神様は残酷で気紛れだ   作:マスターBT

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予定とは違い、まさかの楯無さん回

それと、ランキングにこの小説が入っていて驚きました。
読んでくれる皆様、感想をくれる皆様、評価をしてくださる皆様、本当にありがとうございます!
これからも、この物語を楽しんでいただけると幸いです。


生徒会長って大概、凄い人が務めるが何か暗黙のルールでもあるのだろうか

デュノア社。

アルベール・デュノアが社長を務めるフランスの大手企業。

第二世代機であるラファールを開発し、世界第3位のシェアを誇るが、欧州の『イグニッション・プラン』には除名され、第三世代機を開発出来ていない現状にある。

日曜日、自室のパソコンでデュノア社に関することを調べていたが、どうにも悲惨な状態であること以外、分かることはない。

それもそうか。愛人だとか偽装だとかがネットに書かれてる訳がないよな。

 

「気にはなったから調べたが……どう考えてもデュノアを救う方法があるとは思えない」

 

一日経てば、苛立ちも落ち着くというもの。

現状、俺がデュノアにやれる事なんて一つも無いが、将来的な面でIS企業の情報は多い方が良い。

そう思って調べたが、現実とは非情であった。

 

「千冬は会議だし…コーヒーでも飲むか」

 

パソコンの履歴を消し、電源を落とす。

そのまま、キッチンに移動してコーヒーを淹れようとしたときに、ドアが叩かれ来客を告げる。

 

「誰だ?」

 

「本音だよぉ〜」

 

チェーンをかけた状態で扉を開けると、相変わらずダボっとした服を着ている本音が立っていた。

ん?何か約束でもあったか。これと言って思い出すものはない。

 

「たっちゃんがね〜お話したいって〜」

 

「……そういやいつか話そうみたいな感じになってたな」

 

すっかり忘れてたやり取りを思い出す。

本音に待っててくれと伝えて、簡単に着替える。休日だから、制服じゃなくて良いだろう。

生徒会室へと案内されながら、本音と話す。

 

「しかし、なんの話だ?」

 

「さぁ〜?みんなで、お菓子でも食べるのかなぁ〜」

 

「それ、俺が呼ばれる意味ないだろう……」

 

「えー?だって、あかやんと食べた方が美味しいよぉ〜」

 

お菓子が食べたいなら、神楽と一緒に用意しやるから。

なんで生徒会長に呼ばれるのか頭を捻りつつ話すが、となりの能天気な本音によって俺の考える気力は急速に失われていった。

 

「まぁ、いいか。お菓子パーティーなら喜んで参加しよう」

 

「わーい、お菓子〜」

 

本音や神楽と一緒にいる時間が長いせいか、お菓子好きになってしまった。

この前、神楽がお腹周りを触って、目が死んでいたが……きっとそういう事なんだろう。

あれ、俺は大丈夫か?

 

「どうしたの〜あかやん?」

 

本音が俺の前に出て、キョトンと頭を傾げる。

しまった。余計な心配をさせてしまう。

 

「いや、大丈夫だ」

 

千冬と訓練で身体動かしてるから、チョコやらアイスやらのカロリーは消費しているはず。

そんなこんなで、生徒会室に到着する。扉の前で、ノックでもするかと思って、手を伸ばす。

 

「連れてきたよぉ〜」

 

本音がガチャっと扉を開けるから、俺の左手が行き場所を失ってしまった。

 

「お?お?〜」

 

行き場を失い、上がったままの左手を振り返った本音がキラキラした顔でみる。

なんか、態とらしく声まで出してるんだけど。多分、これが正解かな。

スッと本音の頭の上に左手を置き、左右に撫でる。

 

「連れてきてくれて助かる」

 

「えへへ〜〜」

 

よし、正解だ。

連れてきてくれた礼と褒美で頭を撫でると、嬉しそうにする本音。パタパタと動く、尻尾が幻視する。

 

