side凪人
あの大会の結果、見事俺達閃電中にはスポンサーが付いた。企業は大手の楽器製造会社、『神童インストルメント』だ。あの神童財閥の系列社でもある。
神童財閥ーーーつまり、あのイナズマイレブンGOの神童拓人の父親がトップに立つ財閥だ。
正式にスポンサー契約を結ぶ際に監督として会田監督、キャプテンとして星宮、強化委員として俺が挨拶したんだけど、その際神童財閥総会長の側にちょこんとちっこいのがいた。てかあの子普通に神童拓人だった。なんかすっげぇキラキラした目でガン見された。
それで契約の話をしていればてくてくとその子は俺の足元に来て、下ジャージの裾を小さい手でギュッと掴んで来た。その手にミニサイズのサッカーボールを持ちながらパクパクと口を動かそうとして……でも何も言って来なくて俺は少し困惑した。
すると総会長さんが代わりに神童……いや、拓人君は天河原中との試合を観てからずっと俺の事が気になってたようでサッカーを教えて欲しかったらしい。シャイニングランスで決めたのを観て大興奮だったんだとか。
中々話を切り出せなかったのは元々人見知りが激しくシャイだった為だとか。そういやGO原作でも泣き虫だったり色々あったからなあの子。
とりあえずその事については快く了承しておいた。偶に相手をする感じで。小さな子の憧れになるのは悪い気はしないし、本人がサッカーをやりたいのなら教えてあげるのは何ら苦ではない。………中学生になったら雷門じゃなくて閃電に入ってしまうんじゃないかと少し不安になったが。
そして何よりのビッグニュースが……、
「これが……新しいユニフォームだぁ!!」
『おおおーーっ!!』
そう、スポンサーが付いた事から心機一転という事で俺達閃電中のユニフォームを新デザインの物に変える事になったのだ。これぞスポンサーの粋な計らい。しかもそのユニフォームのデザインは原作イナズマイレブンGOの天馬世代の雷門と全く同じだった。これは俺が一番驚いた。勿論、真ん中には青字で『SHINDO』とある。
………エイリア学園が来なかったから絶対にGOはこの目で見られないっていう事へのあの神様からのせめてものサービスって事なのだろうか?だとしたら少し複雑だ。
「これが僕達の新ユニフォームかぁ……かっこいいなぁ!!」
「なんかこう……気合いが湧き上がってきますよね!!」
「スポンサーも付いて新ユニフォームも……斎村さんが来てくれてからなんかすっごい順調ですよね俺達!」
星宮、種田、刀条を中心に和気藹々と盛り上がっているな。……けど、フットボールフロンティアが始まるまではただ勝ち続けるだけなんてさせるつもりは無い。負ける事を忘れたら意味が無いからな。優勝するにはどちらも必須だ。その後世界を相手にするなら尚更だ。
「さて、ここで重大発表だ!」
「?重大発表……?」
「定期的にあるチームとの合同練習を行う事にした。あいつらのレベルを目の前で見た上で挑み続けるんだ。これまで戦ったどのチームよりも強いチームだ。勿論あの王帝月ノ宮よりもな」
「王帝月ノ宮以上……!?」
王帝月ノ宮の名前を出すとこいつら全員の表情がより真剣なものになる。こいつらからしても王帝月ノ宮は絶対に倒したい相手なんだろう。まぁあれだけズタボロにされたからな。リベンジはしたいだろう。
そして実際に両方と戦った俺だからこそ判断出来る。王帝月ノ宮の成長スピードにもよるから『アレスの天秤』の原作が始まる頃にはどのくらいか分からないが……現時点ではあいつらは王帝月ノ宮より遥かに強い。
「それで……そのチームは……?」
神妙な顔付きで尋ねる星宮の言葉に俺は口の端を吊り上げながら答えた。
「帝国学園」
****
side三人称
サッカー強化委員派遣より約三ヶ月。閃電イレブンは東京のサッカー名門校、帝国学園を訪問していた。
帝国学園と言えば昨年の地区予選決勝にて雷門に敗北するまで無敗神話を誇った学校でそれまで過去40年に渡ってフットボールフロンティア全国大会で優勝し続けた強豪チームである。
