神様は残酷で気紛れだ   作:マスターBT

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少し、予定を変更しこちらの話を先に。
今回、赤也は出てきません。


彼のためにSIDE本音

布仏本音は、普段の緩い顔ではなく、真剣な顔でIS学園を歩いていた。

目指す場所は、生徒会室。昼休みを利用して、ある人物に話をする時間を貰っていた。

普段なら、緩い声とともに、中で何やっていようが御構い無しに入る生徒会室の扉を、ノックして中の人物の反応を待つ。

 

「開いてるわ」

 

凛とした声が中から聞こえる。

しっかりと聞いた本音は、生徒会室に入室する。

 

「お嬢様、失礼します」

 

普段の緩さはどこへ消えたのか。

真剣な面持ちと、声で中の人に声をかける。本音のその姿に、僅かに驚いた表情を取るが、その人物ーー更識楯無は口を開く。

 

「本音ちゃん。まずは、席に。

虚ちゃん、紅茶をお願いできる?」

 

楯無は本音を座るように指示する。本音が頷き、座る場所は普段の庶務としての席ではなく、来客用に使われるソファだった。

一挙動から、本音の覚悟を感じる楯無。自分も、来客の立場をとる本音に習い、生徒会長そして、暗部として向かい合う。

 

「紅茶をお持ちしました」

 

本音の姉、布仏虚が紅茶を運んでくる。

気迫の違う、本音に驚きつつも、紅茶を置き、主である楯無の元にも紅茶を置く。そのまま、楯無の従者らしく、彼女の背後に立ち、妹の覚悟を見守る。

 

「今日はどんな話かしら?」

 

沈黙を破ったのは、楯無。

本音がどんな話をするために、此処に来ているかはメールの文面で知っているが、直接彼女の口から聞く事を楯無は選んだ。

 

「はい。予てより、考えられていた『IS学園機体開発計画』を私、布仏本音が主導で押し進めたいのです。

そして、開発された機体のパイロットを私が務めたいのです!」

 

一切、怯むことなく楯無に宣言する布仏。

 

「その理由を聞いても?」

 

楯無は至って普通にその続きを聞こうとする。

だが、手は僅かに震え、まるでその続きを口にしないでくれと怯えている様にも見える。

しかし、彼女の願いは叶わない。

 

「二人目の男性IS操縦者、西村赤也。彼の右腕でもあり専用機であるサードオニキスとそれによる、変質していく彼の身体に関しては、すでに資料があるので、ご存知の筈です」

 

「えぇ。知っているわ。同調率の上昇に伴い、彼の身体を侵食しているっと」

 

「その通りです。そして、彼はサードオニキスの使用をやめる気はありません。

ですから、彼の負担を減らすべく、私が専用機を持ち、彼の支援を行いたいと考えております」

 

そこまで話し、一旦紅茶を一口飲む本音。

相変わらず、姉が淹れた紅茶は美味しいと精神を落ち着かせる。

対して、楯無は大きく、息を吐き、正面に座る本音を見る。

 

「本音ちゃん、生徒の長として暗部更識の長として、私は彼を警戒しているわ。

あの篠ノ之束が、モルモット称して彼を此処に連れてきた理由も読めないし、彼の精神面も酷く荒んでいる。

確かに、教員の対応は間違っていたかもしれないわ。それでも、彼は人の命を奪う事に抵抗のない人間よ」

 

楯無は警戒していた。もし、西村赤也がこの学園に害を成す存在なら、全力で排除するために。

強すぎる女尊男卑思想への恨み。行動の読めない篠ノ之束。これらを警戒するなと言う方が無理であった。

楯無の言葉は想定していたと、言わんばかりに本音が口を開く。

 

「確かにお嬢様の言う通り、彼の精神面は決して善人ではありません。

ですが、それでも彼は信頼に値する存在です。私を気遣う優しい心や、織斑先生やクラスメート達と仲良くできる社交性。

そして女尊男卑思想に染まっていたセシリア・オルコット代表候補生が、認める強さと息が合わなくても、認めた人間には暴力や過度な反発を起こさず、認め合う心。危険はあるかもしれませんが、彼の本質はそこにはありません」

 

強く、自らが力を貸したいと願う人は、悪者ではないと話す本音。

 

「むしろ、お嬢様が懸念している事案は、この世の中がそう歪めてしまった事でしかないのです。

それなら、その闇を大きくしないように、支えてあげるのも大切なのではないでしょうか?」

 

