神様は残酷で気紛れだ   作:マスターBT

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ペア決定です。

大学が始まりましたので、今までの様な投稿スピードでは無くなりますが、ご容赦ください。


タッグマッチとは面白くなりそうだ

「そう言えば、真偽を聞きたいのですが」

 

月曜日、教室へと向かう途中で、神楽が何かを思い出したかのように俺の顔を見る。

 

「なんだ?」

 

「今回の学年別対抗トーナメントで、優勝したら男子三人の誰かと付き合えるという噂です。

出所は不明なのですが、赤也さんがこんな約束をするとは思えませんので」

 

男子三人……あぁ、デュノアの奴も含めてか。真実を知るとガバガバな男装だとは思うが、バレてないらしい。

付き合えるねぇ、そんな約束も契約もした覚えはないぞ。

というか、付き合う相手ぐらい自分の意思で選ばせろ。男子の地位が低すぎだろ、誰も疑問を覚えないって。

 

「お〜それなら、確か発端はしののんのはずだよぉ〜どうして、今の形になったのかは知らないけどね〜」

 

朝から俺のあげたポッ○ーを食べてる本音が、噂の出所を知っているらしい。

これ、典型的な尾ひれがついて大元が不明になったやつだな。

 

「篠ノ之さんが?……あぁ、織斑さんに何か言ったのが広まったのでしょうね。

御愁傷様です。篠ノ之さん」

 

剣道部という事で篠ノ之と付き合いのある神楽が、何やらお悔やみを告げている。

もっとも、篠ノ之の奴が剣道部に顔を出す回数は少ないらしく、先輩達からかなり文句を言われているらしい。

放課後、毎回織斑を追いかけてたらそりゃ、行く暇ないわな。

教室に着き、扉を開くと目の前に織斑とデュノアが立っていた。

 

「……入り口で邪魔なんだが?」

 

「……あぁ、すまない。どくよ」

 

俺と織斑の視線に感情は乗せられていない。

ただ、邪魔だからと告げ、それを事務的に対応しただけだ。

そんな明らかに何かがありましたという空気を生み出す俺と織斑に教室の空気が悪くなるが、俺の知った事ではない。

 

「…っとごめんね。少し、ぼーっとしてた」

 

「……気にするな」

 

席に行こうと思い、動いたらデュノアとぶつかってしまった。

わざとぶつかって嫌がらせ……なんて陰湿なことをする奴には思えなかったが。

席に座り、一息吐くとズボンのポケットから何かが擦れる音がした。何か入れていたか?と思いつつ、ズボンのポケットに手を伸ばすと折りたたまれた紙が出てくる。

 

「あかやん?」

 

本音がポケットに手を突っ込んだまま、動かない俺を心配してか声をかけてくる。

 

「ん?どうした、本音。ポ○キーのおかわりか?」

 

「そんなに食い意地張っていません〜」

 

「あら?本音さん、いきなり部屋に押しかけて、お菓子を強奪したのはどこの誰でしたっけ?」

 

俺の咄嗟の返答に本音と神楽が反応してくれる。

しばらく話を続け、先生達が教室に到着し、授業が始まる。

となりの本音と、教壇に立っている山田さんにバレないように教科書を立てて、ポケットに入っていた紙を広げる。

 

『放課後に食堂裏で話をしたい。シャルル』

 

は?デュノアが俺に話だと?

しかも、人気の無い場所をわざわざ指定して。視界内のデュノアは至って普通に授業を受けている。

はぁ、流石に考えなんか読めないか。

デュノアの突然の行動で、授業にはあまり身が入らず、頭に有難い千冬の出席簿を食らう羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……右目に意識を集中さておくか」

 

時間は放課後。

食堂裏で、壁にもたれ掛かりながらデュノアを待つ。右目で視野を広げているから、余程のことがない限り不意を突かれる事はない。

そんな俺の杞憂も徒労に終わり、デュノアが普通に歩いてくる。

 

「来てくれるとは思ってなかったよ」

 

「……何の用だ?悪いが、俺はお前に助力する気なんぞサラサラないぞ」

 

