神様は残酷で気紛れだ   作:マスターBT

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事後処理とかその他諸々を詰め込みました。



なんだかんだ騒がしい周囲

もはや恒例行事と化した保健室の天井が一番最初に目に入る光景。

目を数回閉じたり開いたりし、上半身を持ち上げる。

 

「起きましたか。おはようございます、赤也さん」

 

「…おはよう。神楽」

 

俺とは縁遠そうな厚さのある本を閉じて、ベットの横にある小さな机の上に置く神楽。

 

「今度は、右胸の上部、背中の一部が侵食されました」

 

やっぱり侵食が進んでいたか……左手で右胸に触れると神楽の言ってた場所から熱を感じない。

これ、今更だけど臓器とか神経とかどういう状態になってるんだろうな。

 

「…どれくらい、寝てたんだ?」

 

「時間としては…そうですね。二日間ほどです。お寝坊さんですね」

 

クスリと笑う神楽。言葉通り、まるで子供に向けるような笑い方に恥ずかしくなる。

にしても、二日間か。侵食とあのラウラとのよく分からん会話が起きたのが原因か。

 

「事実だから否定できねぇ……そういや、本音は?」

 

こういう時は本音がいつもいる気がする。

いや、自惚れかもしれんが…まぁ、見舞いがいるのにこう言った事を気にするのは失礼か。

 

「本音さんは……ずっと『九尾ノ魂』を作るために、空き時間の全てを使ってます。赤也さん」

 

神楽が辛そうな顔をしながら、俺の右手を両手で優しく包む。

神楽の暖かさが右手から伝わってくる。だが、俺は逆に冷たさを与えているのだろう。

 

「あまり、ご無理をなさらないでください。本音さんは、寝る時間も惜しんで力を手に入れようとしています。

友人達が無理を見ているのは、結構辛いんですよ?二人とも、基本的やると決めたら、全然聞いてくれませんし」

 

ギュッと包まれている手の力が強くなる。それだけ神楽の気持ちを表しているのだろう。

確かに俺たちの仲で、荒事関連には手を出せないのは神楽だけだ。本音もいずれ、戦いに出るだろう。

そうなれば、神楽はただ俺たちを待つだけになる。

 

「…すまん。神楽」

 

俺には謝罪しか出来ない。

 

「私は無事を祈る事しか出来ません。ですから、しっかり戻ってきてくださいね。

いきなり姿を消したら……私が満足するまで殴りますから」

 

にっこり笑顔を浮かべる神楽は、その笑顔に心配や恐怖を全部押し込んで、冗談を告げる。

全く…こういうところは敵わないな。

 

「それは困るな。心配しなくても、本音と一緒に戻ってくるさ」

 

「嘘は許しませんからね?」

 

儚さを感じるそれでも美しい微笑みを魅せられ、顔が熱くなるのを感じる。

慌てて視線を逸らす。一瞬とはいえ、見惚れてしまった。

 

「青春しているところ悪いが、邪魔するぞ。起きたかね、赤也くん」

 

「「うわっ!?」」

 

慌てて、声のした方に視線を向けるとアルベールさんがひょっこりとカーテンから顔を覗かせている。

え、なんでこの人まだIS学園にいるの!?

 

「その顔な心外だな赤也くん。君のデータを貰うと約束しただろう。

全く、これからやる事が山積みだと言うのに。あぁ、これにサインを頼む。口約束ではなく、正式な契約としてな」

 

矢継ぎ早に言葉を並べられ、書類を押し付けられる。

神楽が完全に目を丸くしている。俺も理解が追いついていないが、書類にサインをする。

内容なんてほとんど読めてないけど、この人だし大丈夫だろう。

 

「ふむ。書けたようだな、では少し痛むかもしれんが許してくれよ」

 

俺の右腕にコードが何本か刺さる。神経が共有されているから、僅かに痛むが注射された程度だ。

アルベールさんがパソコンを弄る。しばらく、全員が無言の時間が続き、アルベールさんのパソコンからピコンという音が聞こえる。

 

「よし、終わりだ」

 

コードを引き抜きながら満足げに頷くアルベールさん。

 

「では私はこれでフランスに戻らせて貰う。

赤也くん、何かあればすぐに連絡してくれ。必ず君の力になろう」

 

「…あぁ、そん時なよろしく頼むぜ。アルベールさん」

 

「任せたまえ。それと、ありがとうと言っておくぞ」

 

準備を終わらせたアルベールさんと握手をする。

そのあと、アルベールさんは保健室を出ていく。なんか、初めて会った時より覇気に溢れてたな…いい事でも有ったのだろうか。

 

「えっと今の方は…」

 

