今回のメインは堂本ではありません。
side三人称
ある日、とある牧場にて。閃電中サッカー部のキーパーである堂本衛一郎とキャプテンの少年はその牧場にて特訓をしていた。
「来ぉい!!」
堂本はキーパーのユニフォーム姿でグローブを身につけてどっしりと構える。そしてその先には……頭にサッカーボールを括り付けられた闘牛がいた。
どうやらこれを止める事でキーパーとしての特訓をするつもりらしい。
「堂本君……やっぱり無茶だよ!?」
「何言ってんですかキャプテン!どんなボールでも俺は止める!あの円堂さんみたいになるんだ!!」
閃電サッカー部のキャプテンはそんな滅茶苦茶な特訓をする堂本を止めようとするが聞く耳を持たない……というより堂本は忠告を聞いても理解していない。
そして迫り来る闘牛のタックル。堂本はサッカーボールをその手で捉え掴もうと叫ぶ。
「おおおおっ!!
そうしてがっしりとボールをその手で捉え、闘牛の動きと共に真正面から受け止めてみせた。
「と、止めたーーー!?」
「ぐぎぎぎっ……!!」
そして数秒後、ボーンという効果音と共にくるくると空を舞う堂本の姿とキャプテンの叫びがそこにあった。
「やっぱ無理だったーーーー!!」
****
翌日、月曜日になって閃電中の学生寮から制服を着て、頭や腕に包帯を巻き付け、顔中にガーゼを貼ったボロボロの堂本が出て来た。
無気力にも見える腑抜けた面で歩き、校舎へと向かう。そんな彼の様子を閃電中の生徒達はコソコソと陰で話す。
「うっわ…何アレ……」
「ボロボロだなぁ……」
「あいつサッカー部のダメキーパーだよ。あの弱小の。何でも必殺技の特訓してたんだってさ」
そんな堂本に後ろから走って来たサッカー部のキャプテンが話しかける。どうやら彼は学生寮ではなく自宅通学のようだ。
「あっちはあっちでチームを纏める事は出来ても勝たせる事の出来ないヘボキャプテン。そろそろサッカー部も廃部かな……」
「むっ!?」
“廃部”という言葉に敏感に反応した堂本は怒りの形相でそれを呟いた男子生徒に突っかかる。誰しも廃部にはなりたくないものなのだ。
「何だと〜!?」
「何だとって普通だろ。必殺技なんておめでたい事言ってるしよ」
「それに……言われたくないんだったら一回くらい勝ってみろよ。この前の試合だって勢い良く横っ飛びして、ボールも取れずにゴールポストに顔から激突してたろ……」
「ゔっ…!!」
痛い所を疲れて堂本は押し黙ってしまう。それでも気丈に振る舞いながら反論を開始する。
「馬鹿にすんなよ!俺達はいつか必ずあの雷門中のように……いや、雷門中をぶっ倒してフットボールフロンティアで優勝するんだからな!!」
「雷門中…?」
「あの中学サッカー界の伝説になった……?」
それをきっかけにスイッチが入ったのか堂本は鞄からサッカー雑誌を取り出して熱くあの雷門イレブンについて語り出す。
「そう!雷門中サッカー部!!今や『イナズマイレブン』とも言われる伝説のチーム!!無名から一気にフットボールフロンティアの地区予選大会、全国大会での優勝によって日本一になったんだからな!!強力な必殺技を使って40年無敗だった帝国学園や最強とまで言われた世宇子中すら倒したんだ!!」
その勢いに圧倒されながらも男子生徒の一人はごくりとつばを飲み込みながら核心に迫る。
「まさか……特訓していた必殺技ってのは……!!」
「『ゴッドハンド』……雷門イレブンのキーパーでありキャプテン、円堂守が使っていた必殺技だ。お前らだってスポーツが盛んなこの閃電中の生徒だってんなら……実際に中継で見た事があるはずだ」