「……入り口で何をしてるんですか」

 

背筋に寒気が走る。声が聞こえた方向に、俺は油の切れた機械のように首を向ける。

そこには、あの時見た本音にそっくりな人が絶対零度の視線を俺に向けながら立っていた。

 

「あ、お姉ちゃん〜」

 

トコトコと本音が歩いていく。

姉?どうりで、似てるわけだ。

 

「こうして、顔を合わせるのは二度目ですね。布仏虚です、本音が世話になっていますね」

 

絶対零度の視線は変わらないが、自己紹介をしてくれる。

別に女尊男卑と言うわけではなさそうだけど……本音か。姉として妹と仲のいい男は警戒するってところか。

 

「どうも。すでに知ってるとは思いますが、西村赤也です」

 

礼をして俺も自己紹介をする。

席に座っているように誘導され、本音と布仏先輩は生徒会室を出て行った。その時に、本音がお菓子ぃ〜と言っていたのが印象に残っている。しばらく、布仏先輩が淹れてくれた紅茶を飲みつつ、時間を潰していると生徒会室に誰かが入ってくる。

 

「ごめんなさい。待たせたかしら?」

 

水色の髪の女性が入ってくる。

更識楯無。この学園の生徒会長その人だった。

 

「少しは」

 

「もうっ、そこは今来たところって言うところよ?」

 

茶目っ気たっぷりの動作と言葉。

だが、俺にはどこか無理をしている人にも見える。

 

「それ、デートか何かで使う言葉で、部屋指定して呼んだ人間に使う言葉ではないかと」

 

俺の正面へと移動していく生徒会長を視界の中心に抑えつつ、何があっても動けるようにはしておく。

本音が信頼している人だから、大丈夫だとは思うが…この人の雰囲気が絶望的に信用できない。

 

「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。ほんとに、ただ話をしたいだけだから」

 

対面に座って、にっこりと笑う生徒会長。

ふぅと溜息を吐いてから、目線を合わせる。

 

「それで、どんな用件ですか?」

 

「もうちょっと楽しく話に付き合ってくれても良いんじゃない?」

 

「そんな仲でもないでしょう。俺と貴女は」

 

俺の発言の後、しばらく沈黙が訪れる。

 

「…そうね。なら、単刀直入に聞かせてもらうわ」

 

雰囲気が変わった。

思わず、姿勢を正してしまうほどの圧力を感じる。

 

「西村赤也くん。君は、学園の敵?それとも味方?」

 

質問の意図が分からない。俺が学園の敵か味方かだって?

俺に学園をどうこうできる力なんて微塵もないぞ。

 

「その顔を見た限り、私の言っていることが分からないようね」

 

なら、説明するわと続けて、質問の意図を教えてくれる。

簡単に要約すると、天災兎のモルモットとして入学し、お世辞にも褒められた言動ではない俺を警戒しているとのことだ。

 

「貴女の気にすることも分かりますが……そもそもなんで警戒している人物とこうして話そうとしたのですか?

俺と貴女では力量差が違いすぎる。裏であっさり処理することも出来たでしょうに」

 

今はこの右目があるから、織斑の時のように、何か隔てた空間からいきなり現れない限り、不意を突かれないとは思うが、千冬のように見えていても意味がない攻撃をされれば簡単に死ぬし、それ以前から俺を殺す機会なんて山ほどあったはずだ。

それをせずにこうして、話をする理由が俺には分からない。

 

「そうね……こうして、話す気になったのは本音ちゃんが原因よ。

あの子が貴方の為に無茶をした事は見ていた通りよ。技術者であって操縦者じゃないあの子が私にあれだけ立ち向かう気力を与えたのは、何を隠そう貴方なの。その身体のことを知ってから、死ぬ物狂いで特訓と私に対する対策を組んでたのよ」

 

「本音……」

 

改めて感謝と嬉しさがこみ上げてくる。

 

