イナズマイレブン -もう一つの伝説-   作:メンマ46号

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今回ギャラクシーのシーンを元にした部分があります。あとやぶてん版も。


閃電の底力

 side三人称

 

 前半が0-2で終わり、王帝月ノ宮のメンバーはベンチで監督から苦言を呈されていた。

 

「何だあの体たらくは。凡人以下相手に何をやっているのだ。奴らは凡人相手に大差で負けるような虫ケラ共だぞ!それをアレスクラスターであるお前達がたったの2点差だと!?ライオンが兎を狩るのに反撃され、足を折られるか!?鮫が魚を食おうとして反撃でヒレを食い千切られるか!?この体たらくはそう言う事だ恥を知れ!!結局本命である斎村凪人を引っ張り出す事すら出来ない始末!!お前達は偉大なる『アレスの天秤』に傷を付けるつもりか!!!」

 

 野坂達にそう告げる王帝月ノ宮の監督。しかし彼は野坂達に具体的な指示など一つも出してはいない。ただ『アレスの天秤』のシステムが考案した作戦を伝え、完璧に実行されているかチェックをしているだけ。虎の威を借る狐とは正にこの事である。

 

「……お言葉ですが、監督。閃電は少なくとも凡人よりは優秀に成長しています。あの斎村凪人の指導によって急激に強くなっていました」

 

「……何だと?」

 

「っ!野坂さん!!」

 

 監督の言い分に憤りを覚えたのか野坂が反論すると監督は目に見えて不機嫌さを増す。それをどうにか西蔭が宥める。

 

「……とにかくだ。後半は必ず斎村凪人を引き摺り出せ。そしてあの化身とか言う力を使わせ、データを得る。これは命令だ。あのタクティクスを使え。アレを使えば必ず負傷者が出る。斎村凪人も出ざるを得ない」

 

「!あれは禁断の……!!」

 

 監督からの指示を受けた野坂はその内容に動揺を禁じ得ない。それだけの過激な策と言えるタクティクスだからだ。それによって発生する閃電側の被害など気にも留めない王帝月ノ宮の監督は冷たい視線を野坂達に向けながら指示を出す。

 

「それを使わざるを得ない体たらくを晒したのは何処の愚か者共だ?……やれ」

 

 そして閃電イレブン側もベンチにて休憩を取りながらも凪人からのアドバイスと会田からの指示を受けていた。そして話が終われば凪人は会田に頼み事をする。

 

「監督……この後半で王帝月ノ宮が更に過激な手段を取って来るのであれば……俺を試合に出して下さい」

 

「……分かった。ただし、当初の予定に沿った上でだ。この試合を乗り越えられなければ閃電の成長の勢いは途切れてしまう」

 

 この試合、勝つ必要は無い。狙いはあくまで閃電イレブンの成長と経験。しかし大怪我をしてそれが台無しになっては元も子もない。

 

 そして後半が始まる。王帝月ノ宮のボールでキックオフ。野坂は背後のMFにボールを渡すと、躊躇うような表情で呟く。

 

「……やるんだ。やらなきゃいけないんだ……」

 

 後半が始まって暫く、野坂はそう呟き続け、膠着状態が続く。しかしこうして時間を浪費しては目的が果たせなくなる。だから野坂は腹を括る。

 そして背後のMF達が閃電の陣営に駆けると同時に命じる。斎村凪人を引き摺り出す為に。

 

「グリッドオメガ…フェイズ1!!」

 

 王帝月ノ宮の選手達が閃電イレブンを抜き去ると同時に赤黒い突風が吹き荒れる。それは竜巻状に回転して行き、その風は閃電イレブンを纏めて吹き飛ばす。

 

(フェイズ2に移行する必要は無い……加減をすれば問題無いはずだ……!!)

 

 明らかな実力差があるのに最終段階まで実行してしまえば閃電イレブンの選手生命は間違いなく終わってしまう。だからこそ、野坂は加減と引き際を見極めねばならない。

 

 『アレスの天秤』は人を育むもの。決して害を成す存在であってはならないのだから。

 

『うわあああああああああああっ!!!』

 

(貴方が……貴方さえ出て来てくれれば全て穏便に済むんだ!!)

