『木戸川清修にてサッカー強化委員を務める豪炎寺修也は“炎のエースストライカー”と呼ばれ、その名を少年サッカー界に轟かせています。次の試合では強豪、星章学園との激突が注目されています』
『星章学園はターゲットの一つとして捉えている。キーマンである灰崎は星章の力でもあり、弱点でもある。完全なるチームワークを誇る我ら木戸川清修なら、綻びを抱えた不完全な星章学園を倒せる。星章学園には本命のターゲットである閃電中を倒す為、我々の実力をより正確に把握する試金石となって貰う』
〜スポーツニュース、豪炎寺修也への取材から抜粋〜
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side三人称
星章学園vs木戸川清修中当日。星章学園スタジアムは超満員。一般の観客だけでなく、フットボールフロンティアの出場チームも多く来場していた。全国ランキング1位の星章学園とその星章を倒せると豪語した強豪木戸川清修の試合なのだ。当然と言えば当然だろう。
「……あのCMはどうにかならねーのかねぇ」
凪人は観客席で冷ややかな目を電光掲示板に向ける。先程まであそこにそれぞれのチームに付いているスポンサーの広告CMが流れていたのだ。凪人が苦言を呈しているのは木戸川清修のスポンサーであるZゼミのCMである。
武方三兄弟が勉強机に付いたら彼らを食う勢いで豪炎寺がドヤ顔でサムズアップするという普段の豪炎寺のキャラからは考えられない内容なのだ。何だ君の成績にトルネードって。意味不明過ぎる。
凪人は初めてそのCMを見た時は指差してゲラゲラと大笑いした。その真後ろに豪炎寺本人がいる事に気付かずに。そんな割と逆恨みに近い理由で凪人はこのCMを好ましくは思っていなかった。
「楽しみだねー!星章と木戸川、どっちが勝つかなー!?」
無邪気にはしゃぐサトルは今か今かと試合を待ちわびている。本日観戦に来た閃電メンバーは凪人、サトル、刀条、種田そして堂本だ。
「斎村さんは星章はまず
「試合を観れば分かる」
敢えて理由は語らない。星章学園が木戸川清修に勝てない理由はハッキリしている。それはこの試合で明るみになるだろう。
すると後方から凪人を呼ぶ聞き覚えのある声が響いて来た。
「あーっ!?斎村君!お久しぶりですー!」
「!…大谷さん?」
声の主は大谷つくし。雷門中に通っていた頃のクラスメイトだ。現在は伊那国島から雷門に転入して来たサッカー部のマネージャーをやっていると聞いている。
その後ろには稲森を始めとした雷門のメンバーがぞろぞろと四人程連れられている。他には現生徒会長だという神門杏奈だ。
「あ、どうも初めまして。今雷門でキャプテンをやらせて貰っています。道成達巳です」
「ああ。斎村凪人だ。よろしく」
同い年ではあるが、雷門の枠を「使わせて貰っている」という意識があるのか、低姿勢で礼儀正しく挨拶をしてくる道成。凪人とて邪険に扱うつもりはないのでかつての副キャプテンと現キャプテンの顔合わせは穏便なもので済んだ。
「稲森はこの間会ったな。そっちの二人は確か…DFの万作とエースの小僧丸だったか?」
「あ、はい…」
「チッ」
確認も兼ねて尋ねると肯定で返して来る万作と舌打ちで返して来た小僧丸。小僧丸のその態度を見てムッと来たのか刀条が小僧丸に突っかかる。
「初対面で舌打ちなんて失礼じゃないか?君達は斎村さん達が強化委員で出払っている事でその不在の部を使わせて貰っている立場なのに」
「フンッ、知るかよ」
「おい小僧丸!……すいません、斎村さん」
「……理由は知らないがどうやら俺はそいつに嫌われているみたいだな」
凪人としては完全の初対面の相手にここまで嫌悪感を剥き出しにされる事など初めてであった為、怒りや反感よりも驚きの方が大きかった。
(……思い当たる節は……無いな)
そんな感じで何故かナチュラルに隣の席にて半ば無理矢理に観戦の同伴をして来た雷門。断る理由も特に無いのだが、何の断りも無しにそういう事をされると少しばかり居心地が悪いと思ってしまう。
「斎村さんはこの試合どうなると思ってますか?」
「……普通なら試合はやってみなきゃ分からないもんだが、この試合だけは別。現時点で8割方、木戸川清修が勝つだろうな」
なんかグイグイ迫って来てこの試合に関する凪人自身の見方まで尋ねて来る稲森。凪人はそんな彼に辟易としながらも律儀に答える。すると今度は大谷が質問を投げかけて来た。
「じゃあ星章学園が勝つ確率は残りの2割なんですか?」
