イナズマイレブン -もう一つの伝説-   作:メンマ46号

16 / 41
風丸がアレス原作前のストーリーの準主役になってる件。


帝国学園の新監督

 side三人称

 

 フットボールフロンティア地区予選大会開始数日前、帝国学園ではある問題が浮上しようとしていた。

 

 サッカー強化委員として帝国学園へと派遣されて来た風丸一郎太は先日の練習試合にて全国ランキング1位の星章学園に帝国学園が勝利を収めた事から、強化委員としての手腕をあらゆる人物に高く評価され、認められていた。

 

 しかし本人からすれば星章学園に勝つ事が出来たのは閃電中とそこに強化委員として派遣された斎村凪人との合同練習のおかげでしかなかった。風丸自身は自分の力で帝国学園を強く出来た訳では無いと考え、強化委員として己がどうあるべきかで深く悩んでいた。

 

 そんな時だった。彼の前に雷門の宿敵が現れたのは。

 

 帝国学園の教員達から呼び出しを受け、指定された総帥室に向かえばそこで待っていたのはかつての帝国学園総帥、影山零治だった。

 

「影山……!?」

 

「久しぶりだな……風丸一郎太」

 

「何でお前が……!?世宇子と神のアクアの件で、お前は捕まったはずだ!!」

 

「私は政府考案の『アレス更生プログラム』の実験対象に志願し、その結果として短期間に刑期を終えてこの帝国学園の監督に再就任する。以上だ」

 

「な……!?そんな話が認められるか!!俺だけじゃない!!帝国にはもうお前に従う奴なんか一人もいない!!忘れたとは言わせないぞ!お前がしてきた数え切れない程の卑劣な行いを!!」

 

 風丸は影山が帝国の監督となる事など到底受け入れられなかった。当然だ。影山のこれまでやって来た悪事を考えれば彼を監督として認めるなど愚か者のする事だ。

 

 何より影山は友人である円堂守の祖父、円堂大介の仇なのだ。

 

「ククク……まずは先日の星章学園との練習試合の勝利、見事と言っておこう。鬼道が指導し、指揮を執ったあのチームに勝つとは強化委員として貴様は中々に有能だと評価されているようだな」

 

「あ、あれは……」

 

「……知っているとも。あの勝利と帝国の成長は斎村凪人のおかげ……。貴様自身は何も出来なかった。それなのに分不相応な評価を受けている現状が苦しくて仕方ないのだろう?」

 

「っ!!」

 

「敢えて聞こう。風丸一郎太、強化委員として貴様が帝国学園に来た理由は何だ?日本を世界に羽ばたかせる為。……違うか?」

 

 影山は的確に風丸の心を抉る。そして影山の背後に設置されていたモニターが起動し、風丸に……否、雷門イレブンにとって苦々しい思い出である試合……バルセロナ・オーブとの親善試合が映し出された。

 

「世界を相手に勝負を挑み……大敗を喫した。日本一の座に君臨した雷門が不様だったな……」

 

「……」

 

「あの試合で世界に多少なりとも通用したのは斎村凪人ただ一人だったな」

 

「……めろ」

 

「円堂や豪炎寺……鬼道ですら碌に戦えなかった。斎村がいなければ8点目の失点を防ぎ、2点を捥ぎ取る事など到底出来なかっただろう。勿論お前など戦力外でしかなかった」

 

「やめろ!!黙れ!!」

 

 思わず叫んでいた。あの親善試合以来、ずっと感じていた無力感を刺激され続ける。風丸にとっては非常に苦痛な仕打ちだった。それでも尚、影山は続ける。

 

「雷門が不様な負け方をした時、お前は何を思った?どんな事をしてでも日本サッカーを強くしたい。星章との練習試合を経て、斎村の様に帝国を強くしたい。斎村の様に自身が強くなりたい。そう思ったんじゃないか?」

 

「……!」

 

「帝国が強くなれば敵もまた強くなる。これは斎村が証明した事だ。帝国との合同練習を経て、閃電の実力アップは更に拍車がかかり、先日の練習試合から星章もまた同様に強くなって行くだろう。

 

それこそが今の日本サッカーに必要な化学反応を呼ぶのだ!!」

 

