イナズマイレブン -もう一つの伝説-   作:メンマ46号

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前回のラストでの五条さんの助言で「小僧丸はもう大丈夫」と確信している人多数。流石五条さん。

色々と時間を捻出して漸く書けた。

もしかしたら書き直すかも?


ファイアトルネードと決意の叫び

 side三人称

 

 ピッ…ピッ……ピーーーーーー!!!

 

 試合終了のホイッスルが鳴り響く。得点板に刻まれた数字は5と0。ホイッスルを吹いた雷門のコーチ、亀田はピッチに足を踏み入れると閃電イレブンにその手を向ける。

 

「5-0でこの練習試合は閃電中の勝利!」

 

 今の今まで行われていたのは練習試合。閃電中と雷門中の練習試合。ここ数日間の合同練習の仕上げとして閃電、帝国、雷門の三チームでの総当たり戦を行ったのだ。勿論体力と時間の都合上、15分ハーフという短い試合となったが、それでも尚この点差を叩き出す以上、閃電と雷門の実力差が窺い知れるだろう。

 

 因みに帝国と雷門の試合は4-0。閃電と帝国の試合は帝国側の連戦もあり、2-1で閃電の勝利だった。

 

(閃電は連戦なのに……それでも15分ハーフの試合で5点差……!!)

 

 道成は閃電と帝国…この二つのチームの高い実力を改めて目の当たりにする事で打ち拉がれていた。

 化け物級のスタミナ、卓越した基礎技術、安定した連携、迷いのない信頼、強力な必殺技……全てが雷門とは天地の差だ。

 

(これが全国ランキングレース2位に君臨する閃電中……そして、それを弱小から鍛え上げた元雷門イレブン副キャプテン、『雷鳴軍師』斎村凪人……!!)

 

 大会参加校の中で事実上の最強校とまで称される閃電中と自分達の差を目の当たりにし、それと同格とされる星章学園との差を想像する。このままでは……勝てない。

 

 一方で試合を通して雷門のサッカーを見た凪人もまた、雷門を評価する。

 

(俺が合同練習でプレーのアドバイスをして、スランプの大元であるこいつら自身の短所や癖の指摘に柔軟に対応し、改善してみせるか……!この短期間で大いに……それも俺の予想を超えて成長してやがるな。もうスランプも克服したと見て良い…)

 

 雷門は凪人の予想を遥かに凌駕する勢いで成長を遂げていたのだ。これには流石に凪人も驚きを隠せない。

 

(当初の予定じゃ、この試合でも10点差は付けるつもりだったが、半分で抑えられたのが成長の証拠と言えるだろう。……俺から見た場合の話だがな)

 

 だが傍目から見れば結局はボロ負けしているので、彼らに成長の実感は無いだろう。それに閃電相手に15分ハーフで5点差を付けられているのでは、それと同格のチームである星章を相手にしても似たり寄ったりな結果になってしまう。

 

 最大のイレギュラーたる趙金雲の存在を無視した場合の話……になるが。

 

(あの監督はサッカーを知り尽くしている。見た目に反して理知的で思考もずば抜けて優れている。星章には天才ゲームメイカーの鬼道とあの久遠道也監督がいるとしても、趙金雲がいる限り、星章が勝つなんて予想は無意味だ。この男は何をするのか全く読めないからな……)

 

 星章に所属する二人の天才戦術家すら霞むのではないかと思ってしまう程の優れた采配。これまでの試合は雷門の力不足によって、敗北を喫していたが、逆に言えば雷門は実力さえ一定水準に達していれば、趙金雲の策を十全に活かし、格上相手に勝利を収める事も充分に可能なのだ。

 

 凪人が持つ原作知識を含め、彼が知る限り監督として趙金雲に比肩する存在は先に挙げた久遠道也に影山零治や円堂大介くらいなのではないかと思える程だ。

 

「斎村さん、どうぞ」

 

「ああ。ありがとう」

 

 赤木からスポーツドリンクとタオルを渡されて、水分補給をして、汗を拭く。星章戦での策を講じているであろう趙金雲に視線を向ければ変わらず我関せずと言わんばかりに携帯ゲームに興じている。

 

(……個人的には次の試合、久遠監督と趙金雲の監督としての勝負に一番興味がある。選手層は星章の圧勝。しかしそれも監督の采配次第でいくらでもひっくり返せる。勿論鬼道も趙金雲への警戒は怠ってはいないだろうが……)

