神様は残酷で気紛れだ   作:マスターBT

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遅くなりましたぁぁぁ!!
色々とトラブルが重なり、気づいたらこんなに月日が経過してました……



問題ごとが起きない筈がなかった

合宿二日目。

IS漬けになる一日だ。一般生徒でさえ、様々な武装の試験を行うというのに、専用機持ちは自分の専用装備まで待っている。

まぁ、俺にそんな装備はないので他の専用機持ち達には、どんまいという感想しか抱かないが。

 

「あかやん〜手伝ってぇ〜」

 

「俺が九尾ノ魂に何か出来ることはないと思うんだが…」

 

学園から許可を貰い、持ってきた本音の九尾ノ魂。

本来、整備課の先輩達が行なっているメンテナンスを本音一人でやっているのだから相当な負担だろう。

起動データの足りない九尾ノ魂のデータ集めを目的としていると聞いたが、学園のISを一人に貸し与えるとは中々に信頼されてるな本音。

まぁ、なにが手伝えるかは分からんが、友人の手助けをするとしよう。

俺がそう決めて本音の方へ歩き出そうとしたときに、それは現れた。

 

「ちーちゃ〜〜〜〜ん!!」

 

ドドドっと言う効果音と共に少し離れたところで立っている千冬目掛けて、向かっていく何か。

聞き覚えのある声だ。というか、俺が死にかけた時に聞いた声と同じだ。

普通の人には、見えないが俺の右目はその人物を拡大し教えてくれる。

 

「…兎。あぁ、これが篠ノ之束か」

 

死にかけの俺にサードオニキスを取り付け、俺をモルモットと呼ぶ稀代の天才。

立ち入り禁止であるはずの場所に入ってきているISの生みの親を見て、俺は自分でも無機質な声で呟いていた。

 

「…束」

 

「やぁやぁ、ちーちゃん!お久〜?

元気?元気だよね!ずっと、見てたから私は知ってるよ!えへへっ、昨日のモルモットに対するーー」

 

ブォン!っという音ともに、近くにあった打鉄のブレードをつかみ、千冬が振る。

篠ノ之束は口を閉じるが、笑顔のままそのブレードに手を伸ばす。

直後に、ブレードはパーツ毎に分解され、バラバラと地面に落ちていく。一瞬の分解だった。

この場にいる誰もがその工程を見れた人はいないだろう。

 

「あっぶないなーもうっ!ちーちゃんの愛は過激なんだから」

 

「…はぁ、覗き魔に向ける愛ほど無駄なものはないと思うぞ」

 

「そんなっ!束さんとはお遊びだったんだね!ちーちゃん、酷い!」

 

「そろそろ、黙れ束。……ほら、そこ手を止めるな時間は無限じゃないんだぞ」

 

篠ノ之束とノンストップで会話をしていた千冬が手を止めていた生徒に注意を飛ばす。

すでに、この場の全員が篠ノ之束という存在に飲まれていた。

旧知の仲の二人のやり取りだが、色々と異常すぎる。だが、俺はその行動より篠ノ之束の表情に疑問を抱いた。

あいつ、目だけが笑ってない。あれだけ、楽しそうに側から見れば無邪気にはしゃいでる様に見えなくもないが、その目は笑っていない。

 

「…それで、何しにきた束」

 

考えに耽っていると、千冬が話を進めようとしている。だが、その声のトーンは警戒一色だ。

 

「あれぇ、聞いてないの?まぁ、良いや!大空をご覧あれ!!」

 

篠ノ之束が空に指差すと同時に、俺の頭上から何かの落下音が聞こえる。

反射的に上を見ると、俺の真上からデカイ金属の塊が落ちてきている。

 

「本音!」

 

サードオニキスを展開し、近くにいる本音を抱きかかえ、急いで落下地点から離れる。

数秒後、ドスン!っという音が後方から聞こえた。

 

「…なるほどなるほど。反射神経はまずまずっと。うん、やっぱり実際に見て見るのも大事だね」

 

サードオニキスによって強化された聴覚が、篠ノ之束が小さく呟いた言葉を拾う。

態とやったのか……俺の近くに本音が居たのに。

 