 そして影山の背後のモニターにはバルセロナ・オーブとの試合で不様に這い蹲る風丸と……それとは対照的に化身を出現させてバルセロナ・オーブから点を捥ぎ取った凪人が映し出される。

 

「お前の手で帝国を再び最強にのし上げ、斎村と並び立ち、共に世界に羽ばたく。その道筋を教えてやろう」

 

 凪人と並び立つ。その言葉に風丸は抗い難い魅力を感じる。風丸の眼から見れば今日本で最も世界に近いプレイヤーは円堂でも豪炎寺でも鬼道でもなく……凪人だった。

 

「影山零治……お前は……!」

 

「答えろ。私に従うのか否か」

 

 風丸の中にはあらゆる感情が渦巻く。帝国学園は強くなった。鬼道が指導し、全国トップに立った星章学園に勝つ程に。

 

 しかしそれは自身の指導によるものではない。全てあの友のおかげだ。風丸自身の実力アップすらも……。

 

 このままで良いのか?帝国学園が頂点に立つにはいつまでも凪人や閃電の力を借りてばかりではいられない。いずれは閃電とも戦わなければならないのだ。

 

 だが影山などに従っても良いものなのか?奴の悪事を知っていて従うなど絶対にあり得ない。だが鬼道の才能を見出し、帝国を過去40年に渡って全国優勝、無敗を誇らせた彼の監督としての能力は認めざるを得ない。

 

 どうするべきか?自分では力不足なのは事実。

 

「……俺は……」

 

「さぁ……どうする?」

 

 

 

 従います。

 

 

 その言葉が喉元に出掛かった瞬間にまたあの友の言葉が脳裏に過った。

 

 

『閃電の今後の課題の事も考えると風丸と帝国学園っていう組み合わせの方がプラスになると判断したんだよ』

 

 

『しっかし流石風丸だな。帝国、すっげー強くなってるじゃん』

 

 

「…………!!」

 

 あの時、彼は何と言った?閃電のレベルアップには風丸と帝国の力が必要だと言っていた。風丸の指導能力を認め、帝国は強くなったとも言っていた。

 

 斎村凪人は思慮深い性格ではあるが、決してお世辞や嘘偽りで相手を持ち上げるような発言はしない。駄目だと思えば遠慮なく……それこそ相手がショックを受けようが知った事かと言わんばかりに酷評してこき下ろす。相手が円堂であったとしてもだ。風丸ならば尚更だ。何より彼の幼馴染がそんな感じで評価を受けて割と本気でへこんだ所を風丸は何度も見ている。

 

 ……ならば少なくとも凪人から見れば、風丸の手で帝国学園をしっかりと強く出来ているのではないか?閃電が強くなる事に風丸が力を貸せていたのはないか?

 

 ふと、そんな考えが風丸に浮かんだ。

 

 だから風丸はこう答えた。

 

「……考える時間を下さい」

 

「良いだろう。一日だけ待ってやる」

 

 従う他に答えは無い。そうなるに決まっている。そんな確信があったからこそ影山はそれを承諾する。

 

 退室した風丸は即座にスマホを取り出して凪人へと電話をかける。全ては知りたいからだ。彼が風丸と帝国の実力についてどう思っているのかを。彼ならば嘘偽りなく答えてくれると分かっているからーーー…。

 

****

 

 翌日、風丸は佐久間と源田と共に帝国イレブンのミーティングルームに向かっていた。風丸と共にそこへ向かう二人は少しばかり苦しそうな表情だ。

 

「まさか予選大会開始ギリギリで奴が帝国に戻って来るとは……!!」

 

「あんな事があった後だから……学校側も慎重に選ぶと思っていたんだがな」

 

「ああ……。だが、昨日レギュラーメンバーで話し合った通りの方針で進めるぞ。それしか方法は無い」

 

 そうして三人はミーティングルームに入室する。すると既に帝国イレブンのレギュラー達は揃っており、二軍選手達は佐久間、源田、風丸の登場に合わせて帝国学園特有の敬礼をする。

 

「……随分と早く全員揃っているな」

 

「事が事ですからねぇ……」

 

「何たって新監督が奴になってしまいましたからね……」

 

「もうすぐフットボールフロンティアの予選も始まりますから、早目に解決しておきたいんです」

 

「……それもそうだな」

 

 源田の言葉に五条、洞面、万丈の順で答えていく。昨日、凪人に電話した後、風丸は彼らに現状を全て説明したのだ。

 