 

 何れは閃電への脅威になり得るであろう趙金雲の名采配。戦術を考案する司令塔としても、出来れば彼から直接学びたいと思えるものは多い。

 

 そんな感じで趙金雲の事を考えていると、ふと背後から強い嫌悪感を滲ませた気配が近付いて来た。凪人は振り向く事なくその気配の主に声をかけた。

 

「……お前から俺に近寄って来るなんて珍しいじゃないか。……何か用か?小僧丸」

 

「チッ…どうなってんだお前の気配察知の勘はよ」

 

 先程の練習試合でも不意打ちに近いブロックを仕掛けても全て躱されるか、防がれるかでプレーを対処された小僧丸は忌々しそうに口を開く。

 

(俺からすれば察知以前の問題なんだけどな)

 

 あれだけの嫌悪感を発していれば嫌でも気付く。気配をなるべく殺して近付いても台無しだ。嫌悪感に影響されたプレーは読み易い。動きもタイミングも手に取るように分かってしまう。

 

「で、態々何の…「俺と勝負しろ」……あ?」

 

 何の用かと問う前に突き付けられたのは挑戦状。小僧丸はまっすぐに凪人を見て己の力を試すかの如くその瞳に熱を込める。

 

「ファイアトルネードの使い手の一人として、ストライカーとして」

 

****

 

 閃電、雷門、帝国のメンバーが見守る中、帝国学園のグラウンドの中心にて小僧丸と凪人が並び立つ。

 

「じゃあ改めてルールはこうだ。このセンターサークルからペナルティエリアまでボールを奪い合いながらドリブルして進み、先にゴールを決めた方の勝ち。それで良いな?」

 

「ああ。ぶっ潰してやるよ」

 

「あいつ!この期に及んでまだあんな口を…!」

 

 初めて会った時から小僧丸とは折り合いの悪かった刀条は小僧丸の凪人に対する口振りに難色を示す。しかしそんな彼の肩を掴み、それを諌めたのは……、

 

「……五条さん!?」

 

「ここは様子を見ましょう。彼が斎村君にあそこまで噛み付く理由は分かりませんが、きっとそれは彼にとって譲れないものなんでしょう。私達は小僧丸君について何も知りません。彼の斎村君に対する言動や態度は確かに褒められたものではありませんが、彼のその点を咎める前に、私達は彼について深く知らねばなりません。それには彼のサッカーを斎村君との勝負という形で見るのが一番良いと私は思います」

 

「……まぁ、五条さんがそう言うなら」

 

「五条君がそこまで言うなら、この勝負にも試す価値はあるか」

 

「ハハハッ!五条さんが言うなら大丈夫だな!」

 

「お前ら五条への信頼半端ねぇな…」

 

 五条の説得により、納得した様子の刀条や海原、堂本。対して五条一人がそう言っただけであっさりと納得してしまった閃電メンバーを見て少々引いた様子の不動。

 何故ここまで五条が閃電からの信頼を勝ち取っているのか不動には分からない。不動が帝国に編入して来た時には既にそんな感じだったのだ。

 

 そんな外野を放置して亀田が吹いたホイッスルで凪人と小僧丸の勝負が始まった。まずは小僧丸が先に動いてセンターサークル内のボールを確保してゴールに向かって走り出した。

 

「先手必勝!」

 

「…良いバネだ」

 

 ドリブルをしてゴールに向かう小僧丸。そのずんぐりむっくりした体型と短い足からは予想し辛い意外なスピードでどんどん突き進む。

 

「が、ドリブル中の警戒が甘い。スピードも体型からすれば大したもんだが、全体的なレベルとしては低い」

 

 しかしその小僧丸に凪人は一瞬で追い付いた。そしてそれに反応する暇も与えずにボールと小僧丸の間に割り込み、滑り込むようにボールをカット。そのまま二人の距離も安全圏まで離れた。

 

「何だと!?」

 

「正面突破に長けてはいるが、その分横や背後への注意が散漫になっているぞ」

 

「…くそっ!!」

 

 急いでボールを奪い返そうと凪人を追うが、追い付けない。基礎的なスピードが段違いな上、そのスピードを殺さないドリブルの技術もまた、凪人と小僧丸とでは天と地程の差があった。

 

 結局追い付く事もままならず、ペナルティエリアに入った凪人はそのまま鋭いシュートを撃ち、ゴールネットを揺らした。

 

「……斎村の勝ちだな」

 

