イナズマイレブン -もう一つの伝説-   作:メンマ46号

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今作の不動は基本コミカルに描きます。


因縁あるけど別に因縁なんてない帝国vs雷門・前編

 side三人称

 

 フットボールフロンティア予選第四試合、帝国学園との試合を控えた雷門は試合に備えたミーティングをしていた。

 

「次の対戦相手はあの帝国学園です。帝国学園は40年間、実力No.1の座を守って来ました。現に、ランキングこそトップを逃していますが、今年もフットボールフロンティアが始まる前に練習試合とはいえ、あの星章学園に勝っています」

 

「40年……しかも星章に勝った……」

 

 大谷の説明によって雷門に緊張が走る。自分達があれだけの惨敗を喫した星章学園に勝利したチーム。そんな相手とこれから戦うのだ。

 

 昨年のフットボールフロンティアでは地区予選決勝で敗北し、前年度優勝校の特別枠で全国大会に出場するも、一回戦敗退。しかしその負けた相手が優勝校である当時の雷門中と準優勝校の世宇子中。しかも世宇子に至っては神のアクアでドーピングしていたのだから参考にならない。

 

「それまで帝国学園を最強たらしめていた要素は三つ。皇帝ペンギン2号は強力な必殺技。天才ゲームメイカーである鬼道君がいた事で戦略的に飛び抜けていた。そして、総帥にして監督の影山零治。この人は勝つ為には手段を選ばない人で危険行為と世宇子へのドーピングの指示が明るみになって刑務所に入りました」

 

 影山零治の事はサッカー界では有名だ。勿論彼らも島から雷門中へ転入した際に聞いている。その悪事を。

 

「だけど最近、舞い戻ったんです……」

 

「悪どい手でも使ったんじゃねーか?」

 

「今の帝国学園は鬼道有人が抜けて、司令塔(ゲームメイカー)がいない筈。それでも強いのは何故なんでしょう?」

 

 剛陣と奥入の疑問にも大谷はスラスラと答えていく。

 

「まず帝国学園には日本のサッカーレベルを上げる為に、サッカー強化委員として元雷門イレブンの風丸君が派遣されたんです。その為に個人個人の実力が上がったと言われています。それから、昨年の12月辺りから斎村君が強化委員として派遣された閃電中との合同練習を定期的に行っていて、その時期からですね。帝国学園と閃電中……この二つのチームの実力がメキメキ上がり出したのは」

 

「チッ…また斎村かよ…!」

 

「こ、小僧丸?」

 

「それに帝国学園は元々才能に溢れた一流の選手が多く集められているので、鬼道君の不在は大した痛手ではないのかもしれません」

 

 帝国学園がその強さを維持するどころか更に成長している要因を大谷が挙げると凪人の名前が出て来た事で苛立ちを募らせる小僧丸。とにかく、帝国学園の実力は鬼道に依存していた訳ではないのだ。

 

 監督である趙金雲の子分……李子文がリモコンを操作して前方のモニターを起動させる。そしてそこに映し出されるのは趙金雲が指定した四人の選手達。

 

「今回特に気を付けなければならない選手はこの四人デスね。まずはサッカー強化委員として派遣された風丸一郎太君。万作君よりも足の速いDFデス。次にゴールキーパーの源田幸次郎君。彼はかつてはキング・オブ・ゴールキーパーと呼ばれた凄腕キーパーデスから。三人目は現帝国キャプテンの佐久間次郎君。皇帝ペンギン2号やデスゾーンといった強力な連携技の数々は現在彼を基点に発動されマス。そして最後に彼……不動明王君デス」

 

「不動明王……?」

 

 最後に挙げられた人物は三年生なのにこれまでの大会で話題に上がった事の無い選手。突然帝国学園に転入して名を上げている事から気になってはいた。

 

「別名アッキー。彼は非常に優れた司令塔なのデス。それはもう鬼道君や斎村君にも匹敵する程の。帝国学園で鬼道君の抜けた司令塔の穴は彼が完璧に埋めたと言っても良いでしょう」

 

「ニックネームを言った意味は……?」

 

「そんなに凄い司令塔なのか……」

 

「私が独自に集めた情報によると、バナナの皮を源田君に投げ付けるも、仕返しに歩く先にその皮を仕掛けられて、滑った瞬間を斎村君に写メられて帝国、閃電イレブン全員にその写真が出回ったとも聞きマス。ついたアダ名が“孤高のバナナ王”」

 

「司令塔全然関係ねぇだろ……」

 

「ただの面白い人じゃないですか?」

 

