イナズマイレブン -もう一つの伝説-   作:メンマ46号

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ナンバリングにしてたけどまた三話で終わったから前編、中編、後編の形式にした。


因縁あるけど別に因縁なんてない帝国vs雷門・後編

 side三人称

 

「お前達……それでも雷門か!!」

 

 風丸の一喝に雷門イレブンは一瞬面喰らったようなポカンとした表情になる。

 しかし次の瞬間にはハッとした表情になりながらも、風丸の一言の真意が分からずに道成が代表して尋ねる。

 

「風丸さん……それはどういう……」

 

「お前達は雷門の名を背負う事を何も分かっていないと言っているんだ!!」

 

 怒りすら感じる強い眼差しで射抜かれ、怯む道成。しかしここまで言われて頭に血の登り易い剛陣が黙っているはずもない。

 

「おいおい……流石にそんな事を言われる謂れはねぇぞ」

 

「ある。雷門は本当なら俺達のチームなんだ。それを名乗っておきながら、お前達がやって来た事は何だ!?言ってみろ!!」

 

「そ、それは……前年度優勝校の名前に泥を塗るかのように情け無い戦績ですけど……「そんな事を言ってるんじゃない!!」ひっ!」

 

 風丸の叱咤を受けながら的外れな返答をする奥入はまたもや風丸に叱られ、怯えてしまう。しかし風丸はそれを気にする事なく話を続ける。

 

「お前達は仲間のミスや失敗を責め、自分に非は無いと言わんばかりに試合中にも関わらず、仲間割れを始める始末……そんなものが雷門と言えるか!そんなのが仲間と言えるか!!仲間の失敗を励まし、力を合わせて支え合う……それが仲間だろう!それが雷門なんだ!!」

 

『…っ!』

 

 サッカーは11人でやるもの。仲間割れなんてしたら連携は噛み合わなくなり、チームは自ら崩壊していく。チームとは呼べなくなる。彼らは風丸にそれを指摘されるまでそんな簡単な事すら見落としていた。

 

「俺はお前達を雷門とは認められない。勝つ事ばかりに気を取られ、仲間と一緒にサッカーを楽しむ事を忘れて仲間同士で信じ合う事の出来ないお前達を…雷門とは認めない!!」

 

 それだけ言って風丸は稲森達に背を向けて帝国のベンチへと戻って行った。そしてそこに残ったのは暗い表情をして落ち込む“伊那国イレブン”だった。

 

「……サッカーを楽しむ事、仲間を信じる事……俺達はそんな大切で簡単な事を……見落としていたのか」

 

 万作がそれを口に出した事により、彼らの雰囲気はより一層重くなる。そしてキャプテンである道成は意を決して口を開いた。今ここで彼らを勇気付けなくて何が仲間か。何がキャプテンか。たった今風丸に言われたばかりではないか。

 

「皆!聞いてくれ!確かに風丸さんの言う通り、前半の俺達のプレーや言動は雷門として…いや、サッカープレイヤーとして恥ずべき最低のものだった。言い訳のしようもない」

 

「キャプテン……」

 

「強い敵と戦っている事で俺達はそれに対抗しようとする余り、サッカーの楽しさや仲間の大切さを見失いかけてたんだ!俺達はそんな事にならないような伝説のイレブンじゃないけど……少なくとも、後半から皆でサッカーを楽しむ事は出来る!」

 

 かつて昔の偉い人は言った。「過ちを改めない。これを本当の過ちと言う」…と。雷門の名を汚してしまった事はもう取り返しのつかない事だ。しかしここから汚名を返上し、雷門の名誉挽回をする事は出来る。

 

「……もう一度、やり直してみるか!」

 

「ちゃんとしたサッカーを…!」

 

「相手はこれ以上ない相手……」

 

「伝説の雷門イレブンの一人、風丸一郎太と40年無敗の帝国学園だからな……!!」

 

 道成の言葉によって伊那国イレブンの瞳に火が灯る。彼らの中にあった蟠りは消えようとしていた。その様子を見ていた趙金雲はニヤリと笑い、彼らに歩み寄る。

 

「では、予定より随分と早いデスが……そろそろ行きますヨ!サッカー盤ごっこデス!!」

 

****

 

 後半は雷門のボールで始まる。風丸の一喝を受けて持ち直した雷門は堅実なパス回しでボールを守りながら進んで行く。

 

「おいおい、態々相手の調子を持ち直してやるとか何考えてんだ?」

 

「雷門を名乗っておきながら、余りにも見ていられない始末だったもんでな」

 