「赤也!無事か!?」

 

「…大丈夫です、織斑先生。近くにいた本音も無傷です」

 

焦ったように声をかけてくる千冬に無事を伝える。

生徒が多いところから離れていたから良かったが、もし近くにいたら……そう考えてゾッとする。

 

「……こ、怖かったぁ……」

 

本音が震えているのが腕から伝わってくる。

俺の胸に顔を擦り寄せる本音。

 

「…大丈夫だ、本音」

 

左手で本音の頭を優しく撫でる。そのまま、ゆっくりと地面に降りサードオニキスを解除せず、篠ノ之束を睨みつける。

 

「……んー?気のせいかな?気のせいだよね?

所詮、死に損ないのモルモットが人間様に反抗的な目を向けてるけど、束さんの気のせいだよね?」

 

そう言って首を傾げながら、俺を相変わらずの笑顔で見てくる。

そして、一瞬だけその目が開き、俺と目線を合わせる。その瞬間、俺は全身から血の気が引くのを感じた。

 

「はっ……はぁ……はっはっ…」

 

「…あかやん?」

 

呼吸が乱れる。今すぐ、膝を付いてしまいたい。

アレと向き合いたくない。

今、俺を二足の足で立たせてくれているのは、一重に本音を抱えているからだ。

もし、この恐怖に屈してサードオニキスを解除し、本音を降ろしてしまえば再び、本音に命の危機が訪れるかもしれない。

それだけは避けたい。その使命感だけが俺を立たせている。

 

「まっ、許してあげるよ。そんな事よりオープン!」

 

篠ノ之束が俺に一切の興味を無くす。

それを理解した瞬間、強い安心感に包まれサードオニキスを纏ったまま片膝をつく。

本音が降りると同時にサードオニキスが自動的に解除される。だが、そんな事を気にする余裕はなかった。

 

「……なんだ……一体、なんだあの目は…」

 

身を貫く恐怖。あの目と視線を合わせ続けるよりは死んだ方がマシだ。

ポタッポタッと、砂を濡らす俺の汗。

ライオンが目の前に現れたシマウマや、鳥の鉤爪が迫ってるのを理解した虫など。

自分より強者による抗うことの出来ない絶対的な運命を悟ってしまったものは、この様な感覚になるのではないだろうか。

 

「あかやん!!」

 

強く揺さぶられる感覚と同時に大きな声で呼ばれ、俺の意識は現実に戻ってくる。

顔を上げると、いつもの緩さが何処かに出かけている本音の必死な顔が映る。

 

「ほん……ね?」

 

「そうだよ!大丈夫?

何度も何度も呼んでるのに、全く反応しなかったんだよ?汗も凄く出てるし」

 

「あ、あぁ。大丈夫だ」

 

本音に返答したのか自分に言い聞かせたのか分からない言葉が口から出る。

ふぅと、一息吐けば呼吸は落ち着き、頭も冷静になってくる。

 

「…ありがとう。本音」

 

「へ?お礼を言うなら私の方だよ!?助けて貰わなきゃ、ペチャンコになって死んでたし……」

 

なんというか間延びしない本音というのも珍しい。

思わず、笑いそうになるのを堪えて立ち上がり、左手で本音の頭を撫でる。

 

「あっ」

 

「…心配しなくても大丈夫だ。俺は俺だ、壊れてない」

 

「う、うん……そうだね〜あかやん、さっきは助けてくれてありがとうねぇ〜」

 

にへらっと笑う本音と元に戻った口調に安心する。

やっぱり本音はこうでないとな。自分の精神が落ち着いていくのを感じながら本音の頭を撫で続ける。

そのまま、視線を上に持っていく。すると、そこには篠ノ之が見たこともないISを纏い、空を飛んでいた。

まるで着物の様な華やかさを感じる紅色のIS。

二刀の刀を振るう姿も、篠ノ之のキレの良さも有り、一種の芸術作品の様だ。

 

「……ISだけ見ればの話だが」

 