 何故かサッカープレイヤーとしての実力ではなく、恥ずかしい情報を暴露される不動。全てを突き詰めれば誰のせいなのかは明白なのだが、その元凶たる存在がそれを自覚していないのが彼にとっては腹立たしい事だろう。

 

 まぁその元凶(凪人)が全てを察したとしても風丸が影山に従うという道を回避出来たのなら安いものだと考えるだろう。

 

「まぁそれは置いときまして……帝国学園には少しばかり妙な噂がありましてねぇ」

 

「あ、それ知ってます。帝国学園は監督である影山零治が再就任してから、練習試合を非公開にし、練習試合、公式試合問わず帝国と試合をして負けたチームは調子を崩し、連敗続きらしい」

 

「え、でも星章は……」

 

「星章学園は影山零治が帝国に戻る前に試合をしたからな。特にそういったスランプになる事は無かったみたいだ」

 

「なんか呪われてるみたい……」

 

 万作が仕入れて来た情報を聞いて不気味に思う雷門イレブン。そんな中、やはり帝国学園イレブンや影山に疑いを向ける者も出て来る。

 

「やっぱり影山零治が何かしてんじゃねーのか?帝国の選手も怪しいもんだぜ」

 

「少なくとも帝国の人達はそんな事しないと思うんですけどね……」

 

「何でそんな事が言えるんだよ?風丸さんがいるからか?」

 

 偏見全開な小僧丸の発言を否定しつつ、大谷は詳しく説明する。

 

「帝国学園は部員の方から少年サッカー協会へと影山零治によるものと思われる他校の選手への被害などが確認された場合は大会出場を辞退するという届け出が出されているんです。最初は影山零治の監督就任を認めたくはなかったけど、下手に放り出したら何をするか分からない事からこういう措置を取ったみたいです」

 

「確かに……そんな届けまで出しているなら、それは考え辛いな……」

 

「いや、そう思わせておいて裏では……なんて事もあるかもしれませんよ。昨年まで勝つ為には手段を選ばなかったんですから」

 

 道成は大谷の説明から帝国を疑う事はないようだが、奥入はやはり偏見とも言える意見で帝国イレブンを疑っている。結局その真相がこのミーティングで分かるはずもなく、帝国戦に向けた特訓をする他にやる事は無かった。

 

****

 

 そして試合当日、帝国学園スタジアムにて、第四試合である雷門vs帝国が始まろうとしていた。

 

『フットボールフロンティア予選!雷門中対帝国学園!注目の一戦が間もなく始まろうとしています!!』

 

 帝国学園とスポンサー企業である鬼道重工。雷門中とスポンサー企業であるアイランド観光。それぞれのCMが流れる中、凪人は観客席にて試合開始を今か今かと待ち構えていた。珍しくその周囲には閃電イレブンのメンバーの姿は見えない。

 

 そして観客席に座っているとすぐ側の階段から鬼道が登って来た。

 

「お。やっぱお前も来たか。雷門と帝国……元雷門としちゃあ観ない訳にはいかないもんな」

 

「当然だ。それに俺は元帝国でもある。それはそうと……今日は一人か?」

 

「ああ。他の皆は練習だ。俺達も次の試合が近い。だから帝国の情報収集には俺だけで来た。帝国が強いって事は閃電の皆も良く知ってるしな。ずっと合同練習をしてたんだから」

 

「フ……大会前とはいえ、俺達星章をも倒す程に成長していた。やはり佐久間の元で新しい帝国を創り上げて欲しいと考えた俺の判断は正しかった訳だ」

 

 ライバル同士、ニヤリと笑いながら帝国の強さを語る二人。影山という不安要素はあるも、風丸達はそれに屈する事なく、前を向いて歩んでいる。これ程嬉しい事があるだろうか。

 

「で、灰崎……やっぱお前も帝国目当てか?」

 

 そう言って凪人が後ろを振り向けば無愛想な表情ではあるが、二つ程上の席に灰崎が座っていた。

 

「お前も来ていたのか」

 

「ああ…。帝国は俺が…いや、俺達が唯一負けたチームだ。観ないはずがねぇだろう」

 

「……本当に帝国だけか?」

 

 鬼道の意味深な問いに灰崎は答えない。凪人にも鬼道の言ってる事の意味は分かる。稲森の事だろう。それから凪人と鬼道は灰崎と同じ列に座り直し、試合開始を待つ。

 

「雷門対帝国……あんたらにとっちゃ因縁のチーム同士の対決って訳か。どっちが勝つと見てるんだ?」

 

「別にチーム名が同じなだけで特に因縁無いけどなあいつら。風丸に至っては雷門から帝国に派遣されてるし。ま、十中八九帝国だろうな」

 

