イナズマイレブン -もう一つの伝説-   作:メンマ46号

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日本を強くする為に

 side凪人

 

 バルセロナ・オーブへの惨敗から数日。俺達は理事長に学校の応接室に呼び出しを受けていた。ソファに俺、円堂、修也で座り、他のメンバーはその後ろに並んで立つ。……何か鬼道に悪い気がする。何故か。

 

「雷門イレブン、揃いました」

 

「イエス。今日は君達にこちらの方を紹介したいんだ」

 

 そう言った理事長の隣には何やらでかいおっさんがいた。……この人は確か少年サッカー協会の……。

 

「私は少年サッカー協会統括チェアマン、轟伝次郎だ」

 

『統括チェアマン!?』

 

 俺以外の皆は声をハモらせながら驚く。実際俺も声に出さないだけで驚きを隠せない。少年サッカー協会理事である理事長よりも大物だ。皆何故こんな凄い人に呼び出しを受けたのか分からないようで代表して染岡が呟く。

 

「俺達、何か悪い事したか?」

 

「し、してませんよ!」

 

「となるとこないだの親善試合の事か?」

 

 風丸の呟きに鬼道がピクリと反応し、ピリピリした雰囲気を醸し出す。……相当屈辱だったみてぇだな。

 

「バルセロナ・オーブとの親善試合、見せて貰った。あれは実に素晴らしく、有意義な試合だった」

 

「有意義?……どこが有意義だったんですか?手も足も出ず負けたんですよ……?」

 

「落ち着け鬼道。この人に感情をぶつけんのは間違ってんぞ」

 

 今にも感情が爆発しそうな鬼道を俺が諌めつつ、それを見てチェアマンは話を続ける。

 

「だからこそ意義深いのだよ……。日本の弱さと潜在能力を知らしめた!!!」

 

『!!』

 

 弱さを知らしめた……つまり今の日本は世界に通じない。それを知る事で強くなろうとするのがあの試合の目的だったのだろう。それは分かる。だが、潜在能力を知らしめたとはどういう事だ?

 

「鬼道君、君にも分かっただろう。今の日本のサッカーのレベルでは到底世界のレベルには通用しない!それ程に日本と世界のサッカーの実力差が開いているという事だ!」

 

「……」

 

「だが同時に嬉しい誤算も得た。日本の爆発的な進化の可能性!!潜在能力だ!!!」

 

「潜在能力?」

 

 円堂の呟きの後にチェアマンは俺に視線を向けて来た。

 

「斎村君!先日の試合でそれを最も示してくれたのは君だ!君はあの試合の中で成長し、バルセロナ・オーブの実力に迫り続け、チーム全体の力の差を少しずつ縮めて行った!そして遂にはゴールまで奪ってみせた……!!忘れもしない……あの衝撃……!!」

 

「……」

 

 俺が化身の力を引き出して奪ったあのゴールか……いや、それ以前にも普通のプレーでDFを躱したり、新必殺技でクラリオを突破出来もした。俺はあの試合の中で進化し続けていたのか……。後から考えると結構凄い事してたんだな、俺。

 

「そして確信した!日本にはまだまだ強くなれる可能性がある!!計り知れない潜在能力があるのだと!!そこでだ!日本のサッカー界の為に君達の力を貸しては貰えないだろうか?」

 

「どういう事ですか?」

 

「君達に日本を強くして欲しいんだ!」

 

「日本を強く?」

 

「そうだ!近い将来、強力な日本代表を作り上げる為に!!日本全体のサッカーのレベルを押し上げたいのだ!!」

 

 日本代表……つまりこの世界線でも世界大会、フットボールフロンティアインターナショナル…通称FFIは開催されるという事だ。その時日本が世界と渡り合う為に日本を強くする。……想像通りだな。エイリア学園との戦いがない世界線ではそれしか世界と渡り合う方法はないだろう。

 

「君達は『サッカー強化委員』として全国各地の別々のチームに加入し、それぞれのチームの実力の底上げに努めて貰いたい!!」

 

「『サッカー強化委員』……」

 

「……成る程。その中から人材を発掘し、強くする。そして俺達自身も強くなる事で日本代表を生み出す訳ですか」

 

「その通りだ!そこから君達のような革命児が生まれ、更には君達を超える存在が出て来るかもしれない!!」

 

