というかほぼスポンサーCMの為の回。
side三人称
フットボールフロンティア関東予選グループC。このグループにはある二つの強豪チームが所属している。
昨年のフットボールフロンティア準優勝校、世宇子中。
『サッカー強化委員』として斎村凪人が派遣された事で全国ランキング2位にまで上り詰めた閃電中。
そして今日はその閃電中のグループ予選第二試合なのだ。閃電中は第一試合にて15点もの点数差を叩き出し、大勝利を収めた。先日の星章学園を上回る戦績にあらゆる方面から注目が集まっていた。
-閃電中スタジアム
『さっいむらっ!!さっいむらっ!!さっいむらっ!!さっいむらっ!!さっいむらっ!!』
会場はどこもかしこも斎村コール。昨年のフットボールフロンティア優勝校の副キャプテン兼司令塔…そして大会MVPは伊達ではない。
「わー…凄い観客だ」
稲森明日人は自分達雷門中に『アイランド観光』がスポンサーとして付いた事で晴れてフットボールフロンティアを戦う事が出来るようになり、第二試合の美濃道三中との試合に備えていたのだが、今日は監督である趙金雲の指示により、伊那国島から来たメンバーと雷門サッカー部マネージャーの大谷と共に閃電中の試合を観戦しに来たのだ。
因みに彼らはスポンサーが付いたばかりでまだイレブンライセンスカードを持っていないので一般入場だ。
「俺達と星章学園との試合の時よりも多くないか?」
「閃電中の注目度は本大会の大本命ですからね。ランキングこそ2位ですが、実力は星章学園を上回るとさえ言われているんですよ!」
「えっ?それじゃあ閃電中はどうして1位じゃないの?」
観客の数に驚愕するキャプテン道成、閃電中の事を彼らに説明する大谷。その説明を聞いて疑問に思う稲森。
「ランキングで1位だからって一番強い訳じゃありません。実際星章学園は予選前の練習試合ではランキングで閃電よりも低い帝国学園に負けちゃっていますし。それに閃電と星章じゃスタートラインがまるで違いますから」
「スタートラインが違う?」
「はい。星章学園は強化委員として鬼道君が派遣されるまでごく普通の実力しかないチームでした。地区予選で二、三回戦まで進んだら凄ーいってくらいの。だけど閃電中は別。斎村君が派遣されるまではどんなチームにも勝てなかったんです。過去二年間において公式非公式問わず一度も勝てた試しがない。昔の雷門よりも酷い弱小チームだったんです。それを斎村君が一から鍛え直してメーキメキ強くして行ったんです!」
「……成る程。それで全国ランキング1位2位で見ても重みが違うし、元々の順位差が辛うじて残っているくらいだった訳か」
「そうです!だから閃電中はフットボールフロンティア予選が始まるのがもう少し遅ければ確実に星章学園からその座を奪い取り、1位になっていたと言われているんです」
大谷からの説明を聞いてゴクリと喉を鳴らす現雷門イレブン。元雷門イレブンの副キャプテンであり、『フィールドの軍神』と謳われた天才司令塔の指導……それによって成長した閃電イレブン。成る程、ここまで注目される訳だ。
「実際に強化委員として各地に派遣された元々のサッカー部の皆さんも星章よりも閃電に注目しているそうですし。豪炎寺君とか」
「…!」
豪炎寺の名前が出た瞬間、小僧丸がピクリと反応する。そしてベンチでメンバーと打ち合わせをしているであろう凪人に目を向け、気に入らなそうに睨む。
「伝説のMF、斎村凪人さん……」
「確かに確実に全国大会に進出するだろうな……もしかしたら最強の敵なのかもしれない」
「その前に僕らがそこまで進めるのかですけどね」
氷浦、万作、奥入の順で驚愕しつつ、席を見つけて座る。そして周りを見れば確かに他校の選手達が何人も来ている。
「あっ!見てください!あそこにいるの鬼道君ですよ!」
大谷の声に釣られてその指の示す先に目を向ければドレッドヘアにゴーグル、そして星章学園のブレザーという奇抜なファッションを着こなした天才ゲームメイカーがグラウンドを見下ろしていた。その隣にいるのは先日雷門を完膚なきまでに叩き潰したフィールドの悪魔。何やら話し込んでいるようだが……。
「よく見ておけ灰崎。あれが斎村が作り上げた閃電というチームだ。……ところで、春奈が何処に行ったか知らないか?」
「知るかよ。過保護も程々にしとけ」
何やら話しているようだが、距離のせいでその会話は稲森達には聞こえない。
「!灰崎……!!」
「あいつも観に来てたのか……」
「そりゃあ斎村凪人と言えば……あの鬼道有人のライバル。灰崎が目を付ける程の格上だろうしな……」
雷門の大半が敵意丸出しの視線を灰崎に向けるも当の灰崎は気付いていないのか興味が無いのか、その両方なのか……ただ閃電イレブンを観ている。
「……あと他にも気になる事があんだけどよ」
すると今度は剛陣が個人的に気になった事を指摘する。彼が指す指の先には沢山の女の子達が『凪人 LOVE』と書かれた横断幕を持って黄色い声を上げて凪人を応援していた。
『L・O・V・E!I love Nagihito!!』
「何だよあの応援!どんだけ期待されてんだ!?」
「剛陣先輩、あれは期待されていると言うよりファンなのでは?」