「俺もそれには同意する。俺達が戦う雷門が内輪揉めで自壊して行くなんて許さない。だが、それと勝敗は別だ。負けるつもりは無い。気を引き締めて行くぞ!」

 

 不動の苦言を甘んじて受け入れながらも風丸に後悔は無い。そして佐久間達も風丸を肯定している。彼らが雷門の名を背負っていなければ内輪揉めして自滅しようが知った事ではなかったが、雷門とは帝国を打ち破ったチームの名だ。その名を汚す事は許容は出来ない。

 

「……まぁ良い。で、碌に体力も残ってねえ田舎のザコ達に何が出来るんだろうな?」

 

「油断はするな!奴らの監督は趙金雲なんだ!」

 

 そしてドリブルをしながらも雷門は攻め上がる。しかし中盤で剛陣が洞面にボールを奪われてしまう。だが、雷門はその場でボールを取り返しにかからず、それぞれがバラバラな配置に広がって行った。

 

「あ!?何だこりゃ!?」

 

「……いよいよ仕掛けて来たな。ここからが本番だ。奴らの策に対応する為に前半で3点のリードをし、奴らの体力を徹底して削ったんだ。俺達の体力も充分に残っている。佐久間!」

 

「皆!暫くは様子を見る!奴らの動きや配置をしっかり把握しておくんだ!!気付いた事があればすぐに伝達しろ!!余裕を持って焦らずに対処するんだ!!」

 

 佐久間の呼び掛けに応じて頷く帝国イレブン。ここ数日の雷門の練習は影山の送ったスパイによって一通り頭に入れてはいる。流石にイナビカリ修練場での特訓は見られなかったが、それでも対応出来るだけの情報はある。

 

 稲森はそれを知ってか知らずか……風丸の叱咤から学び、仲間を信じて呼び掛ける。

 

「皆やろう!監督の言う通り実行するんだ!失敗したって良い!思いっきりやろう!!」

 

「けどフィールドに線は引かれちゃいない!」

 

「いや、線は見えるよ!現に皆大体の位置には付けたじゃないか!皆落ち着いてフィールドを見るんだ!」

 

 稲森に言われてフィールドを見渡す。すると彼らには彼らにだけ見えるものがあるのか、多少の位置修正を図ると帝国イレブンに向き直る。

 

「線から出ないように……だったな」

 

「何だってんだ……?」

 

「行くぞ!まずは奴らの策を見極める!焦らず冷静に分析するんだ!それが不動!司令塔(お前)の役目だ!!」

 

「……ったく」

 

 一先ずは風丸に従って不動は雷門の位置取りを確認する。一定の間隔を空けて散らばっているがこれでは連携は取れそうにない。ドリブルで佐久間と二人で駆け抜けるが、そこに氷浦と道成が迫る。

 

 しかし不動と佐久間の前に立ち塞がる前に彼らの持ち場を駆け抜けるとあっさり追い駆けるのを諦めて立ち止まった。

 

「何!?」

 

「どういう事だ!?」

 

 これには流石に驚愕を隠せない。彼らにそんな余裕など無いはずだ。なのに何故追い付けないからと言ってすんなり通してしまうのか。

 

「はあっ!!」

 

 しかしそれに気を取られた瞬間、服部のスライディングにボールを弾かれ、その先にいた稲森へとボールが渡った。

 

「やった!」

 

「これは…?」

 

 前半とは勝手の違う展開によって微妙にプレーにズレが生まれ始めた帝国イレブン。対して雷門はもう一度攻める為に稲森がドリブルをしながら上がろうとする。

 

「いや、ドリブルは駄目だ…。パスで運ばなきゃ!」

 

 そして道成にパスを出してから前線へと向かう。明らかに前半とはベクトルの違う雷門のプレー。当然観客席にいる彼が興味を示さない筈が無かった。

 

「ボールを奪う為に複数でプレスをかけるのではなく、行動範囲を制限する事で体力の温存と、一定範囲内での瞬発力のあるプレーをする事で敵の攻撃リズムを崩している……。帝国はこれまでのデータを元に組み合わせた戦術と前半の雷門のプレーに慣れているから効果覿面だなオイ」

 

 凪人はこの短い時間で雷門の策の概要を見抜き、理解していた。とは言えこれはフィールドではなく、頭上である観客席から第三者目線でプレーを観たからこそ。凪人自身があのフィールド上にいたらこれを理解するのにもう少し時間がかかっただろう。

 

 これにより雷門の動きが良くなったようにも見える。

 

