神様は残酷で気紛れだ   作:マスターBT

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今回、オリキャラが登場します。
私の前作、『蒼き雫に救われし者』から、ブレインというキャラです。
前作を読まなくても、大丈夫なようにしていきますが、一応、ご連絡しておきます。


俺が俺でいるために

警戒をしながら林を進む。

千冬と良く似た人物を思わず、追いかけてしまったが連絡をした方が良かっただろうか。いや、千冬は今精神的余裕に欠けている。

余計な負担はかけない方が良いか。

 

「…これが罠だったら俺が負担をかけるよな。間違いなく」

 

やはり軽率だったか。

とは言え、身体が勝手に動いてしまったことだ。諦めよう。

 

「それに、勘でしかないが、背中を向けるのはマズイ気がする」

 

ここの林に入ってからずっと感じる誰かに見られてる感覚。

それが進めば進むほど、強くなっている。しかも、その視線が基本的に進路方向からなのだ。

引き返せばこの視線の主に背を向けることになる。まぁ、右目で不意打ちは防げるんだが。

見た目同様、中身も千冬レベルだとキツイ。

なんてことを考えてながら歩いていたら引くに引けないエリアまで踏み込んでしまった。

 

「なんだここ。ずいぶん、拓けてるな」

 

林を進んで数十分。

やたらと拓けた場所に出る。

 

「……いや違う。人為的に木が減らされてる」

 

ところどころ、土の色が違う。

その辺りを注視して見れば、木屑もある。明らかに誰かが意図的にこの場所を作った。

 

「ッツ!?」

 

急に背後に現れた黒いローブの様なものを纏ってる奴が、消音付きの拳銃を撃ってくる。

顔は見えないが、右目が弾道を計算してくれるお陰で追える。身体の体勢を崩し、弾丸を避ける。

 

「……!」

 

黒いローブの息を呑む音が聞こえ、さらに銃弾が飛んでくる。

だが、遅い。弾道が追えれば、避けれる。そのまま、距離を詰め、右手で殴りかかる。

 

ガァン!!

 

金属がぶつかり合う音が響く。

拳銃を盾に俺の拳を防いだ様だ。近づけば顔が見えると思ったが、ローブが思ったより深く被られており、見えない。

舌打ちをしながら、相手の拳銃を弾き飛ばす。

だが、それと同時に黒いローブの蹴りが俺の腹に当たり、距離が開く。

 

「……来い」

 

黒いローブを派手に脱ぎ捨てると同時に、光に包まれる。

 

「くそっ、サードオニキス!」

 

その光が見慣れたISの展開だと、察してサードオニキスを展開する。

コンマ数秒の差でISを展開し終わり、向き合う。

 

「……なっ!?」

 

「驚いてる暇はないぞ?」

 

千冬そっくりの顔に驚き、固まってしまう。

その隙を突かれ、距離を詰められる。

 

「ぐっ…」

 

右目の予測に従い、その攻撃をギリギリで躱す。

くそっ。完全に油断した。

かなり焦っているが、千冬との稽古が染み付いた身体は意思が無くても、勝手に動いた。

ISはラファールか。性能で言えば、俺の方が上。

それでも……攻めきれない。

 

「ISの使い方が上手い…」

 

「ほらほら!」

 

振るわれるブレードを右腕で弾き、蹴りを放つ。

だが、笑みを浮かべたまま、その蹴りは避けられ後方に飛びながら、ナイフを投擲される。

それらを右手で一掴みにし、輻射波動で、破壊する。

 

「戦闘は許可してないわよ、M」

 

「チッ」

 

黒いローブを着た金髪の女性が現れる。

その女性の言葉でMは動きを止める。

 

「こんにちわ、西村赤也くん。

私はスコール・ミューゼル、いえ、貴方にはガスト・ミューゼルと言った方が分かりやすいかしら」

 

フードを外した女性。スコール・ミューゼルと名乗ったその姿。

好みではないが、美人な事は分かる。10人いたら9人は振り返るだろう。

 

