「…なにを笑っている?」
俺を見る織斑千冬の目がまるで、バケモノを見るかのようだ。
女尊男卑に染まった連中が、崇拝する存在からそんな目をされるとは。理由は、右腕からIS反応が出てるからか?
「気に障ったのなら謝罪しますよ、織斑さん。自分の状況を理解したら、余りの大きさに笑ってしまっただけです」
全くの嘘だが、人間、自分より弱いと分かる相手には、無意識に警戒する意識を低下させる。
俺自身、全然状況を理解把握しきれてないし、情報を隠されても困る。
まさか、あの家族達に本音を隠すために、培った作り笑顔と嘘を平然と吐くことがこんな所で活きるとは思わなかった。
「えーと、俺自身、この右腕に関する記憶はだいぶ朧げなんですが」
「これを見ろ。お前は、一時間ほど前に突如、IS学園に届けられた」
記録映像か何かだろうか。織斑千冬に映像を見せられる。
場所は…アリーナか何かだろうか。そこに俺が空中から放り出される。
『あーあ、聴こえてる?ちーちゃん。これ、私のモルモットだからよろしく。
あ、死んだらそこまでのゴミだから、勝手に捨てといて。じゃあねー』
意識が途切れる直前に聞いた兎の声だ。
放り出されると同時に、機械による放送か何かで兎の声が響き、なにもいない所に砂埃がたつ。
その数分後、俺が回収される所まで映っていた。
「…俺、モルモットなんですか」
人間をモルモット扱いするとは、あの兎よほど人格が破綻しているらしいぞ。
そして、そんな扱いされても苛立ちとか何も感じない俺も俺か。
「その様子を見た限り、あいつの関係者と言うわけではないようだな」
「まぁ、事故の時に出会って、この右腕を装着されただけですからね」
ガチャリと機械音を立てて、右腕を少し動かしてみる。周りの女性達が怯えて、銃を構えてくるが無視無視。
もう少し人間の腕らしく見える義手にはならなかったのだろうか。鈍い銀色の右腕を見つつ、首を傾げる。
試しに、右腕を軽く叩いてみるが、痛みはない。だが、触れた感覚だけは伝わってくる。
「…あのー、織斑さん」
「なんだ」
「これ、俺の神経にまで繋がってません?」
「あぁ。検査した限り、右腕の切断面から、擬似神経が接続されているらしい。
私は専門ではないから詳しくは分からんが、そんな見た目でも現状のどんな義手より高性能だということだ」
見た目も高水準が良かったなぁ……
まぁ、贅沢は言えないか。兎がこれをくれなければ、あそこで俺は死んでただろうし。
「で、一番の問題が、その腕からIS反応が出ていることだ。
コアを取り出そうとしても、神経が繋がっている以上、お前にどんな負担があるか分からない」
「あー…「だから、言ってるじゃないですか!貴重なISコアを、男の右腕なんかに使って良い訳がないんです!
男なんて死んでも、良い存在なんですから!!」……」
怯えからだろう、女性の一人がそんな事を言う。
女尊男卑の思想に染まりきったやつなんだろうな。
「なにを馬鹿なーー」
織斑千冬が女性を叱りつけようとするのを左手を出して止める。
「ほ、ほら、こいつも自分の価値ってやつを分かってますよ!」
「いやぁ、そうですよね。男なんてそんなもんですよ。って、今までの俺なら同意してただろうな。
だが、悪いな。もう自分の好きなようにこの命使うと決めてるんだわ」
ベッドから立ち上がり、右手で女性の首を締め上げる。
「がっ!…ぐぅ!…」
周りの女性達が一斉に銃を構える。
一斉に撃たれれば流石に死んでしまう。
「撃っても良いですよ?ですが、それより早く俺はコレの首をへし折れます」
ギリギリと首を絞める力を込めていく。
どうもこの腕、感情によって出力が変わるようだ。
「銃を下ろせ!お前もそいつを離せ。あとで、こちらで然るべき処置をしておく」
織斑千冬に逆らうのは、得策じゃなさそうだ。
右腕の力を緩める。すると、女性が力なく倒れる。
「ーーゲホッ……カハッ…」
どうやら締めすぎて、軽く気絶させていたようだ。
この右腕の加減、結構大変そうだな。
さて、どうやらやり過ぎたらしい。さっきより、周りの視線が刺さる。織斑千冬の視線には、呆れが混ざっているが。
「…この場合ってどうなるんですかね?」
「さぁな。少なくとも、監視対象にはなるだろう。その右腕は普通ではないからな」
「ですよねー……はぁ、好きなように生きるってのも案外難しいな…」
左手で頭をポリポリと掻きながらぼやく。
モルモット扱いに、監視対象。結局、俺に自由なんてものは縁遠い存在らしい。
「この、クソ野郎が!!」
先ほどの女性が立ち上がり、銃を撃つ。
いや、無理だ。反応できるわけがねぇ。狙いがブレていたお陰で、右肩の付け根に当たる。
『対象の危険を感知。防衛機能を起動させます』
機械音声が聞こえ、右腕が光り輝き、思わず目を閉じる。
次に目を開くと、視点が高くなり、ただでさえメカメカしい右腕が、さらに機械感強くなっている。
身体の急所を隠すように金属の装甲だろうか。それが付いている。
『IS起動。マスター、貴方の名前を要求します』
また機械音声が響く。俺の名前だって。
混乱しているが、とりあえず名前を告げる。
「俺は西村赤也だ」
『了承。マスターを登録。続いて、私の名前を要求します』
いや知らねぇよ!?今、決めろってか。
このタイミングで。えぇ…混乱した頭で、ふとよぎった名前を口に出す。
「『サードオニキス』……個性を大切にし、様々な縁を繋ぐパワーストーンの名前だ。
俺はこれから、個性を隠す気は無いし、お前が右腕になる事で、出来る縁もあるだろうって事で」
石言葉なんてもの調べておいて正解だったぜ。
それっぽく聞こえる名前だし、ISの名前にするには良いんじゃないか?分からんけど
『了承。以後、私の固有名はサードオニキスと登録。マスターに危険が迫った時は、自動で起動しますが、それ以外のタイミングで必要であれば、いつでも名を呼んでください』
言いたい事だけ告げる一方的な報告をされる。多分、質問しても返事はないんだろうなと思う。
機械音声だから、よく分からないが、なんとなく、俺に死なれると困るから、起動して会話しただけと言う感じが伝わってくる。
「……はぁ、面倒ごとというのは、止まることを知らないようだ……」
ISを展開した俺を呆れるように見つめる織斑千冬に、なんとなく同情した。
そのうち、主人公とサードオニキスの設定をあげます。
書いてるうちにどことなく、ポンコツ臭が漂ってくるオリ主。
ただし、女尊男卑思考への恨みは積もりに積もっている模様。これ、セシリア戦荒れるぞ。
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