イナズマイレブン -もう一つの伝説-   作:メンマ46号

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今回から主人公の強化委員派遣の経緯と派遣先の話に、フットボールフロンティアまでの諸々の流れなどを一通りやってから本格的に『アレスの天秤』編に入ります。


原作開始前
最弱のイレブン


 side凪人

 

『……それでお前はその学校の試合を観に行くのか?』

 

「ああ。お前も派遣先候補の下見だろ?利根川東泉だっけ?そろそろ切るぞ。試合が始まっちまう」

 

 俺はスマホでの円堂との電話を切ってチェアマンに渡された地図を取り出し、周囲の看板や標識を見て自分の位置を確認する。

 

「……確かこの辺だよな」

 

 今日俺は強化委員としての派遣先の候補の一つであるとある中学校に向かっていた。あくまで候補であってその学校に本決まりという訳ではない。

 

「今日が練習試合ってんなら、見極めるのに丁度良いか……」

 

 そう、今日はその候補チームの練習試合が行われる日だ。その試合を見る為にその学校へ俺は向かっている。とは言え、これまで全くの無名校だった上に俺の知る原作イナズマイレブンシリーズのどの話にも出てこなかった名前の学校だ。ある意味ではオリジナルチームとも言えそうだ。

 

 実はそのチーム、チェアマンが直接俺に指導を頼めないかと提案してきたチームだ。チェアマンの顔を立てて無下には出来ないから試合を見る事にした。当然そのチームは俺が観戦しに来る事は知らない。

 

『彼らのようなチームにこそ、君の力が必要なんだ!君ならばきっとこのチームを世界に挑める強いチームに出来るはずだ!!』

 

 ……ほとんどあの剣幕に押されたようなもんだけどな。地図を見る限りこの辺なんだが……。

 

 それから俺は道行く先々の人達に道を尋ねつつ、目的地へと向かって行く。そしてようやく辿り着いた。

 

「おっ。あったあった。中々立派な校舎じゃないか。生徒の数は……多分雷門より少ないかな?

 

 

ここが“閃電中学校”か」

 

 辿り着いた先……今回の目当てのチームである“閃電中学校”に来た俺は早速校門を潜り、サッカースタジアムに足を運ぶ。

 

****

 

 side三人称

 

 閃電中学校。

 

 創立20年余の私立中学であり、東京にその門を構えているが雷門中からの距離は離れている。フットボールフロンティアでの地区予選も恐らくは別グループに振り分けられるだろう。

 

 この学校は進学率はそこそこ高く、偏差値も雷門中と遜色無い。生徒数は一学年に200人程度。雷門中よりも100人程少ない。敷地内に学生寮があり、寮で生活し、学校に通う生徒と自宅から通学する生徒に分かれる。

 

 そしてスポーツが中々に盛んな学校。ただ一つ、()()()()()を除いては。

 

「皆!今日の相手は竜宮中だ!全力で行こう!」

 

『おおー!!』

 

 閃電中サッカー部のメンバーはキャプテンの号令一下、気合いを入れてグラウンドに駆け込んで行く。そんな彼らを見て観客ーーー否、同校の生徒達は応援……ではなく野次を飛ばす。

 

「オラー!下手クソサッカー部!また負けたら承知しねーぞぉーー!!」

 

「今回くらいは10点以下に抑えろよヘナチョコキーパー!!」

 

(……凄え言われよう)

 

 と、この野次の通りサッカー部だけはこの学校では唯一の弱小部であり汚点とすら言われる存在だった。この学校では勝てない運動部の権威は低く、勝ち星を挙げられなければ部費も殆ど割り当てられなくなり、そこから充分な設備を得られず満足に練習も出来ずに他校と実力差が開き、負ける……という悪循環が繰り返されている。

 

 観客席で試合開始を待つ凪人はチンピラみたいにサッカー部に野次を飛ばす一般生徒達を眺めつつ、フィールド全体を見渡す。

 

 FW二人、MF四人、DF四人。そしてGK。オーソドックスなベーシックスタイルでのフォーメーション。基礎中の基礎とも言える。

 

(位置取りは悪くない……。試合への意気込みもここまで言われてる割には中々だ。メンタルも弱くはないな……)

 