「帝国の速い攻撃に着いて行き、複雑でありながら精度の高い連携リズムを崩す為にも自分達の行動範囲に制限をかける……。こんな戦術、考えた事も無かったな……」

 

「これが趙金雲か…。ふざけているようで考え抜かれている。影山ですらこんな発想に至った事は無いだろう」

 

 鬼道もまた同様にこの戦術の奥深さを理解しているからこそ、趙金雲の底知れなさに戦慄する。正直言えば今の雷門ではなく、もっと強豪のチームの監督をしていれば星章学園を抜いて全国ランキング1位にそのチームを君臨させる事すら可能な程の腕前だ。

 

『雷門の選手は何故か一定範囲内しか動いていない!これは“サッカー盤戦法”とでも言うのかーー!?』

 

「実況も気付いたか。アッキーも今の実況で分かっただろうし……ここから大きく変動するぞ。色々な意味でな」

 

「雷門のペースになろうとしているな」

 

「帝国のフォーメーションが崩れて行くぞ。面白え…」

 

「型破りに見えるがあれも一種のタクティクスだ。名付けるなら、“サッカー盤戦法”」

 

「「それ今実況が言ってたぞ」」

 

 天然で言ったのかジョークなのか……恐らくは後者なのだろうが、今の鬼道は完全にスベっていた。それはもう見ていて痛々しいくらいに。実際凪人と灰崎が鬼道に向ける目は非常に冷めていた。

 

「そうか…!こいつは雷門が練習の合間にやってたミニゲームだ!一定範囲内に行動を制限して体力の温存と俺達の連携のリズムを崩す事を同時にやっていたんだ!」

 

「そういう事か…。だが俺達では奴らの行動範囲を正確に割り出すのは難しい…!」

 

「裏を返せばやはりあいつらの体力はかなり消耗しているし、まともにやれば俺達の連携には着いて行けない!まずはボールを奪い返して連携を組み直す!!」

 

 帝国イレブンも雷門の戦術のカラクリに気付いた。アイコンタクトで意思の疎通を図り、六人でまとまって加速。瞬く間に稲森を包囲した。

 

「インペリアルサイクル発動!」

 

 六角形の形で包囲した稲森に超高速で一斉に襲いかかり、対応する時間も考える暇も与えずに速攻でボールを奪い取る。折角の戦術も止められてしまえば降り出しに戻る事になる。

 

 しかし今の雷門の精神状態は前半とは違った。

 

「ドンマイだ明日人ー!」

 

「次だ次!」

 

「おーう!今度は突破してみせるよ!」

 

 仲間の失敗を励まし、支え合う。そんな光景を見て風丸は思わず頬を緩めてしまう。やっと雷門らしくなって来た。そんな風に思ったのだろう。

 

「だが、この試合に勝つのは俺達帝国だ!!」

 

 パスを受け取った風丸はそのスピードを活かしてドリブルで攻め上がる。行動範囲の制限によって逆に動きが予測出来ないのは厄介だが、やりようはある。風丸は走りながらも真後ろに寺門と不動を率いる。

 

 これは不動が出した案だ。予測が出来ないのなら、一人が直接ドリブルして攻め上がるのと同時に他のメンバーで敵の動きを見張り、何かあれば逐一報告し、事前に防ぐ。場合によっては即座にパスを繋ぐ。

 

「くっ…!」

 

「流石は帝国だ…!すぐに対応して来たか!」

 

 道成には寺門が。氷浦には佐久間がマークについて中盤を出来るだけ容易に突破出来るようにする。後は風丸自身の突破力が物を言う。

 

「行かせません!」

 

「ゴス!」

 

「……これは対斎村用のとっておきだったんだがな」

 

「え?」

 

「ゴス?」

 

「風神の舞!」

 

 奥入と岩戸の二人掛かりでのディフェンスの突破は難しいと判断したのか、風丸は暴風を纏いながら二人の間に突っ込んで行き、風のドームの中に二人を閉じ込め、吹き飛ばした。

 

「「うわあああああっ!?」」

 

「あんな凄い必殺技をまだ隠していたのか!?」

 

 そしてゴールの前に風丸が迫る。海腹はシュートに備えて構える。しかし風丸はシュートを撃つと見せかけて、ボールを上空へと蹴り上げた。

 

『!?』

 

 そしてそれに食らい付いたのは佐久間だ。佐久間はそのままフルパワーでヘディングをかまし、ボールを叩き落とす。そしてその先でシュートを構えていたのは不動だ。

 

「認めてやるぜ!てめーらは全力で叩き潰すのに相応しい相手になったってなァ!!!」

 

