神様は残酷で気紛れだ   作:マスターBT

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コピー千冬戦決着です。


手を伸ばすぐらいなら、俺にも出来る

赤也とセシリアが、コピー千冬との戦闘を開始した頃。

本来なら、避難しなくてはならない重役の一人が、未だ避難せず彼らの戦いを見守っていた。

 

「アルベール・デュノアさん!早く、避難をしてください」

 

「ん?すまない、約束があるからここで待たして貰う」

 

痺れを切らして、避難を催促しに来た教師の言葉に対し、流すような声のトーンで椅子に座っている男。

アルベール・デュノアその人である。

足を組み、座っているその姿に万が一があれば、死んでしまうというのに恐れは感じられない。

その風格に飲まれる女性教員。彼女が無言で立ち去るまで、そう時間はかからなかった。

 

「ドイツも色々と黒い国だな。いや、このご時世真面な国家の方が少ないか。

イギリスのBT兵器は一定量から、難航しているという噂を話聞いたが……中々良い動きをしているじゃないか」

 

ドイツとイギリスにそれぞれ、言葉を漏らすアルベール。

だが、すでに彼の視線はその二人から外れ、西村赤也を見ていた。その視線は彼の一挙動全てを見定めると言わんばかりに注がれている。

 

「赤也君。君は言葉を持って私を動かした。ならば、次は力にて有用性を示して貰うぞ?」

 

その言葉とその姿は、力が劣り始めた企業の社長が持つ覇気ではなかった。

まぁ最も、言葉とは違い心の中では、例え弱くても力を貸すと思っているのだが。

 

「………お父さん…」

 

そして、そんな男の姿を見ていた金髪の男装女子の姿にアルベールが気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の神経をこれでもかと言わんばかりに研ぎ澄ます。予測が意味をなさなくても、右目の力はまだ使える。

動きの予兆を掴むだけで良い。あとは、必死で喰らい付くだけだ。

ふぅっと息を吐き、コピー千冬を見据える。

向こうに動きはない。なら、こちらから攻めるだけだ。加速しコピー千冬との距離を詰める。

刀の間合いに入った直後、重心がズレる。それと同時に予測に重なるように迫ってくる刀。

 

「うぉぉ!」

 

それを千冬が俺に見せてくれたように、手の置き場にし、自分の身体を持ち上げるようにして避ける。

当然、返しの攻撃が向かってくるが、それは避けない。避ける必要がないからだ。

オルコットの狙撃が、コピー千冬の顔面に当たり、その動きを怯ませる。その隙に、肉薄し、刀を持っている右腕をつかみ、輻射波動を放つ。

 

「うぉっ!?溶けた!!」

 

ベシャッっという音ともに、俺の掴んでいた右腕がドロドロになる。

おいおい、無人機の時みたいにパージするわけでもないのかよ。目の前で、再生していく右腕を見つつ俺はそんな感想を抱いた。

流石にずっと眺めているほどアホではないから、距離を取るがコピー千冬はそれに肉薄してくる。

至近距離で振るわれる刀を最悪でも、掠る程度に抑えつつ避ける。

 

「オルコット!」

 

「お任せを」

 

俺の言葉と同時に、ビットの攻撃と狙撃銃による計五本の光線がコピー千冬に突き刺さる。

このコピー千冬にラウラの意思があれば、避けたであろう攻撃。光線の全てが関節部を狙っている。

それを避けなかったコピー千冬は、動きを阻害され俺が一時離脱できる隙を作る。

 

「…はぁ…はぁ」

 

息が詰まる。呼吸が乱れる。

コピーであろうと、千冬が殺しにきているという事実は俺の精神衛生に優しくない。

それでも、やるしかない。師匠にやると宣言して、姉弟子に助けを求められて、ライバルの手まで借りて負けるわけにはいかない。

 

「……」

 

コピー千冬は、不気味にこちらを見ている。

オルコットの攻撃で受けたダメージも既に回復している。あの、ドロドロの装甲をどうやって突破するべきか。

そもそもなんであんだけ、ドロドロなのに装甲として成立してんだあれ?

