神様は残酷で気紛れだ   作:マスターBT

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後半になればなるほど、これ、作者の趣味が色濃く出てると思う。
とまぁ、とりあえず、VS一夏戦です。


調子が悪い時はとことん悪い

エネルギーを補給し、アリーナで向き合う俺と織斑。

オルコットとの戦い以降、右肩が痛むのが不安だが、それを押し殺し織斑と視線を合わせる。

 

「正々堂々戦うぜ。赤也!」

 

イケメンスマイルと共にブレードを向けてくる。

もう、こいつの名前呼びを止める気が失せた…

 

「あー、はいはい。そうですねー」

 

全力の棒読みで返答する。

暇つぶしに、観客席をハイパーセンサーを利用し眺めていると、俺と織斑の勝負が賭け事として利用されていた。

6:4で俺が僅かに不利なようだ。ふむ、オルコット戦で戦えるところは証明したと思うんだが、世界最強の弟ってアドバンテージはデカイんだな。むしろ、ここまで巻き返せたと喜ぶべきか。

 

「どこ見てんだ?」

 

「俺と織斑の勝負が賭け事にされてるみたいでな。お前の方が勝つって信じてる奴が多いぞ」

 

「へぇ。じゃあ、頑張らないとな」

 

うん。お前もうクラス代表やれよ。

そうやって、他人の期待に応えようとするならクラス代表向いてるって。なんで、拒否したのさ。

話しているうちにカウントダウンが開始される。

 

「なぁ、赤也。一つ提案があるんだが、良いか?」

 

9

 

「なんだ?」

 

8

 

「俺が勝てたら、一夏と呼んでくれ。女子だらけの学校で、唯一の男子から距離を取られるのはキツイ」

 

7

 

「はぁ、俺らの間でも賭け事をするってことか?」

 

6

 

「ん?あぁ、そう言うことになるか」

 

5

 

「気づいてなかったのかい……分かった」

 

4

 

「本当か!?」

 

3

 

「その代わり、俺が勝ったらクラス代表はお前に押し付けるからな」

 

2

 

「良いぜ。賭け、成立だな」

 

1

 

『試合、始め!』

 

近接型同士、行動は重なる。先ほどのオルコット戦とは違う近距離での戦い。

俺の右腕と織斑のブレードが打つかる。クロー部分でブレードを受け止め、両肩のバルカンを放つ。

 

「うぉっ!?」

 

低威力の弾丸が白式の装甲に火花を散らす。

微々たるものしかシールドエネルギーは削れていないだろう。だが、織斑は驚きで、身を硬くしている。

左手にクローダを展開し、勢いよく織斑へとぶつける。ガゴンッという音ともに織斑を吹き飛ばす。

 

「やっぱり、重たいな、この盾」

 

「まだまだぁ!」

 

壁ギリギリで体勢を立て直した織斑。

急加速でこちらにブレードを振るおうとしてくる。ブレードを横に構えている。薙ぎ払いか。

クローダを構え、織斑の攻撃を防ぐ。振り抜くように横薙ぎした織斑の身体は、当然俺の横を通過していく。

盾で防がれるのは織り込み済みだったか。

 

「はぁ!」

 

上から振り下ろされるブレードを右腕で受け止めようとして、俺の右肩に激痛が走る。

 

「ぐぅ!?」

 

痛みに動きを止めてしまった俺は、当然、織斑に斬られる。装甲が決して多くないサードオニキスは絶対防御を発動させ、シールドエネルギーを大量に失う。

 

「貰った!」

 

織斑のブレードがスライドし、光の剣を出現させる。特殊な兵装か!?

直感的に食らってはいけないと判断し、かなり派手に後方へ飛ぶ。

 

「シールドエネルギーが!?ぐぅ…」

 

ギリギリで避けたら、あの光剣に掠ったようだった。

掠っただけにしては、シールドエネルギーがさっきより多く削られている。なんだ、あの武器。

クローダを織斑の方に構えつつ、右肩を庇う。まだ、痛みが引かない。

 

「手を抜いてるのか?動きが悪いぜ、赤也」

 

やかましい。俺だって、好きでこんな動きしてるわけじゃねぇよ。

クッソ、急にどうした俺の右肩。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本音SIDE

 

あかやんの様子がおかしい。

さっきのセッシーとの戦いを見てた限り、おりむーに苦戦する要素は見つけられなかった。

私は整備科志望だから、操縦者を見る目は養ってると思う。

おりむーのブレードを防ごうとした辺りから、あかやんの表情がずっと苦しそうだし、短時間の起動ではあり得ないほど汗をかいてる。

 

「あかやん…」

 

私がクラス代表に推薦してしまった。

だから、あかやんはあんなに苦しそうにしている……そんな嫌な事まで考えてしまう。

 

「…本音?大丈夫?」

 

となりに座ってるかんちゃんが、私を心配してくれる。

 

「…大丈夫だよ。私には西村君がどういう人か分からないけど、織斑一夏に負ける様には見えない。

きっと、今から逆転劇が始まるから。だから、応援しよう、ね?」

 

私が思いつめてしまっているのが、かんちゃんにはバレバレだった。

でも、そうだよね。あかやんが諦めてないのに、私が諦めちゃダメだよね。

 

「…うん。ありがとう、かんちゃん」

 

「…気にしないで、本音。西村君が負けたら、本音に無理やり賭けられた私のデザート券が無くなっちゃって困るから」

 

おぅ、かんちゃんの目がマジだ。

これは負けたら、私も怒られてしまう。

 

