神様は残酷で気紛れだ   作:マスターBT

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今回から新章的な感じです。
構想を練るのに時間がかかりすぎましたね。既に原作からは乖離した部分が多いですが、今回から更に増えるかもしれません。


新たな代償

「やっほー、あかやん。元気〜?」

 

「失礼します。暇でしたら、久しぶりのお茶会しませんか?」

 

寮長室に気楽に入ってくる本音と神楽。

千冬がいる場所だから普通なら、この二人でも気楽にくる場所じゃないが俺がIS学園に戻るなり、この二人は好きに時に入って良いと許可が出された。え?部屋はどうしたかって?俺が全部片付けました。

許可出すのは良いが、来客を招く部屋じゃなかったぞ正直。なんだ、散乱したゴミに明らかに畳む気すらない衣類。

カサカサ動く連中が好きそうな空間だったよ。死ぬ気で掃除したわ。

 

「あぁ、良いぞ。落ち着くまで自習を言いつけられてるだけだからな。

男性IS操縦者に関して各国が新しく取り決めを作るまで、ハニトラ警戒で教室にすら戻れないとは」

 

俺より早く学園に戻っていた織斑も情勢が怪しくなったタイミングで待機になっている様だ。あいつには山田先生が定期的に授業しに行っているらしい。

まぁ、詳しくは知らん。友人でもなんでもないしな。

ちなみに何故この二人は普通に来ているのかだが、単に学園から信頼されているだけだ。

 

「ちょっと待っててくれ。今、片付ける」

 

「私も手伝いましょう」

 

俺と神楽で机の上を片付ける。

と言ってもあるのは俺の勉強道具とちょっとしたゴミだが。俺がそれらをしまっている間に神楽が、クッションを三つ並べる。

そこに本音がポテポテと歩いて来て一番フカフカなやつに座り、机の上にケーキやクッキーを置いていく。

 

「赤也さん、本音さん、飲み物は何が良いですか?」

 

「紅茶〜」

 

「濃いブラックで」

 

「分かりました」

 

神楽がキッチンへ歩いていき、ヤカンに火をかける。

 

「本音、今日はどうだった?」

 

「んーとねー、ISの整備をしてた。武装でも増やそうかなーって思ったけど良い案なくてさぁ。

最近、かんちゃんが構ってくれないから〜」

 

「悪いが俺はそのかんちゃんとやらを知らないから何も言えないぞ」

 

「え~あかやんの意地悪~」

 

「それはおかしくないか?本音」

 

なんとも理不尽な言葉を聞いていると神楽がコーヒーと紅茶、そして自分用の緑茶を持ってくる。

全員飲む物が違うから神楽は大変だなと思う。

 

「そうでもありませんよ。全てインスタントですし」

 

俺の表情から内心を読んだ神楽。

しれっと心を読まないでくれないか。

 

「心を読むなって。そんなに分かりやすいか俺」

 

「えぇ。それに友人ですから、表情や仕草ぐらいでなんとなく分かりますよ。

そんな事より早く食べましょう?今回は本音さんの自信作なんですから」

 

「わー!それは、言わないって約束なのに~」

 

「あら?そうでしたっけ」

 

神楽が微笑むように誤魔化す。こういう表情の時はわざとやった時だ。

 

「そういや、こっち戻ってからは初食事か。胃が弱ってるとかで点滴だったからな」

 

初食事に本音の手作りとは運がいい。

そう思いながらコーヒーを飲む。………ん?

 

「なぁ、神楽。味、薄くないか?」

 

「いつも通りの濃さのはずですが……」

 

「んー…点滴の間で舌が鈍ったか?まぁ、良いか」

 

神楽と本音が心配そうな顔で俺を見てくるがそんな事より俺の意識はケーキに向けられていた。

本音の手作りというソレはショートケーキの様だ。素人目にも分かる綺麗な見た目だ。

俺の気のせいでなければ輝いて見えるぐらいにしっかりとしたケーキだと思う。

食レポの技能は俺にないな。

 

「「「いただきます」」」

 

三人でいただきますをし、食べ始める。

ゆっくりとケーキにフォークを落としていく。

なめらかなクリームとふわふわの生地がとても美味しそうだ。自分では菓子の類は作らないから、新鮮な気分で口へと運ぶ。

……なんの味もしない。

 

「ん〜、やっぱりケーキは美味しいねぇ〜」

 

「苺も中々良いですよ。この酸味がアクセントになってくれてます」

 

本音と神楽の様子を見た限りしっかりと美味しいようだ。

ということは本音のミスでは無い。……俺の欠陥か。おい、サードオニキス。

 

『なんでしょうか?』

 

頭の中に響くサードオニキスの声。味がしない。これが今回の代償か?

 

『…少々お待ちを………はい。全身を診断したところ味覚を司る全ての機能停止を確認。

どうやらより戦闘に適した身体にする為に不要な機能と判断したようです』

 

お前の意思で俺の何処を侵食するか決めていた訳ではないのか。

 

『面倒なので。そもそも、選り好みをしていられるほど余裕はないですし。

事前に言ってくれればその部位にしますが?』

 

注文したらしたで追加料金取られそうだからやめておく。

と言うか…まじか、この先ずっと俺は料理の味が分からないのか。味覚が無くなるというのは不便すぎる。

千冬に作る料理の味見も、今こうして作ってくれた料理の味も分からない。

 

「あかやん?」

 

「あっ、あぁ。どうした?」

 

「怖い顔してたから〜もしかして、美味しくなかった?」

 

……あぁ、こうやって不安な顔をさせてしまう。

別の欠陥ならまだ気づけた。だが、味覚は分からない。今まで点滴で過ごしていた人間には気づけない。

本当に神って奴は、大嫌いだ。

 

「いや、大丈夫だ。どうにも味覚が鈍ってる様でな?

