一、二ヶ月とはなんだったのか……とりあえず、楽しんでいただけると嬉しいです。
グリッドマン、面白いですね。
物が乱雑に置かれ、ありとあらゆる所へ伸びている配線。足の踏み場もないその部屋の中央で複数のモニターにそれぞれ、別のデータを入力している女性が一人。
目にははっきりとクマが浮かんでおり、投げ捨てられた容器には『栄養剤』と書かれている。
おそらく、まともな睡眠や食事を取っていない事が伺える。
だが、その顔に苦痛の感情はなく、寧ろ逆の笑みが浮かんでいる。全てを嘲笑う神の様な笑みが。
「モルモットとして、こーんなにも有用だなんてねぇ…」
複数あるモニターの一つには、『モルモット二号』と表示されており、様々なデータを秒単位で更新し、映している。
そのデータを右手で処理しつつ、動いていた左手が止まる。どうやら、一つの作業が完結した様だ。
「『紅椿』かんせーい!ふふっー、箒ちゃん待っててねーこの束さんお手製のISをプレゼントするよ!」
鎮座する紅いIS。天災が愛する妹の為に生み出した、『第四世代』IS。
性能で言えば、正しく現行ISの頂点に君臨する。
満足そうに紅椿を眺めている束の耳に、かなり独特な着信音が聞こえてくる。サイドアームで携帯を回収し、耳に当てる。
「やぁやぁ、箒ちゃん!何か用かな?かな?」
ハイテンションの束とは、真反対の声が返答する。
『姉さん…』
いや、返答と呼ぶには烏滸がましいただの呼び名。
「力が欲しい?いっくんを苦しめる誰かさんを、懲らしめる力がさ?」
『な、なぜそれを!?』
束の言葉に驚く箒。正しく、それが目的で彼女は姉である束に電話をしていた。
ーー姉の本質なんて知らないままに。
「アッハハ!そりゃ、分かるさ!大好きな箒ちゃんの考えだもの!
臨海学校の時に届けてあげる。楽しみにしててね!箒ちゃん」
そう言って、通話を切る束。
しばらくの沈黙が続いた後、束は大声で笑いだす。
「アハ…アッハハハハハ!そりゃ、分かるよ箒ちゃん!
君のその、自制心の無さ。気に食わなければ、子供の様に癇癪を起こす暴力性」
自分の妹に対し、あまりにも酷い言葉を並べる束。
「だって、そうしたのは束さんだもんね♪
うんうん、期待通りに育ってくれてて、嬉しいぞ束さんは!アハッ」
感情の一切が感じられないあまりにも冷え切った声。
そんな声で笑う束は酷く不気味で、恐ろしく見えるだろう。だが、そんな判断を下せる他者はこの場にいない。
「年に一度だけたった、一度だけ会える彦星と織姫。
ロマンがあって素敵だねぇ……でも、折角ならもっともっと過激な運命にしても良いと思うんだよ」
サブアームで操作していた二つのモニターが停止する。
「御誂え向きの名前をしてるから、君を使ってあげようか『福音』
モルモットの方は、あっちに任せるとして…ふふっ、いっくん、箒ちゃん楽しみにしててね?束さんからの贈り物」
アメリカ・イスラエル共同開発IS。『シルバリオ・ゴスペル』
銀の福音は、織斑一夏、篠ノ之箒らIS学園の人間達に何をもたらすことになるのか。
「ーー♪♪」
それは、神のごとく、歌う彼女にしか分からない。
「水着?」
「はい。本音さんは既に持っているそうですし、ラウラさんやシャルロットさんは二人で買いに行ったみたいで。
私だけ、余ってしまったのです。どうせ、赤也さんも持っていないでしょうし一緒に行きませんか?」
いやまぁ、確かに持ってないけどさ。決めつけは良くないと思うぞ神楽。
でも、せっかくのお誘いだ。受けることにしよう。
「良いぞ。少し待っててくれ」
この夏のクソ暑い時に、着たくはないが仕方ない。薄手のパーカーを羽織り、右手にのみ手袋をはめる。
IS学園の生徒達はなんやかんや慣れたが、俺の右腕は機械だ。普通、見てて気分の良いものではないだろう。
「そういや、外出届けは」
「既に出してきました」
「断られるパターンを微塵も考えてないな?」
「勿論。友人には甘いのを知ってますからね」
にっこり笑顔の神楽に返す言葉を無くす。
そんな厚い信頼を寄せてくれるとはね。本音が言ってたことも間違ってないのかもな。
「そうかい。んじゃ、行くか」
「はい」
神楽と一緒にショッピングモール『レゾナンス』へ向かう。
道中でたわいの無い話をしながら、僅かな移動時間を楽しむ。時々、鬱陶しい視線を向けられるが、被害はない。
そんなこんなで、レゾナンスの水着売り場に到着する。
「まぁ、分かっていたけど男性の水着は少ないな」
フロアの片隅に追いやられている水着売り場に悲しさを感じつつ、ため息を吐く。
「適当に買ってくるが……その顔はなんか言いたげだな。神楽?」
横でじっと俺を見つめる神楽。流石に恥ずかしいから、あんまり見つめないで欲しいのだが。
「折角ですし、貴方に水着を選んで貰おうかと」
「……え?」
「その反応は心外です」
そんな事言われても、だってあの神楽だぞ。
俺の友人で、右腕の事を知ってて、それでも気にせず俺に毒を吐く神楽が、俺に水着を選べと。
「水着は殿方の意見も大切と言いますし。ダメでしょうか?」
「うっ……分かったよ。選べば良いんだろう」
「ありがとうございます。赤也さん」
何処と無く嬉しそうに歩き出す神楽。まったく、敵わないな。
そっとため息を吐きながら後をゆっくりと追いかける。
その途中で誰かにぶつかってしまう。
「っとすみません」
「いえ、こちらこそ」
帽子を深めにかぶった金髪の女性だ。急いでいるのか軽く頭を下げて、すぐに歩き出す。
ふぅ、女尊男卑の変なやつじゃなくて助かったぜ。
ん?なんか落ちてる。名刺か何かか?