「まぁ、そうマド……Mを責めるな。

戦闘行為によるデータが取れた。意味はあったとも」

 

その横に立つ燻んだ銀髪の男性。

冴えない風貌に白衣。胡散臭さが半端無い。

 

「そうやって、Mを甘やかすのは貴方の悪いところよ、ブレイン」

 

「なんだお前らは……」

 

「あら、自己紹介はしたわよ。ねぇ、亡国企業に来る気はないかしら?」

 

そう言いい、俺に手を差し出す。

 

「…悪いが」

 

「逃げようとは思わない方が良いわよ?」

 

俺が瞬きをしている間に、スコールは金色のISを展開。

俺のすぐそばに、火球が落ちる。

 

「やれやれ、仕方ないか」

 

ブレインが拳銃を取り出し、俺に撃つ。

避けようと思ったが、Mとスコールが攻撃体制に入った事により、右目に二人の予測が映される。

いや、映されてしまった。そのせいで、無意識にその予測に意識が割かれてしまう。

 

「君の目の弱点だ。ISのシステムの直結したその右目。

あぁ、確かに強いな。だがね、人間の本能というのは、思いのほか臆病なのさ」

 

両足に着弾した拳銃の弾。

本来であれば、なんの害もないはずだ。だが、着弾と同時にドロっとした粘液が俺の足と地面をくっつける。

 

「う、動かない…」

 

「ISのパワーでも、そう簡単に引き剥がせるものではないぞ」

 

「…さて、これで落ち着いて話が出来るかしら?」

 

なんだこの男!?

というか、こいつらどうやって俺の右目を知りやがった。俺の右目を知ってるのは、本音と神楽、千冬ぐらいだぞ。

 

「篠ノ之博士よ。今、彼女と私達は協力関係だから。

これで、疑問には答えたかしらね」

 

「……心を読まないでくれるか?」

 

「あら、随分と分かりやすい顔をしてたから読んでくれと言ってるのかと思ったわ」

 

会話の主導権が取れない。

足は相変わらず、動かない。俺の身体に関する事はバレてると考えて良い。

力を抜き、両手を下ろす。

 

「話をする気になったと、見て良いかしら?」

 

「さぁ?お好きに」

 

「ふふっ、可愛らしい反抗ね。

私から言う事は何も変わらないわ、こちらに来ない?」

 

くすくすと笑いながら、俺の精一杯の反抗を可愛いと評価する。

あぁ、こいつ苦手だ。

 

「断る。確かにあんたらの誘いに乗れば、この状況から脱出出来るだろう。

だが、俺はあの場所が好きでね。離れる気は無い」

 

無駄に意思の強くなったシャルロットや、自称姉のラウラ。

気に食わないが、優雅で俺とは対極にいるオルコット、意外にメンタルや私生活が弱点だが、尊敬できる師匠の千冬。

それに、こんな俺を友人と呼んで、側に居てくれる本音や神楽。

そんな奴らがいるIS学園は気に入っている。だから、そこを捨てる気は無い。

 

「…貴様は貴様の全てを奪った者に復讐したいとは思わないのか?」

 

Mと呼ばれていた奴が急に喋りだす。

 

「なんのことだ?俺は何一つとして奪われてなど」

 

「いいや、奪われている。その右腕から始まった身体。

さらに、人間としての尊厳。もっと言うなら、貴様が普通に生きるはずであった未来すら奪われている」

 

…何を言ってるんだこいつは。

脈拍が上がる。脳がその先を聞くなと警鐘を鳴らす。だが、俺に言葉を聞かないと言う選択肢は無い。

無意識に唾を飲み込む。ゴクリ、あいつに聞こえるわけがないが、飲み込んだ瞬間、Mは口を開く。

 

「篠ノ之束。奴は貴様から全てを奪った。

貴様の過去は存分に調べさせてもらった。女尊男卑に染まった家族。あぁ、可哀想だな。

そこから逃げようとして、テロにあう。あぁ、無念だな。

その始まりは誰だ?誰がこの世界を作った?西村赤也という人間を歪めたのは誰だ?」

 