ちょっとよく噛み締めないと分からなかったんだ」

 

「……そう?なら良かったぁ〜」

 

あぁ、うん。この間は疑われてる気がする。

いやまぁ、仕方ないのだが。

 

「あぁ、そうでした。今度、テストが行われるんですが皆んなで勉強会でもしませんか?」

 

「おぉ〜良いねぇ〜私も普通科目が不安だから助かるぅ〜」

 

「俺に至ってはそもそも、後追い状態だからなぁ」

 

「赤也さんの為でもありますよ。と言うかそっちが本命です。

なに、怪しくなってるんですか本音さん?」

 

「あはは〜いやぁ、九尾にかかりっきりでさ。えへ☆」

 

本音が舌を出して誤魔化す。

俺がアルベールさんの所で休養してた時からずっと自身のISを弄ったり練習している本音。

最近は一応、見た限り体調を鑑みない無茶はしていない様だが、それをさせてる原因の俺からじゃ何も言えない。

 

「俺に何か手伝える事があったら幾らでも言ってくれ。まぁ、IS弄りに関しては本音の方が何倍も知ってるだろうけど」

 

「新鮮な意見は幾らでも募集だよぉ〜」

 

この後、取り敢えず味覚に関しては話題には出ずに済んだ。

勉強会をいつにするか話したり、九尾に関して俺と神楽で意見を出してみたり、久しぶりのお茶会は過ぎていった。

…これ、俺から言い出すの待たれるだろうなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園整備室。

実習で使われたり、学園の訓練機を借りた際、損傷を修理したりするのに使われる場所。

今は放課後。時間的には寮長室で赤也達がお茶会を始めているぐらいだろう。

 

パチン!

 

っと乾いた音が響いていた。

一人の少女が男に対して行った平手の音だ。平手を行なったのは、水色髪の少女、更識簪。

それに対して平手を受けたのは織斑一夏。

彼は平手を受けてなお、ジッと簪を見据えている。

 

「…これで満足したか?まだ、やりたいなら幾らでも君が満足するまでしてくれ。

俺が望んだ訳ではないがこの弐式の開発を止めてしまったのは事実であり、罪だ。どんな罰でも受けよう」

 

余りにも揺るがない言葉と瞳。

平手を行った簪自身が怯んでしまう。

 

「…なんで、怒らないの?」

 

相次ぐ不幸によりすっかり後ろ向きな思考が染みついてしまった簪。

姉との確執、男性操縦者出現に伴い自身の専用機の開発停止、幼馴染兼従者である少女が自分より二人目の男性操縦者を優先し姉とISで戦闘、元々計画されていた新規ISの操縦者に選ばれる。

そして、自分は未だまともに専用機を開発出来ていない。純然たる事実が簪の心を蝕んでいた。

 

「なんでと言われてもな…さっき言った通りなんだけどな。

それ以外の理由が必要なら…そうだな、君が助けを求めている様に見えたからかな。助けを必要としているのを助けるのがヒーローだろう?」

 

一夏が整備室に来たのは全くの偶然だった。

自室で筋トレをしていたが、自分の流した汗の臭いが凄い事になったから換気をしている間、白式を整備しようとしたのだ。部屋から出るなと言われているが、今は授業中。自学していない彼も彼だが簪が此処にいるのも本来ならあり得ない。

 

「態々、授業をサボっているわけだしな。まぁ、しつこく聞き過ぎたことは謝るよ」

 

「…ヒーロー」

 

一夏の言葉を聞き、簪は俯いていた。

既に彼女に一夏の言葉など届いていない。『ヒーロー』と聞いた時から彼女は自分の内側に意識を向けていた。

元より特撮が好きな彼女。自らの境遇を嘆くようになってからはよりヒーローへと没入していった。

自分にもこのどうしようもない暗がりから助け出してくれる存在が現れないかと。

 

「その、原因たる俺が言うのもあれだけど、君のIS開発を手伝わせて欲しい。

俺の罪滅ぼしと君の助けになりたい」

 

そんな簪に甘美すぎるトドメの言葉。

本来の彼女なら否定する提案。しかし、最早意地も虚勢も張れないほど疲れ切っていたが故に。

 

「…お願い。私を助けて」

 

真っすぐ過ぎる光に手を伸ばしていた。

そしてその手は、暗闇から伸ばされた小さきその手は。

 

「あぁ!任せてくれ。俺は君を助けるよ。その為にもまずはISの整備をしっかり勉強しなくちゃな」

 

とても簡単に照らされ握られた。

この後、一夏は持ち前の才能を発揮し、ISの整備方法を吸収。一夏と簪の二人三脚で弐式は組み上げられていくことになるのだが、それはまだ先の話。

 

「知ってると思うけど俺は織斑一夏。君は?」

 

「…更識簪。苗字は嫌いだから、簪って呼んで」

 

「分かった。よろしくな、簪」

 

今はヒーローの卵と光を見つけた少女の出会いの話。

 




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