 閃電イレブンをそう評価しつつ、チェアマンに渡されたこれまでの閃電中の戦績データを読む。

 

(練習量は多い方だ。練習の真剣さも頭一つ抜き出ている……。試合も全員が人一倍真剣に挑んでいる。なのに……)

 

 ホイッスルが鳴って閃電ボールでキックオフ。FW二人が攻め上がって行く。

 

(ここ二年間、練習試合、公式試合問わず……一度も勝利を収めた事がない)

 

 一瞬にして相手FWにボールを奪われて次々と突破されて行く。そしてシュート。キーパーは反応出来ても間に合わずにあっさりと点を奪われた。

 

 そしてすぐまた閃電ボールで試合再開。

 

(連携に問題はない。むしろ相手よりも良いくらいだ)

 

 それでもすぐにボールを奪われて一方的に攻められ、すぐさま追加点を取られる。

 

(個人技も別段下手じゃない。中々上手い)

 

 竜宮中のFWのシュート。ゴールのコーナー狙いで放たれた鋭いキック。そのシュートに閃電のキーパーは全力で食らいつく。

 

「どりゃああああっ!!!」

 

 シュートを止める為に飛び付いて………そのまま勢い余ってゴールポストに顔面から激突した。

 

「…………!!」

 

 さしもの凪人も絶句した。あんぐりと口を開けて絶句した。見れば閃電イレブンもあちゃーとでも言わんばかりに頭を抱えており、竜宮イレブンも目玉が飛び出るのではないかと思える程ビックリしている。

 

(あんなベタなギャグ漫画みたいな失敗する奴、このイナズマイレブンの世界にいたんだ………)

 

 しかし閃電中サッカー部は凪人から見てもチームとして、選手として問題点は見当たらない。足りない点はあるが致命的な欠点など何一つ無かった。

 

 なのに何故ここまであっさりと一方的にやられるのか。何故全く相手に歯が立たないのか。

 

 

 

 答えは至極単純明快だった。

 

 

 

 閃電中イレブンは………ただひたすらに弱かった。

 

 

 

(あいつらは……練習自体の要領の悪さもあるんだろうが……それ以上に激しい練習やサッカーへの思いに全く成果が見合っていない。幾ら何でもこれは……!)

 

 

 

 はっきり言えばかつての雷門よりも遥かに酷かった。凪人はチェアマンの言葉を思い出す。

 

『彼らのようなチームにこそ、君の力が必要なんだ!君ならばきっとこのチームを世界に挑める強いチームに出来るはずだ!!』

 

(チェアマンは知っていたんだ……このチームの事を。そして、あいつらが強くなるには……俺が必要だって事も)

 

 そしてまた竜宮中のFWが鋭いシュートを撃つ。DF達はそれを阻む事も出来ずにボールにすり抜けられ、またゴール前にいるキーパーがそれを止めにかかる。

 

「うおおおおおおーーーーっ!!!()()()()()()ォォォーーーーーー!!!」

 

「!?ゴッドハンドだと!?」

 

 キーパーの少年の叫びに凪人は目を見開く。しかし円堂守が出すような巨大なエネルギー体の掌は出現せず、キーパーの少年は真正面から両手でシュートを捉え、止めにかかる。

 

「ぐぎぎぎっ……!!どわああああっ!!!」

 

 数秒間持ち堪えはしたものの、ノーマルシュート相手に止めきれずに弾かれて転げ回る。当然、シュートはゴールネットを揺らす。

 

 前半、後半と瞬く間に時間は過ぎて行く。そして試合終了。結果は0-13。相当酷い結果だった。

 

(竜宮中はフットボールフロンティアの予選トーナメントじゃ帝国学園に惨敗している。その際に怪我をした選手も多いと聞いた。まだ本調子じゃないはずだ。その竜宮中相手にこの結果か……ほとんどサンドバッグ状態。竜宮中は復帰した選手の試合での連携やプレーを確かめ、チームの調整をする為……これは文字通り()()()()()組んだ試合なのか)

 

 確かに人数がしっかり揃った上でここまで弱い弱小チーム程、その手のサンドバッグに適した存在は無いだろう。竜宮中は景気付けの為にもこの試合を組んだのだ。

 

「またボロ負けか!弱小サッカー部!!」

 

「辞めちまえクソザコキーパー!!」

 