 佐久間の判定に異議を唱える者はいない。予めルールを決めて、それに則って行ったのだ。素人でも分かる。

 しかしこの結果に彼は納得しない。目を見れば凪人には分かった。だからこそ、この蟠りを解消させる為に口を開く。

 

「まだだ」

 

「斎村…?」

 

「まだ続けるんだろ?」

 

「……当然だ!!」

 

 流石にこれ以上合同練習を滞らせる訳にはいかないので場所を変えての勝負になったが。帝国の二軍用グラウンドにて何故かこの勝負を見守ると決めた五条と何か思う所があるらしい稲森の見学の元、小僧丸は凪人に同じ条件で挑み続けた。

 

 ボールを先に確保される。ディフェンスを仕掛ける間もなく、振り切られてゴールを決められる。

 

 ボールを先に取ってもすぐに奪われる。奪い返そうにもスライディングもブロックも全て躱される。ゴールを奪われる。

 

 何度も何度も同じような事の繰り返し。小僧丸のプレーはオフェンスもディフェンスも何一つ通用せず、力の差を見せ付けられ、点差ばかりが一方的に開いていく。

 

「小僧丸…なんでそこまで……」

 

「ククク…さてねぇ。彼なりの意地ではあるんでしょうが」

 

 稲森はあそこまで敵愾心を剥き出しにして凪人に挑み続ける小僧丸が理解出来ず、五条はただ慇懃無礼に含みのある笑みを浮かべる。

 

(クソッ…!全く埋まらないこの差は……一体何だ!?)

 

 どれだけ挑んでも良いように翻弄され、ボールに触れる事もままならない。必殺技を使わせる事も出来ない。

 汗だくで息を切らして四肢を地に着ける小僧丸と汗も殆ど掻かず、呼吸も安定して悠然と小僧丸を見下ろして立つ凪人。非常に対照的な絵面だ。

 

「もう終わりか?俺に突っかかる割には大した事ないな」

 

「んだと…!!」

 

 ボールを踏み付ける凪人を睨み、突進していく小僧丸。凪人からボールを奪おうとタックルを仕掛けるもそれは凪人を弾くには至らない。そして同じようなタックルをまたしようとした瞬間、凪人は身を引く。そして小僧丸のチャージは空振り、そのまま地面に倒れ臥す。

 

「ぐ…!ぐぐ……!!」

 

「小僧丸……」

 

「稲森君、手出しは無用ですよ」

 

 凪人はそのままゴールに向かわずに倒れる小僧丸に語りかける。

 

「……お前は実力差も分からないような奴じゃないだろ?ここまで付き合ってはやったが、何でそこまで…」

 

「うるせぇ……一勝くらい、てめぇに一矢報いなきゃ……俺の中で次はねぇんだ……!!今それが出来なきゃ、その座を奪い取れねぇんだ…!!」

 

 倒れながらも必死に語る小僧丸。その言葉を聞いて何か思ったのか、凪人はボールを足の甲の上に乗せて言った。

 

「立て。これがラストだ」

 

「……」

 

「終わらせて練習に戻る。その前に見せてみな。お前のファイアトルネードを」

 

 ファイアトルネードの使い手として勝負しろと小僧丸は最初に言った。だがこれまでお互いにファイアトルネードを使ってはいない。故に最後の決着に凪人はファイアトルネードを選んだ。小僧丸が立ち上がると凪人はすぐにボールを蹴り上げて、飛び上がる。

 

「……これだけは、負けねえ!!」

 

 小僧丸も遅れて飛び上がり、互いに右回転で炎を纏う。その光景を見て稲森と五条はそれぞれ違う反応を見せる。

 

「二つのファイアトルネードが…!」

 

「ぶつかり合う事で彼の心情を見極めるつもりですか……」

 

「「ファイアトルネード!!!」」

 

 正面からぶつかり合う二人のファイアトルネード。しかしそれぞれの脚に纏わり付く炎の勢いも熱量も規模も何もかもが凪人のシュートの方が格段に上だ。基礎能力で凪人が上回っており、技の熟練度も質も凪人が上ならば小僧丸に勝ち目などないのだ。

 

 しかしそれでも小僧丸は自分のファイアトルネードを以ってして凪人のファイアトルネードを押し切ろうと踏ん張る。

 

「この技だけは…ファイアトルネードだけはお前に負ける訳にはいかねぇんだ!!!」

 

「「!」」

 