「そうやって優しい顔もできるのね。だから、話す気になったのよ」

 

「そうでしたか……俺は少なくとも学園に仇を成す事はないかと思います。

モルモットと言っても、兎からの接触はありませんし、俺も居心地が良い場所を失うつもりはありませんから」

 

俺の言葉がこの人にどこまで信用されるか分からない。

ただ、間違いなく俺の本心を告げる。

じっと俺の奥底を見るような視線を貰いつつ、再び沈黙が支配した。

体感では10分以上。実際には、1分少々で生徒会長が口を開く。

 

「西村くん、貴方自身は信用できても貴方を取り巻く情勢が信頼できないわ。

だから、変に誤解せずに受け取って貰いたいんだけど、生徒会としては貴方を信用するけど警戒は続けさせて貰うわ」

 

導き出された結論は、俺にとっても都合の良い結果だった。

具体的な後ろ盾のない俺は、どう足掻いても力に欠ける。警戒と言う名の庇護が与えられるのなら、それは喜ぶべき事だ。

 

「分かりました」

 

感謝の意味も込めて座った状態ではあるが、深々と頭を下げる。

 

「気にしなくて良いわ。さてっと、堅苦しい話はここまでね」

 

身体を伸ばして、こちらを見る生徒会長の雰囲気は元に戻っている。

俺も喉が渇いたので、紅茶を飲み干す。

 

「学園には慣れた?」

 

「まぁぼちぼち。本音や神楽のお陰で、気楽に過ごしてますかね」

 

「好きな子とかできた?」

 

言葉と共に開かれた扇子には、『興味津々』と書かれている。

この人、距離の詰め方が上手いというかグイグイくるというか。

 

「まともに話したのが初めてとは思えない距離の詰め方ですね」

 

「まぁまぁ。ほら、どうなの?」

 

「いませんよ。というか、そんなことを考える余裕もないですし」

 

何より、俺の身体はこの先も機械に呑まれていくだろうし、捨てた命だと思っているせいかあまりそういった感情が湧いてこない。

本音や神楽を名前で呼んだ時は、恥ずかしさはあったが、そこまでだったし。

正直、恋愛感情を認識したら、俺はどうなるのだろうか。

 

「これはどっちも重症ね……」

 

生徒会長が何か呟いたが俺には聞き取れなかった。

 

「そう言えば、生徒会長。俺の身体のこと、ご存知で?」

 

さっきしれっと流してしまったが、俺の身体を知っている口ぶりがあった。

本音は生徒会長に教えたとは言ってなかったし。そういや、千冬もなんか知ってたな。俺が意識失っている間に学園関係者にはバレてる?

 

「知ってるわ。その右目の事もね。

生徒会長だもの。生徒の把握は大切でしょ?それと、そんな堅苦しい名称で呼ばなくても良いわ。楯無、もしくはたっちゃんでも可」

 

ばれてーら。

まぁ、当然か。調べるよな、普通。

 

「じゃあ、たっちゃん先輩で」

 

本音の呼び方が頭の中で定着してしまった。

無意識で呼んでしまうより、本人の許可が出てるならこっちで呼ぼう。

 

「そっちを選ぶ人は久しぶりだわ……まぁいいわ、私も赤也くんって呼ぶけど良いかしら?」

 

「良いですよ。というか、関わってくる気満々ですねたっちゃん先輩」

 

「ふふっ」

 

笑みだけで返事されたわ…これ、絶対関わってくるわ。

まぁいいや。強力な味方が出来たと思っておこう。この人がどれだけ凄いか知らないけど。

この後、話をしてロシアの国家代表を務めてると聞いて、変な声が出たが俺は悪くない。

 




ある種、一夏より面倒な赤也の恋愛観。
果たして、彼が誰かを好きだと思った時、どういう行動を起こすのだろうか。私にも分からない。

凄い、気楽に呼んでますが楯無さんはヒロイン入りしない予定ですので(あくまで予定)

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