白夜side
「ふわぁ~あ、眠い。」
夜「ふわぁ~あ、眠い眠い・・・おはようさんっと。」
大あくびをかましながら夜が教室の扉を開く。
それに続いて白夜もあくびをしながら教室に入った。
そんな二人に呆れつつ綾斗と隼人が続いて教室に入った。
白夜たちはそれぞれの席に近づいた。周りの席である万由里たちはすでに、席についていた。
「おはよ、万由里、凛音、ユリス。」
綾「おはよう、ユリス、万由里、凛音。」
隼「おはよう、凛音、万由里、ユリス。」
万「おはよ。」
凛「おはよう。」
ユ「・・・ああ、おはよう。」
俺たちが、座っている三人に声をかけると、万由里と凛音はこちらを向いてあいさつを返してきた。ユリスは頬杖をついたまま返してきた。が、その瞬間クラスの喧騒がピタリと収まった。
生徒1「お、おい、今の聞いたか・・・?」
生徒2「・・・あ、あのお姫様が挨拶を返しただと・・・!?」
生徒3「聞き間違いじゃないよね・・・?」
生徒4「あいつら、一体どんな魔法を使いやがった・・・!」
生徒5「いやまて、そもそもあれは本物なのか・・・?」
一転してざわめきだしたクラスメイトたちに、ユリスがバンと机を叩いて立ち上がる。
ユ「し、失敬だな貴様ら!私だって挨拶くらいは返す!」
「普段の行いだな。」
ユ「なんだと!?」
万「ユリス、少し落ち着いたら。」
ユ「うっ、確かに冷静さを欠いていた。」
そんな会話をしていると、綾斗はユリスとは逆側の隣の席に座っている青い髪の少女に声をかけようとしていた。
綾「おはよう、お隣さん。えっと、俺は昨日この学園に転入してきた天霧--。」
しかし綾斗は最後まで口にすることはなかった。
綾「・・・え?」
綾斗はその少女の顔を見た途端、ぽかんとした顔のまま固まってしまった。
綾「さ、紗夜・・・?」
紗「・・・。」
当の少女は無表情に綾斗の顔を見つめていたが、やがて小さく首を傾げてぼそりとつぶやいた。
紗「・・・綾斗?」
綾「えええっ!な、なんで紗夜がここに!?」
驚きのあまり立ち上がった綾斗の後ろで、新しい玩具を見つけたように目を輝かせた夜吹は身を乗り出した。
夜「なんだなんだ。お前ら知り合いなのかよ?」
綾「ああ、うん・・・古い友人というか・・・まあ、いわゆる幼馴染ってやつかな。」
夜「幼馴染ぃ?」
夜吹は疑わしそうに二人を見比べる。
夜「だったらなんでうちの生徒だって知らなかったんだ?」
綾「いや、幼馴染って言っても、紗夜が海外に引っ越して以来だから・・・もうかれこれ六年ぶりくらいになると思う。白夜と同じ理由だよ。」
夜「そういえば白夜と水樹も幼馴染だったな。
しっかし、そのわりに、こっちの反応は薄いようだぞ。」
確かに紗夜は少しも表情を変えずに綾斗を見つめている。
綾「んー、そうは言っても昔からこんな感じだったからなぁ。これでもきっと驚いてる・・・はず。きっと。」
「自信ないのかよ。」
夜「本当か?」
紗「・・・うん。ちょおビックリ。」
夜「・・・いや、全然そうは見えないけどな。」
ピクリとも眉を動かさない紗夜に、夜吹が力なく突っ込みを入れた。
紗「でも、本当に久しぶり。元気だった?」
綾「それにしても変わらないね、紗夜は。なんか昔のまんまっていうか・・・。」
紗「・・・そんなことはない。ちゃんと背も伸びた。」
綾「え・・・そ、そう?」
綾斗は紗夜をまじまじと見つめた。
綾「やっぱりあんまり変わってないような・・・。」
紗「違う。綾斗が大きくなりすぎ。」
夜「しっかし世の中狭いもんだ。運命の再開ともいえることが二つもあるとはな。」
紗「運命の再開・・・。うん、夜吹はいいことを言う。」
万「ん。夜吹にしては珍しくいいことを言った。」
矢吹の発言に万由里と紗夜はぐっとサムズアップした。
綾「そういえば白夜と万由里の関係に関しては全く詮索しなかったよね、夜吹。」