「いや、1割だ。残り1割は引き分け」
「えっ!?どうしてですか!?星章学園はあんなに強いのに!!」
「木戸川清修だって星章に負けないくらいに強いのもあるが、灰崎がこの試合に大きく影響して来るだろう。鬼道があいつをどう動かすかで勝敗が決まると言っても良い。馬鹿正直に灰崎をいつものようにFWとして投入するなんて愚策をやらかせば100%木戸川清修の勝ちだ」
断言する凪人に対して絶句する稲森達。先日のインタビューでも豪炎寺本人が灰崎を星章の弱点と述べていた。灰崎にそれ程までの欠点があるとは思えないのだ。
「修也とのストライカー対決なんてしたら灰崎に勝ち目なんて無いし、デスゾーン以外で仲間との連携をしようとしない灰崎じゃ木戸川清修のチーム力の前に叩き潰されて終わる。星章はシュートの一本すら撃てずに負けるだろう」
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遂に始まろうとしている星章学園vs木戸川清修中の一戦。しかし驚くべき事に星章のエースストライカーである灰崎はFWではなくゴールキーパーとして試合を始めるという異例の事態にスタジアムは騒然としていた。
そんな騒然とした空気の中、フィールドでは、かつての雷門イレブンとして共に全国を制し、それぞれの学校で強化委員として役割を担う鬼道と豪炎寺は不敵な笑みを浮かべて話していた。
「いよいよこの時が来たか…」
「ああ。凪人には悪いが……どうやらお前を最初に倒すのは俺らしい」
「ほう?言うじゃないか。そっちはかなり仕上げて来たようだな……」
「相手はお前だからな。こっちも真剣だ。そっちの問題は未解決のようだが?」
豪炎寺はキーパーのユニフォームを着て全然納得のいかない表情で不機嫌な灰崎を見て鬼道に尋ねる。鬼道は余裕を崩す事なく答える。
「打てるべき手は打った。後はこのチームの力次第だ」
「では見せて貰うとしよう。『ピッチの絶対指導者』とやらのお手並みを」
そして星章と木戸川清修……それぞれのチームがポジションに付いて試合開始のホイッスルを待つ。
星章の監督である久遠道也が何故灰崎をキーパーとして配置したのか。その意図をこのスタジアムの中で理解出来ている者は少ない。木戸川清修の監督である二階堂ですらそれを理解出来ていない。
そんな中、木戸川清修のボールでキックオフ。まずは豪炎寺がキャプテンである武方勝にボールを託し、ドリブルで斬り込ませる。
『早速木戸川清修が仕掛ける!何というスピードでしょうか!速い!速いぞぉー!!』
まずは武方三兄弟が中心となって緻密で堅実。しかし素早いパス回しとドリブルの連携で次々と星章のMF陣営を翻弄。鬼道をも出し抜いて攻め上がって行く。
そして武方勝がDFの一人を躱すと同時に豪炎寺へとボールが渡った。
「速い…!」
「データ以上のスピードだ!」
早くも前線のペナルティエリアへと辿り着いた豪炎寺はボールを蹴り上げると同時に己を身を捻り、左回転で爆炎をその身に纏いながら跳び上がる。
そしてその炎の全てを左脚に集束させ、その左脚でボールを蹴り出した。これは豪炎寺の代名詞とも言える必殺技だ。
「ファイアトルネード…改!!」
空中から一直線に突き進むファイアトルネード。雷門の小僧丸は当然として、閃電の凪人や白恋の真人をも凌駕する灼熱の炎が星章ゴールを襲う。
こんな威力のシュートをキーパー未経験である灰崎が止められるはずがない。DFの八木原と白鳥はシュートコースに躍り出て身を呈してファイアトルネードを止めにかかる。
「「はあああああっ!!……ぐあああああっ!?」」
腹でシュートを受け止め、それを支える。しかし二人の身体を張ったシュートブロックも虚しく豪炎寺のファイアトルネードはDF二人ごとゴールへとぶち込まれた。
1-0
『き、決まったぁーー!!DF二人のフォローを物ともせずに豪炎寺のファイアトルネードが星章ゴールに突き刺さったぁーー!!キーパーの灰崎は棒立ちぃーーー!!!』
至極あっさりと決まったシュート。これは会場にいるファイアトルネードの使い手二人と、アレスクラスターと呼ばれる者達しか気付いてはいなかったが、豪炎寺の撃った今のファイアトルネードは本気ではなく、実力確認の為の牽制だった。その為、豪炎寺本人は物凄く拍子抜けな気分になっていた。
(流石だな豪炎寺……。木戸川清修の仕上がりはこれまでとは別次元だ。それにお前自身のレベルアップも欠かしていない。だがこの試合は俺達が勝つ!)
