神様は残酷で気紛れだ   作:マスターBT

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明けましておめでとうございます!(大遅刻)



ヒーローなんて……

「俺が最後でしたか。遅れました」

 

「…いや、構わん。座れ、赤也」

 

色々考えながら歩いていたら俺が最後になったようだ。

千冬の側には、作戦に参加し戦闘を行った篠ノ之、オルコット、ラウラが座っている。が、篠ノ之の表情は見えない。

まぁ、どうでも良いか。とりあえず、入り口の一番近くにいた本音の横に座る。

 

「揃ったな。まずは、これを見てくれ」

 

千冬が山田さんの方を見て、頷く。

それが合図だったようで、モニターが起動。映像が映し出される。

 

「これがオルコット、ボーデヴィッヒ両名と戦闘した正体不明機だ」

 

指示棒を持つ千冬が示した正体不明機。

その姿は、クラス代表戦で俺が戦ったISと形状が酷似していた。違う点を挙げるのなら、形状がより人に近づき、あの時はブレード二本だけだったが、武装が追加されている様にも見える。

 

「またこいつが……」

 

凰が憎々しげに正体不明機を睨む。

 

「オルコット、ボーデヴィッヒからこのISの所感を述べて貰う。頼んだ」

 

「「はい!!」」

 

千冬が下がり、オルコットとラウラが前に立つ。

ドサっと座る千冬。……全く、中身は繊細なんだな千冬。

 

「わたくし達の所感を戦闘の映像とともに話させて貰います」

 

オルコットが手に持つスイッチのボタンを押し、映像が動き出す。

初めは早送りで、平和な海と青空が映し出されている。だが、突如として海から現れた正体不明機により、二人は強襲される。

 

『なっ!?どこから』

 

『考えるのは後だ!!教官、我々は正体不明機との戦闘を始めます!』

 

映像からオルコットとラウラの声が響く。

声から分かる通り、二人はかなり焦っている。だが、何故だ?ISのレーダーであれば接近に気づけない筈がない。

こうも簡単に強襲されるなんて。

 

「この時、わたくしのレーダーにもラウラさんのレーダーにも反応はありませんでした」

 

オルコットの言葉に全員が息を呑む。

 

「推測の域を出ないが、このISはかなり高レベルなステルス機能を搭載している。

現行兵器を遥かに凌駕するISすら騙せるレベルのな」

 

「だけどラウラ!そんなのがあり得るの!?」

 

凰がラウラの言葉に驚きながら質問する。

ステルスという一点とはいえ、ISを超えた。それは即ち、ISの万能性を一部とはいえ、地に落とす事が出来るという事だ。

世の中にこの情報が出るだけで混乱待った無しだ。

 

「私とて信じられないさ。だが、この目で見て体感したのだ。

それに嘘偽りはないぞ、鈴」

 

「……そうね。悪かったわラウラ。続けて」

 

凰が落ち着きを取り戻し、先を促す。

止まっていた映像が再び、動き出す。強襲されたとはいえ、この二人だ。

即座に体勢を立て直し、戦闘を行う。ブルーティアーズのビットが展開され、ラウラのレールガンが火を噴く。

だが、それを人には不可能な動き。腰を180度回転させ、錐揉みをするように二人に突撃し、避ける正体不明機。

 

「「やっぱり、無人機か」」

 

俺と凰の言葉が重なる。

 

『避けた!?いえ、それよりもあの動きは……ラウラさん、遠慮は必要ありませんわ!』

 

『あとで話を聞かせて貰うからな!』

 

オルコットとラウラの動きが変わる。

攻撃が牽制から、撃墜を視野に入れた動きだ。オルコットはビットの狙いを統一。

執拗に関節部を狙っていく。シールドエネルギーを削るのではなく、破壊する攻撃。

無人機だと判断した様だ。

オルコットの動きを見て、ラウラも行動を変える。射線を塞がない様に近接戦に移行する。

俺が戦った時の無人機であれば、これで終わるが、そうではなかった。

 