夜「ああ、まあな。水樹万由里の情報だから出来れば細かく聞きたいんだが・・・。」
夜吹は俺の方を苦笑いを浮かべて見てきた。
夜「白夜から情報を取れる気がしないし、逆にいろいろ情報を渡しちまいそうで手が出せないってわけさ。昨日だってやられたからな。」
綾「まあ、あんなこと広められたら大変だろうしね。」
綾斗は夜吹に同情するような視線を向けた。
「へ~。そういうこと言うんだ。じゃあ、昨日のこと言っちゃってもいいんだぞ、夜吹。」
夜「だから、それは勘塀してくれ。」
「じゃあ、今度欲しい情報が出来た時は教えてくれるよな。」
夜「おーらい、了解した。だから、もう勘塀してください。」
「よし、じゃあこれで昨日の件は無かったことにしてやる。」
夜「はあ~、助かるぜ。」
「ちなみに、どんな無理難題でも調べてもらうからな。」
夜「まじかよ。」
白夜の言葉に夜吹は肩を落とした。
谷「おらおら、さっさと席につけ。ホームルームはじめっぞ。」
そうこうしていると谷津崎先生がいつも持っている釘バットを引きずりながら眠そうな顔で教室に入ってきた。
その後谷津崎先生は紗夜に気が付くと、昨日学校に来なかったことを怒った。それから昨日と同じようにホームルームをした後授業をして学校が終わった。
放課後は、万由里、隼人、凛音、綾斗、紗夜と俺で一緒に教室で話していた。すると、ユリスが教室に戻ってきて近づいてきた。
ユ「あー、こほん。そろそろ準備はいいか?」
綾「ああ、ユリス。じゃあよろしく頼むね。」
ユ「し、仕方がない。約束は約束だからな。」
紗「・・・約束って?」
綾「今日はユリスに学園内を案内してもらうことになってるんだ。」
紗「リースフェルトに?なぜ?」
ユ「それは・・・まあ、いろいろあったのだ。沙々宮には関係ない。」
紗「・・・むー。」
紗夜がわずかに眉を寄せる
ユ「さあ、行くぞ。」
綾「ああ。じゃあ紗夜、また明日・・・。」
紗「・・・待って。だったら、私が綾斗を案内する。」
ユ「なっ!」
綾「ええっ!」
そんな感じで綾斗をどっちが案内するかユリスと紗夜が言い合いを始めた。
「そういえば俺もまだ学校の中詳しく知らないな。ちょうどいいから案内してくれないか、万由里。」
万「別にいいわよ。ユリス達と一緒にまわる?」
「そうだな。折角だし一緒にまわるか。でも、こいつら未だに言い洗ってんだけど。」
万「まあ、すぐ終わるでしょ。」
万由里達と一緒にユリス達を見ると、クローディアが綾斗に後ろから抱きつくところだった。
ク「あら、そういうことでしたら私が一番適任ということになりますね。」
綾「おわっぁ!」
クローディアは、そのたわわな胸を綾斗の背中に思い切り押し当てている。
それを見たユリスと紗夜の顔が一層険しくなった。そして万由里の顔も少し険しくなったが、すぐに元に戻った。
凛音と隼人はどう反応していいかわからなそうな顔をしていた。
ク「ユリスは中等部三年からの転入ですが、私はちゃーんと一年生からここの生徒ですもの。」
紗「・・・だれ?」
ユ「なぜおまえがここにいる。」
綾「てゆーかその前に離れてよ、クローディア。」
「何か用事か?」
万「何しに来たの?」
ク「あら、皆さんつれないです。せっかくですし、私も混ぜていただきたかったのですけど。」
紗「・・・嫌。」
ユ「不許可だ。」
万「好きにすれば。」
「だとさ。」
綾「いや、だから、あ、あたってるってば!」
ク「ふむ、残念です。それでは要件だけ済ませて退散するとしましょう。」
クローディアは名残惜しそうに離れると、綾斗に書類の束を差し出した。
ク「先日申し上げました純星煌式武装の選定及び適合率検査を明日行います。この書類に目を通していただいて、問題ないようでしたらご署名をお願いします。」
綾「あ、そのことか。
わかったよ。・・・って、結構書類多いんだね。」
綾斗はクローディアから書類を受け取り書類を見た。