 

「オルコット、ミサイルビットって予備はあるのか?」

 

「元々奥の手の一つですので、二発しかありませんわ」

 

「…ドロみたいだから吹き飛ばせないかと思ったが、二発じゃ火力不足か」

 

待てよ?腕を溶かして、輻射波動から逃れたという事はコピー千冬にとって輻射波動は脅威として成立しているのか。

それなら、アイツが溶かして回避する事の出来ない部分、胴体を掴むのが狙い目か。

ただ、ラウラがどこにいるか分からない。輻射波動で膨張死なんてさせたくないぞ。

 

「ぐっ…」

 

右胸周辺が痛みだす。この冷や汗が吹き出るような痛みは……よりよってこのタイミングか、サードオニキス。

思い出せば、ラウラとの戦いは自分をかなり追い込んで戦っていた。限界を超えていかなければ、勝てないと無意識に判断をしていたのだろう。そして、このコピー千冬。

俺が捻り出したところで、勝ち筋の見えない相手を前に集中してサードオニキスを動かしていた。

客観的に見れば、この状態が起きて当たり前だった。

 

「西村!?どこか怪我でもしたのですか!?」

 

オルコットが俺の様子に気づき、声をかけてくる。

心配するなという意味を込めて、左手を広げて突き出す。

それを見て、オルコットが不安げな表情を浮かべるが、一息吐くと同時に、真剣な顔になりコピー千冬の方に向き直る。

必死で意識が途切れない様に歯を食いしばる。

 

『生体反応を表示します』

 

急にサードオニキスの声が響き、右目にラウラがいるであろう場所とそこまでの深さが表示される。

俺を侵食し始めて、ついに俺が思っていた部分を読み取ったか?サードオニキス。

まぁ、良い。場所が分かれば、あとはコントロールの問題だ。

 

「オルコット……アイツの隙を大きく作れるか?」

 

「手持ちの武装を使い切ればどうにか……ってところですね」

 

つまり、一回だけのチャンスと言うわけだな。

失敗は許されない。

 

「ふっ…上等だ。お前のタイミングでやってくれ」

 

俺は俺で輻射波動のコントロールを始める。

最低出力では意味がない。あの装甲に阻まれる。だが、最大出力ではラウラごといく。

それなら効果範囲を、自分の右手周囲に合わせる。

対象に触れて放出していたものを、右手に纏う感じにコントロールする。イメージとしては、某ハンターの念の様な感じだ。

 

「……始めますわ」

 

オルコットがコピー千冬へと急降下していく。

ビットによるレーザーの雨を降らせながら、刀の間合いへと入っていく。当然、迎え撃つ様に刀を振るうコピー千冬。

オルコットは、ビットの全てをその刀を弾くに使う。結果として、コピー千冬の刀は、オルコットに当たる前に全てのビットを犠牲にして弾かれる。

 

「ここですわ!」

 

スカート部分に収納されている二発のミサイルビットをゼロ距離で、コピー千冬の顔面に打ち込む。

爆発とともに頭部が吹き飛ぶ。それでも、オルコットは止まらず、接近しながらチャージしていた狙撃銃で片足の膝から下を吹き飛ばす。

しかし、コピー千冬は左手にも刀を握り、その一撃がオルコットを吹き飛ばす。

 

「西村ぁ!!」

 

オルコットが頭部から血を流し、アリーナの土に汚れた身体で優雅さのカケラもなく声を荒げる。

これが合図だ。そう確信した俺は、瞬間加速でラウラがいるコピー千冬の胴体へと接近する。

輻射波動を纏わせた右手を胴体へと突っ込む。泥の様な装甲が面白い様に触れた部分が溶けていき、僅かにラウラが見える。

 

「ラウラ!」

 

声をかけるが、意識がないのか反応がない。

超至近距離で刀が振れないと判断したのか、コピー千冬が左手で手刀の形を作る。

勢いよく迫る左手が、サードオニキスの絶対防御を貫き、俺の脇腹に深々と刺さる。

 

「ガッ!?……」

 

思わず、身を引きそうになる。それでも、このチャンスを逃せば俺たちの負けは確定する。

右手をさらに押し込み、ラウラに触れるギリギリで輻射波動を解除する。

そのまま、ラウラへと手を伸ばすが、泥と脇腹に刺さる左手が邪魔をし、僅かに届かない。

 

「起きろ……ラウラ・ボーデヴィッヒ!!俺とお前は似た者同士だろ!