「フランスのデュノア社、社長。アルベールさん」

「ええっ!?」

 

予想していなかった大物に驚き声を上げる神楽。

その様子が普段の神楽らしくなく、俺は笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「…入って良いか?ラウラ」

 

「きょ、教官⁉少々、お待ちを今すぐ開けますから」

 

肉体のダメージが回復しきっていない、ラウラが予想にもしていなかった来客に慌てながら、扉へと向かおうとする。

だが、ベットから立ち上がった位のタイミングで、扉が開き千冬が入ってくる。

 

「余り無理をするな、ラウラ」

 

まるでラウラが、そうすると分かっていたかの様な優しい笑みを浮かべる千冬。

 

「は、はい。では、この様な状態で失礼します」

 

自分に向けられた笑みに、為す術もなくベットへ倒れるラウラ。それを見て、千冬は近くの椅子を引き寄せ座る。

千冬がラウラに向けて何か言いたそうに口を開くが、それがハッキリとした言葉にはならない。

 

「えっと、教官?」

 

そんならしく無い姿に思わず、声をかけるラウラ。

ラウラの様子と声のトーンから自分が心配されていると悟る千冬。

 

「ふっ…弟子二人に心配されては立つ瀬がないな全く……」

 

「弟子とは…西村赤也のことですか?」

 

「そうだが、お前も私の弟子だぞラウラ。まぁ、赤也にそう言われて気づいたんだがな」

 

それまではただの教え子と一人としか見ていなかったと告げる千冬。

どこか吹っ切れた様に笑う千冬に、ラウラは一安心する。

 

「すまなかったなラウラ。私はお前に力しか教えられなかった」

 

そんな安心も束の間、頭を下げる千冬に困惑するラウラ。

 

「わ、私が今の様に居られるのは、教官が指導してくださったからです!」

 

「そう言ってくれるのはありがたい。だが、お前に教えた力は一方的過ぎた。

もっと色々な事を教えてやるべきだったよ」

 

頭を下げたままの千冬の肩は震えている。

 

「……教官。顔をあげてください」

 

ラウラにそう言われ、千冬が顔を上げる。

すると、彼女の視線に飛び込んできたラウラの表情は、満ち足りた優しい顔だった。

 

「私は貴女から学んだ事の全てが、間違いだったとは思っていません。

寧ろ、今、貴女に弟子と言われて嬉しさでどうにか何そうなのを抑えているぐらいです」

 

ラウラも赤也と同様に、千冬に幻滅することはない。

何故なら、彼女が間違えたと思っていても、自分を育ててくれたのは、間違いなく千冬なのだから。

 

「私はこれから西村赤也の強さを知ります。時間はかかると思いますが、その強さと貴女から学んだ力を合わせて、私なりの答えを見つけたいと思っています。教官、もし私が答えを見つけられたその時は、私と戦ってくれますか?」

 

随分と成長したと千冬は思う。

その一因に、赤也が関わっている事をなんだか不思議に思いながら、千冬はラウラと目を合わせる。

眼帯が外れ、赤と金の瞳が千冬を射抜く。そこには、力を求め過ぎていた淀みはない。

 

「…あぁ、その時は受けて立つぞラウラ。存分に、弟弟子から学んだ事を私に見せるといい」

 

「はい!」

 

好戦的な笑みとともに、返答する千冬に嬉しさを隠しきれていない声を出すラウラ。

 

「あ、私も弟子として認めて下さるのなら、私にも教鞭を振るって下さるのですか?」

 

「むっ、確かに赤也だけに教えるのは筋が通らないか。良いだろう、これからはお前も一緒に面倒を見てやる」

 

もし、赤也が居たら引き攣った笑みを浮かべているであろう約束が結ばれた。

それでも、千冬とラウラの嬉しそうな顔を見つつ、そっと溜息を吐くのであろう。そんな姿が千冬には想像できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体が動く様になり、2日ぶりの出席。

まぁ、保健室から教室に向かうだけだから、学校内を移動してるんだが。

なんだろう、すごく視線が集まってる気がする。いや、気のせい気のせい。

 

「おはよう」

 

気楽な感じで、教室に入り挨拶をする。すると、教室にいた全員の視線が集まる。

え、なにこのホラー。

 

「えっと……なに?」

 

「「「良かったぁぁ……生きてたぁ……」」」

 

「うぉい!?勝手に殺すな!!」

 

漸く喋ったと思ったら、勝手に殺されてたという。

まぁ、嫌われてるのは自覚してるけどさ……

 

「なんだかんだタフな西村が、2日間も来なければそう思うのも当然ですわ」

 

「平穏に生きたいんだがねぇ…」

 

「おそらくそれは無理かと」

 

スッと、目の前に立っていたオルコットが退く。

するとその後ろに立っていたデュノアが俺の視界に映る。

 

「うわぁ!?急に退かないでよセシリア」

 

「西村に話があるんでしょう?なら、早く話してしまった方が良いですわよシャルロットさん」

 

なんか知らん間に仲良くなってるな。

というか、デュノアの格好が女子の制服になってる?