 鬼気迫る表情で叫ぶ小僧丸。その顔を見て、言葉を聞いた凪人と五条は漸く理解する。小僧丸が凪人を敵視する理由を。

 

(……そういう事か)

 

「ククク……成る程。ファイアトルネードDD…ですか。豪炎寺君も罪作りですねぇ」

 

 高熱の炎がぶつかり合う中、凪人は蹴り込む力を強め、気力を高める事で脚から放たれる爆炎を増幅させる。

 

「なっ!?」

 

「そういう事なら本気でやってやらあ。修也の相棒の座をそう易々と他にくれてやる気は微塵もねぇんだよ」

 

「お前…!まさか今までこのファイアトルネードは本気じゃなかったってのか!?」

 

 驚愕する小僧丸に対し、凪人はこれ以上何も答えず、ただ眼前の敵を押し切る為に全力を注ぐ。そして炎の勢いが完全に負けた小僧丸はボール越しに弾き飛ばされ、そのまま落下。凪人は空中で炎を纏って回転するボールを蹴り出してゴールにぶち込む。そして着地。

 

 落下した小僧丸は仰向けに倒れ、空を見上げる。

 

「……負けた。ファイアトルネードでさえも……!!」

 

 憧れた男の技であり、己の自信そのものであった必殺技。それを同じ技で何よりも気に食わない男に捩じ伏せられた。

 目の奥が熱くなる。ただ試合で負けるよりも遥かに耐え難い気持ちだ。

 

「くそおおおおおおおっ!!!」

 

 屈辱の果てに絞り出した叫びは無力感に包まれていた。

 

「彼が斎村君にあそこまで敵愾心を抱く理由は昨年の世宇子との決勝で見せた、豪炎寺君とのファイアトルネードDD。豪炎寺君の隣に立つ“相棒”という立場に嫉妬していた……という訳ですか」

 

「そっか…。豪炎寺さんは小僧丸の憧れ……一緒にファイアトルネードを撃つ事は……小僧丸にとって特別な事だったんだ」

 

 五条は小僧丸の心情を理解し、稲森も納得する。豪炎寺と並び立つ凪人がある意味では羨ましく、邪魔だったのだと。凪人もそれを理解したのか、溜め息を吐く。

 

「修也の相棒の座を奪う…ねぇ。悪いがさっきも言った通り、くれてやる気はねぇし、修也がファイアトルネードDDのパートナーに俺より弱いお前を選ぶ事も絶対ねぇよ」

 

「っ!」

 

 凪人はそれだけ言って小僧丸に背を向けて二軍グラウンドを出ようと歩き出す。これだけの為にかなりの時間を削ったのだ。そろそろ合同練習に合流しなければならない。

 

 しかしその前に小僧丸は叫ぶ。その目元を腕で覆って隠して。

 

「分かってんだよ!嫉妬してるだけなのも!!筋違いの逆恨みだってのも!俺がお前にまだ勝てねえのも!!」

 

「小僧丸……」

 

「けどっ!それでも……!!俺はお前より強くなってやる!!」

 

「!」

 

「良いかっ!!俺は…近いうちに絶対お前に勝ってやる!!お前に勝って!!日本代表として世界を相手に!!豪炎寺さんとファイアトルネードDDを決めるのは!!この俺なんだ!!!」

 

 声を震わせながら叫ぶ小僧丸。その話を聞き終えて稲森は何も言えなくなり、五条は何処か満足そうな笑みを浮かべる。そして凪人は振り返って好戦的な笑みを浮かべながら返答した。

 

「ああ…いつでもかかってきな。何度だって負か(相手)してやる」

 

 こうして、小僧丸の中にあった蟠りは少しだけ解けた。それ以降は精神的にスッキリしたのか小僧丸のプレーはキレが良くなり、ほんの少し……あくまで少しだけだが、凪人に対する態度も僅かに軟化した。

 

 

 そして閃電、帝国、雷門の合同練習は幕を閉じ、

 

 

 遂に雷門中と星章学園の試合の日が来た。




次回、伊那国・雷門vs星章。

色々と苦しい特訓を乗り越えてきたしそろそろ雷門も真っ当に活躍させたい。(帝国に負けたら強くなる補正+合同練習によるスランプ克服と実力UP+稲森、小僧丸の精神的成長+その他諸々)

小僧丸の主人公に対する態度は軟化はしましたが、仲良くなったりはしません。キャラ的にライバル視する感じでしょうから。
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