「ああ!帝国学園の誇りに懸けて全力を以ってお前達を倒そう!!」

 

「「ツインブースト改!!!」」

 

 迫力も実際の威力も以前とは比べ物にならない程にパワーアップを遂げたツインブースト。海腹もそれを止めるべく、フルパワーの必殺技で対応する。

 

「ウズマキ・ザ・ハンド!!」

 

 水のゴッドハンドは正面から受けたツインブーストのパワーを何とか弱め、その手にボールを掴むものの、今にも爆発しそうだと言っているかのようにパワーが膨張しようとしている。海腹は残ったパワーを抑え込もうと必死に堪える。

 

「うう…!!」

 

「させるかあっ!!」

 

 そこで万作が横からボールに膝蹴りを叩き込んでパワーを殺しにかかる。しかしそれでも僅かに力が及ばず、別方向から力を加えられた事により、バランスを崩した海腹は遂に耐え切れなくなり、ゴールを許してしまった。

 

 4-0

 

「う…!」

 

「済まない……!俺の力が足りなかった」

 

「ううん…!私だって最初に止められていたら……!」

 

 そこに責任の押し付け合いや、仲間への責め苦は無い。互いが互いを支え、気遣う。雷門のサッカーがそこにはあった。

 

「皆!俺達は諦めない!勝てなくても……最後に一矢報いる事くらいは出来るはずだ!!」

 

『おう!』

 

 気付けば残り時間はあと10分も無い。雷門の逆転は絶望的だろう。それでも彼らの顔に絶望は無かった。それは観客席から見る者達にも分かる程に。

 

「斎村……」

 

「ああ。稲森達はこの帝国との試合を介してなろうとしているんだ。本当の雷門に…!雷門の真の必殺技は最後まで諦めない気持ちなんだ。あいつらはそれを掴もうとしている……!」

 

「……気に入らねえ」

 

 鬼道と凪人はそんな稲森達を見て彼らに感じるものがあったのが、顔が少しばかり綻んでいた。対照的に灰崎は少しばかりイラついている。

 

 残り時間僅か。サッカー盤戦法と彼らなりの工夫を駆使して何とか攻め上がる雷門。帝国もまた体力の消耗を度外視して全力で応戦している。

 

「はああーっ!!」

 

 万丈のスライディングが剛陣の足元にあったボールを弾く。それを日和が確保して迫る咲山が目の前に辿り着く前に氷浦へと繋いだ。

 

「今度こそ!氷の矢!!」

 

「またそれか…」

 

 前方目掛けて全力で蹴り出されたパス技。源田はそれを止めるべく構える。しかしそのパスがゴールに届く前にゴール前へと全速力で駆け抜けて来た三人がいた。

 

「何!?」

 

「シュートチェインか!?」

 

 稲森、小僧丸、海腹だ。三人は背後に迫る氷の矢に合わせて力の限り叫び、その力をボールに込める。

 

「「「うおおおおおおっ!!」」」

 

「行っけえええ!!これが俺達の必殺シュート……!!」

 

 三人の背後に巨大な白熊が出現し、飛んで来た氷の矢をその口に咥え、氷の矢の比ではない冷気を注ぎ込む。

 

「「「北極グマ…2号ォォーー!!!」」」

 

 白熊の咆哮と同時に三人で蹴り出したシュート。技単体の威力ならば皇帝ペンギン2号に勝るとも劣らないその必殺技を見て帝国イレブンは唖然とする。しかしキング・オブ・ゴールキーパーと呼ばれたこの男だけは違った。

 

「必ず止めてやる……!!フルパワーシールドV3!!」

 

 両腕に込めたエネルギーを特大ジャンプと共に地面に叩きつけて展開した巨大なエネルギーの壁。パワーシールドとは比較にならない総エネルギーにエネルギー密度。しかしそれは衝突と同時に少しずつ凍り付いていく。

 

「な、何だと!?」

 

「フルパワーシールドが押されてんのか!?」

 

 そして亀裂が生じるフルパワーシールド。その時風丸は昨年の予選大会決勝の光景を幻視した。

 

『『ザ・ギャラクシー!!』』

 

 帝国を強くする為に力を貸してくれた友と……雷門の始まりの切っ掛けとなったエースストライカーのシュートを。

 だからこそ、今だけは立場を忘れて雷門イレブンとして告げる。

 

「……見事だ」

 

 フルパワーシールドは砕け、源田の真横を通り過ぎ、ゴールネットは揺れた。

 

 4-1

 

「や、やったぁーーー!!」

 

『おおおおおっ!!』

 

 歓喜の声に包まれる雷門イレブン。しかし無情にも終わりの時はやって来た。

 

 ピッ、ピッ、ピーーーーーーーーー!!!