 

「デュノア、その格好…」

 

「あ、うん。僕なりに頑張ってみたんだ。それと、僕は今、シャルロット・轡木だよ」

 

「…ほぅ、そんな度胸があったとはな。俺の目もまだまだ甘い」

 

てっきり織斑に頼りきりだと思っていんだがな。

それと、アルベールさん…娘を遠くにやりすぎでは?

 

「それでね…ありがとうって言っておこうと思って」

 

「お礼を言われる様な事をした覚えはないが?」

 

「君がそう思ってるのなら、それでも良いよ。でも、僕が言いたいんだ。ありがとう、赤也」

 

「そうか。なら、受け取っておく轡「シャルロットって呼んで?」いや、轡「シャルロット」話を聞いてくれ、く「シャルロット」……分かったよ。シャルロット」

 

呼ばない限り、RPGの村人の如く、同じ言葉を続けるシャルロットに根負けする。

くそ、視界の端で笑ってんじゃねぇぞオルコット。

 

「よろしい」

 

満足げに頷くシャルロット。

 

「仮にも恩人にする態度じゃないと思うんだが」

 

「えへへ。でも、僕も知ったからね。諦めないで動くことの大切さそれと、欲しかったものが手元に来る嬉しさも。

だから、僕はそう簡単に諦めないからね、赤也?」

 

シャルロットの目を見て悟る。アルベールさん、絶対、いらん事喋ったな。

はぁ、と溜息を吐くと同時に背後からの衝撃に少し、バランスを崩す。

 

「あかやんだぁ〜」

 

「本音さん、赤也さんは病み上がりなんですから」

 

俺の背中にぶら下がる本音と、本音を下ろそうとする神楽。

 

「突然、走り出したと思ったらこれなんですから……」

 

「俺は大丈夫だ神楽。ほれ、本音、飴食うか?」

 

ポーンと包装紙を外して投げ飴玉。後ろから、パクっという効果音が聞こえ、満足そうな本音の声が聞こえる。

本音用にポケットが飴で一杯の俺に死角はない。

 

「んー、美味しいぃ〜」

 

「それは何より。さてと、とりあえず席に着こう。入り口は邪魔になる」

 

本音を背負ったまま、自分の席へと向かう。

オルコットと神楽は、そのまま自分の席へ、シャルロットは俺に着いてくる。

すると、本音の後ろ。即ち、俺たちの後ろの席に見覚えのない席が二つ用意されている。その片方に、ラウラが座っている。

 

「ん?お前、その席だったか?」

 

「教官に頼んで席を変わった。隣は、シャルロットだぞ。再入学の形になったからな」

 

本を読んでいたラウラが視線をあげつつ、返答する。

あぁ、だからシャルロット着いてきたのね。

本音を俺の隣の席にゆっくりと、下ろし、俺も座る。シャルロットもラウラの隣へ座る。

 

「で、なんで俺たちの後ろに?」

 

「ふっ、私はお前が知りたいからな。この席なら、いつでもお前を見ることができる」

 

行動的ですねラウラさん。でも、言葉選びはしっかりして欲しいなぁ…

クラスの女子達が新たなネタを見つけたと言わんばかりに目をキラキラさせている。

 

「…まぁ、退屈しなそうで済むから良いか」

 

「嬉しいなら素直に嬉しいと言うべきだとお姉ちゃんは思うぞ」

 

「「「「お姉ちゃん…!?」」」」

 

ラウラの発言に俺を含め、クラスメートが固まる。

いや、なんて言ったラウラ?

 

「お姉ちゃん…?」

 

「そうだぞ。教官に師事を受けたのは私が先だ。これを姉弟子と言うのだろう?

なら、私は赤也のお姉ちゃんではないか」

 

俺の呟きにラウラが反応する。

誰だ、誰がこんないらんこと吹き込んだ!?

 

「誰からそう教わったんだ?」

 

「我が部隊の優秀な副官にだ!」

 

「だから…誰なんだよ……」

 

一回、ラウラの部隊には常識チェックのテストでも受けさせたらどうだ?

どうにか辞めさせようと足掻いたが、無理だったと報告しておく。

いつか、ドイツに行く機会があったら、覚えておけよ…副官…

 




これも全部、優秀な副官ってのが悪いんだ……

次回は水着選びか、一夏騒動か、まだ決めてません。

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