side凪人
佐久間達の皇帝ペンギン2号が雷門の初出のディフェンス技を普通にぶち破ってゴールを決めた。
「……鬼道、今のって……」
「言ってやるな……」
「所詮前年度優勝校の名を汚す雑魚共って事だろ」
灰崎が辛辣。酷え。同じ『アレスの天秤』の主人公同士なのに酷え。
……多分あれって皇帝ペンギン2号を止める為に開発された技だよな。多分あれでシュートブロックして止めるって作戦だったんだよな。多分あれ、物語の展開的に普通にぶち破っちゃ駄目なパターンだよな……。
この辺の原作とか知らないけど、多分原作じゃあの技で皇帝ペンギン2号止められたんじゃないか?でも止められなかったのは技の精度が原作より高いのと帝国のあいつらの実力が原作より強いのが理由だよな。ついでに言えば昨年…つまり原作で言う無印のフットボールフロンティア編から既にそんな感じだったし。
つまり原因を突き詰めて行けば……もしかして俺のせい?
……いやいや俺は別に悪くないだろ。エイリア学園が来ないから世界と戦う為に皆で時間をかけて強くなろうって話なんだし。それに貢献しただけじゃないか。そうだよ。ここで雷門が皇帝ペンギン2号止めて、歴代の猛者達である風丸や帝国がポッと出の田舎者達に負けて……それで正解か?違うだろ?人気投票で五条じゃなくて円堂や天馬が1位獲得してそれが正解か?違うだろ?
結局どれだけ努力して強くなったかって話なんだ。多くの努力をして正当に積み重ねて行った者達が栄光の勝利を掴む。キャラとしての魅力を持つ
頑張れ風丸。頑張れ帝国。そして五条……お前がNo.1だ!!(錯乱)
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side三人称
「グラビティケージが破られたからってそれがなんだ!元々相手は強豪なんだ!!作戦がいつも上手く行く方がおかしいんだよ!!」
剛陣のやけっぱちな空元気とも言える励ましによって雷門はどうにか調子を崩す事なく、応戦している。帝国の激しいディフェンスをどうにか潜り抜けてペナルティエリアまで辿り着いた。
「キラースライドォォォ!!」
「うわっ!?」
ドリブルする稲森に五条のキラースライドが炸裂。稲森はそれをまともに食らってボールを奪われると共に空高く打ち上げられる。三代目原作主人公と言えど歴代人気投票オール1位には敵わないのだ。
「ナイスだ五条!」
「ククク……これでも帝国の誇りがありますからねぇ」
「五条先輩!こっちです!」
パス要求をして来た洞面にボールを託す五条。洞面は細かなドリブルでサクサクと雷門の守りを突破して行く。
「昨年とメンバーは違っても雷門が相手だ……。この試合には必ず勝つ!!」
雷門と帝国。昨年のフットボールフロンティア前の練習試合から始まった因縁。勿論それは現在は強化委員として各地に散っている元々の雷門イレブンとの因縁であり、稲森達には何の関係もない。しかしだからこそ、全く無関係の彼らが雷門として戦うのなら……尚更負ける訳にはいかなかった。本来の雷門ともう一度戦う前に……そんな連中には絶対に負けられない。
『おおおおおおおっ!!!』
ただ全国に行きたいだけーーーそれが普通なのだがーーーの今の雷門とかつての栄光を取り戻し、因縁との決着を望む帝国とではこの試合に懸ける想いがまるで違う。
「今度こそ止めるでゴス!」
「だからゴスってなんだよ」
「ゴスはゴスでゴス!!」
訳の分からない戯言の羅列が交わされるが、本人達は大真面目に戦っている。不動の前に壁のように立ち塞がる岩戸は力の限り叫ぶ。
「ザ・ウォール!!」
「ヘッ…美濃道三の壁山の技か!」
「これは壁山さんとは違う、平らな壁でゴス!!」
「ただの薄っぺらい見せかけだけのパチモンだろうが!!」
「ゴスゥ!?」
不動は壁山に比べれば大した事ないと岩戸を一蹴し、空中にボールを蹴り上げて、倒れて来る岩戸のザ・ウォールの下敷きになるのを避けるべく引き下がる。
「皆!あのボールを確保するんだ!氷浦か小僧丸に繋げ!」
「フン!出来るものならな!」
「何!?」
上空に高く上げられたボールを先に確保しようと動く雷門。しかし帝国側に先にそれを成す者達がいた。