『『動きが変わった…!?』』

 

まるでオルコットとラウラの殺意に応えるようにその動きがより実戦的になった。

動きは人間ではない。だが、殺意に反応する様に動きを変える人間らしさ。

 

「…気味が悪い」

 

シャルロットの声が静かな室内に響く。

俺もその言葉に同意したい。だが、自分の右腕を見て思考が停止する。

 

(俺はどっちだ?人間か、機械か)

 

サードオニキスに侵食されてるこの身体を果たして人間と呼んで良いのだろうか。

そもそも、俺はあの時、篠ノ之束に出会わなければ死んでいた。そういう意味で俺は死人だ。

サードオニキスによって生かされている。ただ、それだけの存在とも言える。

 

「……はっ」

 

短く息を吐く。

俺が人間か機械かなんて今、考えることではない。今は正体不明機が優先されるべきだ。

ドロドロした黒い考えを無理やり切り離し、オルコットとボーデヴィッヒの話に耳を傾ける。

 

「この映像で正体不明機が使用した武装は、二本のブレードと両掌から放たれるレーザー兵器。

それと、脚部に搭載された小型ミサイルですわ」

 

「レーザー兵器は非常に強力だが、それ以外は大したことではない。

だが、そう考えると疑問が残る。奴のステルス性能がまるで活かされていないことだ」

 

「奇襲を成功させたからいいんじゃないの?」

 

「デュッチー、おかしいんだよぉ〜。この正体不明機、奇襲でビームを使ってないんだぁ。

それを使えばセッシーとラウラウを一撃で仕留められる筈なのにぃ」

 

シャルロットの疑問を本音が答える。

 

「その通りだ本音。故に、私とセシリアは共通の見解を出した。

これは織斑先生も合意している。あの正体不明機の目的は我々の足止め。即ち、織斑一夏、篠ノ之箒の救援を行わせないものと考えた」

 

目的が足止めだとしても、この正体不明機の真意が分からない。

それはラウラ達も同様で、続きを言わない事から察しがついていないと分かる。

 

「何か質問はあるか?」

 

千冬が前に立ち、俺たちに投げかける。

誰も手を挙げることはない。それを見て、視線でオルコットとラウラを下げる千冬。

 

「では、次だ。篠ノ之が説明できない状況にあるため、私から説明する。

現在、対福音に当たっていた織斑一夏は意識不明の重体で別室にて療養中だ。そして、これが戦闘映像だ。

ここで見たことを決して、他言しないように」

 

千冬がオルコットの時と同様にスイッチを押し、映像が動き出す。

視点主は織斑のようで、紅椿の背中が映っている。

 

『なぁ、箒。落ち着けって』

 

『黙れ腑抜け者』

 

織斑が話しかけるが、不機嫌な声で断ち切る篠ノ之。

まだ、俺と会話した時の事を引き摺っているようだ。篠ノ之の物言いに凰が睨むが篠ノ之に反応はない。

 

『箒……』

 

織斑の哀愁漂うつぶやきが聞こえる。

アラームの音が響き、白式のレーダーが福音を捉える。

時間にして10秒後、福音と接敵する織斑達。だが、初撃は華麗に避けられる。

この時点で作戦は失敗だ。だが、映像の二人は戦闘を続ける。

 

『ちょこまかと動くな!』

 

篠ノ之が動き回る福音を紅椿の性能にモノを言わせた動きで、迫る。

まるで猪だな。突撃しか考えてないのか。

だが、やはり第四世代機。性能頼りの一辺倒でも、近接兵装の無い福音を徐々に追い詰めていく。

 

『一夏ぁ!』

 

篠ノ之が吠える。

福音を取り押さえる絶好のチャンスだ。だが、白式が映し出しているのは紅椿でも福音でも無い。

一隻の船だった。

 

「海域封鎖をしてるはずなのに!?」

 

「……私達、教師の失点でもある」

 

