神様は残酷で気紛れだ   作:マスターBT

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6000文字とかまじか。
本音VS楯無回です。

このサブタイの赤也、きっとすごく優しい顔をしてる。


布仏、あとで腹一杯、好きな菓子を食べような

いよいよだ。いよいよ、この日がきた。

3日間なんて、決して長いものじゃなかった。でも、私にはとても長く感じた。織斑先生に協力して貰って、アリーナの使用許可を貰って、来る日も来る日も放課後はラファールを使い込んだ。

山田先生に、事情を隠してISの動かし方と、銃撃戦のやり方を教わった。私は、整備科志望でISの操縦に興味がなかったから、可能な限り早く基礎を山田先生に教わった。

 

「それでも、本当の本当に基礎と銃撃戦のやり方を覚えただけ……たっちゃんにこれで立ち向かえるのかなぁ〜」

 

ピットで深呼吸をしながら、そんな弱音を吐く。

ラファールの調整は訓練をしながら済ませた。装備の点検もバッチリした。あとは、たっちゃんのISでの動きや戦い方を復習し直した。

 

「布仏さん、大丈夫ですよ。どんな事情があって、一年生の貴女が生徒会長と戦うのか分かりませんが、あれだけ真剣に訓練したんです。

伝えたい思いは必ず、届くと思いますよ」

 

山田先生が励ましてくれる。

一回だけ訓練中にあかやんっと呼んでしまったから、私があかやん関係で頑張っているのが山田先生にバレてしまった。

でも、山田先生は事情を聞かずに、私との訓練を続けてくれた。とても良い先生だと思えた。

きっと、こうやって生徒の背中を押してくれるんだってそう思えた。

 

「はい!山田先生、私、頑張ります」

 

だから、普段とは違う真剣な私の言葉で返事をしよう。

 

「はい、頑張ってください。武装はこれで間違い無いですね?」

 

笑って、私の覚悟を受け止めてくれる山田先生。

タブレットを操作して、今のラファールに搭載されている武装を見せてくれる。

アサルトライフル二丁、シールドピアーズ、ショットガン、コンバットナイフ×3、近接ブレード。アサルトライフル用のマガジン×5、ショットガン用のマガジン×2

そして、脚部に三連装ミサイルを付けている。ラファールを動かし、山田先生に訓練を受けて、分かったことは私に近接戦闘の才能はほとんど無いという事だった。だから、近接武器は少なめに、銃火器に拡張領域を使った。

 

「大丈夫〜」

 

「ラファールの拡張領域を広げるために、通常のラファールより装甲が少なくなっています。

分かってるとは思いますが、被弾に注意してください。それと、布仏さんから近づくのは、確実に仕留めるチャンスが出来た時のみ。

良いですね?忘れないでくださいよ」

 

「うん〜大丈夫大丈夫〜しっかり、覚えてるよぉ〜」

 

シールドピアーズを積んでいるけど、攻め込みすぎない。距離を取って戦う。

そこまで話をして、ピット内にビィーっという電子音が響く。合図だ、たっちゃんの準備が出来たみたいだ。

 

「じゃあ、行ってきます〜」

 

ラファールにもたれ掛かる様にして、纏う。

訓練を始めた頃はいつもより視点が高くなったことに戸惑ってたけど、今はもう慣れた視界だ。

 

「全力で戦ってきてくださいね」

 

「うん〜ラファール、布仏本音出るよぉ〜」

 

カタパルトから勢いよく、射出される。

空中で、ちゃんと姿勢制御を行い、ミステリアス・レイディの前に向かう。

 

「……ちゃんと操縦出来てるみたいね」

 

「うん〜山田先生とずっと訓練したからねぇ〜

お陰で授業が眠くて眠くて〜」

 

暗い表情のたっちゃんが和む様にお話しする。

私と戦いたく無いのだろう。従者としての関係もあるし、当然、友達としての付き合いも長い。

 

「たっちゃん」

 

でも、ごめんね?私は引き下がらないよ。

 

「何かしら?」

 

「私の覚悟、ちゃんと見定めてね?」

 

アサルトライフルを両手に呼び出す。

この戦い、ハンデとして私の好きなタイミングで攻撃が出来る。先手の権利が与えられている。

あと、たっちゃんは水を制御しているナノマシンを攻撃に転用しないという縛りもある。

銃口を向けられたことで、顔付きが変わるたっちゃん。私も自分の中のスイッチを切り替える。

 

「「……」」

 

合図はなかった。

私が両手のアサルトライフルを撃つとまるで、分かっていた様に水のヴェールで防壁を作り防ぐ。

このまま、撃ち続けても弾の無駄になる。だから、一旦撃つのをやめて、今の自分が出せる最高速度で、たっちゃんの周囲をぐるぐると回る。たっちゃんはその場を動かず、私の動きを目で追跡している。振り切るほどの速度が出せるわけがない。

でも、だからって攻めなくちゃ活路は見出せない!