「行くぞ大野!」
「おう!」
DFである風丸と大野が前線まで上がって来ており、同時に跳び上がる。二人は身を捻ってお互いに足を空中で合わせる。大野は踏み台としての役割と風丸を上に押し上げるバネの役割を同時に果たす。そして風丸は大野を踏み台に更に高く舞い上がる。
「竜巻ぃ〜〜…!!」
そして風丸の上昇がボールに追いつき、風丸は右脚に風を纏ってオーバーヘッドキック。
「落としぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
大竜巻を発生させ、渦巻きながらもボールはゴールに向かって行く。雷門のディフェンス陣はシュートブロックをしようにも強い風圧で近付けない。風丸自身がパワーキックをするタイプではない故に皇帝ペンギン2号に破られたグラビティケージならば止められる程度の威力だが、近付けなければ意味がない。
「のりか!」
「止めてみせる!ウズマキ・ザ・ハンド!!」
両腕を大きく回す事で渦潮を再現して水の塊のようなゴッドハンドに近い青い手を出現させる。しかしそれは衝突と同時に竜巻落としの風力で全くのあらぬ方向へと吹き飛ばされてしまった。
「きゃああああっ!!」
そして技を失った海腹は成す術無くゴールを奪われた。
2-0
「そんな……」
「これが帝国学園……!!」
「まだ前半が始まって10分も経ってないぞ……!?」
「で、でもあれだけ激しい動きを続けてるんだからかなり体力を……って息切れ一つしてないぃぃっ!?」
奥入の指摘とは裏腹に帝国学園は誰一人として息切れはしていない。まだまだ余裕があるように見える。否、実際に余裕がある。帝国学園のスタミナは閃電との合同練習もあって陸上の長距離選手顔負けの体力お化けと化していたのだ。
「ハッ、やっぱ三試合でやっと一回勝てる程度の連中じゃねえか!」
「油断はするな不動。奴らの監督である趙金雲ならばこの後どんな戦術を仕掛けて来るか分からない。これまでの試合……美濃道三相手に引き分けに漕ぎ着け、御影専農に勝利した戦術はかなり考え抜かれたものだった」
「わーってるよ。……悔しいが影山が監督じゃなけりゃあ俺達は趙金雲の危険性に気付けなかった」
リードをしても警戒を緩めない帝国学園。2点もリードしようものなら多少は調子付きそうなものだが、彼らに限ってそんな慢心はしなかった。これは雷門にとって相当痛い。
そしてまた雷門ボールで試合再開。同時に帝国のイレブンバンドに影山からの指示が下る。
「『敢えて突破させてシュートを撃たせろ』……か。佐久間、どう見る?」
「……奴らの得点源はあのFW……ファイアトルネードの使い手だろう。それが源田には通用しない事実を見せる事で、奴らの士気を下げるといった所だな」
一応は影山の指示通りに敢えてディフェンスを雷門がギリギリ突破出来るレベルに抑え、彼らの体力削りと並行して影山の目論見通りに源田の力を見せ付ける事を風丸と佐久間は選んだ。
「小僧丸!」
「ふんっ!」
稲森からのパスを受け取った小僧丸はボールを空に打ち上げ、右回転で炎を纏って上昇。右脚に炎を集束させて蹴り出した。
「ファイアトルネード!!」
「パワーシールドV3!!」
しかしそれは即座に源田のパワーシールドによる衝撃波で炎は吹き消され、ボールは弾かれてしまった。そしてそのボールは五条が確保する。
「何だと!?」
「ファイアトルネードがあんな簡単に弾かれた!?」
驚愕する小僧丸と稲森に対して五条は人差し指を立ててご丁寧に解説を加える。
「それは当然です。源田君は君が撃つよりも遥かに強いファイアトルネードを……斎村君のファイアトルネードを何度も受けているのですから。それも君と同じ右回転型。斎村君よりも劣る君のファイアトルネードが今更通用するはずがありません」
「そ、そっか……閃電中と合同練習……」
「俺のファイアトルネードが斎村より劣っているだと!?」
五条の言葉に憤りを見せる小僧丸。しかし今知られているファイアトルネードの使い手は彼を含めて四人。木戸川清修の豪炎寺修也にその従兄弟である白恋の豪炎寺真人。そして閃電の斎村凪人。この三人よりも小僧丸が劣っている事は誰から見ても明らかだ。
