ちゃんと学生してます。
俺は今、布仏と一緒に学園の廊下を全力で走っていた。
スマホを弄って時間を潰していたのだが、気づいたら眠ってしまい、目が覚めると布仏も再び、なぜか一緒に寝ていた。
「来てたなら、起こしてくれよ布仏ー!」
「ごめ〜ん。あかやんが余りにも気持ちよさそうだったから」
すでに予鈴が鳴っている。急がなければ、千冬に出席簿を叩き落される。
だが、布仏が遅い。そのペースに合わせていたら、かなりのギリギリに到着する事になり、教室に駆け込む。
「「遅くなりましたーーん?」」
「遅れましたぁ〜〜」
ゆったりとした布仏の声はまぁいい。だが、俺と同時に入って来たのは誰だ?
向こうも同じ考えだったようで、同時に顔を見合わせる。
「……あら、女子と一緒に登校とは良いご身分ですわね。西村?」
「こっちにはこっちの事情があるんだよ。そう言う、お前だってどうしたこんな時間に?
イギリスとの時差ボケでもしたか?」
「「……」」
無言でオルコットと睨み合う。
互いに不機嫌マックスの睨み合いだ。
「遅れてるから席に座るよ〜あかやん、セッシー」
「席に着け。赤也、オルコット」
俺とオルコットの睨み合いを止めたのは、布仏と意外な事に千冬だった。
千冬の性格的に生徒のぶつかり合いは、極力止めないかと思っていたが、まぁ時間も時間か。
布仏に手を引かれるがままに、席に着く。
「では、皆さん揃ったようなので、一年一組のクラス代表を発表しますね。
クラス代表は、織斑一夏くんになりました。一繋がりでいい感じです!」
山田さんが笑顔で発表する。クラスメート達も盛り上がるが、織斑が席で暗い顔をしてうなだれている。
「質問です!なんで、俺がクラス代表になったんですか?」
堪え切れなくなったのか織斑が山田さんに質問する。
すると、当然のようにオルコットが勢いよく立ち上がる。……立つ必要あった?
「わたくしが辞退したからですわ!」
腰に手を当てた優雅(笑)のポーズで宣言するオルコット。
「一夏さんと、認めたくはありませんが西村と戦って自分の不甲斐なさを実感しました。
今一度、わたくしは代表候補生としての自覚と責任を持ってISに乗りたいとそう思いましたの。ですので、クラス代表は辞退し、自らを研鑽する時間を頂きたいのですわ。もちろん、一夏さんはわたくしを頼ってくれて構いませんわ」
あぁ…織斑に惚れたのね……
どこにそんな要素があったのか俺には皆目見当もつかないが、オルコットが自分を研鑽すると言うのなら、更に強くなるのだろう。
不味いな。強くなって負け続けるような事になれば、どれだけ馬鹿にされるか分からんぞ。
「うぐっ……なら、赤也はどうなんだ?俺より、戦績が良いはずだよな?」
オルコットの明確な理由を聞いて、反論できないと判断した織斑は俺にターゲットを絞る。
千冬をチラリと見るが、口パクで好きにしろっと返ってきた。なら、そうさせて貰いますわ。
「俺とお前の賭けは覚えてるか?」
「あぁ。赤也が勝てば俺にクラス代表を押し付けて、俺が勝てば赤也は俺を一夏って呼ぶあの、賭けだろう?」
「それだ。引き分けってのは、どちらも負けでどちらも勝ちだ。
だから、賭けを両方履行させて貰うことにした。これで、文句はないだろう一夏?」
クラス代表をやらなくて済む代わりに、織斑を名前で呼ぶ対価ぐらい支払ってやる。
心底、嫌だけど。どうせ、俺から織斑に関わることはないし、安い対価だ。
「うぐっ……分かったよ!やってやるよ。クラス代表!」
織斑がそう宣言すると再び、クラスが盛り上がる。
なにやら、オルコットの発言で篠ノ之と揉めてるようだが、俺が知ったことじゃない。
「…スピィ〜」
「……よくこんなに騒がしいのに寝れるな。布仏」
横で眠りについてる女神の寝顔に癒されることにした。
「では、これよりISの基本的な飛行操縦の実践をして貰う」