書類は十枚以上あり、どれも細かい字でびっしりと埋まっていた。
ク「預かっているとはいえ、統合企業財体の資産ですからね。まあ形式上のものなのでお気になさらず、さらさら~っと流してしまって結構ですよ。」
ユ「・・・そんなものをわざわざ生徒会長が持ってくるとは、生徒会もよほど暇らしいな。」
ク「ええ、おかげさまでうちの生徒はみんな良い子ですから助かっています。」
ユリスの皮肉をクローディアはさらりと受け流した。
綾「・・・前から思ってたんだけど、ユリスとクローディアは友達なの?」
ク「はい、そうですよ。」
ユ「断じて違う!」
正反対の答えに、綾斗は困惑した顔で首を傾げた。
ク「あらあら、冷たいお答えですね。」
ユ「ウィーンのオーパンバルで何度か顔を合わせた程度の昔馴染みだ。それ以上でも以下でもない。
いいから用が済んだらさっさと帰るがいい。」
紗「・・・しっしっ。」
ク「ふふっ、ごきげんよう。ですが明日は私が綾斗を独り占めさせていただきますので、悪しからず。」
一礼して去っていくクローディアを、ユリスと紗夜は腹立たしげな視線で見送った。
ク「まったくあの女狐め、少しばかり乳が大きいからといって調子に乗りおって・・・。あんなもの所詮ただの脂肪ではないか。」
紗「・・・同意。」
ユリスの言葉にうんうんとうなずく紗夜。
さっきまでいがみあっていたのが嘘のように意気投合している。
綾「あ!じゃあさ、せっかくだし二人に案内してもらおうかな。」
ユ「二人で・・・?」
紗「・・・。」
ユリスと紗夜はしばらくお互いの顔を見やったあと、さも仕方ないという顔で苦笑した。
紗「・・・了承。」
ユ「いいだろう。これ以上揉めるのも面倒だ。」
綾「ふぅ。」
ユリス達の話し合いが終わったので、白夜は綾斗たちに近づいた。
「俺と万由里も一緒に回りたいのだがいいか?」
綾「ああ、俺は構わないよ。」
ユ「私も別に構わん。」
紗「・・・同じく。」
「そうか。じゃあ、行こうか。」
そういって三人と一緒に教室を出ようとした時、万由里が白夜の制服の裾をつかんできて教室を出るのを止めた。
「どうした?」
白夜は万由里の方を向きながら訪ねた。
万由里は俯いていたが、顔を上げた。その顔は少し不安そうな表情をしていた。
万「ねえ、白夜はやっぱりクローディアみたいに胸が大きい方が好き?」
「・・・はっ?」
万「だから、クローディアみたいに胸が大きい方が好きなの?」
万由里は先ほどより強めな口調で言った。
ユリス達は先に教室を出て行ったので今の話は聞かれていないだろうが、俺たちがついてこないことに気づけばすぐに帰ってくるだろう。隼人と凛音もユリス達が教室を出るときに一緒に教室を出て帰ったのでもういない。
「いや、俺は大きいのも小さいのも好きじゃないぞ。俺は万由里みたいにちょうどいい大きさが好きだぞ。
だから、そんなこと気にしなくていいからさ早く行こうぜ。」
万「ほんと?」
「ああ、本当だ。それに胸の大きさだけで万由里以外を好きになることはないから。
俺は永遠に万由里を愛してるから。」
白夜がそういうと万由里は嬉しそうに顔を赤らめた。
万「ありがと、私も白夜を愛してる。」
「じゃあ、早く行こうぜ。じゃないと綾斗たちが戻ってくるだろ。」
万「ん。」
そういって万由里と一緒にユリス達三人の後を追って五人で学園内をめぐることになった。
学園内の施設について万由里とユリスが説明してくれているが、紗夜は俺と綾斗と同じように説明を聞いているだけだった。
ユ「沙々宮わ、私たちは別におまえを案内しているわけではないのだがな?」
中庭のベンチで一休みしながら、ユリスは説明をずっと聞いていた紗夜に向かって言った。
紗「・・・私、方向音痴だから。」
万「それで、よく案内するなんて言えたわね。」
紗「えへん。」
ユ「いや、褒めてないぞ?」
「まあ、俺はどっちでもいいがな。」