昨年の全国大会では前年度優勝校に与えられる特別出場枠にて参戦。惜しくも初戦で世宇子中と当たり、一回戦敗退となったが、世宇子の神のアクアによるドーピングが無ければ間違いなく決勝戦にまで勝ち上がっていただろう。これは世論の大半が同意している意見だ。
「まるで要塞じゃねーか……こえー」
城之内のコメントに海原がコクコクと頷く。この物騒な雰囲気の校舎は外部の学生からすれば見るだけで緊張を誘う。こんな恐ろしい校舎だが、帝国学園はサッカーの実力だけでなく、学力でも全国一位を誇る。
「懐かしいな。ここで鬼道達に勝ったんだよな。………鉄骨が落ちて来た時はマジでビビったけど」
「斎村君……本当に帝国学園との合同練習を定期的に……?」
「ああ!今回は俺達が訪問するけど、一回ずつ交代で次は向こうが俺達の学校に来る。それと、これとは別に雷門に行ってイナビカリ修練場でも特訓するからハードワークになるからそのつもりでな」
「というか……よくOKして貰えたね。僕達こないだまで全然勝てなかったのに。……未だ弱小のレッテルは剥がし切れてないし」
「大丈夫だって!俺から風丸と佐久間に頼んだのもあるけど、あいつらだって王帝月ノ宮との練習試合を観て閃電にその価値があると判断したからOKしてくれたんだ!もっと自信を持て!」
少し不安なのかやけに深呼吸の多いサトルとどこか楽観的な凪人。そして二人の会話をよそに熱く燃え上がっている堂本。
「強豪帝国学園っ!!どんな練習してんのかなぁ!!くぅ〜っ!」
「お前はもーちょい堂本を見習え。あんな熱血馬鹿になれとは言わんが」
「……うーん」
そして帝国学園サッカー部のマネージャー(男子)に案内を受け、控え室でユニフォームに着替えてグラウンドに向かえば帝国イレブンが既に準備運動を始めていた。
「……来たか!斎村!」
「よっ!ひっさしぶりだなぁ!!風丸!元気だったか?」
凪人は朗らかな笑顔で帝国学園に強化委員として派遣された風丸に話しかける。風丸もまた久しぶりに会った友達との会話は少なからず楽しみだったようで笑いながら話す。
「ああ。しかし今回の合同練習の件は驚いたよ。お前なら円堂か豪炎寺に頼むような内容だったからな」
「つっても修也はともかく、円堂の利根川東泉はまだ部員集めの段階じゃん……あいつ大丈夫かな?来年のフットボールフロンティア出れるよな?」
「……まぁ、円堂なら大丈夫だろう。………多分」
若干円堂の現状が心配な二人であったが、今は強化委員としてやるべき事に集中する。円堂ならきっと大丈夫だと信じているのだ。多分恐らくきっと。
「木戸川清修だとちょっと距離が遠いってのもあるんだが、閃電の今後の課題の事も考えると風丸と帝国学園っていう組み合わせの方がプラスになると判断したんだよ」
「そうか。でも俺達だって黙って色々と吸収される訳じゃない。閃電の急激なパワーアップの秘訣を盗んで帝国が日本のトップに再び君臨する為の糧にするつもりさ」
だが凪人の真の目的は他にもある。一つは原作無印でイナズマジャパンにメンバー入りした風丸と佐久間に無印並の成長を促す事。これは合同練習する閃電から見ても将来の日本代表から見てもプラスになる。ついでに言えば無印での必殺技を修得する為のサポートやいずれ転入してくるであろう不動明王の情報を得る事。
もう一つはじきに刑期短縮によって釈放される影山零治が帝国学園総帥に返り咲く際に風丸が奴に従う事になる原因を探り、あわよくばそれを排除して防ぐ事。風丸が影山に従うなんてのは結果的に碌な事にならないのは分かっている。……それでも影山が帝国に戻って来るのはどうにもならないが。
(……風丸が影山に従うようになる理由……それを突き止めねぇと)
……後は帝国学園の必殺技…特に連携必殺技を学ぶ為だ。閃電が成長するには帝国学園の統率力による連携を学ぶ必要がある。