誰もが木戸川清修の絶対有利を確信する中、鬼道だけは不敵に微笑み、余裕を失わない。
「……!!」
灰崎は何も出来なかった事実と豪炎寺の実力を目の当たりにし、昨日凪人に言われた事がフラッシュバックする。
『お前と修也とじゃあ、お前に勝ち目なんて無いからな』
「っ!…ふざけるなよ斎村ァ……!!」
この屈辱に灰崎が耐えられるか否か。それがこの試合の流れを左右するだろう。しかしそれに灰崎が自分で気付けなければ星章はただ負けるだけだ。
「不味いです鬼道さん。奴らはデータより数段上のチーム力を持っているようです」
「ああ。だが元よりそんなものアテにならん。敵がデータよりも強くなっているなんていうのは当たり前の事だ。俺はそれを昨年の雷門に嫌という程、味合わされたからな」
「これが豪炎寺修也ですか……。苦しい戦いになりそうですね」
「心配するな。どんなに苦戦を強いられようと、最後に勝つのは俺達だ」
水神矢と折緒の報告に対し鬼道はやはり余裕を崩さない。豪炎寺ーーーひいては木戸川清修がデータ以上の実力を持っている事など想定内だ。情報なんて不足して当たり前。それを踏まえた上で勝利を導き出すのが司令塔というものだ。
灰崎は屈辱に震えながら拳を芝生に打ち付けて叫ぶ。
「俺はこんなトコでうだうだやってる暇はねぇんだよ……!!鬼道ォォォーーー!!!」
そして今度は星章ボールで試合再開。反撃に転じる為に動き出す星章学園。鬼道へとパスが渡ればその前に立ち塞がるのは豪炎寺だ。豪炎寺がボールを奪いにかかれば鬼道は身体を盾にそれを牽制しつつボールを守り、マッチアップ。
「流石だな豪炎寺……」
「俺一人の力じゃない。チーム全員が連携した力だ!」
『ああっーと!鬼道と豪炎寺!雷門中で共に全国を制した元チームメイトによる激しいマッチアップだ!!』
豪炎寺と鬼道のボールを奪い合う攻防。素早く細かな動きで鬼道のプレーを崩しにかかる豪炎寺とそれを器用に躱して緻密なボールコントロールでキープし続ける鬼道。この勝負を制したのは鬼道だった。
豪炎寺を突破した鬼道はそのまま前線に進む折緒へとロングパス。しかしそれをDFの西垣がスライディングでカット。攻撃を防ぎ、カウンターへと繋ぐ。
「……ここまで仕上げて来ているとはな」
木戸川清修はディフェンスの連携でパスコースを限定させ、そこに誘導したのだ。そうすれば体力の消耗を抑えつつ、確実にボールを奪える。
「武方三兄弟だけではなく、チーム全体の意思疎通が行き届いている。完全なチームサッカーだな」
「そうだ。かつて天才ゲームメイカーと呼ばれた鬼道有人にこれが破れるかな!?」
そう挑発して豪炎寺は前線へと向かう。鬼道はこのチーム全体での連携を高く評価する。
(本命は閃電と言っていたな……つまりこのチームサッカーの行き着く先は斎村を超える為の戦術……面白い!)