 

 野坂は凪人には決して視線を向けない。しかし、その感情はまっすぐベンチにて試合を見守る凪人へと向けられる。そして風が吹き止めば閃電イレブンはボロボロになりながら倒れていた。

 

「う…うぅ……」

 

「い…つぅ……」

 

「………すまない」

 

 野坂の言葉は誰にも聞き取られる事は無かった。閃電スタジアムにいる観客達はあまりの凄惨な光景に言葉も出ない。急激に力を付けたとは言え、弱小の閃電中相手にここまでする必要があるのか。怒りに震える者すらいた。

 

(……出て来い!今出なければ……)

 

 野坂は今度こそ凪人へ視線を向ける。しかし凪人はそんな野坂に真顔で告げる。その声は聞こえないものの、口の動きを読み取る事で野坂は理解した。

 

「……どこ見てんだよ」

 

「……!?」

 

 ただ一人。ただ一人だけ、敢えての不完全と言えどグリッドオメガの暴風に耐え、立ち上がった者がいた。

 

「……勝手に、止まってんじゃねぇぞ……!!野坂ァァ!!!!!」

 

 堂本衛一郎。閃電の最後の砦と言えるゴールキーパー。堂本は決して野坂から視線を逸らさずにまっすぐに彼を睨む。

 

「……ここで得点を決めなければ、出る気は無いという事か」

 

 凪人の真意をそう解釈した野坂は正面から堂本と向き合う。ここで堂本を叩き潰して閃電を壊滅手前に追い込まねば、あの腰の重い軍神は出て来ない。

 

 野坂の背後に青いオーラで作られた王騎士が出現する。その手に持つ槍を以ってボールを突く。そのタイミングに合わせて野坂自身もシュートを撃つ。

 

「キングス・ランス!!」

 

 槍の先端部分と融合したシュートとオーラ。閃電のゴールを奪うべく堂本に迫る。

 そして堂本は視界にグリッドオメガでズタボロにされた仲間達を収める。前半からラフプレーも多く、傷付けられて来た仲間達の悔しさが直に伝わって来るのだ。

 

(野坂……!お前は許さねえ……!!)

 

 堂本の右手に熱が籠る。

 

(このシュートだけは絶対に止めてやる……!!)

 

 堂本の右手に赤い光がじわりと溢れ出す。

 

(見てろよ皆……!キーパーとして、最後の砦は……!!)

 

 堂本の右手の中で赤いエネルギーが膨張する。

 

(絶対に守ってみせる!!!)

 

 その時、人々の眼には……堂本衛一郎に赤い稲妻が宿ったように見えたと言う。

 堂本は右手を開くと同時に空高く上げる。そしてそこから赤き巨大なエネルギー体の右手が出現した。

 

『!!』

 

 その時、誰もがある男を連想した。

 

 あの雷門のゴールを守り続けた伝説のキャプテン……円堂守を。

 

「ゴッドハンドォォーーーーー!!!」

 

 堂本の右手…否、赤きゴッドハンドが野坂のキングス・ランスを真正面から受け止める。そしてそのシュートの勢いを完全に、完膚無きまでに止め切った。

 

 観客席にいるかつての雷門イレブンと派遣先のチームメイトは口々に驚愕の心境を述べる。

 

「あ、あり得ない……!い、いやしかしあれは……」

 

「色こそ違うが間違いない。円堂と同じゴッドハンドだ……!!」

 

 帝国の銃士は目の前の現実がどうしようもなく信じられない。蒼き疾風はそれを受け止めるものの、やはり動揺が隠せない。

 

「う、嘘じゃんよ!?あんな奴があの熱血君の技をマスターするなんてあり得ねぇ!!……みたいな?」

 

「………凪人が眼を付けた奴だとは聞いていたが、これは……」

 

 木戸川の自称エースと炎のエースストライカーもまた、その衝撃にそれ以上の言葉が出ない。

 

 天才ゲームメイカーだけが……この状況で笑っていられた。

 

「……堂本衛一郎か。面白い……!!」

 

 そしてこの場にいる全てのサッカープレイヤーの記憶に、堂本衛一郎という名がたった今、刻み込まれた。

 