感情の読めない顔をしているデュノア。不気味に思いつつ、俺は要件を聞く。

 

「ねぇ、取引。しない?」

 

「取引だと?」

 

「うん。僕はデュノア社に君のISデータを渡す。その代わり、君はデュノア社のテストパイロットになるんだ。

君にフランスの一大企業が、後ろ盾になってくれるよ」

 

……結局、こいつは動こうとしないのか。

確かにその提案は、俺にもデュノアにも利がある。だが、デュノアが企業に籍を置くのは変わらないし、俺も娘を男装させる様なキナ臭い組織に所属させられる。その後、何をされるか分かったもんじゃない。

だから、俺の結論は決まっている。

 

「断る。俺は言ったはずだ、諦めている様な奴に助力はしないと」

 

俺の返答を聞くと、両手で握り拳を作るデュノア。

 

「……諦めるな……君はそういうの?

じゃあ、僕はどうすれば良いのさ!?母を失って、生き方なんて全く分からないのに!」

 

感情を露わにするデュノア。

怒りか、諦観くる嫉妬か。少なくとも、俺に判断のつく感情ではない。

 

「甘ったれるなよデュノア。そうやって、自分は辛いんだ、苦しいんだってアピールすれば誰かが助けてくれると思ったか?

織斑の奴で、麻痺してるかもしれないが、現実はそんなに甘くねぇ。

助けてって誰かに手を伸ばしたって払いのけられるのが、現実だ。分かりやすく言ってやる。お前は、スタートラインにすら立ってないんだよ」

 

この世の中でどれだけの人間が、助けてと手を伸ばして払いのけられ、人生をぐちゃぐちゃにされてると思ってるんだ。

 

「全員が全員、そうやって生きられると思わないでよ……」

 

「…一人の男の話をしてやる。

そいつは、至って普通の家庭に生まれた。父と母、それに姉と妹の五人家族だ」

 

突然、関係のない話をし始めた俺に俯いていた顔を上げ、不審げな表情を見せるデュノア。

そのまま、終わるまで黙って聞いてろよ。

 

「普通の幸せを享受していた。だが、ISが現れ、女性である母と姉妹は見事に風潮に染まった。

男の父親は、迫害を受ける家が嫌になり蒸発。残された男に悪意は集中した。

当時は、一人で生きていく事が出来ない年齢だった男は悪意に只管に耐えた。家族から離れて生きる術を知らなかったからだ」

 

「それって……」

 

まるで今の自分の様だと思っているデュノア。

俺はその顔を見つつ、話を続ける。

 

「悪意を耐えた男は、成長し高校生になった。

その時、男は決心して悪意の塊である家族から離れる事を決めた。家族に隠して、実家から遠い高校を受験し、一人暮らしをする為に。

そして、高校に合格し、いよいよ望んだ自由が手に入ると、そう思った男はテロに巻き込まれたとさ」

 

「そんな……折角、自由が手の届くところに来たのに……」

 

まるで我が事の様に悲痛な顔を浮かべるデュノア。

俺のことなんだけど……少し恥ずかしい気持ちになる。

 

「これで分かったろ。自分で自由を手に入れようと動いた奴でさえ、あっさりとその自由は手から離れるんだ。

お前の様に自分から動く気のない奴が、自由を手に入れようとしてみろ。最悪、周りを巻き込んで誰も望まない結果を生み出すぞ」

 

俺は兎に会えたから、こうして生きている。家も一般の家庭でなんの権力もなかったから、権力による被害を受けずに済んだ。

だが、デュノアが俺にとっての兎の様な奴に会えるか分からないし、家は権力のある家だ。最悪、周りを巻き込む。

 

「……一夏を頼ってても無駄ってこと?」

 

「それは知らん。だが、ただおんぶに抱っこじゃあ詰むぞ。

特記事項だって万能じゃない。ルールの裏ってのは、確実に存在している。口八丁に長けた国や企業のトップがその抜け道を使う可能性は幾らでもあるからな」

 