俺が受けてきた不幸の数々。

その全ては女尊男卑が始まりだった。

呼吸が乱れる。

右腕を失い、身体をISに侵食され、生きてるのか死んでるのか分からなくなったのはあの日、篠ノ之束に出会ったからだ。

喉が乾く。

女尊男卑が世に蔓延るようになったのは、篠ノ之束がISを生み出したからだ。

ーーじゃあ、俺が今まで受けてきた苦痛や不幸の数々はーー

 

篠ノ之束がこの世にいる事から始まった。

 

「……いい目だな。その濁った目。

やはり、こちら側に来る資格がある」

 

「……M。勝手な発言はそこまでにしなさい」

 

スコールの語気が強まる。

だが、そんな事は今の俺にはどうでもいい。俺は俺の意思で歩むと決めた。

でも、今も昔も結局、誰かの意思に左右されてるのか。昔は家族、今は篠ノ之束。

 

それでも今の昔は違う。今の俺には力がある。

 

復讐か……考えてもいなかったな。

思考が黒く染まっていく。ゆっくりと俺の脳髄を犯していく。

俺だけで、あの化け物は殺せない。

それは今までの俺のあり方を変えてしまう劇薬で。

……それなら、こいつらと手を組む方がいいんじゃないか?あぁ、その方が化け物に対する対抗策が増えそうだ。

俺の、俺の色を決定付けてしまうものだ。

 

「あかやーん!どこー?

勝手に持ち場を離れると怒られるよぉ〜!!」

 

「……!!」

 

だから、本音の声が聞こえてなかったら俺は戻れなかったかもしれない。

本音の声を聞いて、脳髄を犯していた闇が消えていく。

そうだ、俺は今、本音達といる方が好きなんだ。篠ノ之束への復讐……もっとじっくり考えるさ。

俺がいずれ、復讐という手段を選ぶかもしれない。

だが、それでもそれは今じゃない。今の俺はIS学園の西村赤也だ。

 

「目の色が……チッ、余計な邪魔が入ったか」

 

「スコール、どうするのかね?今の彼を口説き落とすのは難しそうだが」

 

「…ブレイン、下がってて。こうなったら力尽くでいくわ。効果時間は」

 

「戦闘の規模にもよるが、保って数十分だ。それ以上は確証は出来ん」

 

何を話しているが、知らんが無視だ無視。

サードオニキスのパワーを全開にする。ゆっくり、ゆっくり足と地面が離れだす。

 

「ッツ!!こいつッ!!」

 

「待ちなさいM!!」

 

スコールの制止虚しく、Mが展開したアサルトライフルが火を噴く。

消音なんてされていない銃声が林に響き渡る。

 

「あかやん!?」

 

そうすれば、本音に聞こえないわけがない。

大声を出してたとはいえ、そこそこ広い林だ。声が聞き取れると言う事は近くにいるのだろう。

その証拠に、サードオニキスのレーダーには、九尾ノ魂の反応が急速にこちらに向かっている。

 

「……純粋なパワー型を抑えるにはまだ改良が必要か」

 

「呑気なこと言ってないで、ブレイン!」

 

スコールが接近して、攻撃してこようとしてくる。

後ろのMも同じように向かってくる。まだ、俺は自由ではない。

だが、なんの心配もいらない。

 

「「ッッ!?」」

 

有線式のビットが、Mとスコールに襲いかかる。

二人はそれを避けるが、その隙に攻撃の主が俺の横に降り立つ。

 

「あかやん!無事?」

 

「おう。助かったぜ本音」

 

俺の信頼できる友人の一人。布仏本音。

九尾ノ魂を纏い、俺の横に立つ。結構、格好いいぜ本音。

 

「さて、これで2対2だ。対等な勝負と行こうぜ、亡国企業さん?」

 

身体の捻りも加え、拘束を捩じ切った俺は右手で、Mとスコールを挑発する。

さて、反撃開始と行こうか。

 




次回は、福音と正体不明機戦になるかと思ってます。

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