side三人称
「さあっ!!練習だ!!」
放課後、部活動の時間、サッカー部用のサッカースタジアムにて凪人は両手で一つのサッカーボールを前に持ち、練習開始を告げる。かつて雷門で円堂が仲間達に言い放ったように。
「あ、あの……斎村さん」
「どうした?刀条?」
閃電イレブンのFWを務める刀条優作はおずおずと手を挙げてから凪人の後ろを指差すと誰もが気になっていた疑問を凪人にぶつけた。
「……何ですか?そのタイヤ」
刀条の言う通り、凪人の真後ろには大量に積み重なったタイヤの山が積み上げられていた。何処から仕入れて来たのだろうか。
「特訓に使うのさ。雷門ではこのタイヤを使って色んな特訓をした。まぁ、今日はまだ使わないけどいずれな」
「そ、そうですか……」
「取り敢えずメンバーを確認する。現状部員は俺を除いてギリギリ11人。マネージャーが一人か。それぞれのポジションは……」
1.堂本衛一郎 GK 1年
2.石島泪 DF 2年
3.城之内進太郎 DF 2年
4.藤咲宗吉 DF 1年
5.種田夕刻 DF 2年
6.逢崎俊 MF 1年
7.海原誠 MF 2年
8.星宮サトル MF 2年(キャプテン)
9.赤木八雲 MF 1年
10.刀条優作 FW 1年
11.桐林直久 FW 2年
18.斎村凪人 MF/FW 2年(強化委員)
時枝四季 1年 マネージャー
「………って、監督はいないのか?」
「うん……一応顧問の先生はいるんだけど、あまりサッカーに詳しくなくて……本人もバスケ部の監督希望だったから……こっちに充てられても」
「……碌な指導もせず、意欲も薄い訳か」
サトルの説明を聞いて凪人は溜め息を吐いた。本当に形だけの顧問のようだ。別のスポーツクラブの顧問を希望していてそれが叶わずたらい回しされるかのようにサッカー部の顧問にされたとしてもこれは無い。教員としての責務を果たせと文句を言いたくなる放任具合だった。
「出来ればちゃんとサッカーを知っていて、指導意欲のある人に監督をやって貰いたいんだがなぁ……」
「この学校は学校側の許可さえ下りれば外部の人に監督やコーチをお願い出来るんだけど……僕達はそんな人脈は無いから」
「成る程ね。……つまり、俺が外から監督を連れて来て学校に申請、許可が出たらその人に監督をやって貰えるのか!」
「そりゃそうだけど……もしかして……」
「ああ。監督に関しては俺がどうにかする」
凪人の中には既に数人程、閃電中サッカー部の監督に是非呼びたい人材がいる。かつての雷門サッカー部OB……伝説のイナズマイレブンの人達だ。
(……出来れば会田コーチか備流田さんとかに頼みたいな。後で電話してみるか)
因みに雷門の監督だった響木という選択肢は最初から無い。彼は円堂と一緒に強化委員として利根川東泉中の監督に就任したからだ。
「さて…次は「その前に一つ良いか?」何だ?桐林」
今度は桐林直久という同年齢の少年が凪人に質問を投げかける。
「そもそも『サッカー強化委員』って何だよ?何で優勝校の雷門からウチみたいな弱小に来たんだ?」
「……そっか。まずはそこからだな。先日、俺達雷門がスペインの強豪チームであるバルセロナ・オーブと親善試合をしてボロクソに負けた事は知ってるな?」
「はい……でも斎村さんは最後の最後で日本の底力を奴らに見せ付けたじゃないですか。サタン・スピアー、カッコ良かったです!!」
「はは…サンキュな。赤木。でも日本一の俺達があれだけ惨敗してお前達も分かったんじゃないか?世界から見たら……日本は弱過ぎるんだ」
『!!』
閃電イレブンに衝撃が走る。日本サッカーのトップに立つ雷門が世界には通用しない。それだけでなく凪人の口から次々と出る数々の衝撃の事実。
今日本の力を結集して日本代表を組織しても世界では一勝すら挙げられない。だからこそ、一年で実力を上げて無名から日本一になった雷門イレブンが中心となって日本を強くして世界に羽ばたかせる。それがサッカー強化委員。
そして来年のフットボールフロンティアの後には世界大会であるフットボールフロンティアインターナショナルが開催される。
そこで世界と渡り合い、勝てる最強の日本代表を作る為にも日本全体の実力を押し上げたいのだ。
「だ、だったら尚更何でこんな弱小チームに!?もっと強いチームを強化するのが普通なんじゃ……!?」
「そういうのは修也に染岡、風丸とかがやってくれる。俺は俺なりで行くの」
「で、でもこんなチームで燻ってたら下手すりゃ斎村さんは日本代表に選出されなくなるんじゃ……」
「俺はこのチームを弱小のまま燻らせるつもりは無いし、日本代表から落選するつもりも無い。何が何でもこのチームを日本一の最強に鍛え上げて、俺自身も強くなって日本代表になって世界と戦う」
まっすぐに閃電イレブンを見て凪人は揺るがずに宣言する。誰もがそんな凪人を見てたじろぐ。サトルは凪人に最後の質問をする。
「ど、どうして僕達のチームなの……?」
「似ていたからだ。強くなる前の雷門に。強くなりたくて誰よりもサッカーに真剣で……だからこのチームを選んだ。俺の雷門魂でお前達を鍛えれば必ず日本一を目指せるチームになる。この間の試合を見てそう思ったんだ」
『………』
閃電イレブンはどこまでもまっすぐな凪人の目を見る。決して自分達から目を逸らそうとはしないその真剣で情熱に溢れた目……まさしくサッカー馬鹿の目だった。