「あの、落とし……ってもう居ねぇ…」
拾って振り返ってみれば、もう先ほどの人物はいない。
どうしたものかと、拾ったものを見てみる。名前と勤めているであろう会社の名前が書かれていた。
「えーと、『国防企業、取締役、ガスト・ミューゼル』…聞いたこともない会社だな?」
連絡先も書いてないし…どうしようかこれ。
「赤也さん?早く来てください!」
「っと悪い!今行く」
とりあえずポケットに突っ込んで、神楽の元へ急ぐ。
今度は誰にもぶつからないように移動できた。そして、目の前に光景に驚き、立ち止まる。
「……こんなに種類があるのか…」
視界の全てが女性物の水着。
正直、舐めていた。こんなに種類があるものなのか。この中から何をどうやって選べば良いんだ。
「センス、期待してますよ?赤也さん」
「…分かってて言ってるだろう神楽」
「さて?なんのことでしょうか」
くっそ、惚けやがって。野郎一人で入るわけにもいかないので、神楽と一緒に店内に入る。
ざっと見てみるが、何がなんだかサッパリ分からない。
どうしよう。とりあえず、神楽に似合いそうな物を……ん?これなんてどうだ?
黒い色の水着を手に取る。種類?そんなの分からん!
「これなんてどうだ?クールな神楽に似合うと思うが」
「黒のハイネックビキニですか…試着してみますね」
俺が差し出した水着を受け取り、試着室へと入る神楽。
ん?あれ、これ神楽が出てくるまで俺放置されるのか。試着室近くで待機してようそうしよう。
パサッ、シュル。
意識していなくても神楽が着替えているであろう布スレの音が聞こえる。
ええい。煩悩よ去れ!
なんとも言えない時間が経過し、神楽が出てくる。
「どうでしょうか?」
ハイネックビキニと言っていたやつを着た神楽。
正直、かなり似合っている。神楽のスレンダーなスタイルの良さを引き立てており、黒色と言うのも神楽のクールさを更に感じさせてくれる。フリルが付いているのも、神楽らしい可愛さをアピールしている。
まぁ、何が言いたいかと言うと正直、見惚れた。
「…赤也さん?」
「…あ、あぁ。凄く似合ってるぞ、正直見惚れてしまった」
「そ、そうですか…ではこれにしましょう」
嬉しそうに微笑みながら、購入を決める神楽。
スッと試着室に戻り、先ほどより早く着替える。
「では、買ってきますね。次は赤也さんの水着を買いましょうか」
会計へ早歩きで向かう神楽。明らかにテンションが上がっている時の動きだ。
自分に似合う水着が買えて嬉しいのだろう。うん、万が一でも、俺が選んだものだからという事はないだろう。
「…何一人で頷いてるんですか?行きますよ」
「おぉ。すまんすまん、俺の水着を選ぶって言ったって男物の種類なんてないぞ?」
「良いんですよ。こういうのは、僅かでも選ぶ時間が楽しいものですから」
「そういうものなのか?俺には分からないな」
目当ての物を買ったら即帰ってたからなぁ…こういう楽しみ方はしてこなかった。
「…もしかして退屈でした?」
心配そうな神楽の声。
「いや、それなりに楽しんでるぞ。新鮮さがあるからな」
分からないが、それが楽しめない訳じゃない。むしろ、新鮮さがあって楽しめるってもんだ。
「そうですか。それならもっと楽しみましょう」
俺の返答が嬉しかったのか神楽が満面の笑みを浮かべる。
もう少しだけ付き合うとしますかね。
この後、俺の水着を選び、上に羽織るパーカーを買い、暫く神楽とレゾナンスを満喫した。
もう、色々と天災がアレな事になってる気がします…
今回、アナグラムというか何というかそんな感じのものに挑戦しました。
結論、難しい。そもそも、アナグラムになってるのか分からないです。
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