アサルトライフルをぐるぐると回転しながら、撃つ。タイムラグはあるけど、たっちゃんが動かないなら、全方位射撃だ。

 

「……」

 

それでも動じずにたっちゃんは、水のヴェールと槍で弾を防ぐ。でも、全く、攻めてこない。

不思議に思ったから止まって、アサルトライフルを向けながら聞いてみる。

 

「なんで……全く、動こうとしないの?」

 

「…私との力量差を認めさせるためよ。これで、分かったでしょ?

貴女が足掻いたところで、なんの結果も生み出せない。貴女は整備士であって乗り手じゃない。

大人しくしていなさいな、それが分からないほど子供じゃないでしょ?」

 

その言葉に思わず、唖然としてしまう。

たっちゃんは、自分の思いを言葉にするのが凄く、下手だ。

未だにかんちゃんに避けられているのだって、素直に話せば良いのにストーカー行為をしたり、いざ目の前に出たら楯無の仮面を被ってしまう。きっと、今の発見も楯無の仮面を被ってのものなんだろう。

付き合いが長いし、よくお姉ちゃんがぼやいてたから知ってる。でも、分かってても頭で納得出来たって、心が出来るわけじゃない!

 

「たっちゃん。その言葉だけは聞きたくなかった………そうなんだね。

たっちゃんは私にはなんの力もないと、私の努力は無意味だとそう言いたいんだね?」

 

「ッツ!そうじゃないわよ!本音ちゃん!」

 

「そうやって、私が!あかやんの為に頑張ろうとしている、この覚悟もそんなもんだって言うんだね!私に努力は無駄だって言うんだったら、二度と貴女に歯向かえない様にボロボロにすれば良い!!そうでもしない限り、私は止まらない!

止まりたくない!あかやんを、守りたいってこの気持ちを捨てる訳にはいかないから!!」

 

自分でもらしくないと思えるほど、感情を全開にしてたっちゃんにぶつける。

この人が仮面を被って私に向き合おうとするなら、私はその仮面を壊す。

仮面を壊せなきゃ、『楯無』に認められた事にならない。

私の言葉に動揺して動きの止まっているたっちゃん。アサルトライフルを片方しまい、ナイフを展開する。

投げナイフの要領で、投げてたっちゃんのナノマシンを精製するコアを一つ破壊する。

 

「しまっーー!」

 

「はぁぁ!」

 

閉まったアサルトライフルをもう一度、展開しながら乱れ打つ。

私がもう諦めない事が漸く、分かったのか動き回避していく。ランスを構え、内蔵されているガトリングを撃ってくる。

頑張って避けるが、先読みされる様に飛んでくる弾丸に少しずつ被弾していく。

こんな初手に使いたくなかったけど、山田先生から無理やり教わった技術を使う。

 

「うりゃぁぁ!」

 

ブーストを一旦、溜めて勢いよく解放する!

 

「瞬間加速!?こんな芸当まで」

 

一気にたっちゃんの懐に入り、ショットガンを展開し放つ。その結果を確認せずに、離脱する。

ラファールのハイパーセンサーが映し出した光景は、水のヴェールで虚しくも止められているショットガンの散弾だった。

やっぱり、ダメだった。秘策の一つを使っても、たっちゃんを驚かすだけで有効打にならなかった。

 

「……分かったわ。なら、私も少しは本気でいく」

 

目つきが変わった。それと同時にたっちゃんから感じる圧力も。

私の瞬間加速を見て、スイッチを入れたみたいだ。やっぱり、仕留められなかったから勝ち目が遠のいた。

アサルトライフルを構えて、たっちゃんを見る。直後に、視界からたっちゃんが消える。

私がさっきやった方法だ、瞬間加速を使ったんだ。

ラファールの警告音と同時に、私は背後からの衝撃とともに地面に向かっていく。

至近距離でのガトリングを食らって、ラファールの背部ユニットが損傷。飛行が難しくなってしまった。

地面に叩きつけられるのをギリギリで避けるが、背部ユニットが損傷し、高いところまでの飛行と瞬間加速を封じられた。

 