 ……最後のだけ聞くと割と複雑な気分になるが、悪くはない。先程も考えた通り、エイリア学園が来ないこの世界線では雷門を中心とする日本の急激なパワーアップは不可能。こうやって各地で雷門魂を伝えて時間をかけて世界に挑戦出来るレベルにまで皆で強くなる。これが一番だ。

 

 だがここで円堂が疑問を挟む。

 

「……あれ?ちょっと待って下さい?それだと雷門サッカー部は?」

 

「雷門の遺伝子を全国に広めるという大義の為、雷門サッカー部は一旦解散となる」

 

『一旦解散!?』

 

 ……本当に簡単にしれっと言ってくれるなこのおっさん。いくら何でも中学生にこっちの事情を考慮せずに転勤させるとか完全にブラック企業のソレじゃねーか。

 

「確かに雷門は強いチームだ。しかしこれは日本サッカー界全体の問題なのだ!!今日本の力を結集して日本代表を組織したとしても!世界では一勝すら上げる事は出来ないだろう……それ程までに世界の壁は厚いのだ!!」

 

 ……確かに、現状では俺達雷門なんてフィディオ・アルデナやロココ・ウルパといった世界の有力選手である彼らの足下にも及ばないだろう。俺の知る原作で勝てたのはエイリア学園との激戦があったからこそだ。

 

「見たくはないかね!?あれだけ強い世界に日本が渡り合う所を!!」

 

 その一言を聞いた瞬間、俺は思わず呟いていた。

 

「……だ」

 

「斎村……?」

 

「見ているだけなんて嫌だ……!!俺は世界と戦いたい……!!世界に勝ちたい!!!」

 

 真っ直ぐにチェアマンを見てそう宣言する。その瞬間に鬼道や修也、円堂達の表情も変わる。チェアマンはそんな俺達を満足そうに見てから話を続ける。

 

「ならばまずは何者にも負けないその雷門の精神を広めて欲しい!!そして日本全体で強くなり、その名を世界に轟かせるのだ!!やってくれるな!?」

 

 俺達は互いのの顔を見て頷き合う。そしてその問いに円堂が代表して答える。

 

「分かりました!世界と戦える日本を作ります!!」

 

****

 

 そして俺達はチェアマンから転入先候補の学校のリストを受け取り、部室前で皆で相談していた。

 

「……とは言ったものの、色々あるなぁ。ここからどれを選ぶ?有名所は木戸川清修に帝国学園……白恋もあるな。無名だと……星章学園に利根川東泉、永世学園。聞いた事ねぇな……」

 

 つーか世宇子は無いのか。あそこに行くのも面白そうではあるんだけどなぁ。

 リストを俺と鬼道でチェックしていると部室前の木に背を預けて半田が呟く。

 

「折角こんな良い仲間が出来たのに……」

 

「皆離れ離れになるなんて……俺は反対だ!!」

 

 どうやら半田と染岡はまだ強化委員に納得していないようだ。……気持ちは分かる。しかしエイリア学園が来ない以上仕方のない事でもあるんだ。まぁこれは原作知識のある俺だけの理屈だが。

 

「それに俺が人に何か教えるなんて不安ッス…」

 

「右に同じ」

 

「自信無いでヤンス……」

 

「キャプテンや斎村さんに鬼道さんとかならやれると思いますけど、俺達には……」

 

「そこはかとなく無理な気がします」

 

「パソコンの使い方なら……」

 

「目金さん、それもうサッカー関係ないですよ…」

 

「結局は俺も皆がいたから……」

 

 壁山、マックス、栗松、宍戸、影野、目金、五郎、少林……と自信の無いメンバーが次々とネガティブ発言……。それよりも俺は他に心配な奴がいるんだがな。

 

「情け無いな。ここへ来て怖気付いたか?」

 

「俺達はどんな困難も乗り越えて来た。それが俺達雷門じゃないのか?」

 

 鬼道、修也と皆への活入れをしていく。すると鬼道に視線を向けられる。……俺も何か言えってか。ハイハイ。

 

「……難しく考え過ぎなんだよお前らは。サッカーにとって一番大切な事ってなんだ?言ってみろ」

 

「一番大切な事って……そりゃあ、諦めずに全力で戦う事ですよ」

 

「それも大切だけど……一番はサッカーを楽しむ事だ。それさえ忘れなきゃ、大丈夫だよ。雷門魂の根幹はサッカーの楽しさにあるんだからさ」

 