当然見た事がある。スポーツが盛んなこの閃電中学校の生徒は例え自分の所属する部活以外のスポーツでも観戦するのは当たり前。弱小で負けると分かり切っていたようなサッカー部の試合を観戦する物好きと言って良い生徒がいるのもスポーツ愛好心から来るもの。当然、堂本と話す男子生徒達も運動部所属である。………だからこそ、あそこまでボロ負けすれば罵詈雑言の嵐なのだが。
そしてあのゴッドハンドは確かに強力無比な必殺技だった。円堂守という伝説のゴールキーパーの象徴とも言える技だろう。
「い、一体どうやったらあんな凄え技を出せるっていうんだ……!?」
「……さぁ?そこまでは…」
「「知らねえのかよっ!!」」
つまり堂本はゴッドハンドの習得方法は分からずに闇雲に無茶な特訓をしているだけである。
「と、とにかく俺達は雷門中みてーに強くなって、フットボールフロンティアで優勝してこのサッカー部を学校で一番凄え部にしてやるんだ!!な!キャプテン!!」
「え、……あぁ。うん……」
しかし自信満々な堂本とは対照的にキャプテンの少年は自信が無く、弱々しく頷くだけである。そして男子生徒二人はそんな対照的な二人……主に現実を理解していないであろう堂本……を見てゲラゲラと大笑いする。
「「お前らなんか絶対無理!!」」
「なんで笑うかーーー!?」
若干キレている堂本をよそにキャプテンは何処までも暗い。やはりこれまで一勝すら出来ていない事が影響しているのだろう。そんなキャプテンにある女子生徒が話しかけて来る。
「キャプテン!大変です!」
「!……時枝さん」
「せ、生徒会長が……サッカー部を潰すって…!!」
「「ええ!?」」
キャプテンに話しかけた女子生徒ーーーサッカー部のマネージャーの言葉に驚き、部室に向かって走り出す堂本とキャプテン。マネージャーも慌てて二人を追う。
そして部室前に辿り着くと他の部員達の前に生徒会が並び、生徒会長が代表して立ち退きを要求していた。
「おい生徒会長!勝手な事してんじゃねーぞ!!」
「……また君か堂本君。前から言っているはずだ。このスポーツが盛んな閃電中において勝てない弱小部に居場所などない。学校の恥だ。むしろこれまで残っていた事がおかしいんだ」
生徒会長の言い分に閃電イレブンは反論出来ずに黙り込む。しかし堂本だけは違った。
「勝ちゃあ良いんだろ!?勝ちゃあ!!次こそ絶対に勝つ!!そこから……」
「次こそ100%無理だ」
冷徹に突っぱねる生徒会長。しかしその言葉にサッカー部員全員がある反応を示す。
「!つ、次の試合相手……決まったのかい!?」
「ああ…。………王帝月ノ宮中学だ」
その名前に堂本以外の全員が絶句する。しかし堂本からすればこれまで聞いた事の無い学校だ。新設校かサッカーにおいて無名校なのだろうと判断する。
「そっか!じゃあ放課後から早速練習して……」
「無理だと言っているだろう。あの『アレスの天秤』の被験校だぞ?」
「……あ、アレスの天丼……?」
「『アレスの天秤』だよ堂本君。あの“月光エレクトロニクス”が開発した次世代の教育システム。幼少期から遺伝子レベルの分析をして、スーパーコンピューター『AR2000』によってその個人に最適なプログラムを提案して、英才教育を受ける。この教育を修了した者はどんな事も完璧にこなせる人間になれると言われているんだ。それをサッカーに持ち出したチーム。それが王帝月ノ宮イレブンなんだ」
『アレスの天秤』による教育システムは国からも注目される程のものだ。そんなものを受けたチームを相手に勝てなければサッカー部は廃部になってしまうという事だ。
キャプテンの説明によって閃電イレブンの空気は更に重くなる。
「勝ち目ないだろ……」
「どうしてそんなエリートチームが俺達に……?」
「さては俺達の隠れた才能を見に来たな!!」
「馬鹿か君は……ハァ」