 

 試合終了のホイッスル。この試合は4-1で帝国学園の勝利だ。

 

『ここで試合終了です!雷門と帝国…因縁の対決は帝国学園の勝利となりましたぁーー!!しかし一方的だった前半に比べ、後半の雷門は大健闘と言って良いでしょう!!これは歴史に名を残すと言っても過言ではありません!!』

 

 しかしこの試合の敗北を以って、雷門の全国大会出場は不可能になったと言って良いだろう。これまでの試合と照らし合わせてこの先帝国、星章、木戸川清修の3チームが雷門以上に酷い戦績となる事はあり得ないからだ。

 

 しかし今だけはそれが気にならない程、雷門にとっては清々しい敗北だった。

 

「最後まで全力で楽しめたんだ。負けても悔いは無い」

 

「負けて悔しいけど……やっぱ強かったなぁ帝国学園!」

 

「全くだ。まるで歯が立たなかった。星章以上だ」

 

 負けたのに笑っている雷門。そんな彼らに風丸は歩み寄る。風丸に最初に気付き、駆け寄ったのは勿論稲森だ。

 

「風丸さん!ありがとうございました!負けちゃったけど、風丸さんのお陰で大切な事を思い出せました!!サッカーは皆でやるから楽しいんだって!!」

 

「そうか。さっきは偉そうな事を言ったが、俺も途中で折れそうになった時があってな。辛い事がある度にかつての雷門の仲間達との事を思い出して乗り越えて来た。お前達だってそうさ。仲間がいればチームの力は何倍にだってなれる。仲間と一緒にもっと強くなれるんだ。それを忘れるな」

 

『はい!』

 

 気付けば雷門全員が風丸の前に整列して返事をしていた。敵チーム同士なのに何だかおかしな光景に風丸は苦笑してしまう。

 電光掲示板には今試合のMVPのイレブンライセンスカードが映し出される。今回のMVPは不動明王だ。

 

 そして観客席では観戦を終えた凪人達が今後の雷門について話し合っていた。

 

「負けときながらちゃっかり成長したみたいだな雷門も。けど帝国に負けた連中はスランプ続きだ。後の二試合はみっともねぇ負け方になるのは確定だな」

 

「それはどうだろうな」

 

「あ?」

 

「確かに雷門は負けた。そしてこれまで帝国に負けたチームは長所を潰されてスランプに陥っていた。しかし今回の試合、雷門は長所を潰されこそしたが、調子を崩すと言えるような負け方はしてはいない。これまでとは違い、奴らはスランプに陥る事なく、存分に戦い抜くかもしれんぞ」

 

「それに、帝国学園に負けたチームがスランプになるって話には続きがあるんだ」

 

 灰崎の言葉に鬼道が反論し、凪人も最近出回っていた帝国学園に纏わる噂話について説明を始める。

 

「帝国と戦ったチームはスランプの後、大幅に勝率を上げているんだ。つまり、帝国と戦ったチームは強くなるんだ。もしかしたら雷門にはこの部分だけ帝国戦のジンクスが適用されるかもな?」

 

「……それでも奴らが全国に行けずに脱落すんのは確定だろうが」

 

 珍しく力無く反論する灰崎。凪人はキョトンとした顔になる。

 

「は?……お前まさか知らねえの?鬼道……」

 

「知らない?何をだ?」

 

「ああ。教えてはいない。教えた所で意味は無いしな」

 

「マジか」

 

「おい、何の話だ!?」

 

 凪人と鬼道が何を言っているのか……灰崎が聞き出そうとしても二人は答えずに自分達だけで完結させる。

 

「いや知らないなら良いんだ。……あいつらがそれを使う気になるかは全く別の話だからな。少なくとも……それを知って嬉々として使う気になる程恥知らずじゃねぇだろ」

 

 凪人は敗北を悔しがりながらも、笑顔で試合を終えた稲森達を見ながら小さく呟いた。




ハイビーストファングは敢えて出しませんでした。メタ的に言えば帝国が原作より強くなり過ぎているので、北極グマ出してもなんか止めちゃいそうな気がして……。源田本人の心境的にはフルパワーシールドで止められると思ったんです。

尚、原作通りに自陣ゴール前から撃ってたら確実に止めてました。

そういやアレスルートの方ではまだ新しいオリジナル技出してないな。

次回からはまた暫く閃電サイドです。
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