神様は残酷で気紛れだ   作:マスターBT

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あれ、俺はラウラ戦を書こうと思っていた筈だ。どうして、こうなった?
全ては、天啓が降りたのが悪い。


コネクションは大切だよな

織斑・デュノアペアを破り、順調に勝ち進む俺たち。このペースで行くと、俺の目的であるラウラとの戦いは、昼休み後の準決勝で行われる事になるだろう。

 

「で、これ何?」

 

「コネクション作りの一環だと思いますわよ」

 

4回戦以降から、厳重な警備のもと、各国の重役達と話をする機会が与えられた。

とは言え、専ら三年生や二年生の為に用意されてる場所であり、一年生の姿はほとんどない。

いるのは代表候補生と俺か。織斑とデュノアは、一回戦敗退で此処に来る権利がない。

はぁ、出来れば俺も何処かに行きたいんだが……オルコットとたっちゃん先輩が派遣してくれた黒服さんがいるから逃げられねぇ。

 

「……ん?あの人は」

 

「どうかいたしまして?」

 

「すまん。少し、離れるぞ」

 

オルコットの答えを聞かず、俺は見つけた人物に歩み寄る。黒服さんが付いて来るが、これは致し方ない。

というか、たっちゃん先輩なら真実知ってそうだが。

俺が歩いて行くと、会談している重役達が寄って来るが、無視し目的の人物の前に立つ。

顎鬚を生やした厳格なその男は、俺が近づいて来たことに驚き、目を見開いている。

 

「どうも。俺に見間違いがなければ、デュノア社のアルベール・デュノアさんですよね?」

 

「そうだが……何か用かね?二人目の男性IS操縦者君」

 

じっと彼の目を見つめる。

疲れが色濃く見えるが、その目は澄んでいる。ふむ……娘を男装させて送り込む奴なんて、濁りきった目をしてると思ったんだが。

予想が外れた。この人と話してみるのも悪くないかもしれないな。

 

「少し、話がありまして。此処では、なんですから別室で」

 

「……良かろう。私に貸し出された部屋がある。まだ、試合は先なんだろう?

そこの黒服を連れて来て良いから、来ると良い」

 

「どうも」

 

アルベールさんが部屋の外へと歩いて行く。

戸惑った顔の黒服さんに、手を合わせ謝罪し、その後を追う。

 

『何をするおつもりですの?』

 

プライベートで通信か。ビックリするからやめてくれよオルコット。

 

『少し、話をするだけさ。試合には間に合うようにする』

 

『はぁ、止めても無駄そうですわね。適当に誤魔化しておきますから、行って来なさいな』

 

『おぉ…お前が甲斐甲斐しいとか気色悪いな』

 

『殴りますわよ?』

 

映像のやり取りはしてないが、これ絶対目が笑ってないな。

言葉の節々にも怒りが乗ってるし。

アルベールさんに付いて行くと、一つの応接室に案内される。仕事に必要な道具や書類が机の上に置かれているだけで、普通の応接室だ。

 

「座りたまえ」

 

「失礼します」

 

ソファに座り、対面に座すアルベールさんと互いに視線を合わせる。

アルベールさんは、ふむと一言呟き、口を開く。

 

「さて、用件は何かね?心配しなくても、此処に盗聴器や録音機械などはないよ」

 

やはり大企業の社長、雰囲気だけで圧倒される。

千冬との訓練を積んでなければ、目を回してたかもしれないな。

 

「シャルル・デュノアさんについて、聞きたい。なぜ、男装させて入学を?」

 

俺の言葉に髭を触り、溜息を吐くアルベールさん。

やはり、可笑しい。俺たちのデータが欲しくて、デュノアを送り込んだのなら、男装がバレた事実を知ってもっと派手に動いても良いはずだ。それを溜息一つで済ませたか。

 

「……娘は元気かね?」

 

「自分の置かれている状況に不満はあるようですが、元気ですね。俺は彼女とほとんど関わっていませんが」

 

「だろうな。君の雰囲気はそんな感じだ、私に接触したのは娘を想ってくれての事ではないのだろう?」

 

この人はさっきから俺の質問に答えてくれないな。まぁ、何かあるのかもしれないし、答えておくか。

俺の力はこの人に遠く及ばない。

 

「まぁそうですね。ただ純粋に貴方に興味を持ったからです」

 

「私にか?娘の事実をネタに脅すつもりかね?」

 

微塵もそんなことは思っていない顔で言ってくるアルベールさん。

はぐらかせれてる訳ではなさそうだが、本題に入ってくれない。

 

「そんな事しませんよ。それで、俺の質問に答えて頂きたいのですが」

 

「おっと、そうだったな。君は、少しでも触れたら壊れてしまうけれど、大切なものは側に置いておくかね?」

 

また質問か。でも、これは本題に繋がりそうだな。

 

「そうですね……俺は側に置いておきますかね、近くにあれば壊れないように守る事が出来ますから」

 

大切なものは手の届く範囲にあってほしい。

自分の知らないところで壊れるのは、とても嫌な気分になるし無力さを感じるからな。

 

「私は君とは逆だ。例え、もう見ることが出来なくなっても大切なものは、壊れないように安全な所に離しておく。

これが君の質問への答えだ。これで、十分伝わるだろう」

 