本音には聞こえない様に呟く。

ISは綺麗だ。だが、その乗り手である篠ノ之が歪んでいる。その顔は、力を手に入れた事に対する慢心に満ちている。

いずれ、大きな過ちを犯す。そんな勘が俺にはあった。

 

「思ってたより稼働率が低いなぁ…まっ、どうでもいいや」

 

篠ノ之束が空間に投影していたキーボードやモニターを消す。

そのまま、俺の方に向かって歩いてくる。本音を咄嗟に俺の後ろに隠す。

 

「やぁ」

 

「…どうも」

 

全力で警戒しながら、気楽に挨拶してきた篠ノ之束に返答する。

 

「君の身体の隅々まで調べたいところなんだけど…時間がないからねぇ〜

とりあえず、右目。よく見せてよ」

 

返事なんて求めてないのだろう。俺が返事するより早く、右目の眼帯は外され、頭を両手で拘束される。

そのまま、俺の右目を覗き込む篠ノ之束。先ほどの様な恐怖は感じないが、それでも居心地の良いものではない。

 

「…ふむふむ、人間の目にISの機能を備えるとこんな感じになるのか。

人の身でありながら、360度の視界が手に入る。便利だろうけど、これ絶対に酔うよね。左右とのバランスが悪すぎる。

しかも、ISと同じ機能なら目を閉じていようが何してようが見えるだろうし……ねぇ、モルモット。この目、普段はどうしてんの?」

 

「…意図的に焦点をズラして誤魔化してる」

 

「あぁ、確かにそうすればある程度の負担は軽減できるか。それに、こっちの方も変わってるんだもの」

 

そう言って俺の頭を叩く篠ノ之束。

こいつ、サードオニキスによって侵食された俺の身体の構造を理解してるのか?俺にだってどうなってるかは分からないというのに。

 

「分解……いや、まだコレには利用価値がある。まだ、欲しいデータはあるし。

実際に見るのは大切!じゃ、頑張ってねモルモット」

 

漸く解放される。

それにしてもそこまで無機質な頑張ってを俺は聞いたことがないな。

眼帯を拾おうと思ったら、どこにも落ちていない。篠ノ之束に視線を向ける。

 

「ん?何かな?その目を隠すものなんていらないよ。

それに、あろうがなかろうが変わらないとはいえ、直接的に見てる場合のデータも欲しいから、眼帯を着けるなよ、モルモット」

 

くそっ、俺が避けてた面倒ごとを引き起こす様な事しやがって。

何か反論してやろうと思って口を開いたが、それは大きな声で駆け寄ってくる山田先生によって中断された。

 

「大変です!お、おお、織斑先生!!」

 

「……落ち着け。何があった?」

 

「こ、コレを」

 

小型端末を受け取る千冬。

その顔がどんどん険しくなっていく。

 

「……全員よく聞け!今日の日程は全て中止。

ISを片付けて旅館に戻れ!!指示があるまで、外出は許可しない。もし、許可なく外出した者にはそれ相応の罰が待っている。

それと、専用機持ちは全員集まれ!……布仏、篠ノ之もだ」

 

「はい!」

 

千冬の言葉に嬉しそうに返事をする篠ノ之。本音は俺の後ろで千冬と視線を合わせるだけだ。

篠ノ之のISが地面に降り、解除される。やはりと言うべきか、その顔に喜色が浮かんでいる。

 

「…お前などもはや敵ではない。西村赤也」

 

移動を始めた俺たち専用機持ちの一番後方で、篠ノ之が俺に聞こえるように言ってくる。

 

「この非常時に何を言ってるんだお前は…」

 

楽しいはずの臨海学校でなんでこうも、問題が起きるんだ……

結局、その後も篠ノ之は俺に何か言うわけでもなく、俺たちはさまざまな機械が置かれた部屋に到着する。

そこで、言い渡された特殊任務。それは、

 

『暴走した軍用ISを破壊せずに捕らえろ』

 

と言う、専用機持ちとはいえ、一学生に指示を出すか?と言うものだった。

 




天災降臨&暴走ISの存在が明らかになりました。
とはいえ、サードオニキスでは高速戦闘なんて無理なので、一夏君が堕ちるところはまんまカットしようか悩み中。

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