「斎村君ってすっごくモテるんですよ。カッコ良いし、頭も良いから他校の女の子が熱狂的なファンになっちゃうくらいに。プレカの人気もぶっちぎりで1位ですし。強化委員で閃電中に行っちゃった時も学校中の女の子達の大半が凄く落ち込んじゃって一時期学校全体がどんよりと暗くなっちゃったくらいで」
「なんじゃそりゃああああっ!?」
「そ、そこまで行きますか……?」
「ムカつくけどそれ以上に引くな……」
その一団を見れば雷門、閃電を始めとしてあらゆる他校の女子生徒達がいる。星章、帝国、木戸川、世宇子、青葉、etc……本当にあらゆる学校の女子生徒がいる。
「……よく見たら生徒会の人達もいますね」
「杏奈ちゃんはいないみたいですね。でもこの試合に斎村君が出るかは分からないので出なかった時のあの人達の落胆は凄いでしょうね」
「てゆーか、つくしさんは斎村さんの事好きだったりしないの?」
「私ですか?…う〜ん、私的にはやっぱりカッコ良いと思うのは土門君ですね。背も高いし。でもアメリカに行っちゃいましたから…」
どうやら大谷は別段凪人のファンだったりはしないようだ。まぁそんな事はどうだって良い。
「確か部室の方に斎村君が派遣される前の閃電中の試合のDVDがありましたから、この試合と比較すればどれだけ強くなったのかよく分かると思います。……正直、本当に同じチームなのかと疑いたくなるレベルです」
「そんなにか……」
そして遂に試合が始まろうとしていた。スタジアムの大画面にまず相手校のスポンサー広告のCMが流れる。そして今度は閃電中のスポンサー、『神童インストルメント』のCMが流れ始めた。
『天まで届け!栄光のハーモニー!!』
閃電中のグラウンドから凪人がボールを蹴り上げて、そこから雲が引き裂かれる。そして切り開かれた空からは絵本の天使のような羽が生えてユニフォーム姿でデフォルメされた閃電イレブンが楽しげに楽器をズンチャカと演奏しながら舞い降りて来る。中々にシュールな絵面だ。サトルはトランペット、刀条はコントラバス、堂本はスネアドラム、種田はクラリネット、城之内はホルンと言った具合にそれぞれが別々の楽器を演奏している。
そして最後に凪人もまた同様に天使の羽が生えてユニフォーム姿でデフォルメされて指揮棒を振り上げながら閃電イレブンと一緒にパタパタと飛び、最後にその下部に神童インストルメントのロゴが表示され、スタメンが公開される画面に切り替わる。
『神童インストルメントは閃電中を応援しています』
公開されたスタメンの中に凪人の姿は無いようだ。稲森達は凪人のプレーを生で見られない事を残念に思いつつ、いずれは壁として立ちはだかるであろう閃電中の実力を確認しようと観戦する。
そしてその実力は……圧巻の一言だった。
「皇帝ペンギン……7!!」
刀条の指笛と共に虹の七色それぞれの色を持つ七匹のペンギンが出現し、ボールに嘴を突き刺して纏わり付いて前進する。敵のキーパーはそれを真正面から受け止めようとするも耐えられずに押し切られてゴール。
いや、今のも真正面から受けられたのではなく、真正面から突破する為にシュートコースを調整されたものだというのは稲森達にも分かった。それ程に分かり易かった。
堅実で安定したパス回し。ドリブルやブロックにも一切の焦りが無い。基本に忠実。それでいて大胆。どんなチームよりもサッカーの基本を抑えた上で応用が効いている。
突如奇抜なプレーをしたとしてもそれは敵に大きな隙を作り出す為の戦術の布石。敵のディフェンスは一気に瓦解してキャプテンであるサトルがフリーでシュートを撃てるようになっている。
「はあああっ!!」
強烈なボレーキックが炸裂。威力だけでなくコントロールも確保されたそのシュートは抉るようにゴールネットに突き刺さる。
決して星章のような派手でインパクトのあるものじゃない。灰崎のような弾丸がある訳でもない。だからこそ稲森達は戦慄する。
「……!!」
「これが……閃電中」
「星章学園よりずっと強えんじゃねぇか……?」
星章学園以上の攻撃力、木戸川清修以上のチームワーク、帝国学園以上の統率力、美濃道三以上のディフェンス力、どれもがグループAの注目チームを上回っている。
稲森達とは別の席で観戦する鬼道はそう評する。隣で観戦している灰崎もまた、閃電中の実力を目の当たりにして絶句している。
「分かるか灰崎。現状、閃電は星章よりも強い。今のままではいずれ全国大会で当たった時、星章学園は閃電中には勝てない」
「……うるせぇ!奴らがどれだけ凄えかは知らねぇがな!あんなもん、俺が…!!」
「閃電中を舐めるな!奴らはまだ実力の30%も出してはいない。斎村が出て指揮を執ればあれを遥かに上回る。お前が個人の力で奴らを上回る事が出来たとしてもその連携の前には無力だ。そして……堂本衛一郎からゴールを奪う事は絶対に出来ない」
「何だと……!!」
逆に言えば司令塔たる凪人がいないにも関わらず、あれだけのチームプレーを保っているのだ。星章学園を上回る実力を。
灰崎は以前から閃電イレブンの事をチェックしていた。それは敵としてではなく、自分が倒して復讐を図ろうとしている王帝月ノ宮の打倒を掲げているチームだと鬼道に聞いたからだ。
(ふざけるな……!王帝月ノ宮を……『アレスの天秤』を潰すのは俺だ…!!それを他に取られてたまるかよ!!)