そして凪人と風丸の会話を見計らって佐久間が話しかけて来る。
「そろそろ話は終わったか?じゃあ早速始めるぞ」
「ああ!でもその前にこっちから自己紹介しとかないとな。ほら星宮!キャプテンのお前が名乗らないでどうすんの」
「あ、うん!えと……僕は閃電中サッカー部キャプテン、星宮サトルです!ポジションはMFで……」
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side凪人
「よーし、一旦ここまで!30分の休憩だ!!」
『ありがとうございました!!』
流石は帝国学園。かなりハードで質の高い練習だった。今は不在とはいえ、影山の指導能力の高さが良く分かる。閃電の為って意味じゃ組んで正解だったな。この合同練習。
それに、やっぱり帝国学園もかなりレベルアップしていた。今のまま試合をしたんじゃ俺達は絶対に勝てない。風丸のプレースタイルに影響されたのか、個人でのドリブル能力やディフェンステク、そして連携の息の合わせ方が格段に上がっていた。以前は鬼道がタイミングを測らないと撃てなかったデスゾーンを完璧に撃てる程だ。
風丸は風丸で帝国の練習を元にその技能を取り入れてDFよりもサイドのMFとしての能力が上がっている。佐久間と寺門との皇帝ペンギン2号で簡単に堂本のゴッドハンドをぶち破ったし、やっぱメチャ強え。風丸も帝国も。
エイリア学園の事件も無いから風丸は精神的な焦りも見当たらない。無理に力を求めようとしない分、順調にしっかりと着実なレベルアップが出来ている。
……本当にどうしてこいつこのルートで闇落ちするんだ?
「ほら、お疲れ」
「ん。サンキュー」
そんな事を考えてたらその風丸本人からスポーツドリンクを手渡されたので受け取り、飲む。うん、美味い。
「しっかし流石風丸だな。帝国、すっげー強くなってるじゃん」
「それを言えば閃電だってそうだろ?うかうかしているとすぐに追い抜かれそうだ」
「こっちはそのつもりだっての。フットボールフロンティア優勝は俺達が頂く。帝国も木戸川も全部蹴散らしてな」
「ふふっ。俺達だってそう簡単に負けるつもりは無いさ」
……やっぱ雷門の仲間と一緒にいると楽しいな。特に風丸は良い感じに燃え上がらせてくれる。円堂だと逆に熱くなり過ぎて周りが見えなくなる事も多いからな。
「……そうだ、斎村。お前知ってるか?鬼道の事なんだが…」
「鬼道?……確か星章学園だったか?あいつの派遣先のチーム」
「ああ。鬼道が派遣された星章学園は……閃電にも負けない程の成長速度で実力を上げて行っているらしい。いや、強化委員派遣前の実力を考えると無名だが、平均的な実力だった星章学園の方が現在の実力は上だ」
………星章学園か。確か『アレスの天秤』での主人公の一人、灰崎の所属するチームだったな。でも今はまだ灰崎はいないらしいから来年入学するんだろう。前世で観たPVではラストでデスゾーンを撃とうとしていたからかなりインパクトの強い奴だった。宇都宮虎丸とどっちが凄いんだろうな?
「……構わないさ。元々鬼道と派遣先の星章学園は倒すつもりだったんだ。そもそも日本一を勝ち取る為にはどっちにしろ戦うしな。勝つ為にももっと強くならないとな」
結局やる事は変わらない。閃電を強くして、俺自身も強くなる。そして勝つ!実に単純だ。実際にはもうちょっと複雑に考える必要があるんだが。
「じゃ、休憩終わったら必殺技の特訓といこうぜ!ちょっと考えている必殺技を完成させる為に必要な事があってさ……」
こうして、俺達閃電中と帝国学園はフットボールフロンティアが始まるまで定期的に合同練習をする事が決定した。これが風丸が影山に従う理由を知る為、そしてそれを防ぐ為に役立つか……甚だ疑問な所だが。
因みに堂本のユニフォームは三国さんのと同じではなく、天馬のGKユニフォームと同じです。背番号は普通に1。
風丸の強化委員や個人としての能力が原作より高いのは普通に主人公の影響です。