荒寺の頭上で光った青褪めた稲光が、轟音を轟かせた。
突然の驟雨、降り注ぐ大粒の雨に駒王町全体がくすみ始めた。
いやに蒸し暑い夜だった。湿気を含んで澱んだ空気が、人々に不快な汗を滲ませる。
荒れ果てた寺の裏手に佇むは、三つの人影だ。
いや、四つというべきか。
「中々良い屍だにゃ。どこで手に入れたんだにゃ?」
黒歌の問いに下卑た笑みを浮かべ、「はぐれ堕天使がいたんで、ちょいとばかしキュッと締め上げたんでさ」と、悪魔の片割れが答えた。
そこには息絶え、横たわった若い女の堕天使の死体が転がっていた。
黒歌が悪魔達に代価を支払ってやる。
すると、悪魔達はペコペコと頭を下げながら、何処へと消えていった。
「それで和尚様、この屍、如何しますかにゃ」
柱から現れた男に対し、黒歌はそう尋ねた。
異様な風体をした男だった。
すっかり剃り上げた禿頭に魁偉とも言える相貌、筋骨隆々としたその巨体、腰には緋色のレースのみが巻かれている。
この男こそ舎部寺の主である兵藤一誠──法名は「竜水」と号する僧侶である。
「うむ、丁重に菩提を弔ってやるがよい」
「わかりましたにゃ」
そう答えると、黒歌が堕天使の亡骸を墓地へと引きずっていく。
「黒歌、わかっておるな」
「といいますと?」
「後で使うゆえ、その堕天使の脳みそと子宮を引きずり出し、塩漬けにしておくのだ」
その言葉に黒歌は口角を釣り上げ、再び、わかりましたにゃ、と答えた。
駒王学園の二大お姉さまが、リアスと朱乃であるならば、一誠こそが唯一無二の和尚様である。
僧侶の袈裟を羽織、学園に登校してきた一誠の周りには、黄色い歓声を上げながらまとわりつく女学生達の姿があった。
「ああ、和尚様っ、いつものようにお情けをくださいませっ」
「うむ、うむ、待っているが良い。あとで御仏の有難い法悦を与える故に」
この駒王学園に通う女子生徒の多くは、一誠に御仏の快楽と法悦を与えられているのだ。
そしてまた、教員を含めた男性陣達も、一誠の唱える女犯経の教えに感化されていた。
授業を終えて、校門を出る一誠、そこには濡れ羽色の黒髪をした美しい女性が佇んでいた。
「前から貴方のことが気になっていたのっ、お願いだから付き合ってくださいっ」
女性からの告白である。
一誠は女の顔を正面から見据え、こう告げた。
「うむ。では今宵丑三つ時に忍んで参れ」
言われた通りに女が寺へと忍び込むと……
そこにはバイザーを背負った全裸の一誠が、自分目掛けて突進してくる姿があった!
念彼観音力或被悪人逐!ドリャアアアアアァァっ!
「それで、その女堕天使どうなったんですかにゃ?」
「うむ、あの堕天使ならば、バイザーに口から尻まで貫かれ、五臓六腑尽く撒き散らしながら死んだよ。
淫乱ならばさぞや本望であったろうな」
女子生徒達に囲まれながら、一誠は黒歌にそう答えた。
そして女子生徒たちとともに寺の本堂へと消えていく。
「和尚様はまるで生き仏様だにゃ、ありがたや、ありがたや」
黒歌は立ち去っていく一誠の背中を拝むと、手を合わせた。
一誠は天に叫んだ。
女も抱けぬ仏がいてたまるか、仏こそが最高の性力者なのだッ!
これが女犯道、おれの世直しだあッ!
一誠和尚の世直し、ここに開幕すっ!