 これは割と本気で真理だと思う。結局サッカーが楽しいから好きになる。だから全力で戦えるんだ。そして俺がそう言うと皆の表情が明るくなる。続けて風丸が発言する。

 

「恐らく、俺達が教えるのは技術じゃない。そんな雷門の精神じゃないのか?斎村の言う通り、サッカーを楽しむ事さえ忘れなければ必ず出来る事だ」

 

「雷門の精神……」

 

「確かにそれなら……」

 

「やれそうでヤンス……」

 

 ………水差すような事考えて悪いんだけど、俺はお前が一番心配なんだけどな、風丸。責任感強過ぎて色々溜め込み抱え込むタイプだし。ダークエンペラーズやアウターコードで影山に従う様子を知ってる身としては。

 

「だけど!ここで皆離れ離れになるなんて……!!」

 

「離れ離れじゃないさ。俺達は何処にいても繋がっている。ここでな」

 

 それでも納得出来ないらしい染岡を諭し、修也は自分の胸を叩く。続けて鬼道も染岡を諭す。

 

「染岡、俺達の絆は離れていても揺らぐ事は無い。俺達は離れていても日本を強くする為に力を合わせるんだからな」

 

「……力を、合わせる……」

 

「さっきから言ってるだろ?難しく考え過ぎなんだよ。世界と戦う為に皆で強くなる!それだけの話だ」

 

「斎村……」

 

 三人で説得する事で染岡はどうにか噛み砕いてくれた。そして最後に円堂がシメに入る。

 

「ああ。これから色んな困難にぶつかるかもしれないけど、俺達は今までも、いつだって乗り越えて来た。それが俺達雷門イレブンだ!そうだろ?皆!!」

 

『おう(はい)!』

 

 そして俺達は早速チェアマンの用意してくれたリストを閲覧し始める。俺も何処のチームに行くかを考えねぇとな……。

 

****

 

 そして数日後、一之瀬と土門は強化委員の任を放棄してアメリカに高飛びした。……こう書くとまるで逃げたようにも思えてくる不思議。いや微塵も思わねーけど。

 

 まぁ結局はあいつら自身がレベルアップする為に選んだ道だ。非難するつもりはない。……俺もイタリア辺りに行ってフィディオとでも会ってそこで武者修行でもしようかな?……なんて考えは冗談だ。……割と真剣に選択肢には入れているが。

 

 夏未は夏未で強化委員として海外チームの情報を集める為に各国を飛び回る事に。あいつが一番負担デカくね?少年サッカー協会が本格的にブラック企業と化して来ているんだが。学生の本分は勉強だよ?……そういや学校の経営まで理事長に一任されたな、あいつ。

 

 そして夜、俺と円堂、修也、鬼道との四人で鉄塔広場に集まっていた。

 

「染岡は北海道の白恋に行くつもりのようだ」

 

「白恋かぁ…あいつら強かったよなぁ……染岡が行ったら鬼に金棒じゃんか」

 

「円堂……お前、鬼に金棒なんて言葉を知っていたのか……!?」

 

「おい鬼道。シリアス全開で失礼な事言ってんじゃねーよ。いくら円堂でもキレるぞ。見ろ。顳顬に血管浮いてんじゃん」

 

 ナチュラルに円堂をディスるのやめろよ鬼道。それから俺は以前から気になっていた事を鬼道に尋ねる。

 

「鬼道は強化委員も兼ねて帝国に戻るのか……?元々世宇子を倒したら戻るつもりだったんだろ?」

 

「いや、戻らない。確かに強化委員の話が来る前はそのつもりだったが、日本全体で強くなるには今まで通りじゃ駄目だ。俺も帝国の皆もな」

 

「ふーん」

 

 それで雷門の精神を帝国に伝える役割として代わりに風丸が派遣される訳か。……でもどうやったら影山に従うなんて事になるんだ?アウターコード3話までしか見てねー……つーかその辺りで死んだから続きが分からん。2話に出て来たエイリア学園の奴らの学校名は忘れたし。とにかく風丸とはあいつに怪しまれない程度にこまめに連絡を取る事にしよう。

 

「修也は?」

 

「俺は木戸川清修だ。俺のサッカーの原点でもある」

 

 鬼道の意見を聞いた直後にその結論はある意味凄えよ。実際修也がいた頃の木戸川清修は修也のワンマンチームになってる所もあったしな。

 

「……じゃあまだ決めてないのは俺と円堂に風丸だけか。早く決めねぇとな」

 