生徒会長の溜め息によって堂本以外のサッカー部員の気持ちも意気消沈していく。
「とにかく、どことやっても勝ち目なんて最初から無いんだ。学校の恥をこれ以上晒さない為にも即刻廃部に……」
『アレスの天秤』の見せしめになる事を良しとしない生徒会長が問答無用で廃部を押し通そうとしたその瞬間、その声はどでかく響いた。
「そんな事無いぞぉーーーー!!!」
誰もがその声の出所に振り向く。逆光でシルエットしか分からないその人物が歩み寄って来る事によって次第にその姿を確認出来て来る。
そしてその人物の顔を見てその場にいる者達全員が驚愕する。このスポーツ校である閃電中において彼を知らぬ者はいない。
「な、何故君のような有名人がこんな所に……!?いや、それ以前に君は雷門中の……」
「……あれ?ここの理事長から話通ってないのか?ほれ。俺だってこの閃電中の制服着てんだろ?」
戸惑う生徒会長と話す彼は鞄からある書類を取り出して生徒会長に見せる。
「こ、これは……!!」
「……少年サッカー協会からの正式な通知だ。……文武両道でスポーツを重んじるこの閃電中なら……無下には出来ねえだろ?」
「……確かなんだな?」
「ああ。俺は『サッカー強化委員』としてこの閃電中を強くする為に来た。そちらさんの理事長にも話は通ってる」
「……分かった。暫くは様子を見よう。負けてもサッカー部の廃部は保留だ」
「ありがとな。後、王帝月ノ宮との練習試合はいつなんだ?」
「……一ヶ月後だ」
「……充分!任せてくれ!」
「……フン」
生徒会長は生徒会を連れて部室前から去って行く。これまでのやり取りに戸惑う閃電イレブンに気付いた彼は早速名乗る。
「……さて、まず初めましてだな。『サッカー強化委員』として雷門中から来た斎村凪人だ。これからよろしくな!」
『……え?え?ええぇぇぇーーーーー!!?』
閃電イレブンの驚愕の絶叫が響き渡る。あの日本一の雷門イレブンの副キャプテンである斎村凪人が突然自分達のチームに加わると言うのだから。
「す、すっげーーー!!あの斎村さん!?マジで!?中学サッカー界切ってのスーパーMF!!あの雷門中を全国優勝に導いた副キャプテン!!『フィールドの軍神』なんて言われる天才司令塔じゃんかよ!!」
「ん。よろしくな!堂本衛一郎君!」
「お、俺の事知ってんの!?うおおおおおおっ!!」
「……テンション高いな」
グイグイ迫って来る堂本と話しながら凪人は今度は閃電イレブンのキャプテンに話しかけ、握手を持ちかける。
「……よろしくな。改めて、斎村凪人だ」
閃電のキャプテンは凪人を真正面で見ながらあらゆる考えを頭の中で巡らせていた。
何故なら凪人は彼にとって小学校時代からずっと憧れていたサッカープレイヤーなのだから。
(……斎村君と一緒なら……もしかして本当にフットボールフロンティアで優勝出来るかも……!!)
知らず知らずにそう考える程に。彼は迷わず手を出して握手に答える。
「よろしく……!僕は閃電中サッカー部キャプテン……
星宮サトル!!」
星宮サトル
MF 背番号:8 山属性
閃電中サッカー部キャプテン。正史・本編と違って両親が生存する。その為正史・本編と違ってお日さま園及び永世学園との関わりが無くなり、閃電中に入学した。ただしこの世界線ではGKの経験は皆無でお日さま園のメンバーとの関わりも無い為、実力は正史や本編より遥かに劣る。キャプテンとしては慕われている。
これがこのチームにおけるアレスルートと本編との最も大きな差です。本編でもクロノ・ストーン編後にイナズマジャパンが強化委員として各地に派遣され、主人公はこのチームに来ますが、当然そこにサトルはいません。そちらの世界線では堂本がキャプテンをやってます。