……あぁ、これはデュノア社も面倒な事になってるのな。

規模が大きいほど一枚岩で無くなるとは聞いたが、本当だったとはね。

益々、面倒だなこれ。アルベールさんも、不器用だしデュノア社自体も大変だし、当のデュノアは動く気ないし。

 

「はぁ、大変ですね。社長は」

 

「君のような若者に心配されるほど腐っていないさ」

 

ニヤリと笑みを浮かべるアルベールさん。

仏頂面を短時間で見慣れた所為か、違和感しか感じねぇなおい。

ただまぁ、この人は悪人ではないようだ。それだけははっきりとした。

 

「一つ、提案なんですが」

 

「何かね?」

 

「サードオニキスのデータと俺の生体情報を提供します。俺は、現状どの国や企業にも所属していませんから、手続きも簡単です。

その代わり、貴方の娘さんが自分で行動を起こしたら、それを支援してやってください」

 

俺の提案に目を丸くするアルベールさん。俺の後ろにいる黒服さんもかなり慌ててる。

 

「私としては魅力的な提案だが、君の利点がないぞ?」

 

そうだ。俺はデータを渡し、その代わりデュノアを助けるような行動をしている。

だが、これは断じてそんなつもりはない。その側面があるというだけで、俺の目的はそこじゃない。

 

「いえ、十分にメリットはありますよ。

貴方はとても良い人だ、娘の為なら泥を被る覚悟すら決めている。俺への貸しが出来たという事実を無には出来ないそうでしょう?」

 

ここまでの会話でこの人の覚悟と、人格は理解した。

凄まじく不器用ではあるが、人としては腐っていない。むしろ、立派な方だ。

企業のトップで、色々揉まれている筈だが、この人の善性は失われていない。そんな人間が、メリットが多い提案を受け取り恩義を感じない訳がない。

俺は、アルベールさんのその恩義を、自分が困った時に使える物にしたいだけだ。

俺の話を聞き、アルベールは笑い出す。そりゃ、腹を抱えて目に涙が浮かぶほどの大笑いだ。

 

「やれやれ、君は随分と豪胆な精神を持っているようだ。それと、鋭い観察眼もな」

 

机にあった書類の一つを俺に見せてくる。

なんだろう、図面か。ISの設計図のようだな。

 

「実は第三世代機の開発は既に始まっている。君が提供してくれるデータがあれば、一気に開発は進むだろう。

君がくれる恩義はとても大きい。私の一生を賭けて返せるかどうか分からないぐらいにはな」

 

いやはや困った困ったと続けるが、その顔には笑みが浮かんでいる。

なんだろう。思っていたより、貸しがデカくなりそう。

 

「君の提案を有り難く受け取ろう。娘の動き次第ではあるが、私に出来る最大限の助力を約束する。

もちろん、君にも個人的に色々支援するさ」

 

そう告げるアルベールさんの顔には、はっきりとした覚悟見て取れた。

 

「ありがとうございます。アルベールさん」

 

『時間になりますわよ。西村』

 

ここまで話、どうやら俺の時間が来てしまったようだ。

 

「時間はまだある。余裕がある時に頼むさ。赤也君」

 

「そうですか。では、失礼します」

 

一礼して部屋を出て行く。黒服さんが慌てて付いて来る。

さてと、これで俺にも多少の後ろ盾は作れたかねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤也が出て行った後の応接室。

アルベールが一人、残されている。その顔には、笑みが浮かんでおり満足げだ。

 

「西村赤也君……経歴では判断のつかないところがあるようだ」

 

さてと、彼の試合でも見に行くかと動こうとした時に、来客を告げるノック音が響く。

 

「誰ですか?」

 

「轡木ですよ」

 

「く、轡木さん!?どうぞ」

 

その来客に慌てたように入るように告げ、アルベールはお茶を淹れる。

アルベールの慌てた声に笑みを浮かべながら、轡木が部屋に入ってくる。

 

「先程、西村赤也君と話していた事を教えてもらっても?」

 

「えぇ。わかりました」

 

アルベールは盗聴器や録音機械は無いと言ったが、隠しカメラがないとは言っていない。

応接室の映像は、リアルタイムで轡木に届けられている。

映像さえあれば、あとは追い詰めることが出来るという轡木の力量の高さが伺える。

アルベールは、轡木に赤也とのやり取りを隠さずに説明する。説明が進めば進むほど、轡木は笑みを浮かべていく。

 

「と、言うことが先程ありました」

 

「そうでしたか。それで、貴方はどうするのですか?」

 

「赤也君の提案通りにするつもりですよ。それで、貴方に頼みたいことがあるのですが」

 

「シャルル・デュノアさんが私に助けを求めたら、手伝ってあげて欲しいですかな?」

 

「その通りです。娘がどんな提案をするか分かりませんが、お願いします」

 

アルベールが机に額がつくんじゃないかと言わんばかりの深々と頭を下げる。

そこには大企業の社長の姿はなく、娘を心配する父の姿と男同士の約束を果たそうとする一人の漢の姿があった。

 

「……引き受けました。この轡木十蔵の持てる力を存分に使う事を約束しましょう」

 

「ありがとう……ございます……!」

 

あとは、シャルルいや、シャルロット・デュノアが行動を起こすのみである。

下地はこれでもかと言わんばかりに整えられた。

果たして、少女は自ら動くことが出来るのだろうか。

 




ほんと、なんでこうなった?
取り敢えず、次回はラウラ戦を書きます。

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