「それはそうと佐久間、あいつ誰だよ?」

 

 そんな中、大野がキャプテンである佐久間に尋ね事をする。その視線の先……ミーティングルームの最前列には見覚えの無いモヒカンヘアの少年がいた。

 

 ただでさえ監督の件で帝国は立て込んでいるのだ。面倒事になる前にどうにかしようと佐久間は彼に話しかける。

 

「お前、誰だ?」

 

「さぁな」

 

 しかし彼はそんな佐久間の言葉に取り合う事もなく、適当にあしらおうとする。そんな彼に反感を抱いた寺門が突っかかる。

 

「おいキャプテンに対して失礼だぞ!!」

 

「キャプテン?」

 

「佐久間さんも知らないんですか?てっきり後で紹介してくれるのかと……」

 

「俺は何も聞いていない」

 

 キャプテンである佐久間が彼を知らない。彼の方も佐久間がキャプテンである事を知らなかったようで嫌々な感じを醸し出しながら口を開く。

 

「俺もアンタがキャプテンなんて聞いてない。鬼道がいないせいで大しt…「ああ、すまない。すっかり忘れていた」……忘れてただぁ!?」

 

 佐久間に対して嫌味を言おうとした先に風丸が発言。どうやら強化委員である風丸は彼の事を知っていたようだが、その風丸が忘れていたという発言は彼も看過出来なかったようで、焦りながら食いつく。

 

 彼自身、おかしいとは思っていたのだ。帝国学園に転入してサッカー部に入部する事が決定していたのに部員達に話が通っていない事は。

 

「風丸、知っているのか?」

 

「ああ。昨日あんな事があって伝えるのを忘れていたが、彼は不動明王。帝国イレブンに加わる事になった新たな仲間だ」

 

「おい!忘れていたってどういう事だ!?」

 

「そうか不動か。……まぁ、忘れても仕方ない。帝国は今、大変な事になっているからな」

 

「おい!キャプテンなら忘れても仕方ないで済ませんなよ!強化委員だとしてもちゃんと叱れ!!」

 

「うるさいぞ。今俺達はお前に構っている暇なんて無いんだ。少し黙ってろ」

 

「!?」

 

 理不尽……と言うよりあまりにも雑な扱いにキレる以前に唖然とする不動。風丸、佐久間、源田は不動の事を話した後は何か別の事で話し込んでいる。それでいてその顔は真剣そのもの。監督関連とは分かるが、肝心の監督が誰なのか…名前が一切出ない故に不動はまだ現状を理解し切れていない。

 

(……ったく、何なんだ?甘っちょろい気持ちでサッカーやってる連中なんざと組むなんて反吐が出るが……こいつらはこいつらでムカつく)

 

 不動は最初帝国学園のキャプテンとして知られる天才ゲームメイカー鬼道目当てで帝国に来たがその帝国には鬼道はおらず、キャプテンは佐久間、強化委員として風丸がいるという現状。

 

 鬼道が帝国にいると思って来ている辺り、不動は情報収集が甘かった。

 

 とにかく今不動が何か嫌味を言って佐久間をイラつかせようとしても相手にされないのは目に見えていた。何を言っても今の不動は道化でしかないだろう。

 

 そんな事を考えていると突如ミーティングルームの照明が消えて、一箇所だけに光が集中する。何事かとそちらを見やれば床のスライドが開き、エレベーターの様にある人物がせり上がって来た。

 

「な……!?」

 

 不動はその人物ーーー影山零治の顔を知っていたのか驚愕している。対して帝国イレブンは警戒の色を隠さずに影山を睨む。

 

「おい、俺を忘れても仕方ねぇって……」

 

「見ての通りだ。厄介な事に戻って来やがったんだ」

 

 不動と源田のやり取りを見て影山は風丸が話を通していた事を察する。ならば話は速いと言わんばかりに口を開く。

 

「私が新監督の影山零治だ」

 

「新監督って……新じゃねぇし」

 

「それで風丸一郎太、及びに帝国学園イレブンよ。答えを聞こう。私に従うか否か」

 

 昨日の風丸に迫った選択を影山は帝国イレブン全員に迫る。すると風丸、佐久間、源田が代表して前に出る。

 