「珍しいな。普段のお前ならばやってみるまでは分からないと言いそうなものだが」

 

「今の帝国の強さは俺が一番良く知ってるって事だ。まぁ雷門にも可能性が無い訳じゃないがな。趙金雲……あの得体の知れない監督なら何かやらかすのは間違いない」

 

「だが、あくまで佐久間達が納得した場合の話ではあるが……影山も何か仕掛けて来るはずだ」

 

 選手達の実力では帝国学園の圧勝だろう。しかし両チームの監督は超一流。監督の采配次第では試合が大きく傾く可能性も大いにある。

 

 場所は変わってフィールド前のベンチで帝国イレブンは今回のフォーメーションの最終チェックの為に話し合う。勿論敵に情報は悟らせない為にある程度声を抑えているが。

 

「今回は不動。お前が重要な役割を果たす事になる。頼むぞ」

 

「ハイハイ」

 

「返事は真面目にしろバナナ」

 

「いい加減それやめろ!!」

 

 返事が反感を買う気満々だった為、バナナネタで弄ってチームの緊張感をある程度緩和する佐久間。弄られキャラとツッコミポジションとして確立した不動も別にストレスになってる訳ではないので、この程度の弄りに問題はない。

 

 雷門はそんな帝国を遠目から観察していた。

 

「帝国の奴ら……何か打ち合わせしてるな」

 

「作戦の最終確認でしょうか……。何を仕掛けて来るか分かったものではありませんよ」

 

 やはり帝国に対するマイナスイメージが抜けていない小僧丸と奥入は帝国が何か卑怯な手を使って来るのではないかと疑っている。だがそんな事は御構いなしに稲森は皆を元気付ける。

 

「大丈夫!この日の為に、みっちり練習して来ただろ!?」

 

「そうだな!俺達には対帝国用の必殺技がある!!」

 

「うん!」

 

「この試合、必ず勝つぞ!」

 

『おおーっ!』

 

 円陣を組んで盛り上がってはいるが、情報漏れを防ぐ為に声を出来る限り小さくしていた帝国に比べ、雷門の話し声は普通にでかかった。つまり……帝国側に丸聞こえだった。

 

「対俺達用の必殺技があんのかよ……」

 

「何で自分達から堂々と言ってるんだあいつら……」

 

「ていうか、聞かれてるのに気付いてないぞ……」

 

「これも趙金雲の作戦……なの…か?」

 

 呆れ八割、疑念二割で色んな意味で予想外の雷門の言動に驚かされるのだった。

 そして帝国、雷門共にポジションに付く。帝国のフォーメーションは以下の通りだ。

 

FW 佐久間 寺門

 

MF 辺見 洞面 不動 咲山

 

DF 万丈 五条 大野 風丸

 

GK 源田

 

 試合開始のホイッスルが鳴り、帝国学園のボールでキックオフ。寺門が佐久間にボールを渡すと佐久間は走り出す。

 

「来い!」

 

 まずは稲森が佐久間の前に出る。佐久間はこれまでの雷門の試合のデータから稲森が攻守双方に優れた器用な万能型のプレイヤーだと理解していた。彼と一対一でぶつかっても突破は出来るがしつこく粘られるのは面倒だ。序盤から体力を無駄に消耗する必要はない。そう考えて寺門へパスを返す。

 

「えっ!?」

 

「おらあっ!!」

 

 そして寺門は単純なキック力以外に取り柄が無く、そのキック力すらコントロールが無くて意味を成さず、ディフェンスもからっきしな剛陣を軽々と抜かして攻め上がる。

 

「行くぞ!」

 

「てめーら、しっかり働けよ!」

 

『おおっ!』

 

 キャプテン佐久間と司令塔不動の号令一下、攻撃陣は前方へと走り出す。帝国の統率力は木戸川清修のチームワークをも上回る。元々個人の技量でも連携でも高い能力を持つ彼らが経験の少ない田舎者達の守りを攻略するのはそう難しい話ではなかった。

 

 佐久間がフェイントをかけて氷浦を突破。真横に来ていた不動へとパス。道成が来た所で真後ろにいた洞面に渡す。不動と道成を大きく越えたロングパスで寺門へ。

 

「これが帝国学園……!?」

 

「個人技も連携も星章以上じゃないか!!」

 

「またあの繰り返しになんのかよ〜!?」

 

 予想を遥かに上回る帝国学園の実力。卑怯なやり方を懸念してはいたが、全くの的外れだ。そんなもの……本当の強さを持つ彼らには必要ないのだから。

 

「行かせないでゴス!」

 