人の本質は生まれ持ったものと環境に左右される。

西村赤也という人間は、確かに歪んでいる部分を持っているだろう。だが、それがそれだけが本質ではないのだと、本音を言う。

 

「……そうは言ってもね。これは学園の方針でもあるの」

 

「学園長との話が必要なら、おそらく織斑先生が行なっている筈です。

私と織斑先生は、彼のために出来ることをなんでもする覚悟でいます」

 

本音の言葉に驚きを隠せない楯無。

西村赤也という人間が、ここまで人の動かすものを持っていたのかと。

 

「虚ちゃん」

 

「はい。今しがた、確認を行ったところ、学園長の元に織斑先生がいるようです。

内容は本音のものと同様ですね」

 

虚からの報告が楯無の頭を痛くする。

どうしようもない程に、本音の本気を理解してしまったからだ。織斑先生も動いてるとなると、そう簡単に話が済む事ではなくなる。

ここで、楯無は一つ。本音がどこまでの覚悟を持っているのか確かめる事にした。

 

「もし、私が認める代わりに、ISで私と戦いなさいと言ったら貴女はどうするの?」

 

国家代表である自分と戦ってでも、押し通す覚悟はあるのかと楯無は問う。

暗部として更識に仕えてきた布仏本音だからこそ、楯無の力量をしっかりと理解している。だからこそ、この質問で覚悟を推し量る事にした。

 

「……戦いますよ。例え、楯無様が相手でも。ISだけではなく、体術でも戦えというのならそれでも。

簪様と離れろと命じられても、従います。それで、あかやんの負担を減らす力が手に入るのなら」

 

この返答には流石の楯無も表情が崩れる。

まさか、自分と戦う道やあんなに仲の良い簪から離れる道を選ぶほどの覚悟だったのかと。

月日は短い。まだ、彼と本音が知り合って1週間とちょっとしか経過していない。それなのに、数十年共にした自分たちより選ぶ価値のあるものだと本音は思っているのかと。

 

「……分かった。なら、三日後。

第四アリーナに来なさい。生徒会長権限でアリーナの確保と、訓練機を借りておくわ。

そこで戦って、本音ちゃん。貴女の覚悟を見せてもらうわ」

 

本当は、本音に妹である簪のISを開発するのに手伝って貰いたかった。本当は、専用機なんて危険なものを戦いに不向きな性格の本音に持ってほしくなどない。だが、それは自分の我儘でしかないと押し殺し、冷酷なまでに暗部更識楯無の仮面を被る。

 

「分かりました。その時は、ラファールでお願いします」

 

本音が真正面から楯無の目を見て、宣言すると同時に昼休みの終了を告げるチャイムが鳴る。

本音は残してあった紅茶を一気に飲み干し、立ち上がる。

 

「無理を言って申し訳ありませんでした。

ですが、どうしても必要だとそう思ったんです」

 

そう、最後に残し、生徒会室を出て行った。

残された虚と楯無は、同時に息を吐く。無意識に本音の空気に呑まれていた。

 

「よろしかったのですか?お嬢様」

 

「そりゃ、嫌だけど。でも、あんな覚悟の本音を止める気にはなれなかった」

 

まるで、自分が楯無を襲名することが決定した時の自分を見ているようで。っと楯無は心の中で続けた。

 

「…織斑先生の方も、こちらの意見に委ねるという結論が出たそうです」

 

「まぁ、あの学園長ならそう言う結論になるわよね……西村赤也。

本音ちゃんがあそこまで入れ込む人ね……」

 

楯無は資料に目を落とす。経歴は一般人そのもの。

 

「気になりますか?」

 

「まぁね。でも、本当は虚ちゃんの方が気になってんじゃないの?

大切な妹をああも、籠絡した人物にさ」

 

「多少は。でも、私は本音の選択に極力、介入する気はありませんから」

 

「うわぁ、余裕ねぇ〜」

 

「授業、休みます?お嬢様」

 

疲れた表情の主を気遣う虚。

 

「そうね。生徒会って連絡しておいてくれるかしら」

 

「分かりました」

 

虚が電話を取り出し、職員室に連絡する。

その姿を眺めつつ、楯無は先ほどの本音の顔を思い出す。

 

「はぁ、なんだか知らないところで成長してるようで、おねーさんは悲しいなぁ〜ってね」

 

IS操縦者としては未熟な本音と戦う日をどこか、楽しみにしている自分がいたのだった。




本音さん覚悟回でした。
果たして、楯無さん相手にどのように戦うのだろうか。

間延びしない口調の本音さん、違和感が凄かった

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