった。

 

「あの時は、伊予島の読んでた本のネタバレして、本当に悪かった」

 

 時には、微笑ましい謝罪もあった。

 

「『おっぱいの当たり屋』とか言って悪かった。

 胸を見たりしてたのは正直謝る。

 でも伊予島にめっちゃ怒られてちょっとイラッとしちゃったんだ。

 見ちゃうのはしょうがないんだ。

 いやこっちが悪かったのはそうなんだけどお前のおっぱいでそのスタンスだと当たり屋だよ」

 

『な、な、ななななななっ!』

 

「ごめんな伊予島……許してくれ……」

 

『許しませんよ! ちょっと聞いてるんですか! あっ聞こえてないんだった』

 

「伊予島は優しいから許してくれるよな……」

 

『許しませんってば!』

 

 時には、杏視点物凄い謝罪もあった。

 

 それが"痩せ細る前の伊予島杏の友人で、杏が痩せ細って死んでいくのを見ていた友達"だったのだということを意味するのだと、杏は次の日になるまで気付かなかった。

 

 対話がなくとも、言葉を通じて伝わってくるものもある。

 この少年は、きっと伊予島杏のことが好きだったのだ。異性として。

 ただ、異性として意識している様子はない。どこまでも気安く墓に語りかけている。

 きっとその恋愛感情を意識する前に、死別してしまったのだろう。

 

 当事者のようで第三者、という視点が杏にそれを気付かせた。

 『伊予島杏への好意』というものも、杏は向けられているようで向けられていない。

 そういう微妙な立ち位置なので、杏はなんだか不思議な気持ちになっていた。

 

(な、なんだかむずがゆい気持ちに……)

 

 自分のことなのに、自分のことではない感覚。

 それが"既に終わった決して報われない恋"なだけに、不思議な気持ちは加速する。

 

 杏が少年に向ける気持ちは、慕情でもなければ、友情でもない。

 同情であり、哀情だった。

 

「あらりっくん、今日も来たのね」

 

「今日で最後ですよ」

 

 また今日も、少年は墓にやってくる。

 

『最後?』

 

 だが、今日で最後だという。

 気になって、墓の敷地内にて、杏は少年の後を追ってみた。

 少年は墓とセットの神社に参拝し、神社の社の前で立ち止まっている。

 

「よし、これで百回」

 

 神社に参拝すること百度。

 墓参りと同時に参拝すること百度。

 民間信仰においては、それに大きな意味がある。

 

『あ……お百度参り?』

 

 お百度参り、という参拝のやり方を聞いたことがない、という人はあまり多くはないだろう。

 神社の入り口から本堂まで行って参拝し、これを百度繰り返す。

 お百度を踏み神へと祈り続けることで、心からの願いを神に聞き届けてもらう。

 これがお百度参りだ。

 

 だがこれは、大昔に百日詣と呼ばれたものの簡略化である。

 本来の百度参りは一日に一回参拝し、百日間休まず参拝し続けることで初めて祈願を神に届けることができる、というものだった。

 一般化の過程で、一般人が一日でもできるように簡略化されたのである。

 

 この世界の杏が死に、ここに埋葬されてから、百日が経った。

 百日の墓参りと、百日の参拝が終わった。

 少年が神に捧げた祈りは一つだけ。

 

「伊予島が次の人生で幸せになれますように」

 

『―――』

 

 神がいるのかも定かではない、神が聞き届けるかも分からない、そんなことは分かった上で捧げた少年の本気の命、

 

 少年の百日の後悔は、ここで終わった。

 

「友達だったのに、何もしてやれなくて、ごめん」

 

 友達のために何もしてやれなかった無力な子供が、友達のために積み上げた百日間。

 

「こんなことしかできなくて、ごめん」

 

 この世界の杏の死の後の百日間。

 別の世界の杏が見守った百日間。

 

「……もう来ないよ。でも、気持ちは変わらない。ここに来なくなるだけだ」

 

 少年の別れの言葉に、勇者の杏の心を内包していた幽霊の体が、成仏していく。

 少年の言葉が幽体を通じて、死んだ方の杏の心に届いたのだろうか?

 成仏が進み、幽霊の杏が消えていく。

 

『ああ、なるほど』

 

 少年がここに来ていたのは、後悔があったから。心残りがあったから。

 なら、幽霊の杏がここに留まっていたのは?

 成仏しない幽霊ならば、その心残りはどこにある?