すると堂本が凪人の前に出る。
「俺はやるぜ斎村さん!!斎村さんが俺達を信じて鍛えに来てくれたんなら……俺は応える!!俺も世界と戦いたい!!日本代表になりたい!!だから……よろしくお願いします!!」
そう言って凪人に頭を下げる。それからすぐに閃電イレブンに向き直る。
「やろうぜ皆!世界と戦える日本を作るんだ!!その為にまずはフットボールフロンティアで優勝するんだ!!俺達が日本一になるんだ!!!」
そんな堂本を見て凪人とサトルは目を合わせ、笑い、人差し指を立てて堂々と掲げる。
「日本一に!」
「日本一に!」
そして次々と閃電イレブンは人差し指を立て、誇らしくそれを掲げた。
『日本一に!!』
「そして世界へ!!」
『世界へ!!』
「なるぞ!日本代表!!」
『おおーーー!!!』
そうして閃電イレブンは早速スタジアム内のピッチに駆け出す。凪人はチームメイトに声をかけてながら走る。
「よォーし、まずは練習だぁーーー!!」
走り込みから始め、凪人は走りながら練習の概要を説明していく。器用なものである。
「まずは前回の練習試合からお前達の長所と短所を分析した。これを元に個人の練習メニューと全体での練習メニューを立てた!これでお前達を基礎から鍛え直す!!王帝月ノ宮との練習試合の前にはお前達全員に必殺技を覚えて貰う!!特に堂本に星宮!!お前らはスパルタ覚悟しとけよ!!やるぞお前らーー!!まずは王帝月ノ宮に勝ぁーーーつ!!!」
『おおーーー!!!』
そうして閃電中のサッカースタジアムにて凪人の指導による練習が始まる。その様子を生徒会長と理事長は観客席から見ていた。
「……まずは部員達の心を掴みましたね。まぁ、まずはそれをしなければチームを纏める事など出来ませんからね」
「……我が校は運動部が盛んですからね。サッカー部だけが碌に勝てない現状はどうにか打破したいと考えていたんですよ。雷門中からのサッカー強化委員は正に渡りに船でしたよ。ホッホッホ。……さて、彼の連れて来る新監督の受け入れ準備でもしておきますかね」
そう言ってサッカー部への期待を高める理事長はその場を去って行く。そんな理事長の後ろ姿を見送った後、生徒会長は猛練習を始めた閃電イレブンと凪人を見て呟く。
「………本気であの王帝月ノ宮に勝つつもりか。アレスの天秤教育システム………その力の見せしめになる前にサッカー部は潰しておくべきだと思うがな」
****
-王帝月ノ宮中
王帝月ノ宮中学校のサッカー棟。そこで個室に籠り、パソコンで何かを調べる少年がいた。彼の名は野坂悠馬。一年生ながらも王帝月ノ宮イレブンのキャプテンであり、『アレスクラスター』なるものの頂点に君臨する男だ。
「………」
そしてその野坂の側近として彼を支える立場にある少年、西蔭は彼にある報告をしにやって来た。
「野坂さん、あの雷門イレブンの強化委員としての派遣先が全員分判明しました」
「……そう。それで主要メンバーの派遣先は?」
「……一之瀬一哉と土門飛鳥。この二人は強化委員の任を放棄してアメリカに武者修行との事です。鬼道有人は無名校である星章学園へ。豪炎寺修也は古巣である木戸川清修。壁山塀吾郎は同じく無名の美濃道三中。染岡竜吾は北海道最強の白恋中。風丸一郎太はあの帝国学園です」
「……そうか。風丸一郎太が帝国か。帝国に行くとしたら鬼道有人だと思っていたけど、予想は外れたな」
「……そして副キャプテンの斎村凪人。野坂さんの予想通り彼は最低レベルの弱小校の閃電中でした。キャプテンの円堂守は碌に運動部の無い利根川東泉中……この二人は理解に苦しみますね。何故こんなチームに……」
西蔭の疑問にクスリと笑いながら死んだ目で野坂は的中していた推測を口にする。
「……似ていたからだろうね。かつての雷門に。それにこの二人はイレブンを成長させ、前進させる事に関しては驚異的な力がある。閃電と利根川東泉は必ず星章や木戸川、白恋、帝国を遥かに凌ぐ実力を付けて来る。だからそのペースを把握しておきたいんだ」
「……だから一ヶ月後に態々閃電への練習試合を?」
「利根川東泉はまずは部員集めからだからね。その点、閃電は既にメンバーが揃っていたから早速斎村凪人が鍛え始めているだろうからね。その成果が見たい。一ヶ月でどの程度のものなのか」
「分かりました。では練習試合の承認連絡があればまた報告します。……影山零治についても、情報が入り次第」
「頼むよ。……ご苦労だったね。西蔭」
そうして西蔭が野坂の個室から去った後、野坂はあるサッカー雑誌を取り出した。数週間前に発行されたフットボールフロンティアで優勝した雷門イレブンの特集だ。
「…………サッカーは楽しい…か。理解出来ない感情だね」
野坂は肩を組む凪人と円堂の写真を見て、そう呟いた。
刀条優作
FW 背番号:10 風属性
閃電中のエースストライカー。とは言ってもやはり現状の実力は低く、傘美野中レベルの学校からしか得点は出来ない。豪炎寺修也や吹雪アツヤのような絶対的なストライカーに憧れている。元々は本編でギャラクシー編をやる場合の地球代表メンバーとして考案したキャラ。
桐林直久
FW 背番号:11 火属性
閃電のFW。やはり実力は低い。しかしサッカーへの思いは誰にも負けない。性格は多少荒いが思考は柔軟な方。少なくとも強化委員である主人公をよそ者扱いしたりする事は無い。即興で作ったキャラなのでまだ固まっていない所も多い。