そしてベンチでは携帯ゲーム機でアクションゲームをする趙金雲が不敵な笑みを浮かべながら話す。
「帝国はリードしている状態で尚、こちらの士気を潰しにかかってるようデスネェ。小僧丸君さえストライカーとして機能出来なくしてしまえば帝国はより一層有利になりマスから」
「そんな!どうにかならないんですか!?」
「……人生にはゲームのようなイージーモードはありませんからネ。どうやら私が思っていた以上にこの大会はハードモードなようデスネ。その方が私としては都合が良いのは確かデスが」
そして試合はやはり帝国による一方的なものへと動いていた。帝国は自分達の体力を温存しつつ、雷門が全力を出してギリギリ対応出来るかどうかのプレーで彼らの体力を削り続ける。
「疾風ダッシュ改!」
「お前ら!ディフェンスがチンタラしてんじゃねえ!!」
「違う…!風丸さんが速過ぎるんだ!!」
「これが元雷門の風丸一郎太……!!」
風丸が雷門のディフェンスを次々と切り抜けてゴールへと迫る。同じく雷門の中で最も足の速い万作が風丸を追うが追い付けない。距離は開く一方だ。
「行かせるかぁぁぁ!!」
しかしそこでFWのはずの稲森が風丸の前へと立ち塞がり、加速。電撃を纏うかのように光りながら点と点で移動。瞬間移動のように現れては消えを繰り返し、風丸の眼前に現れたかと思ったら両脚でボールを挟み、風丸に背を向けて真上へと跳び上がり、着地。風丸を抜き去る。
「イナビカリ・ダッシュ!!」
『明日人!』
「……あれはドリブル技だったはずだが、ディフェンスに応用したのか。面白い奴だ」
ボールを奪われて突破された風丸は稲森を高く評価する。勿論悔しくはあるのだが、それで焦る事は無い。充分な点差がある上、一人の動揺はどのような形でチームに影響するかは分からないのだ。だからこそ、風丸は冷静でいなければならない。
「氷浦!」
そして稲森からボールを貰った氷浦は眼前に広がる敵陣を見渡す。フリーなのは剛陣だがあれは分かった上で放置されている。剛陣に渡ればいつでも奪えるからだろう。言わば味方が敵の罠に組み込まれてると言っても良い。それ程に分かり易くフリーだった。
そして稲森はすぐ近くにいる為、シュートは撃てず、小僧丸も万丈と五条にマークされている。
(どっち道小僧丸のファイアトルネードは帝国には通用しない……。なら一か八か……やってみるか!)
氷浦は右手を振るい、ボールに冷気を込めて凍り付かせて、勢い良く蹴り出す。
「氷の矢、シュートver.!!」
「氷の矢を応用したシュート技!?」
美濃道三戦で編み出したパス技。それを直接ゴールを狙う為に使っただけの応用もへったくれもないやり方だが、確かにただノーマルシュートを撃つよりかは遥かに効果があるだろう。
相手が格下のキーパーならば。
源田はパワーシールドを発動する時のように拳にエネルギーを込める。しかしジャンプして力を溜める事無く、直接ボールを拳骨で殴り、地にボールを押さえつけて鎮圧した。氷は砕け散り、ピッチにボールが減り込む。
「なっ!?」
驚く氷浦。しかしこれは源田の実力を知る者からすれば当然の光景でしかない。そして当の源田本人からは強い怒気が発せられ、それは声にも現れていた。
「……何だこれは。ファイアトルネードが通用しなかったのを見た後にパス技で直接ゴールを狙うだと?舐めているのか?」
氷の矢はあくまでパスの為の技。相手が負担無くボールを受け取る為にシュート技に比べればそのパワーは遥かに劣る。源田からすればそんな技でゴールを狙って来るという行為は舐めているとしか思えなかった。
「くっ……!」
「何やってんだよ!あの源田に付け焼き刃が通用する訳ねぇだろ!!」
「仕方ないじゃないか!ファイアトルネードが通用しないなら、片っ端から色々試して行かないと!!」
「ちょ、二人共……!」
小僧丸と氷浦の論争が始まるが、稲森が仲裁に入り、何とか喧嘩になる事なく、その場は収まる。
(やっぱり帝国学園は強い……!日和達のグラビティケージも皇帝ペンギン2号には通用しなかった……!!でも、きっとあの技なら帝国から点を奪えるはずだ……!!逆転だって絶対出来る!俺は諦めないぞ!!)