凰の驚いた声に千冬が頭を押さえながら、答える。

IS学園は軍人の集まりでは無い。だからこんな失敗だってあり得る。だからって……生徒が命がけで挑んでる戦場でこんな杜撰さをしなくても。

白式はこの絶好のチャンスを投げ捨て、船を護ろうと動く。

 

「……織斑、お前は顔も知らない誰かの為に命を投げ捨てるのか」

 

目先の命。

あの船に何人乗っているかは知らない。だが、福音がここを抜けて被害を出すであろうIS学園の生徒、日本の国民に比べれば少ない。

どちらを重要視するかなんて、単純な問題だ。後者であるべきだ。

俺ならそうする。あの船に乗っているのが、本音や神楽で無いのならだが。

 

「……チッ、馬鹿か。お前は」

 

『何をやっている一夏!そんな奴らは放っておけ!!』

 

篠ノ之と珍しく意見が合った。

 

『箒!お前、やっぱり可笑しいぜ。力を手に入れたからか?』

 

『何を言ってる!?』

 

『あぁ…くそっ!箒、福音を引きつけてくれ!

白式のエネルギーはまだ余裕がある!だから、早く!!』

 

零落白夜を攻撃が当たる瞬間にのみ発動させてた白式のエネルギーはまだ余裕がある。

しかし、船をかばい続けていては限界があるのだろう。織斑が焦った様に篠ノ之に指示を出す。

一瞬、映像が福音を映した事から、織斑が福音に視線を向けたと判断できる。

 

『良いから早く来い!お前の攻撃が決定打なのだぞ!?』

 

が、戦況の読めない篠ノ之は相変わらず織斑に叫ぶ。

敵から視線を逸らす。最も、愚かな行為だ。

福音が隙だらけの篠ノ之を攻撃する。何発か被弾し、紅椿のシールドエネルギーを減らす。

 

『箒!?』

 

紅椿のブレードが一本、粒子になる。

武装の維持すら限界になりつつある様だ。だが、篠ノ之が攻撃されたことで船に向かう光弾がなくなった。

織斑が船から極力離れる様に、福音へと接近していく。

 

『貴様ァァ!!』

 

『ッツ!?』

 

激昂した篠ノ之が織斑と福音の間に割り込む。

結果として零落白夜を当てるチャンスを失ってしまう。慌てて、織斑が篠ノ之とぶつかるのを避ける。

だが、隙だらけのその姿を福音は篠ノ之をまるで、何も居ないように扱い、織斑へと攻撃する。

 

『ぐぅっ…』

 

光弾を斬り払うにも限度はあり、白式のシールドエネルギーが残り僅かになる。

零落白夜、一発分か。

 

『一夏!?』

 

動きを止めてしまう篠ノ之。

馬鹿か。そこは敵の目の前だぞ。当然のように福音の光弾が篠ノ之に向けられる。

 

『箒はやらせねぇぇぇ!!!!』

 

白式が紅椿を突き飛ばす。

そして、あとは見るまでもない。白式は光弾に飲み込まれ、映像が途切れる。

その瞬間、今度は紅椿の映像に切り替わり煙幕の中から、白式が解除され、生身となった織斑が現れる。

 

『一夏!?いちかぁ……いちかぁぁぁぁ!』

 

それを半狂乱になりながら、篠ノ之が回収。

不思議なことに福音はその場から一切、動かず撤退する篠ノ之を見送った。

 

「……これが事の顛末だ。教師を代表し、私が謝罪する。

すまなかった。海上封鎖が甘く、今回の事態を招いてしまった」

 

頭を下げる千冬。

俺も含め、全員が何も言えない。千冬が悪いわけではない。現場にいた教師が悪いのだ。

 

「何か質問はあるか?なければ、一旦解散だ。

作戦を続行するかどうかは我々が決める」

 

俺はそれを聞き、真っ先に部屋を出る。

これ以上、辛気臭い空間に居たくなかった。だが、それ以上に織斑の行動がなぜか気になり、一人で考える時間が欲しかった。

 

「俺にはあんな行動は取れない。

自分の目の前にある命を救うのに全力になる。例え、その後ろがより悲惨だとしても」

 

偽善だと断定するのは容易い。愚かだと蔑むのは簡単だ。

なら、俺はなんでこんなにも考えている?