「……まだ、やるの?」

 

降りてきたたっちゃんが私の目を見て、聞いてくる。

たっちゃんがそう言うって事は私の目から、まだ闘志が失われていないらしい。なら、やれる。まだ、私は戦える。

 

「もち、ろん!」

 

アサルトライフルをなんのフェイントも無しに撃つ。

たっちゃんは余裕の表情で避け、蛇腹剣を展開、動きながら振るってくる。可能な限り、避けるが途中で、アサルトライフルを一丁切断され、ラファールの装甲も斬りつけられた。シールドエネルギーを切らす目的ではなく、私から戦う術を奪うつもりみたいだ。

アサルトライフルをわざわざ破壊し、装甲を傷付けていく。

 

「……」

 

それをほぼ無表情で行うから楯無の仮面は厚い。

でも、諦めてたまるか。苦手でもやるしかないよね。ブレードを呼び出し、その手に握る。

 

「やぁぁ!」

 

構えなんて全然、出来てないしスピードも出ていない。

簡単に槍で受け取れられ、手からブレードが弾き飛ばされる。でも、それと同時にショットガンを展開。

構えて、撃とうとすると、ガトリングが向けられ、こっちが蜂の巣にされる。

シールドエネルギーも当然、減っていくけど何より蛇腹剣で傷つけられた装甲が保たなかった。バラバラに砕けていき、私はボロボロの状態でたっちゃんに向き合っていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

山田先生には後で謝らないと。それと、無茶な戦いに付き合わせちゃったラファールにも謝らないとね。

でも、ごめんね。ラファール、まだ戦って貰うよ。

壊れちゃったショットガンを投げ捨て、残ってるアサルトライフルとナイフを呼び出す。

ナイフは逆手で持ち、アサルトライフルの下に添える。

 

「……投降。しないのね」

 

「まだ……戦えるから……ね」

 

結局、用意したマガジンは全部無駄になっちゃったな。

ボロボロのラファールを動かし、たっちゃんにアサルトライフルを撃つ。もう、避ける事もなく水のヴェールで受け止められる。

それならと接近し、ナイフを振るう。でも、簡単に槍で防がれていく。

アサルトライフルの弾薬が切れる。補給しようとしたら、蛇腹剣で吹き飛ばされ、空中で破壊される。

残りの武装は、ナイフ二本とシールドピアーズ、脚部ミサイルのみ。

 

「どうして、そこまでして戦うの?」

 

どうしたものだろうと頭を悩ませていたら、たっちゃんがそう聞いてくる。

 

「…私は……あかやんの支えになりたいの……彼が死ななくても良いように………彼がISを使いすぎないように……

だって……あかやんと一緒にいると楽しくて……心地いいから……その場所を守るためなら……私は…こうやって戦うよ」

 

最近はかぐっちも一緒にいるようなって、更に楽しい場所になったんだ。

そんな場所が壊れてしまうなんて嫌だ。友人を失う結末なんて、私は見たくない。

 

「……本音ちゃん……」

 

たっちゃんの顔が悲痛に歪む。

私は、ナイフを一本閉まって、シールドピアースを呼び出す。右腕に装着されるシールドピアース。

もう、私に残った決め手はこれしかない。あ、あかやんと一緒だ。あかやんも決め手は右腕。

無意識だったけど、右腕に装着されたシールドピアースを見て笑う。

たっちゃんは、これで終わりにしようとしたいのか槍を構える。

 

「たっちゃん……」

 

「……何かしら」

 

だから、私も伝えたいことを伝えよう。

 

「私は……意地でも……押し通るよ。……こうやってぶつかって……たっちゃんも……少しは分かってくれたでしょ?」

 

返事は聞かない。

楯無の仮面を被っているたっちゃんの返答なんか決まってるから。

地面を蹴って僅かでも加速する勢いをつける。それでも足りない、だから脚部ミサイルを地面に向けて放ち、爆発の勢いも加速に利用する。ラファールの装甲が更に減るけど、もう些細な問題だ。たっちゃんのを避ける余力はない。だから、左脇で槍を挟む。

