照りつける太陽、焼けた砂浜、寄せては引く波…
今年もまた、ここにやってきた。
「あつい...」
去年と同じように、スロウスは私の近くで寝そべっていた。
ビーチパラソルにビーチチェア、クーラーボックス完備。
普通なら贅沢言うなと言いたいところだが、
「あついですね...」
これはもう同意するしかなかった。
私、エンヴィも同じパラソルの影に入ってジュースを飲んでいる。
今年の太陽は、例年の2倍は元気なのではないかと思うくらいだ。水辺なら多少はマシだろうということで、今年もマスターと共に海にやってきたが、これでは...
と、思うのだが、元気な姫はやはり海を満喫しているようだ。はしゃぐ姫たちを眺めながらぼやく。
「なんであんなに元気なんだろねえ...」
「あの元気、羨ましい...」
日焼け止めは塗ったのだが、影から一歩出ればそんなのはお構い無しに肌が焼けそうだ。
いつもの事ながら、言葉数も少なくなる。
スロウスを横目に見る。
今年は公式から水着が支給された。
スロウスの水着は幾つもジッパーがついている。そんなところにつけてどうするんだ、と思う部分にも。何かしら巻き込みそうで怖い。あとジッパーの素材が気になる。金属だと擦れた時に痛そうだ。そういう意味ではプラスチックでもないか。かと言ってあれが布製であるようには思えない。無難にやわらかめの樹脂製か?
というか、ジッパーついてる部分が色々気になる。髪の毛巻き込みそうな頭とか。閉めたら確実にキツイであろう胸とか。何に使うのか分からない腰とか。
...ジッパーを追って全身を見ると、改めて彼女のスタイルの良さを実感する。普段の格好とさして露出は変わらないはずなのに、滑らかな肢体がよりいっそう…
「どうしたの?ボーッとして」
スロウスに声をかけられて我にかえる。若干ビクッとしてしまった。
「暑さにやられた?それとも、私の魅力にやられちゃった?」
「そちらこそ、暑さで頭がやられたんじゃないですか?」
冗談に軽い毒舌で返す。確かに彼女の身体は魅力的な『ないすばでぃ』だが。非常に妬ましい。
「ほら、これ」
「...ありがとうございます」
彼女が差し出す氷菓子を受けとる。包装には、やけに口の大きいキャラクターが製品をかじるイラストが描かれている。こんなことをした日には確実に頭が痛くなるだろう。袋から取りだし、端から少しずつ。
「ううっ...あたま...」
スロウスは一気にかじったらしい。
「一気に食べるからですよ」
「わかってるけど、でもすぐ溶けちゃうし...」
彼女の言うとおり、暑さのせいでこの棒つき氷菓子はいつもより早く溶けつつある。というか、手に近い方から既に若干滴りつつある。
こういう時こそ慌てず冷静に。間違っても本体が棒から離れて落ちたりしないように、慎重かつ大胆に食べ進める。氷菓子ひとつで何をそんな大層なと思うやも知れないが、溶けたやつが付いた時の不快感や落とした時のえもいわれぬ敗北感は味わいたくない。百歩譲って、溶けたやつが付いても今は海がある。だが、何をどうしても落としたものは帰ってこない。そのまま液体になるだけだ。
「おお...うまいじゃん」
先に食べ終えて、私の食べるのを見守るスロウス。
いよいよ終盤戦。だがしかし。
「あっ...」
あはれ、おのれ、ガ○ガ○君。最後の最後でパキッと割れる。咄嗟に動いたのが良かったのか悪かったのか。落ちたアイスは太ももの上に乗った。
「あーあ、残念」
スロウスはニヤニヤしながらこちらに寄る。何だろうと考える暇もなく。
「あむっ...」
「なっ...!?」
私の太ももの上に乗ったアイスを、直接食べる。ついでに溶けた分をなめる。
「な、な、な、な、何を!?」
「ん?くすぐったかった?」
「そういう問題じゃ」
「だって、もったいないじゃん」
「そういう問題でもありませんよ...」
なんというか。絵面がまずい。他の姫やマスターに見られたら色々勘違いされかねない。
「エンヴィ、顔赤いよ?」
からかったような目でこちらを見るスロウス。
「別に...これくらい自分で...」
「ふふっ、冗談」
そう言って、スロウスはチェアに再び寝そべる。
寄せては引く波、焼けた砂浜、照りつける太陽…
相変わらずのはずなのに
「ねぇ...エンヴィ?」
意識から遠ざかってしまうくらい
「口のまわりも、綺麗にしてあげようか?」
柄にもなく、彼女に、ドキドキさせられる。
きらめくルビーにすいよせられて…
きっと、全部、夏のせいだ。