「……あれ?俺今何した?」

 

「凄いよ堂本君!野坂の必殺シュートを止めたんだ!!」

 

 呆ける堂本にサトルが涙を流しながら教える。堂本はそれを確認すると自分で驚き、尻餅を突く。

 そしてようやく、ベンチにいたこの男が立ち上がった。

 

「会田監督……良いですね?」

 

「……ああ!閃電の皆に見せてやると良い!君のサッカーを!!」

 

 ボールを敢えてピッチの外に出させて試合を中断し、選手交代。FWの桐林に代わって強化委員である斎村凪人が入る。

 

(後半残り10分か……逆転は厳しいな)

 

 凪人はそう考えながら軽くジャンプして身体をほぐす。すると野坂は凪人の前に出る。

 

「何故……今の今まで出なかったんですか。それに今更出て来るなんて……」

 

「……この練習試合は、チームを強くする事がこっちの目的だ。それだけの事だ」

 

 凪人はそれだけ言ってFWのポジションに付く。……が、自陣のディフェンスラインにチーム全員を下げて、自身もそこに身を置く。

 

 そして王帝月ノ宮のフリースローで試合再開。早速野坂にボールが渡る。野坂は凪人を見て、彼に向かって走る。この試合の王帝月ノ宮側の目的は凪人の力を図る事なのだ。凪人と接触しなければ意味が無い。

 

(その力……見せて貰う!!)

 

 しかし野坂は気付いた。

 

 既に自分の足元にはボールが無い事に。そして目の前にいたはずの斎村凪人の姿がもうそこには無い事に。

 

 すぐ様背後を見ればそこにはボールを踏み付け、王帝月ノ宮イレブンを見渡す凪人がいた。

 

(いつの間に……!?)

 

 凪人は王帝月ノ宮イレブンの観察を終えると閃電イレブンに向かって叫ぶ。

 

「見せてやる!!この俺のサッカーを!!付いて来い!!」

 

 そう叫んで走り出す凪人。釣られてボロボロの閃電イレブンも走り出す。野坂は咄嗟に王帝月ノ宮に指示を出す。

 

「止めろ!!決して通すな!!」

 

 草加が凪人の前に出る。軽く躱される。丘野がスライディングを仕掛ける。ジャンプして避けられる。谷崎と葉音がダブルで迫る。パスを出されて刀条が受け取ると同時に隙間を一瞬で突破される。またボールが凪人に戻る。

 

 あの王帝月ノ宮を纏めてほぼ一人で翻弄する凪人の突破力に王帝月ノ宮の監督は唖然とする。監督だけではない。雷門の強化委員と閃電イレブンを除く全ての者達が困惑している。

 

「な、何故……!?あんなハイレベルなプレーなんてしたら弱小の閃電なんて誰一人付いていけない……!!」

 

「果たして、本当にそうかな?」

 

 水神矢の意見に鬼道は異を唱える。見ればボロボロで今にも倒れそうだった閃電イレブンは全力で走り、凪人のパスや指示に全て応えている。前半よりも余程良い動き、プレーが出来ている。

 

「こ、これは……!!」

 

「斎村は閃電のあの姿を引き出す為にこの試合をこんな形で進めていたのだろう。奴らは敵が強ければ強い程諦めない。仲間のプレーに釣られて追い付こうと踏ん張り続ける。斎村はその両方を揃える事で閃電イレブンを更に進化させるという結果を導き出したんだ」

 

「進化……」

 

 凪人からパスを受けたサトルは王帝月ノ宮の連続ディフェンスを躱し続けるものの、遂に奪われてしまう。それと同時に凪人は後方へUターン。それに釣られて閃電イレブンも走り出す。

 

「斎村の派遣先である閃電は弱小チーム。より指導力を求められる。しかしそれだけでは本当の意味では強くはなれない。大きな敵に立ち向かう勇気、どれだけの逆境の中でも走り続ける気力。最後の1秒まで諦めない全力のプレー。奴の知る強さの全てを伝える必要があった。そして奴らは見事それに応えた!!それによって閃電はどこまでも強くなる!!」

 