「豪炎寺!」
西垣からのロングパスが豪炎寺へと届く。見れば他の星章メンバーは木戸川のメンバーにマークされ、動きを抑えられている。これは凪人の戦術に通じるものがある。
「行くぞ!」
豪炎寺の号令一下、木戸川清修の全体的な動きが攻撃的なものに早変わりする。
「今こそ木戸川清修の真のチーム力を見せる時だ!!」
それからも木戸川清修の素早く華麗なパス回しに星章はまるで付いて行けない。鬼道は敢えて指示を出さずに様子見を決め込んでいる。
「くっ!」
「何だこの速さは……!?」
この連携は豪炎寺や武方三兄弟というFW達だけで出来るようなものではない。チームが真の意味で一つになる事で初めて辿り着けるサッカーだ。
その完全なるチームサッカーによって良いように攻め込まれ、碌にディフェンスも機能出来ない星章学園。それはキーパーがこの場において役に立たない灰崎だからという理由から来る焦りもあったからだ。
「くっ、ここで食い止めなければ……!!」
「何やってんだ!止めろよ役立たず共がぁ!!」
しかしそんな事も自覚せずに怒鳴り散らす灰崎に星章ディフェンス陣は呆れるばかり。この試合はDFとして出場している正キーパーの天野が役立たずなのは今の灰崎だと指摘しても機嫌を悪くするだけで何も好転しない。
そうしている間にも木戸川清修は豪炎寺と武方三兄弟を中心に見事なパス回しでDFを軽くあしらいながら攻め上がって来る。
「行くぞ!」
「「「おう!!」」」
武方三兄弟が背中合わせに立ち、振り向くと同時に中心に置かれたボールを一斉に蹴り上げる。
「「「トライアングルZ!!」」」
空中に向けて放たれたそれは従来のものとは違い、トライアングルを模したオーラが幾重にも展開されて天を駆け登る。その先にあるボールに追い付かんと豪炎寺がファイアトルネードの要領で爆炎を纏いながら左回転で縦に上昇して行く。
重ねられたトライアングルにファイアトルネードの炎が着火。その全てが燃え盛り、豪炎寺の纏う炎と回転を爆増させる。
「何ィ!?」
「僕達のトライアングルZに!!」
「豪炎寺のファイアトルネードを加えた!!」
「これぞ最強のシュートっしょ!!」
最後に頂点で炎のトライアングルに力を溜め込んであるボールを豪炎寺が普段のファイアトルネードと同じ様に全力で蹴り出した。
『爆熱トルネェード!!』
一斉に叫ぶ豪炎寺と武方三兄弟。これは必殺技同士を連携させて威力を増幅させる戦術、オーバーライドと呼ばれるものだ。以前美濃道三が閃電や雷門との試合で見せたレンサ・ザ・ウォールと同じカテゴリーに属する。
トライアングルZとファイアトルネードが融合した超パワーに星章ディフェンス陣は勿論、灰崎が対応出来る訳がなく、灰崎はボール諸共ゴールにぶち込まれてしまった。
「ぐああああああああっ!!?」
2-0
前半開始10分、木戸川清修は全国ランキング1位を誇る星章学園相手に大きくリードするのであった。
Q.小僧丸、主人公に対して態度悪くね?
A.簡単に言えば嫉妬です。豪炎寺とのファイアトルネードDDのパートナーという立場に嫉妬してます。また、旧雷門の中で唯一お互いを名前で呼び合う程に仲が良い事も有名ですからそれも関係してます。
Q.オーバーライドの名前、爆熱ストームじゃないの?
A.アレス版爆熱ストームの名前変更については本来の爆熱ストームを別に出したいのでそうしました。威力も見る限りエイリアルートの爆熱ストームの方が強そうだし、劣化版という事で「爆熱トルネード」としました。
Q.つか最初のファイアトルネード…
A.無印FF編の時点で豪炎寺が原作より強かったから。一年後のアレスなら尚更。なので他にも無印キャラが原作で止められた技、シーンで相手の技や諸々をぶち抜く事も普通にあります。