だったら、こんな千冬の偽物に飲み込まれてんじゃねぇ……テメェで抗ってみせろラウラぁぁ!!」

 

尊敬する師匠の紛い物なんて、俺もお前も嫌だろう。

俺もお前も強くありたいんだろう。なら、結論は一つしかない。目の前にこれに抗い続けるしかない。

 

「……全く……うるさい奴だ。貴様の声は暗闇の底でも聞こえたぞ」

 

眼帯が外れ、金色の瞳が俺を見る。

その目には初めて会話した時から、感じていた狂気はなく純粋に透き通っていた。

 

「ほら、手を伸ばせ。底から、連れ出してやる」

 

「……頼む。一人では暗闇は寂しすぎる」

 

僅かに空いていた距離がラウラの手によって埋まる。

俺はしっかりとラウラの手を握りしめ、コピー千冬から引きずり出す。

その瞬間、視界いっぱいに白い光が広がり、思わず目を瞑る。

 

『ありがとう。私の相棒を助けてくれて』

 

どこか凛とした声が頭の中に響き、俺は意識を失う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めはそれがなんなのか分からなかった。

薄暗い空間の中、白衣を着た科学者達が何やら動いていた。彼らが熱心にその視線を注いでいたのは、なんの暖かみのない鉄の中に培養液の様な物の中に入れられている沢山の赤ん坊だった。

俺は声を出せず、科学者達にも認識されていない。干渉することなんて一切、出来ないまま時間が流れた。

時間が流れていくと、赤ん坊の成長と同時に数が減っていき、ある一定の年齢に到達したのは、片手で数えられるぐらいだった。

その片手で数えられるくらいの人数も、さらに減っていき残ったのは一人だけだった。

その一人を俺は知っている。ラウラだ。

 

「ふん」

 

まだ眼帯をつけていないラウラは、軍事訓練でかなり優秀な成績を修めていた。

エリートの名を欲しいままにしていた彼女に、何かの手術が行われた。

聞こえてくる言葉の全てを理解した訳ではないが、ISの適合性を上げるものらしい。その結果が金色の左目だ。

ただ、ラウラはここから一気に転落していった。

 

「落ちこぼれ」

 

「出来損ない」

 

こいつらを殴ってやりたがったが、俺の手は簡単にすり抜けた。

そこから先は千冬に聞いた通りだった。

視界が真っ暗になる。何も、映る筈のない視界に、ラウラが現れる。

 

「土足で入ってくるな、西村赤也」

 

「俺のせいじゃねぇよ。というか、それはお互い様だろう?」

 

ラウラが現れたと同時に、俺は自分の内側を見られたと感じた。

この感覚はラウラも味わったのだろう。なら、お互いがお互いの過去をこの謎現象で見たのだろう。

 

「「お前が力を欲する理由が分かった」」

 

俺とラウラの言葉が重なる。俺の過去なんてラウラに比べれば、上を知らなかった分、絶望せずに済んだ。

だが、こいつは元々上にいて落ちた人間だ。無力を俺より強く感じただろう。

 

「私は初めは、強かった。だが、お前の様に初めから弱ければ心が折れていただろう」

 

「知らないから生きていられる事もある。

俺は逆にお前の様に、上を知ってから落ちたら耐えきれない」

 

お互いに歩み寄る。

ほとんど、ゼロ距離で同時に握手する形で手を動かす。

 

「私はお前に救われた。私は、お前の強さを知りたい」

 

「俺はお前を尊敬する。俺は、お前の強さを知りたい」

 

意味合いは似ているが、違う言葉を交わす。

同時に笑い出すと同時に空間にヒビが入り、ラウラの姿が透けていく。

 

「この不思議空間も終わりだ」

 

「なら、今度は現実で話そう。菓子でも食いながらな」

 

「ふっ、私は和菓子を所望するぞ」

 

なんとも緩い会話をしながら、俺の意識は再び失われた。

それでもしっかりと繋いだ右手の熱はいつまでも感じられた。

 




次回は、戦後処理的なアレになるかと思います。

評価をくれる皆様、感想を下さる皆様、ありがとうございます。
とてもこの作品を書く意欲が湧いてきます!

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