 そして凪人の指示が無くとも閃電は連携してどうにか王帝月ノ宮が攻めあぐねるくらいには足止めが出来ていた。野坂にボールが渡ろうと凪人はそれをあっさりと奪い、また走り出す。

 

「どうした皆!?俺に付いて来い!!俺のサッカーに!!付いて来ぉーーい!!」

 

『おう!!』

 

 未だ0-2で閃電が負けている現状。それでも閃電はまるでリードしているかのように互いを鼓舞し合い、レベルアップし続け、全力でサッカーを楽しんでいた。

 

 赤木のパスがまた凪人に渡る。

 

「行かせるか!」

 

 王帝月ノ宮のディフェンス陣が凪人の前に立ち塞がるものの、凪人はドリブルとスピードを駆使して次々とDFを突破していく。そして見事に四人抜きをあっさりと成し遂げる。

 

(……体力的な差もあるのだろうが、それ以上に精神的な差が大きい)

 

 豪炎寺はこの状況を……凪人と閃電、そして王帝月ノ宮のプレーをそう評する。

 ゴール前にてキーパーの西蔭はシュートに備えて構える。そして凪人もまた必殺シュートの体勢に入る。

 

「シャイニングランス……改!!」

 

「王家の盾!!!」

 

 凪人の必殺シュート、シャイニングランス。数本に別れた光の槍が紋章の様に出現した盾とぶつかり合う。しかしそれは数秒と保たずに槍が盾に亀裂を走らせ、粉々に砕き、突き破った。

 

 1-2

 

「……馬鹿な…!?」

 

 西蔭は信じられないものを見る眼でゴールネットを揺らしたボールを凝視する。いくら相手がかつての雷門イレブンだとしても今回最大の目当てである化身を使う以外に自分からゴールは奪えないと確信していた。否、タカをくくっていた。

 

 だからこそこの1点は王帝月ノ宮には何よりも痛いものだった。

 

 ピッ、ピッ、ピーー!!

 

 ここで試合終了のホイッスル。この練習試合は1-2で王帝月ノ宮の勝利だ。しかしこの結果に納得する者は王帝月ノ宮側には一人もいなかった。

 

 野坂は何処か不機嫌そうな表情で凪人に話しかける。

 

「……こんなのは勝ったとは言えない。結局一番の目的は果たせていない上に、そちらはそれを果たした……」

 

「……お前らがどう思うかは関係ねーよ。……今回は俺達の完敗だ。言い訳のしようもねぇ。

 

けど、()()()()()()()()

 

 それだけ告げて凪人は野坂に背を向けて話を打ち切る。そして観客席にいた閃電中の生徒達は口々に感想を叫ぶ。

 

「よく頑張った!!」

 

「見直したぞサッカー部!!」

 

「これから勝ってけ!!応援するぞ!!」

 

「王帝月ノ宮相手に大健闘だ!!」

 

 拍手喝采。

 

 これまでの罵声とは180度違う声に閃電イレブンは誰もが涙を流す。初めてこれまでの努力を肯定して貰えたのだ。そして閃電イレブンの前に凪人が立つ。

 

「斎村さん……」

 

「斎村君……」

 

「泣くのはまだまだ早いぜ?俺達の戦いはまだ始まってすらいないんだからよ。フットボールフロンティア開催までに俺達はもっともっと強くなる!!王帝月ノ宮も、利根川東泉も!!全部ぶっ倒して必ず優勝する!!」

 

 凪人の言葉に全員が頷く。そしてキャプテンであるサトルが前に出て凪人に手を差し出す。握手を求めているのだ。

 

「これからもよろしく。斎村君!」

 

「……おう!」

 

 それに応じて握手する凪人。そして観客席の方を向いて今回の試合を観に来た雷門の仲間達を見る。

 

(見てたか……?こいつらが俺の自慢の……イナズマイレブンを超える仲間さ!!)

 

 これが閃電中サッカー部の本当の意味でのデビュー戦だった。そして、彼らこそが……この日本にかつてない程の稲妻を呼ぶ。




堂本のゴッドハンド、ロココと同じく赤色。つまり火属性です。

原作開始までにやらなきゃいけない事結構あるな……。
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