僅かなシールドエネルギーがゴリゴリ削られるけど、シールドピアースを撃ち込めればそれで問題ない。

 

「たぁぁ!」

 

聞こえるはずがないのに、あかやんの行け!って言う声が聞こえた。不思議な事に幻聴でもやる気が出てくる。

ラファール…一撃で良い。それだけ、保って。右腕を振り絞り、たっちゃんの腹部へと押し込み、シールドピアースが起動する。

バゴンッ!という射出音と共に。

 

『ラファール、シールドエネルギーエンプティ!勝者、更識楯無』

 

試合終了を告げる合図が鳴った。

私がこの試合で削る事の出来たたっちゃんのシールドエネルギーは、僅か二割。

瞬間加速の分も考えると、一割とちょっとしか削れていないだろう。私の全力だったんだけどなぁ。ラファールを解除して、地面に降りる。でも、疲れ切った私の身体は自分を支えきれず、崩れ落ちる。

 

「布仏!!」

 

焦った声が聞こえる。それと同時に私はひんやりしたものに抱えられる。

直後、私を抱きしめてくれる熱を感じた。

 

「あか……やん?…」

 

「あぁ…そうだ。ありがとう、布仏。それと、よく頑張ったよお前」

 

あかやんがすっごく優しい声で私の頭を撫でながら言ってくれる。

疲労による倦怠感と、あかやんの心地よさで私は眠りたくなってしまうけど、まだ聞いてない言葉がある。

 

「……たっちゃん、認めて……くれる?」

 

「……えぇ。認めるわ本音ちゃん、強くなったわね」

 

まだ自分の結論に迷いがいるのだろう。でも、たっちゃんは笑ってそう言ってくれた。

うん。良かった……これで寝れるね。おやすみ、あかやん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞こえてくる息が一定のリズムになった。多分、寝た。

それを確認するために、抱きしめてる状態を一旦やめて、顔を確認すると幸せそうな顔で寝てる布仏の顔があった。

背負っていくか。

それにしても布仏と更識さんの戦いは、更識さんの一方的なものだったのに、なぜか更識さんの方が苦しそうだった。

途中からの観戦だったから、何がどうなったのかは分からない。ただ、思わず最後に行け!っと叫んでしまった。布仏が気づかなくて良かった。

 

「…ねぇ、貴方は…」

 

「更識さん……話すのならまた今度にしましょう。布仏が風邪を引いてしまう」

 

躊躇いつつ、俺に声をかけてきた更識さんには申し訳ないが、今は布仏が最優先だ。

 

「そうね……お願い出来るかしら」

 

「当然。俺のことで負担をかけてしまったんだ、これぐらいはやるさ」

 

今が完全に寮の門限を過ぎた時間で助かる。

生徒がその辺をウロウロしていない。そういや、布仏の部屋知らないな。

寮長室に運ぶか。

では、失礼しますっと一礼して、アリーナを出る。出口には、山田さんと千冬が立っていた。

 

「…布仏は寝てるのか」

 

「えぇ。部屋が分からないので、寮長室にでも運ぼうかと思ってたところです」

 

「敬語は使わんで良い。そうだな、布仏も同室の奴にバレたくはないだろう」

 

千冬の言ってることがイマイチ分からんが、とりあえず寮長室に運んで良いのだろう。

 

「西村くん、布仏さんが起きたら一杯、労って下さいね。

貴方の為に割ける時間を全部、使って今日に臨んでいましたから」

 

山田さんが笑顔で教えてくれる。やっぱり、布仏は俺の為に頑張ったのか。

 

「立ち話もなんだろう。真耶、寮長室で色々と話をするとしよう」

 

「え、あ、はい。先輩がそう言うのなら」

 

「俺と布仏がいること忘れるなよ?千冬」

 

「はは、分かっているとも」

 

三人で歩き出す。布仏を起こさないように少し、小さめに会話しながら。

年の離れている俺が必然的に会話について行けなくなる。ふと、背中に背負う布仏が笑った気がした。

 

「お疲れ。甘いもの、たくさん食べような」

 

「…えへへ……あかやん……」

 

寝言まで可愛いとかやっぱり女神だな。

明日は、四十院と一緒に布仏を盛大に甘やかそう。そう決めた。

 




本音さん、負けてしまいました。ですが、これで学園と楯無からの許可が出ましたね。

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