目の前の命を全力で守ろうとして、ボロボロになる奴らを人はなんと呼ぶ?

 

「ヒーロー」

 

口に出してしっくりくる。

そうだ、ヒーローだ。日曜の朝にやる子供向けの番組。それに出てくる奴らは、ボロボロになりながらも目の前の命に全力だ。

顔も知らない人、ただその時に出会った人、会話をした人、友人、恋人、家族。

その全てに命を賭ける奴を人はヒーローと呼ぶ。

 

「あぁ……俺の大嫌いなヒーローじゃないか」

 

俺が苦しい時、辛い時、それを助けてくれるヒーローはいなかった。

全部、俺が耐え抜いた。耐えて耐えて耐えて、遂に右腕を失い、死にかけても助けての言葉は俺の口から出なかった。

ヒーローなんていない。そんな存在はあってくれと願う弱者の願望だ。

だから、嫌いだ。ヒーローなんて偶像は。

 

「なるほど……この俺にもよく分からない織斑に対する感情はこれか。

どうやらほんとうに俺とお前は相容れない様だ織斑」

 

無意識に織斑が寝ている部屋まで足を運んでいた。

意識を失っている織斑に今の俺の言葉は聞こえてはないだろう。

 

「無様だなヒーロー。自分が傷ついてそれで誰かが守れて満足か?」

 

返答はない。

織斑が生きていると告げる電子音だけが響き渡る。

 

「満足なんだろうな。お前みたいな人種は。

俺は嫌だね。傷付くとしても守りたいと思える奴らじゃなくちゃ嫌だ。だから、お前の考えなんて理解できないししたくもない」

 

何をやってるんだ俺は。動けない意識もない織斑を罵ったところで、意味なんてないだろう。

そんな俺の意識とは裏腹に口は動く。

 

「このまま寝てろよ。その方が被害が出なくて良い。

福音は俺にもどうしょうもないが、動きが止まってるしいずれどうにかなるだろうよ。

国が動くかもしれないし、もしかしたら他の専用機持ちで倒せるかもしれない。そうすれば、ヒーローは倒した奴になる。

お前の行動は無意味に無価値になるんだよ」

 

部屋の扉が思いっきり開かれる。

そこに立っていたのは凰だった。

 

「……あんたがここに居るのは予想外だったわ」

 

「俺もそう思う。見舞いか?」

 

「違うわ。福音を倒すのに手を貸しなさい」

 

凰の後ろにはどうやって説得したのかオルコット、ラウラ、シャルロットと篠ノ之がいる。

俺と本音を除いた動ける専用機持ちを説き伏せたのか。

 

「悪いが断る。サードオニキスじゃ、高速戦闘にはついていけない。

それに旅館の方をゼロにするわけにもいかないだろう」

 

「本音も同じこと言ってたわ……そう、なら良い。

私達だけで行くわ。千冬さんに余計なこと言わないでね」

 

凰達が立ち去って行く。

 

「聞いたか?織斑。どうやら、本当にお前の役目はないらしい。

精々、自己満足に浸ってるんだな」

 

俺も部屋を出る。

右目が飛んで行く凰達を捉える。さてと、俺も何かあったら、備えておきますか。

 

「うん?」

 

旅館からそう遠くない林にふと目が行く。

人影か?微妙に見辛いな。右目に意識を割く。

 

「…千冬?」

 

千冬の様な人物が林に入っていくのが見えた。

だが、背が低い様に見えた気がするが……チッ、旅館に何かあってからじゃ遅いか。

俺は林の方に走り出す。まさか、それが第三の勢力による罠とは知らずに。

 




いやぁ、本当にイチャイチャとか日常が書きたい。

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