ISスーツのこのピッタリ具合はどうにかならないのだろうか。あまり、窮屈な服が好きではない俺からすると地獄だ。
「織斑、オルコット、試しに飛んでみせろ」
呼ばれた二人が前に出る。
しかし、俺が呼ばれないのが不思議なのか織斑がアホヅラで口を開く。
「あれ?赤也は?」
「赤也は……」
千冬が織斑の言葉で、言い淀む。
顔にははっきりと余計なことを言ってくれたなっと浮かんでいる。千冬も遠慮することはないんだが、こればっかりは仕方ないか。
「織斑先生、見本は少しでも多い方が良いと思いますよ」
「だがな…赤也…」
「俺は大丈夫ですから」
不安な顔を隠そうともしない千冬の目を見て、宣言する。
俺の意思を尊重することにしたのか、はぁ、と溜息を吐く。
「赤也、お前もだ」
俺にサードオニキスを展開する許可をくれた。
当然、このやり取りの理由を知らないクラスメート達は困惑しているが、この際放置しておく。
「あかやん…」
「大丈夫だ、布仏」
なぜか心配そうな布仏。あれ、寝てたから話は聞いてない筈なんだが。
今度、それとなく聞いてみるか。
前に出て、織斑の横に並ぶ。オルコットが、不機嫌そうにこちらを見てくるが、流石は代表候補生。
俺が並ぶと同時に展開を終わらせている。
「折角の邪魔をして悪かったな。オルコット」
揶揄いの意味を込めてオルコットに言うと同時に、サードオニキスを纏う。
織斑は未だ、纏わない。
「じゃ、邪魔とかなにを言っているのか分かりませんわ!?」
こいつ、恋をするとさてはチョロいな?
仕返し序でに弄ってやろうっと思ったら、横で織斑が展開を終わらせた。
「よし、飛べ」
オルコット、俺、織斑の順番で飛行する。
無意識的に抑えてしまっているな……オルコットに追いつけない。
『織斑、もっと早く飛べ。スペック上ではお前が一番なんだぞ』
千冬の指摘に顔をしかめる織斑。
『赤也…無理はするな。不調を感じたらすぐに言えよ』
わざわざ、プライベートチャンネルにして、俺を心配する千冬。
心配性だな。
「分かってるよ。心配してくれて、ありがとう。千冬」
『教師として当然の事をしているだけだ』
そうは言ってますけど、顔が赤いですぜ。
まぁ、言ったら100%怒られるから言わないけど。
「一夏さん、イメージが重要ですわ」
「そう言われてなぁ、こいつがなんで浮いてるか分かんないし」
オルコットと織斑が会話をしている。気がついたら、オルコットが居ないと思ってたらうしろにいたのか。
「織……一夏、案外面倒なこと考えてるんだな、お前」
「どう言うことだ?赤也」
俺の言葉に不思議そうな顔する織斑。
どうやら俺の言いたいことか伝わっていないらしい。
「いや、そんな面倒なこと考えなくてもISなんだから飛ぶに決まってるだろう?」
そう言うと織斑は驚いた顔をして、オルコットはアホを見るような顔をしてくる。
なんでや。俺はこれで飛べてるし、空中制御も出来てるんだから良いだろう。
「わたくし、こんなアホに負けましたの?……」
「おう、こらオルコット。アホとはなんだアホとは」
「これだから感覚派は……もっと、理論とかありましてよ」
「へいへい。お前、見るからに理論派っぽいもんな」
普段の調子で互いに話す俺とオルコット。
それを眺めてた織斑が一言。
「知らない間に仲良くなってるんだな」
「「死んでも、こいつ(この人)と仲良くなることはない!(ありませんわ!)」」
「…お、おう。息ピッタリで言わんでも…」
気色の悪い事を言わないでくれよ織斑。
この後、急降下からの着地で、オルコットがピタリと制し、俺は減速タイミングを間違え、地面スレスレに、織斑はでかい穴を開けた。
あの時の、オルコットの勝ち誇った顔が実にむかついたと言っておく。
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