「日本を強くする為に暫くのお別れだな。でもワクワクするじゃないか!日本が世界と戦えるようになる日が来るんだ!!」

 

 円堂は気楽だな。でもそれを言う前に早く派遣先決めろよ。俺もだけど。

 

「確かにな」

 

「世界にはどんな奴がいるんだろ?クラリオみたいなのがゴロゴロいるのかな?」

 

「いくら何でもゴロゴロはいないだろうが……」

 

「しかし、アレが世界標準のレベルだ」

 

「そ。あくまで標準であって断じてトップじゃねぇ。俺達は世界一を目指す以上、乗り越えて踏み台にする程に強くなる必要がある」

 

「だったら、俺達はもっと特訓しないとな!」

 

「これからは個人としての力を上げるだけでは駄目だ。チームとしての連携、戦術。そして長い戦いを勝ち抜く為の戦略が必要だ」

 

「そして世界に通用する必殺技もな」

 

「それが世界を勝ち抜く為のサッカーか!面白そうだな!」

 

 俺には他の誰にも無い武器、脅威の侵略者ルートというパラレルワールドの原作知識がある。強くなる為の特訓や強力な戦術、そして必殺技。無論これらに頼り切るつもりなんて毛頭無いが、最大限に活用するつもりだ。強くなる為に。

 

「あー…所で、サッカー強化委員って何やるんだっけ?」

 

「……おい円堂、それマジで言ってんのか?」

 

「円堂…!お前話を聞いてなかったのか!?」

 

「いやぁ、全国各地に行くって事は分かったんだけどな?」

 

 それから俺と鬼道で懇切丁寧に円堂に強化委員の仕事を説明する。勿論メモを取らせた。これから先、日本代表として共に戦うその日までお前の手助けは出来ないからな。風丸はどうにかしたいけど。

 

「全員が違うチームなのか…ちょっと寂しいな」

 

「フッ。円堂、お前ならどんなチームに入っても良いキャプテンになりそうだがな」

 

「あ、それ言えてる。てかキャプテンじゃない円堂なんて円堂じゃないだろ」

 

「だな」

 

「何だよソレ!?」

 

 俺と修也の言い分に円堂は軽くツッコミつつ、話を続ける。

 

「ま、つまり俺達の役割はサッカーの熱さを教える先生って所か!」

 

「まぁ、そういう理解で間違いないだろう」

 

「日本には俺達以外にもまだまだサッカーの才能を持った奴がいる」

 

「世界に勝つにはそんな奴らを発掘し、束ねなければならない」

 

「束ねるには相応の実力も必要だ。結局俺達自身も強くなる他無い訳だ」

 

 ここで日本を強くしてそこで終わりなんてゴメンだ。その後俺も必ず世界へ行く。わざわざ自分が強くした奴を送り出すだけなんて間抜けも良い所だ。

 

「でも俺達だってもっと強くなって日本代表の座を狙っていくんだよな?」

 

「当然だ。これからは代表の座をかけたライバル同士でもある」

 

 円堂と鬼道の言葉に頷きながらも俺はライバル宣言を鬼道に告げる。

 

「司令塔の座は譲らねーぜ、鬼道」

 

「ああ。俺もお前に負けるつもりはない。日本代表の司令塔は俺だ」

 

「いーや俺だ。この『フィールドの軍神』だね」

 

 日本代表の座もそうだが、司令塔の座もだ。俺は鬼道に負けたくない。必ず次のフットボールフロンティアで鬼道に勝って俺が上だと証明する。

 

「その前に次のフットボールフロンティアではお互い敵同士という事になるな」

 

 修也が俺の考えていた事を先に言った。けどまぁ別に良いか。誰が言っても変わらないからな。

 

「言っておくが、俺はお前達には負けないぞ」

 

「ああ。俺も負けるつもりは無い」

 

「上等だよ。修也も鬼道も円堂も……皆ぶっ倒して優勝は俺と俺のチームが頂く!」

 

「よーし!雷門魂をぶつけ合おう!サッカーをもっと熱くする為に!また会おうぜ!斎村!鬼道!豪炎寺!!」

 

「「「ああ!」」」

 

 こうして俺達は拳をぶつけ合わせてそれぞれが帰路に着く。……まぁこんな別れ方しても派遣されるのはもう少し先だから、また明日会うんだけど……円堂は忘れてんだろうな。




リローデッドはこれで終わりです。次回から強化委員としての派遣先に関する話になります。
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