 

『あなたの心残りは……この人がお墓参りに来てたことだったんだね』

 

 生者は死者を想って墓場に足を運び。

 死者は生者を想って墓場に留まり続け。

 最後まで、言葉を交わすことも、想いを交わすこともなく。

 

「さようなら」

 

 少年の別れの言葉を最後に、生者と死者は別々の道に旅立って行った。

 

 

 

 

 

 この世界における『物語』は、もう終わっている。

 少年は杏にとっての何かになることもなく。

 杏は少年にとっての何かになることもなく。

 ここから先に、少年と杏の物語が何か新しい1ページを作ることもない。

 

 既に終わった物語が、ここで一区切りを付けて、本当の終わりを迎えた。

 その終わりを、ここではない世界の勇者・伊予島杏が見届けた。

 ただ、それだけだった。

 

 

 

 

 

 『大事な友達の片方を置いてもう片方が死んでしまう』ということは、とても悲しいことなのだと、勇者の杏はその世界ともうひとりの自分から学んだ。

 

 

 

 

 

 元の世界に意識を帰還させた杏は、死者であった杏がこの世界に残した一行だけのメモを見つける。

 

『私ができなかったことを―――』

 

 あの世界の病死した伊予島杏は、BADENDだったのだろうか。

 何かを成せたわけでもなく。

 命と引き換えに、何かを残せたわけでもない。

 やりたかったことが沢山あったはずだろうに、それを何も成せないままに、病気で霧と散るように死んでしまった、かの世界の伊予島杏。

 

 客観的に見れば、きっとBADENDだろう。

 "本人が幸せだったらBADじゃない"と言う者もいるかもしれない。

 だが、そうでなかったことは、同じ杏である彼女が一番よく分かっている。

 

(生きたい。生きて、幸せになりたい。……私はきっと、死の際にだってそう思う)

 

 大切な人を置いていくことが心苦しくて、死にたくなかったはずだ。

 もっと長く生きて、もっと幸せになりたかったはずだ。

 同じ杏だから、それがぼんやりと分かってしまう。

 

 「私ができなかったことを」というこの最後の願いは、負け惜しみのようなものだ。

 満足して死んでいった人間の遺言などでは、決して無い。

 無念で、悲しくて、辛くて、叫びたくて、でももうその人生はとっくに終わってしまっていて。

 

 ―――それでも、書かずにはいられなかったのだ。

 

 病弱な体でもなく、大切な友達と歩んでいくこともできる、勇者の杏に向けて。

 

「うん」

 

 病で死ぬかもしれない杏。

 戦いで死ぬかもしれない杏。

 彼女の運命は事実上二者択一だ。

 

 勇者にならず、病死した世界線はもう見た。

 戦死した世界線はまだ見ていない。

 この世界の杏は、病死する可能性を抹消し、戦死する可能性を得た勇者。

 そう思うだけで、杏の心と体は恐怖に震え上がった。

 

(病には頑張っても勝てないけど、頑張れば敵には勝てる)

 

 そう自分に心の中で言い聞かせ、震える心を奮い立たせる。

 

「頑張ろう」

 

 大事な友達を置いて死んでしまった結果、友達を悲しませたかの世界の杏を想う。

 

 ああはならないようにしよう、と杏は強く決意した。

 

「何かかっこいい顔してるな、あんず。良いことでもあったのか?」

 

 そんな杏に、歩いてきた球子が声をかけてきた。

 大事な人。

 強い繋がりの片割れ。

 杏にとってもっとも大切な戦友。

 

 自分が死んだ時に他の人が誰も泣いてくれなくても、タマっち先輩は泣いてくれる、という根拠のない確信のようなものがあった。

 だからこそ。

 だからこそ、タマっち先輩を残して自分が死ぬことだけは駄目だと、杏は想う。

 

 "杏の死に泣いていた少年"の姿が、少年らしい少女である球子の姿に、ダブって見えた。

 

「まずはタマっち先輩を守れるようにならないとね」

 

「どうした突然。十年早いぞあんず!」

 

 片方だけが死ぬならいっそ、二人一緒に死んでしまった方がマシだとすら思える。

 悲しませないためなら、それでもいいかと思う心がある。

 片方だけ残されることが一番残酷で辛い、と杏の頭は考えてしまう。

 

(でもやっぱり……誰も死なないのが一番だよね)

 

 杏は物騒な方向に走り始めていた自分の思考を自嘲して、苦笑と微笑みが入り混じったような笑みを浮かべた。

 

 

 




 夜から朝まで即興で書いてこの程度の文字数は本当に病み明け感ありますねイェイ
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