「ゴスって何だよ」

 

「ゴスゥ!?」

 

 思わず素で聞いた不動だったが、そんな質問されるとは夢にも思わなかった岩戸は頭が真っ白になってしまう。その隙にドリブルする咲山が普通に通り過ぎて行った。

 

「行かせるかぁーー!!」

 

 しかし雷門の中で比較的高い身体能力を持つ稲森が自陣のディフェンスラインまで下がってスライディング。虚を突かれた咲山はボールを奪われてしまう。

 

「「明日人!」」

 

「皆…反撃だぁーー!!」

 

 まずは万作へとロングパスを出した稲森。万作は前線へボールを繋ごうと走り出すが、既にその眼前には風丸が迫っていた。

 

「なっ!?いつの間に……!!」

 

「分身…ディフェンスV2!」

 

 万作に考え、行動する時間を与えずに分身して次々と襲い掛かる三人の風丸。風丸同士の巧みな連携でボールを即座に奪い返し、前線を走る佐久間へと繋いだ。

 

「佐久間!」

 

 ゴール前で佐久間へとボールが渡る。その両サイドに寺門と不動が揃っている。

 

「まずは1点!確実に取って行くぞ!!」

 

「不動!」

 

「俺の足引っ張んじゃねぇぞ!!」

 

 佐久間の指笛が吹かれる事でその周囲にペンギンが五匹出現する。それより少し前に前方へ飛び出した二人に合わせて佐久間がキラーパスを出し、ペンギン達も飛び立って行く。ペンギン達とボールが二人に追い付けば寺門と不動は同時にシュートチェイン。

 

「皇帝ペンギン2号ーーー!!」

 

「「V2!!!」」

 

 帝国学園の誇る必殺技が初っ端から炸裂。誰もが帝国学園の先制点を確信する。しかし雷門イレブンの表情には焦りや落胆は見られない。

 

「いきなり使って来たか!」

 

「だったらこっちも特訓の成果を…!」

 

「見せてあげましょう!」

 

 服部、日和、奥入の三人が皇帝ペンギン2号の軌道上に立つ。三人は同じ方向に手を翳し、パワーを注ぎ、巨大なエネルギー体の匣を創り出した。

 

「「「グラビティケージ!!」」」

 

「な、何だ!?」

 

「まさかアレが対俺達の…!?」

 

 完成と同時に皇帝ペンギン2号が匣と衝突。吸い込まれるかのように匣の中に入り込む五匹のペンギン。ペンギン達が入ると同時に匣の外装に鉄格子が組み込まれる。

 

 次の瞬間にペンギン達が鉄格子を砕いて匣をぶち破って脱出した。

 

「「「え?」」」

 

 そのまま真っ直ぐに飛んで行き、三人を纏めて弾き飛ばして尚、突き進む。

 

「……え?」

 

 皇帝ペンギン2号を攻略する為に出した技が通用する事なく即座に突破され、その衝撃で呆然と棒立ちになっていた雷門のキーパー海腹は皇帝ペンギン2号に反応出来ずそのまま素通りを許してしまう。

 

 1-0

 

『き、決まったぁーー!先制点は帝国学園!!まさかの最初から必殺技、皇帝ペンギン2号で名門の実力を見せつけたぁーー!!』

 

 随分と呆気なくゴールが決まった。帝国を倒す為に考えた作戦を根底から覆す展開に一同呆然とする雷門イレブン。随分と気不味い空気の中、風丸は意を決して尋ねた。

 

「えっと、何だったんだ?今の……」

 

 風丸の質問に答えられる者は……当然ながらいなかった。




Q.趙金雲、どうやってアッキーの変な情報ばっか集めた?

A.李子文が帝国学園の一般生徒に聞き込み調査。アッキーの弄られキャラはサッカー部以外でも定着してる。

Q.バナナは?

A.体力補給に良いので閃電中が持って来ていたものを勝手に食ってそれを咎めた源田に皮を投げ付けた。なのでバナナの皮で滑らせるというベタな罠を貼ったら歩く時はカッコつけて目蓋を閉じて足元を見ない彼はあっさり引っかかった。

Q.結局あのスパイクは?

A.影山はちゃんと仕組みとその狙いを説明。別に違反ではないが、卑怯だし正々堂々と戦いたいアッキーが猛反対。佐久間達もこれは弄らず真面目に応じてきっぱり拒否。あのスパイクはお蔵入り。影山は影山で別に最初からそれでも構わなかった。

不動「感謝するぜ佐久間!」

佐久間「やめてくれ気持ち悪い(真顔)」

不動「んだとコラァ!!」
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