「そこのテメーもキャプテンのくせに何やってんだ金髪ヤロー!!」

 

 今回もまた惨敗した事で一般生徒達は負けたサッカー部員達に空き缶やペットボトル……ゴミを投げ付けてブーイングの嵐。しかしキーパーの少年はそれに負けないように必死に涙を堪えながら叫ぶ。

 

「次こそ……!!次こそ絶対勝ってやる!!見てろ!!俺達は絶対こんなとこで終わらねー!!フットボールフロンティアで絶対優勝してやっからなーーーー!!!」

 

 キャプテンの少年はキーパーの少年の肩に手を置くと、批難と罵倒を耐えながらチームメイト達と歩く。

 

「お前らなんか絶対無理だっての!!」

 

「才能ねーんだよ!諦めてとっとと解散しろ!!」

 

 哀愁漂うその後ろ姿を凪人はじっと見ている。

 

 閃電イレブンの一人一人を良く観察してユニフォームの下にある傷や痣を見る。

 

 筋肉で固められた腹、擦り剥いて傷だらけになった膝。走り込みで発達した脚。重なり合った傷跡。

 

 どんなに弱くても、試合に勝てなくても、勝利を信じて、強くなりたくて必死に練習して付いた傷だった。そんな練習をしなければ決して付きようがない傷だった。

 

 ユニフォームの背番号を背負う彼らの背中が無言で叫んでいた。強くなりたい。大好きなサッカーで勝ちたい……と。

 

 どれだけ負けても努力の成果が実らなくても挑み続けられるのは……彼らが決してサッカーを諦めていないからだ。思わず凪人は微笑んでいた。

 

 似ていたからだ。彼らはかつての雷門イレブンに。

 

(……雷門魂、最初から持ってんじゃねーか)

 

 中でも二人、それが顕著に現れた者達がいた。一人は閃電サッカー部のキャプテン。そしてもう一人はあのゴールキーパー。

 

 まるで円堂守を見ているようだった。

 

 凪人は資料を取り出してキーパーである彼の名前を確認する。グラウンド横を見れば彼を中心として閃電イレブンは全員声こそ出していないが悔しさからボロボロと泣いていた。

 

 

(……堂本衛一郎(どうもとえいいちろう)、か。気に入ったぜ)

 

 

 立ち上がって彼らに背を向け、観客席を後にしながらも尚、呟く。

 

「まさかここに来て円堂にソックリな熱血サッカー馬鹿を見つけられるなんてな……」

 

 凪人はスマホを取り出して少年サッカー協会統括チェアマンである轟伝次郎に連絡を入れる。

 

「どうも。斎村です。派遣先の希望校、決めました。………チェアマン、俺はサッカー強化委員として、貴方の紹介してくれた閃電中サッカー部に行きます!」

 

 そう宣言した凪人の瞳は稲妻のような輝きを帯びていた。

 

 かつて日本中に嵐を巻き起こした者達がいた。

 

 40年間無敗を誇り、あのフットボールフロンティアで優勝し続けた帝国学園を倒し、最強と謳われた世宇子中をも倒した。

 

 その名は雷門中サッカー部。

 

 彼らはイナズマイレブンと呼ばれた。

 

 そのプレーに誰もが勇気を貰い、心を震わせた。

 

 ……そして、今。その雷門サッカー部の遺伝子を受け継ぐチームによる新たな伝説が始まろうとしていた。

 

 閃電中サッカー部、堂本衛一郎と雷門中サッカー部強化委員、斎村凪人。この二人の邂逅する時こそが新たなイナズマイレブンの伝説になる事は……まだ誰も知らない。




と、まぁ主人公の派遣先のキーパーは本編の劇場版オーガから名前だけ出てた堂本衛一郎です。分かりきってましたよね。

連携や技術に問題は無くても彼らが弱いのは簡潔に言えばゲームでいうステータスがGPとコントロール以外軒並み低いからです。他にも理由はありますが。またレベルも低く、必殺技も碌に使えない状態です。

以下、簡単なプロフィール

堂本衛一郎
GK 背番号:1 火属性
閃電サッカー部のキーパー。漫画版の円堂と似た性格をしている。年齢は円堂や主人公より一つ下。

【キャッチコピー】
情熱の闘魂キーパー
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