決意を新たに帝国との試合を続行する。しかし個々の技術で劣り、連携で劣り、結束力で劣る雷門は全くもって思うようにプレーが通用しない。
「サイクロン!」
「どわあああっ!?」
「分身フェイント!!」
「増えた!?」
帝国学園の必殺技に圧倒され続ける雷門。弱点を突かれ、調子を崩しにかかる帝国のプレーによって次第に彼らの精神にも大きく影響が出始める。
「はっ!」
「おらっ!!」
「何やってんですか!ちゃんと守って下さい!」
佐久間と不動のワンツーによって道成が抜かれる。すると彼に向かって万作の罵倒が飛んだ。
「人の事言ってる場合かぁ?」
言ってる側から不動に抜かれる万作。今度は道成の方から万作へと非難の声が飛ぶ。
「お前だって抜かれてるじゃないか!!」
「中盤がしっかりしてくれないからこっちにばっか負担が来るんですよ!!」
彼らの言い争いを気にする事なく帝国の攻撃は続く。佐久間にボールが渡りその両サイドに寺門と不動が再び揃う。佐久間の指笛と同時に五匹のペンギンが出現した。
「皇帝ペンギン2号ーー!!」
「「V2!!」」
二度目の皇帝ペンギン2号が放たれる。日和、奥入、服部の三人もまた再びシュートコースに出て先程の必殺技でシュートブロックにかかる。
「「「グラビティケージ!!」」」
しかしやはり一瞬にしてぶち抜かれ、皇帝ペンギン2号はゴールへと迫り、キーパーの海腹が水から巨大な手を生み出す。
「ウズマキ・ザ・ハンド!!……きゃああああっ!!」
3-0
ここで前半終了のホイッスル。前半は帝国が終始雷門を圧倒して終わった。そしてこれだけの事があったにも関わらず、帝国は誰一人として息が上がっておらず、反対に雷門はスタミナを徹底的に削られ、息が上がっていた。
「のりかさん!キーパーならちゃんと止めて下さいよ!!」
「ご、ごめん……」
「おい奥入……そりゃ仕方ねーだろ。あいつらのペンギンが強かったって事なんだからよ」
「剛陣先輩は黙ってて下さい!何の役にも立ってないんですから!!」
「ああ!?てめーらだって自信満々に必殺技出しても通用してねーじゃねぇか!!」
苛立ちが募り、酷く言い争う雷門。そんな光景を稲森は信じられないものを見る目で見ていた。
「何だよこれ……こんなのサッカーじゃないよ」
「その通りだ」
「え?」
稲森の悲し気な呟きに答えたのは帝国側の風丸だった。そして雷門のメンバーも風丸に気付き、その視線を向ける。彼らの視線が自分に集まったのを確認した風丸は口を開く。
「お前達……それでも雷門か!!」
原作では全国大会から互いのミスを責めるという雷門にあるまじき展開が目立ちましたから、帝国の相手の得意分野を潰し、調子を崩すというやり方をまともに受ければ早々にその辺が露呈しそうだなと思ってこうなった。
伊那国・雷門へのヘイトと思われて低評価付くかもしれないけど、一応彼らの成長の為のシナリオでもあるので。