「あかやん〜!頑張って〜〜!!」

 

自己嫌悪の不安を押し殺して、あかやんに声援を送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

右肩の痛みにより、織斑の攻撃に防戦一方になる。

シールドエネルギーも少ないし、早めに攻勢に出たいが、メイン武装の右肩が動かすだけで激痛になる今、どうやって攻勢に出たものか。

 

「はぁぁ!」

 

織斑は、俺が防戦なのを良いことに、苛烈に攻めてくる。

見るからに大振りで隙だらけなのに、クッソ、攻撃できねぇ。

 

「あかやん〜!頑張って〜〜!!」

 

布仏の応援をハイパーセンサーが拾う。

無意識的に、布仏が座っている場所をズームしていた。真剣な顔で、俺を応援してくれている布仏。

なんだよ。普段みたいに気楽な顔して見てろよ。どうした?さすがに、飴は食べ終わってしまったか?

そんなどうでもいい事を考える。

 

「調子に乗るなよ……織斑ぁぁ!!」

 

シールドバッシュと言うのだろうか。

織斑の剣戟に合わせて、盾をねじ込み弾き飛ばす。

 

「うぉぉ!?」

 

右肩の痛みが消えたわけじゃない。

むしろ、酷くなってる。だが、それでも引くわけにはいかない。織斑に負けるのは癪だし、無様に負ければオルコットに何言われるか分かったもんじゃない。……それに、あんな真剣に俺を応援している布仏を失望させるわけにはいかない。

 

「行くぞ、サードオニキス!」

 

吹き飛ばした織斑に急接近し、激痛の走る右肩を無視し、織斑の左手を掴む。

 

「弾けろ!」

 

輻射波動をぶつける。

だが、すぐに光剣を振るわれ、避けるために離すことになる。

 

「威力高っ…」

 

「ビビったか?織斑」

 

「全然!」

 

再び、お互いに接近する。

俺は光剣に当たる事を全力で、避ける。織斑は右腕に掴まれない様に避ける。

だが、特殊な兵装ゆえ、何かデメリットがあるのか織斑が焦りだす。

 

「くそっ、もうシールドエネルギーが!こうなったら!!」

 

左手を盾の様にして、織斑が向かってくる。

当然、俺は左手を掴み、輻射波動をぶつける。だが、織斑はニヤリと笑い、光剣を俺の胴体向けて振るう。

輻射波動の出力を最大に引き上げる。もう、後には引けない。

 

「「うぉぉぉぉぉ!!」」

 

バチィィ!!という、音とともに俺のシールドエネルギーが勢いよく減っていく。

 

『そこまでだ!両者、シールドエネルギーエンプティ。引き分けとする!!』

 

結果は同時にシールドエネルギーがゼロになるという引き分けだった。

なんともまぁ……情けない結果だな。

 

「おい!赤也!?おい!!」

 

織斑の声がやけに遠くに聞こえる。

ドサリ、とサードオニキスを解除しつつ、俺は地面に倒れ、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラス代表決定戦が行われた日の夜。

織斑千冬は、学園の外で携帯片手に立っていた。何か、躊躇うようにしつつも、電話をかける。

相手はすぐに出た。

 

『やぁやぁ、ちーちゃん!そっちから、かけてくれるなんて嬉しいね!』

 

「束。一夏と赤也の戦いの時に、止めるなと、わざわざ、IS学園のシステムに介入してまで知らせた理由を教えろ」

 

あの時、試合を見守っていた織斑千冬と山田真耶は、赤也の異変に気付き、試合を止めようとしていた。

だが、そこに天災によるハッキングとメールが届き、試合を続けるしかなかった。

 

『せっかくのちーちゃんとの電話なのに、そんなモルモットのこと聞きたいのー?』

 

「良いから教えろ」

 

気楽な篠ノ之束の声に苛立つ織斑千冬。

 

『簡単だよ。モルモットから送られてくるデータが面白かったからね。

多分、あの金髪との戦いでサードオニキスとより強く結びついたのが原因だろうね』

 

「どういうことだ?」

 

『さぁね?さすがに、ちーちゃんでも教えられないなぁ。じゃあね!ちーちゃん。

束さんはこれでも忙しいのだ!』

 

「待て!ーーくそ、切られたか」

 

携帯は無情にも電子音を鳴らすだけ。

再度掛け直しても、篠ノ之束が出ることはなかった。

 

「束……お前は赤也をどうしたいんだ…」

 

目的の見えない親友への言葉が夜空に力なく消える。

世界最強と言われた己の無力さを、織斑千冬は感じざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこかの国のどこかの場所。

コンピュータだらけの空間で、天災は嗤う。

 

「いっくんに勝とうとするから、ちょっと弄ってあげたら、こんな面白いデータが取れるなんてねぇ!!」

 

上機嫌に嗤う。天災の狂気を宿した目は、モニターの一つ。

IS学園の保健室で、眠っている西村赤也の右腕――正確には、繋がっている右肩を見ていた。

 

「良い素材だよ。西村赤也、ふふっ、ははは!良い拾い物したよ本当に!」

 

彼女にとって、赤也はモルモットでしかない。

それでも、研究者として上質なデータをくれるモルモットには、好意的な感情を向けるしかない。

 

「さてと、次はどんなデータが取れるかなぁー」

 

鎮座する二つのISを弄りながら天災は、篠ノ之束は、嗤った。

 




兎さんは、跳ねるよ。残酷に跳ねる。

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