何が、助力しないだ。なんだかんだ、口を挟んでしまっている。

同情でもしてるか俺は。だが、それだけだ。これ以上の協力はしない。

無言で俯いているデュノア。

 

「…用件が終わったなら、これで失礼する」

 

返事をしないデュノアを放置しつつ、俺は食堂裏を後にした。

はぁ、こんな疲れる話をするぐらいなら、まだオルコットと競ってた方がマシだよ。

折角だから、食堂で甘い物でも食べるか。

そう思いつつ、食堂に入ると女子たちの視線が勢いよく、俺に集まる。

 

「え?」

 

俺が言葉を発したのが合図となったのか、立ち上がり駆け寄ってくる女子たち。

手には何かの紙も持っている。

 

「西村くん!私とペアを組んでください!!」

 

「抜け駆けはズルいわ。私も!!」

 

「「「「お願い!!」」」」

 

何がなんだか分からない。

だれか説明を頼む。視線が彷徨ってる俺の様子に気づいた一人が紙を見せてくれる。

 

「えーと、なになに……『学年別トーナメントはより実践的な模擬戦闘を行う為、ふたり組での参加を必須』…マジか」

 

どうしろと?ふたり組で戦うってことは、連携を考えないといけない。

周りを囲んでいる女子たちに知り合いはいない。どうやら、本音も神楽も別のところにいる様だ。

 

「ちょっとよろしくて?」

 

頭を抱えているところに、どこかで聞いた言葉と俺の神経を逆撫でする優雅な声が、はっきりと聞こえてきた。

女子の群れがモーゼの海割のごとく、裂けてその間を少し怪我をしたオルコットが歩いてくる。

 

「優雅さの欠片もない姿だな?オルコット」

 

「えぇ。鈴さんと共に少々、ドイツの軍人に手を焼きましたので。でも、ご心配なさらずに。

わたくし、セシリア・オルコットは健在ですから」

 

髪をふわりとかき上げながら言うオルコット。

その様子から十二分に分かるわ。

 

「で、何の用だ?」

 

「この状況でわたくしが西村に声をかける理由なんて、分かりきっているでしょう?」

 

言いながら差し出されるエントリーシート。

すでに、オルコットの名前は書かれている。

 

「…俺と組むのか?」

 

「えぇ。わたくしの機体は遠距離特化。貴方の機体は近距離特化。

相方としては最高でしてよ。それに、わたくしは貴方の、貴方はわたくしの戦い方をよくご存知のはずです」

 

オルコットの言葉に思わず、口角が上がる。

そりゃそうだ。俺はこいつには負けたくないと戦い方を頭に叩き込んであるし、口ぶりから察するに、オルコットは俺対策の動きを積んだ様だ。それなら、俺の戦い方と言うものをよく知っているだろう。

ただ、一つ気になることがある。

 

「その理由だけが全てか?」

 

近接特化という面なら織斑だって条件を満たすし、好きな相手と組んだ方がアピールになるだろう。

織斑に恋心を抱いているオルコットが俺と組む理由がそれだけな訳がない。

 

「……わたくしの気持ちに決着をつけるには、一夏さんと戦わないといけませんから」

 

そういう理由か。

少しばかり、オルコットとの勝負を楽しめないのは残念な気持ちもあるが、俺もラウラを倒すという目的がある。

それなら、代表候補生のオルコットと組むのが最適解か。

 

「納得した。良いぜ、オルコット。お前と組んでやるよ」

 

「ふっ、当然ですわ。むしろ、わたくしと組む以外の選択肢があると思いまして?」

 

左手でエントリーシートを受け取り、右手でオルコットと握手を交わす。

周りの女子から落胆の声が聞こえる。

さてと、これは学年別トーナメントが楽しみになってきた。

 




セシリアと赤也ペアです!
なお、互いに恋愛感情は皆無の模様。

ラウラと鈴、セシリアのイザコザは、赤也がその場にいなかったので全カットになりました。
鈴は原作通り、セシリアは作中でも書きましたが、少しの打撲だけです。ごめんよ、鈴ちゃん。

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