もし星章よりも先に閃電が王帝月ノ宮と当たってしまえば……灰崎の復讐は果たせなくなる。そう思ってしまった。彼らならば王帝月ノ宮を倒せると思ってしまったから。
「ふざけるな!あの閃電なんかにこんな負け方してたまるかよ!!」
相手チームは苛立ちを隠せないようでがむしゃらに閃電のゴールに向かって攻める。彼らはかつて弱小だった閃電をボロクソに打ち負かしたチームの一つだ。だからこそ、ここまで圧倒されて負けるなどプライドが許さなかった。
「「「くらええ!!」」」
敵チームのFW三人によって同時にボールが蹴られて凄まじいパワーの必殺シュートが放たれた。だがスタジアムに観客としているサッカープレイヤーは全員が理解していた。
閃電のディフェンスは敢えてシュートを撃たせたのだと。
「ゴッド……ハンドォォォ!!!」
赤い稲妻が迸る。堂本衛一郎の右手から出現した神の手はそのシュートを完膚無きまでに止め切り、ボールの回転すら許さずに堂本の手に収まる。
「俺達は強くなったんだ。俺がいる限り……もう閃電のゴールは割らせねぇ。
なんてな!」
シリアスな雰囲気を醸し出してからの照れ臭そうな笑顔。相手チームはそれによって完全に毒気を抜かれたのか、脱力して殆どのメンバーが膝から崩れ落ちる。
ピッ、ピッ、ピッーーーーーーーーー!!
そして試合終了のホイッスル。結果は12-0で閃電中の完全勝利だ。前試合より3点程少ないがそれでもたった二試合で得失点差が27点に上るという快挙。
そこにはもう弱くて粋がるだけのチームはいない。正真正銘の強さを持つ自信に溢れた閃電中サッカー部がいた。
『今回のMVPは……エースストライカーの刀条優作だぁぁぁっ!!』
「凄いや……」
「元雷門イレブンの強化委員で一番の成功例は間違いなく斎村凪人だろうな……」
道成の言葉に思わず頷く雷門イレブン。それから大谷は更に閃電イレブンについて解説を続ける。
「斎村君が派遣先に閃電中を選んだ理由は知られていません。というかインタビューがあってもノーコメントを貫いているんですよねー…。でも一部の噂じゃあのゴールキーパー、堂本衛一郎君を気に入ったからなんじゃないかって言われてるんです!」
「あのゴールキーパーを?」
「はい。そもそも斎村君は中学に上がる際に帝国学園や木戸川清修のスカウトを蹴ってます。そうまでして雷門に入ったのは円堂君にゴールを預けたいからなんだって本人から聞きました!で、堂本君はあの通り円堂君と同じゴッドハンドを使えます!だからかは分かりませんけど、堂本君の可能性に惹かれて閃電中に行ったんじゃないかって噂なんです」
その説明を聞いた稲森は閃電側のベンチで爽やかに笑いながらチームメイトと話す堂本に視線を向ける。
「堂本…衛一郎」
堂本はアレス主人公三人と深く関わっていく『四人目』の存在なので早目に三人と接点を持たせたい所。今の所野坂だけだからなぁ。
因みにスポンサーCMでそれぞれの担当楽器
主人公:指揮棒
堂本:スネアドラム
サトル:トランペット
種田:クラリネット
刀条:コントラバス
城之内:ホルン
桐林:シンバル
海原:ピッコロ
赤木:バイオリン
逢崎:フルート
石島:チェロ
藤咲:ピアノ