「俺達は昨年のフットボールフロンティアの件から、アンタに従わないと決めた。アンタを監督と認める訳にはいかない」

 

「ほぅ?だがそれで良いのか?私は大会に出場する全てのチームを分析した。今のお前達では次に試合をすれば閃電中や星章学園には勝てない」

 

 影山の言葉はある意味正しかったし、帝国イレブンも自覚はしていた。帝国学園はもう絶対王者とは言えない。昨年の雷門への敗北から始まり、世宇子への完敗。強化委員や閃電との合同練習もあるとはいえ、その閃電の急激な成長を最も間近で見ていた上、星章学園との練習試合も辛勝だった。このままフットボールフロンティアでぶつかれば勝利は難しいと言わざるを得ない。

 

「確かにそうかもしれない。だがアンタに全権を委ねる事は出来ない」

 

「だがフットボールフロンティアに出場するには監督そのものは必要だ。ここで突っぱねても俺達は大会に出られなくなるだけだ」

 

「だから……条件付きで、その条件を飲むならお前を監督として認める」

 

「……何だ?言ってみろ」

 

 一応聞く気はあるのか、影山は風丸達にその監督就任の条件の説明を求める。

 そして帝国イレブンが影山の監督再就任に当たって出した条件は以下の通りだ。

 

 ・帝国イレブンは全面的には影山の指示には従わない。試合前に戦術などの指示を出す際にはその全容を全て説明した上で帝国イレブンが従うかどうかを決める。

 

 ・他校の選手及びその関係者に危害は一切加えない。その条件を破ったと判断された場合は帝国学園はフットボールフロンティア出場を辞退する。

 

 他にもいくつかあるが、大まかにはこの二つだ。影山の過去の悪事……神のアクアや試合前に敵選手を潰すといったものがこれに該当する。

 

「……成る程な。良いだろう」

 

 影山はこれらの条件を至極あっさりと飲んだ。影山からすればこの程度の条件は想定内どころか拍子抜けする程のものだった。

 

 勿論風丸達とてこれが完全に影山への抑止になるとは思ってはいない。しかしこれを破れば帝国学園が大会を辞退する事になっている。この話は既に少年サッカー協会の統括チェアマンに通してある。影山は世宇子の件で既に少年サッカー界における地位を失っている為に圧力をかける事は出来ない。多少の効果はあるはずだ。

 

「……後でしっかり全部説明しろよ」

 

 不動は風丸にそう耳打ちする。彼からすれば何から何まで急過ぎるのだ。

 

 そんな中影山は風丸の目を見る。昨日とは違って強い意思を感じる。自分に自信を持っている目だ。

 

(……揺らぎはしないか)

 

 風丸を見て影山はそう評する。どう揺さぶりをかけても影山に都合の良い駒にはなりはしないだろう。

 

「では全員席に着け!これよりフットボールフロンティアを勝ち抜く為の作戦会議を始める!!」

 

 影山の命令に渋々ながらも帝国イレブンは従う。風丸もまた、席に着いて影山を見据える。

 

(……完全にではないにしろ、影山に従うのは気が引けるが……帝国がフットボールフロンティアに出場するにはこうするしかないのも事実だ)

 

「ではこれより、新たな必殺タクティクス、“インペリアルサイクル”の概要を説明する。このタクティクスを使うかは全容を聞いてお前達で決めろ」

 

(だが……日本を世界に羽ばたかせる為にも、俺達が強くなる為にも影山を最大限に利用するべきだ。そして斎村……俺は強くなって、正々堂々とお前と戦いたい!)

 

 その為には……影山を帝国で抑えなければならない。帝国が正々堂々とサッカー界に再び君臨する為に。

 

 影山と帝国イレブンーーー互いの思惑が裏でぶつかり合う中、彼らのフットボールフロンティアは始まろうとしていた。




という訳で風丸は影山に従うという選択をしませんでした。でも監督がいないと帝国はフットボールフロンティアに出場出来ないし、追い出して野放しにするのも危険過ぎるから一応は監督として帝国に置いておくという選択をしました。勿論これは帝国イレブンと話し合って決めた事。

主人公はあくまで風丸自身と帝国の実力向上についてどう思うか聞かれただけなのでこういった裏事情は知りません。

不動が完全に出鼻を挫かれたのは突き詰めればぶっちゃけ主人公のせい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。