綾「まあまあ、いいじゃないか。俺も勉強になったし、本当に助かったよ。」
ユ「そ、それならいいのだが・・・。」
綾「あ、なにか飲み物買ってくるけどなにがいい?おごるよ。」
ユ「そうだな。では冷たい紅茶を頼む。」
紗「・・・私はりんごジュース。濃縮還元じゃないやつがいい。」
「俺もついて行くよ。万由里は何がいい?」
万「白夜に任せる。」
「わかった。じゃあ、行こうか綾斗。」
綾「うん、じゃあ行こうか。」
白夜は綾斗と一緒に大きな噴水を回り込むようにして高等部校舎の方に歩いて向かった。
万由里がいるベンチが見えなくなった辺りで白夜は綾斗に話しかけた。
「なあ、綾斗聞きたいことがあるんだが構わないか?」
綾「ん?ああ、別に構わないけど。」
「お前、誰に力を封印されてるんだ?」
綾「!?」
白夜の言葉に綾斗は驚き足を止めた。綾斗が止まったので白夜も綾斗より少し前で止まった。
綾斗は警戒した顔で白夜を見ながら疑問を口にした。
綾「どうしてそれを?。」
「お前とユリスの戦いを見た時に気づいたんだよ。
あの時、お前の動きは思うように体を動かせてない感じがした。それだけならまだ運動が苦手という可能性もあるが、お前はそれなりに剣術が使えるみたいだから違和感があった。なによりお前が最後に一瞬封印を破って使った剣技で気が付いた。」
綾「まさか、あの一瞬で気づかれるとは思わなかったよ。」
綾斗は先ほどと同じように驚いた顔をした後、肩をすくめて軽く笑いながら言った。
「だろうな、あのタイミングだと俺以外で気づいたやつは誰もいないだろうな。
ああ、悪いが万由里には封印のことをもう話したが。まあ、大丈夫だろうあいつは誰かに話したりはしないだろうから。」
綾「そうなんだ。まあ、白夜がそういうなら信じるよ。」
「さて、続きは歩きながら聞くよ。」
綾「そうだね。」
白夜と綾斗はジュースを買うために再び歩き始めた。
「それで、誰に封印されたんだ?」
綾「この封印は姉さんにかけられたんだ。姉さんの能力は万物を戒める禁獄の力なんだ」
「へえ、お前の姉さんはどうしてそんな封印を?」
綾「できれば俺も聞いてみたいんだけどね。なにしろ五年前に失踪しちゃってるからなぁ。」
「そうか。悪いことを聞いたか?」
綾「いいんだ。きっと姉さんには姉さんの事情があったんだろうし、これもきっとなんか意味があるんだと思う。」
「そうか。」
それから少し無言のまま歩いて目的の自動販売機についてジュースを買って帰る途中今度は綾斗が何かを思い出したかのように話しかけてきた。
綾「ああ、そうだ。俺からも一つ聞いていいかな?」
「ああ、構わない。」
綾「白夜はどうして純星煌式武装を借りないの?」
「ああ、俺にはこれがあるから使う必要がないからな。」
白夜はそういいながら、いつも腰に差している愛刀に軽く手を振れて言った。
綾斗は白夜の腰に差してある刀を見ながら、話しかけてきた。
綾「でも、見た感じそれって普通の刀だよね。
純星煌式武装みたいに特殊な力がある武器とかを使った方がフェスタとかにも有利になるんじゃないの?」
「まあ、そうなんだが。俺は使い慣れたこいつのを使った方が戦いやすいからな。」
綾「まあ、その気持ちは分かるかな。」
「そういうことだから、俺はこれがあれば困らないからいらないんだよ。
・・・それにそんなものなくても負けるとは思わないがな。」
綾「ん?何か言った?」
白夜は最後の方を小さい声で言ったため、誰にも聞かれることがなかった。
綾斗は白夜が何を言ったのか聞こうとした時万由里達が待っている中庭の方から爆発音が聞こえてきた。
「なんだ今の音は?」
綾「わからないけど、中庭の方から聞こえたからユリス達に何かあったかもしれないし急いで戻ろう。」
「そうだな。」
白夜と綾斗が一緒に走って中庭に向かうと、大きな噴水が壊れて水を噴き出していた。